表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
洋館の記憶  作者: ヤン
25/29

第二十五話 静寂

 玄関を入ると祖母が振り向いた。驚いたような顔をした後、「お帰りなさい」と言った。私は、「ただいま」と言ってから、


「今、私を見て、驚いた?」


 祖母は首を振ると笑顔になり、


「そんなはずないでしょう。(かおる)ちゃんを見て、驚くなんて」

「前にも、驚かれたこと、あるし」


 庭から戻ってきた私を見て、祖母はやはり驚いた顔をしていた。

 祖母が黙ってしまったので、私は靴を脱いで上がると、


「ちょっと部屋で休んでくる」

「そう」


 笑顔とともに言うと、祖母は自分の部屋に戻って行った。


 階段を上がって行きながら、いつもここは静かだな、と思った。外に出れば、鳥のさえずりや風の音は聞こえる。木々のさざめきも。が、家の中はどうだろう。


 たいていは、それぞれの部屋にいて、お互いの部屋を訪ねることもしない。最低限の挨拶や、食事中のちょっとした会話はあるが、楽しい食事の時間、という雰囲気でもない。敷地が広いだけに、お隣さんは、はるか遠くだ。


 今まで住んでいたアパートには、もっと人の気配があった。ドアの開閉する音、人の話し声、テレビや音楽の音。それらが、ここにはいっさいない。


 急に胸がざわざわして、階段を駆け上がり自分の部屋に急いで入った。制服のままベッドに横たわると、天井を見ながら、


「よっちゃん。これは、前からなの? ここはどうしてこんなに静かなの?」


 訊くが、答えは返って来ない。


「それとも、よっちゃんがいなくなったから、こうなったの?」


 やはり答えはない。が、前からこうだったと言うよりは、よっちゃんがいなくなってからなのではないかという気がしてきた。


 大切に育ててきたであろう娘が、死んでしまった。そのことが、この家から音を奪ったのではないだろうか。だとしたら、どうしたらこの家は、元に戻るんだろう。


(この怖い状況を変えるには……)


 よっちゃんに一言、言ってもらえばいい、と思ったが、すぐに打ち消した。よっちゃんは、私の頭の中に話しかけてくることしか出来ないようだから、それは無理だ。じゃあ、どうするか。


 しばらく考えた末に、一つ手立てを考えついた。


(決めた。やってみよう)


 ベッドから勢いつけて起き上がると、制服を着替え始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