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Hope〜希望を信じて〜  作者: 伊澄 ユウイチ
吉塚小隊と玲奈
78/80

恐怖の模擬戦

 湯煙のぼる大浴場で昔話を聞いた遼は、信じられないと言わんばかりの驚いた表情を浮かべた。


「姉貴が泣いた? 意外だな……」


「その日以降、俺は抄さんが涙を流しているところを見たことがない」


 昔話を終えた仁が、優しい笑みを浮かべて遼を見つめる。


「深く落ち込んだ後の抄さんは、別人のような動きで他人を圧倒していたぞ。お前もそうであることを信じているぞ」


「……あまりプレッシャーをかけるなよ」


 仁の言葉に対して遼は笑みを浮かべる。


「桜井く~ん。遼く~ん」


 聞き覚えがある声に反応した2人は、キョロキョロと辺りを見渡す。そして、遼が男湯と女湯を仕切っている壁の天辺に目を向けると、声の主はそこにいた。


「あ……ああ!!」


「西原どうした? ……は?」


 すかさず仁も遼が見つめる先に視線を移すが、視界に入った人物を見て体が硬直し、思考が停止する。


「9年間守ってきた約束を破るなんて良い度胸してるね。それも聞かれたくなかったヤツに言うなんて」


「あ、姉貴!?」

「抄さん!?」


 バスタオル姿の抄が、鋭い眼光で男湯を覗いていた。


「覚悟は出来てるんでしょうね?後で2人とも異次元電脳チャンネルに来い。たっぷりいじめてあげるから」


 一方的に言葉だけ残して、抄は姿を消す。


 遼と仁は金縛りに遭ったかのように、その場からしばらく動けずにいた。


「……マズいな」


「何で俺まで……理不尽すぎる。やっぱりクソ姉貴だ……」



 ======



 水澤小隊部屋にて、数日前に行った詩織の訓練を何度も見返した玲奈が、顎に手を当てて深くため息をついていた。その横で、不安げな表情を浮かべる詩織は、終始口を開けることなく、玲奈の言葉を待った。


(ずっと私の訓練映像見ているけど、大丈夫かな?)


