第二十四話 真相
「付き合い始めてから彼女と深い関係になるまで、そんなに時間は掛からなかったよ。今は全然だけど、その時はそうしたくてしょうがなかったんだよな。若かったし。
彼女も嫌がらないで、オレのことを受け入れてくれたんだ。そして、半年くらい経った時、彼女は死んでしまった。自死。
何でそんなことになったのか、オレは全く知らなかった。ただ悲しんでいた。だって、その頃には彼女を本当に好きだったから。
葬式が終わってからね、彼女の親友に詰られた。あんたのせいだって。彼女は悩んでたって」
何があったのか、何となくわかった。
「先生。いいよ。言わなくて。つまり、彼女のお腹に私のいとこがいたってことなんだよね」
「そう。オレには言えなくて、たぶん親友にしか話せなかったんだろうな。だけど、どうしようもなくって、ああいう結果を迎えたんだろうと思う。オレのせいで……彼女は死んだ」
先生は、また黙った。お茶を飲みながら辛そうな表情。そんな人を、誰が責められるだろう。私には出来なかった。
「先生。もういいよ。よっちゃんは、怒ってないと思う。ここによっちゃんを呼べたらいいんだけどさ、私は霊感とか全然ないから、無理だよ。ごめんね」
先生は首を振った。
「今度また気配を感じたら、先生に何か言いたいことがあるか、もう一度訊いてみるよ。何か聞けたら先生に伝えるよ」
「わかった。ありがとう、深谷野さん」
「じゃあ、先生。もう行くよ」
立ち上がってから、少し紅茶が残っていたのに気が付いて、座らずにそのまま飲んだ。伝票を見ようとしたら、制止された。
「オレが払うから。聞いてくれてありがとう。やっと少し楽になった」
先生は、小さく笑った。少しは重荷を下ろせたんだろうか。
「先生。あんな演技、やめてもいいよ。身内の私が言ってるんだから。先生は、ちょっとストイック過ぎる」
「ストイックだったら、あんなひどいことしてないだろう」
自分を責めるように言った。私は、首を振った。
「先生。自分を許してやりなよ。もう、十年くらいそんな気持ちでいてくれたんだろう。充分だよ。ありがとう。よっちゃんは、絶対怒ってないよ」
切ない声だった。よっちゃんは、きっと今でもその人のことが大好きなんだな、と思わされた。が、それは先生には伝えない。これ以上、先生に重荷を背負わせたくない。
「じゃあね、先生」
手を振って店をあとにした。まだ、風が冷たい。思わず身震いした。
ただの変な先生だったら、どんなに良かっただろう。まさかこんな展開になるとは。身内としては、あるいは女としては、ちょっと複雑な気持ちだ。
心が重くなり、家までの距離がすごく長く感じられた。




