【野球】犠牲バント【baseball】
だれだって主役になりたい。
でも、チームの勝利のためあえて自らが犠牲となる。
そんな戦い方、嫌いになれません。
セイバーメトリクス的なアレコレでは、犠牲バント戦術は得点効率が悪いと評価されていますね。せっかく犠牲になってくれたのに、それが逆に得点から遠ざかっているんだぜという研究結果から、最近の野球界では犠牲バントが多用されなくなっています。わたしも個人的に犠牲バントは「わざわざやんなくていいんじゃね?」的な立場の人です。まあ「状況による」という都合の良い言葉を枕詞に使っちゃうんですけど――仮に日本の野球人全員にアンケートをとったとして、全体のどれくらいが『バント戦術はナシ』派なんでしょうかね。
さて、今回は野球のお話。スポーツの世界で我が身を捧げる犠牲にまつわるお話をしていきましょう。
野球において『犠牲』になる打球は2種類あります。
① 犠牲バント
② 犠牲フライ
犠牲となる打球は『犠打』と表現されますが、これ厳密には『犠牲バント』を表しており、『犠牲フライ』は『犠飛』と表記されることもあります。
どちらも『自らが犠牲となり、塁上の走者をさらに先へ進ませる打球』ですね。自身がアウトになるため2アウトではできない戦術です。たとえば『2アウト2塁』という状況でバントをした場合、それは自らも生きてやるっていうーセーフティーバントを仕掛けたことになりますね。場合によりますが、犠牲が成立する状況でも『自らが生きるためのバントであることが明らかだ』と受け止められた時、記録員は凡打を記録する場合もあるそうです。
犠牲バント・犠牲フライは公認野球規則の『9.08』で記述されています。基本的に『0、1アウトで走者が進塁』すれば犠牲が成立する流れ。ただ細々とした注釈があったりしますので、今回は『②』に関するお話をやってきましょう。
バント(Bunt)は野球の定義13で『バットをスイングしないで、内野をゆるく転がるように意識的にミートした打球である。』と記述されています。
ミートです。バットを寝かせてとか、当てるだけなんて記述はありません。なので、たとえバットを振っていたとしても審判が「内野をゆるく転がるように意識的にミートしたな?」と判断すればそれはバントになります。以前審判が「それ以上続けるならバント扱いにするぞ?」と注意したカット打法が記憶に新しいですね。
犠牲バントの記録は守備によって変動する場合があります。たとえばフィルダースチョイス(野手選択)で自身もセーフになった場合、これは犠牲バントが記録されます。例外として、野選でも『普通の守備でも一塁をアウトにできなかった』と記録員が判断した時は単打(安打)が記録されます。
珍しいパターンとしては、守備が他の塁に送球しようとして断念し、やっぱ打者走者を殺そうと一塁へ送球したもののセーフだった場合、これも単打(安打)が記録されます。
内野にうまく処理され他の走者(複数いたとしても)がアウトになった場合、これはふつーの内野ゴロと同じ扱いになりますね。つまり犠牲バントは記録されず、記録上『○ゴ』的な感じになるでしょう。
エラーにより走者が生きたと判断された場合、エラーが記録され犠牲バントにはなりません。ただし犠牲バントが成立後、エラーでさらに走者進塁があった時は『犠牲バント + エラー』が記録されます。
犠牲バントが成功した場合、それは『打席』としてカウントされません。つまり――
・打率、出塁率には影響しない
アベレージヒッターにはうれしい処理ですかね。データ野球ではあまり評価されない犠牲バントですが、まったく使われないなんてことはありませんね。プロ野球でもふつうに見られますし、とくにセ・リーグでは投手が打席に立つため犠牲バントの使い所が問われることになるでしょう。
まあ、全員桑田真澄選手並の打撃だったらいいんですけど。
通常、走者を進めるバントは犠牲バントと称されますが、サードランナーを生還させようってバントは『スクイズバント』と呼ばれています。1点を争う場面であり、打球と最も近いベースへ突入しなければならないため、走者は必ずスタートし、バッターは必ず当てに行かなければありません。わりと博打的な作戦ですが、だからこそスクイズが発生した場面はなかなか燃える展開だと思います。
犠牲バントの日本記録っていうか世界記録保持者は、読売ジャイアンツ・中日ドラゴンズで活躍した『川相 昌弘』選手です。縁の下の力持ちとして、プロ野球生涯533本の犠牲バントを決めたまさに『バントの神様』ですね。だれもが「これ絶対バントするわ」と知ってたのにバントを決めてくるとかね、ほんとどうしようもないですわ。実は打撃も守備もすごかったというのはあまり知られてないトリビア。
今後データ野球が広まるに連れ、どんどん犠牲バントを使うチームが減っていくことでしょう。それでも犠牲バントは強かな戦術として残り続け、逆に『滅多に仕掛けられないこそ刺さるキラー戦術』になるかもしれません。使わないからって練習しない、なんてことな無きようご注意ください。バントはボールを見据える良い練習にもなりますよ。
今回は犠牲バントオンリーで書いていきましたが、近いウチ犠牲フライも紹介してみたいですね。実は犠牲バントにないイロイロな特徴を備えていたりするので、ぜひとも知ってほしい知識であり、戦略なのです。
自らを捧げる犠牲。とはいえ、これを極めればアナタが主役になるかもしれません。ただの練習としてだけでなく、試合でも使えるバントを練習してみてはいかがでしょうか?
現役時代はバントがヘタでして、ええ……サインは一度も出ませんでした。
オクリバントの鬼になりたい。




