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洋館の記憶  作者: ヤン
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第二十二話 恋人

 私は、呼吸を整えてから話し始めた。


「えっと。一昨日、私が住んでいる家のことを言ったら、先生、すぐに帰っちゃったでしょう。うちを知ってるんだなと思った。それでさ、昨日から今朝にかけて、家でいろいろあって」


 写真を取り出そうとカバンの中を探っていると、『なかた』さんがお茶とケーキを持ってきてくれた。


「ごゆっくり」


 『なかた』さんは、私たちに礼をすると静かに去って行った。そのおいしそうな物を目の前にして、お腹が小さく鳴った。恥ずかしい。私は、ごまかすように、少し大きめの声で、


「先生。とりあえず、これ食べてもいいかな」


 先生はふっと笑って、「どうぞ」と促してきたので、遠慮なく食べ始めた。


「これもおいしい。優しい味がする」


 先生は微笑みながら、私がケーキを食べているのを見ていた。食べ終わって満足すると、今度は紅茶を飲んだ。それで、ようやくお腹が落ち着いた。


「じゃあ、話すよ。先生。下の名前、何だっけ?」

俊也(としや)

「だよね。先生に聞きたいんだけど。嶋田(しまだ)良子(よしこ)を知ってるよね?」


 質問の形ではあったが、あの写真を見たのだから、間違いなく知っているとわかっている。道理で、嶋田の名前を聞いた時、何か知ってるんだろうと思わせるような行動を取るはずだ。しかも、よっちゃんの死に関わっているからこそ、知ってるよ、と安易には言えなかったのだろう。先生の顔色が青くなったように感じた。


「やっぱり知ってるんだよね。そうだろうね」


 カバンから出した写真を、先生に見せた。先生は、意外にも懐かしそうな顔をして、それを見ていた。そして、小さく、「良子」と言った。それから、先生は、紅茶を何口か飲むと、私をまっすぐに見て言った。


「恋人だったよ」

「だよね。だって、よっちゃんが先生を呼んでる声が、何ともせつない感じだったから。あ。私、馬鹿だ。言わないつもりだったのに」


 先生が驚きの表情に変わったのを見て、心の中で舌打ちした。


「良子と、話したのか?」

「えっと。はい。そう。話したと言うか、彼女の声を聞いただけだけど」


 先生は、混乱した表情で私を見ていた。

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