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洋館の記憶  作者: ヤン
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第二十一話 待ち合わせ

 授業が全て終わり、ホームルームも終わると、すぐに私は立ち上がった。悠花(ゆか)が私の腕をつかむと、笑顔で言った。


「一緒に帰ろう」

「今日はダメ」


 即答すると、悠花は「えー」と不満な声を上げたが、それを芽衣子(めえこ)が止めてくれた。


「悠花。(かおる)は、これから行くとこがあるんだから、邪魔しちゃダメだ」

「一緒に行きたいな」

「ダメだろ、それ」


 私は、芽衣子の言葉に深く頷いた。


「とにかく、今日はダメ」


 重ねて言った。悠花は、上目遣いで私を見たが、「ダメ」ともう一度言うと、「わかったよ」と言ってくれた。私は、教室を出ると、走り出した。先生が、そんなに早く来るかはわからない。来てくれない可能性すらある。それでも、急いでしまう。気持ちが焦っていたのだと思う。


 アリスまで、ほとんど走り続けた。よくそんなことが出来たと、我ながら感心した。中に入ると、やはり『なかた』さんがいた。彼は微笑すると、「いらっしゃいませ」と言ってくれる。本当にきれいな人だ、と改めて思った。


「待ち合わせなんです。例の人と。すごく仲良しみたいですけど、別にそうじゃないんです」

「そうですか。じゃあ、先生の好きな、あの席へどうぞ」


 先生は、いつも、この前座っていた席に座るらしい。そこにこだわりがあるのだろうか、と気になったが、すぐに、まあいいか、と思い直した。考えても仕方ない。


 席に着いて、少しすると、先生が来た。先生は、私に気が付くと軽く手を上げてこちらに歩いてきた。そばに立つと、


「待たせたね」

「いや。そうでもないよ」

「でも、君の方が先に来てたんだから。勝手にここを指定したのに、来てくれてありがとう」

「私が、話したいことがあるんだから、来るよ」


 先生は、私の正面に座った。メニューを見ていると、『なかた』さんがお冷を持ってきた。


「先生。すみません。今日は、コーヒー豆を切らしているので、お出し出来ません」

「えっと。そんなはずないでしょう」

「本当なんです、先生。ですから、他の飲み物をご注文下さい」


 先生は、呆気に取られていたが、私は、その言葉の意味を理解した。先生に、コーヒーを飲ませたくない、そういうことだろう。先生は、首を傾げたが、


「じゃあ、ダージリンティーを」

「それを二つ」


 先生の言葉にのっかった。


「それから、フルーツケーキをお願いします。母がこの前食べてるのを見て、おいしそうだな、と思って」


 『なかた』さんは、注文を復唱するとカウンターの方へ行ってしまった。先生は、お冷を口にすると、私を見つめ、


「それで? 話って何?」


 真剣な表情で、訊いてきた。

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