「……何不安そうな顔しているの?」


 玲奈は視線を映像に向けたまま、詩織に声をかける。急な玲奈の発言に驚いた詩織は、思わず体をビクつかせる。


「本当に強くなれるのか心配しているの? それとも私の心配?」


「……両方だよ。玲奈ちゃんご飯も食べてないでしょ?」


 玲奈はナノマシンを操作して現在時刻を確認し、軽く首を傾げる。


「19時半……真剣に物事考えていると時間が経つのが早いね」


 その時、玲奈の腹部からけたたましい音が鳴り、その音と同時に玲奈が机に顔を伏せる。


「……流石にお腹空いた」


 詩織はクスクスと笑い、キッチンに足を運ぼうとする。


「待ってて。今何か作ってあげるから」


 ピクリとも動かなくなった玲奈に構うことなく、詩織は料理を作り始める。


 そして数分後。


 玲奈の顔の横に、ラーメン、焼き飯、酢豚が湯気を立てて並ぶ。匂いに反応した玲奈は勢いよく顔を上げ、合掌する。


「いただきますッ!!」


 勢いよく食べ物を口に運ぶ玲奈を見て、詩織はオドオドしながら声をかける。


「そんなに急がないで。喉詰まっちゃうよ~」


 しかし、玲奈の食べるスピードは落ちることなく、あっという間に全ての料理を平らげてしまう。


「ふい~。ちょっと足りないけど、美味しかったからいいや。ご馳走様」


 再び玲奈は合掌して、作ってくれた詩織に感謝した。


「お、美味しかったなら良かったよ」


 詩織は苦笑いを浮かべて、食器を下げようとする。その時、玲奈が椅子にふんぞり返って詩織にある提案をする。


「詩織さ~」


「何? 玲奈ちゃん?」


「色々考えたけど、あんた近距離武器、コレにしてみれば?」


 玲奈は液晶端末に映し出された画面を、詩織に突きつける。


「何? ……これって」


 画像を見た詩織は目を丸くし、反応を見た玲奈は微笑む。


「今後の予定を言っておくね。昇級試験前日に遼と模擬戦をしてもらうよ」


「遼くんと?」


「ルールは当日伝えるよ。模擬戦までに、その武器に慣れてもらうから、明日から覚悟してね」


「明日からって……この武器すぐに用意できるの?」


 玲奈は自慢げな表情を浮かべて、詩織に言葉を返す。


「すぐに用意してくれるよ」


「その用意する人は忙しくてイライラしているんだけどな~」


 小隊部屋に突然現れた穂香に驚いた玲奈は、椅子から転げ落ちる。


「うぇ!? 穂香さん!? いつからいたんですか?」


「今日はずっと小隊部屋の個室にいたよ。あのクソ部長が余計な仕事を私に押しつけてきたせいで……仕事くらいしろよ、クソ部長が」


 ボソボソと文句を言いながら、冷蔵庫に向かって歩みを進める。


「で? ちょっと話を聞いていたけど、武器を用意して欲しいんだって?」


 冷蔵庫の中身を漁りながら穂香は尋ねる。玲奈は椅子に座り直して、液晶端末を操作する。


「詩織のためにコレを用意して欲しいんですけど」


「ん?」


 穂香は牛乳をラッパ飲みしながら、玲奈が持つ液晶端末に目を向ける。


「シオリンに? ……へぇ。この武器を選んだ根拠は?」


「腕の振りが良かったからです」


「他には?」


「これ以上は言えません。続きは模擬戦当日を楽しみにしてください」


 穂香は頬を膨らませて「ケチッ!」と言いつつも、武器の準備を了承する。


「明日まで? 朝一は無理だけど、昼頃になら準備できるよ」」


「ありがとうございます」


 玲奈はニッコリと笑って穂香に感謝の言葉を送り、詩織はペコリと頭を下げる。


「準備する代わりに、模擬戦観戦させてもらうからね」


 穂香は苦笑いする詩織を指さし、得意げな表情を浮かべる。


「期待に添えて見せます」


「それじゃあ、軽く体動かして休もうか」


「軽く体を動かす? どういうこと? 玲奈ちゃん」


「どういうことって……そのまんまだよ。今日は近接訓練してないでしょ? 今からサッとやりに行くの」


 詩織の顔がどんどん青ざめていき、玲奈は真顔で詩織を見つめる。


「時間もないし、今日は私と模擬戦5本先取して終わろうか」


 訓練メニューを聞いた詩織は、地獄に落とされた感覚に襲われ、その場で倒れそうになる。


「さッ! 行こうか」


 脱力している詩織に構うことなく、玲奈は詩織を引きずりながら訓練棟に向かっていく。


 そして小隊部屋に取り残された穂香は、玲奈の液晶端末を手に取り、準備指示をしてきた武器の画像を見つめる。


「……自分と違うタイプの武器なのに教えられるのかな?」


「大丈夫でしょ?」


 突然耳元で聞こえた声に驚いた穂香は、思わず声を発した人物に手を上げてしまった。


「おっと! いきなり反撃だなんて危ないじゃない」


「真里!? 勝手に入ってきたの? って言うかいつからそこにいたの?」


「質問が多いね~。私に鍵なんて関係ないのは穂香ちゃんも知っているでしょ?」


「まあ、知っているけど……せめてインターホン押して入ってきなさいよ! ビックリしたじゃない!」


 真里は悪びれることなく、クスクスと笑い、口を手で隠す。そして真里の第一声が気になった穂香は、興味本位で真里に尋ねる。


「……それと、どうして大丈夫だと思うの?」


「何が?」


「玲奈ちゃんが自分の持っている武器と、違うタイプの武器の使い方をシオリンに教えようとしているの。少なくとも私は、玲奈ちゃんが的確に教えられるとは考えにくいと思っているんだけど」


 再び真里はクスクスと笑って、穂香に言葉を返す。


「最強の勘……って言っても納得しないよね?」


 穂香は呆れ顔を浮かべて、椅子にふんぞり返る。


「非論理的……私の前で二度と勘なんて言わないで」


「盛大なブーメランじゃない?」


 ニコニコと笑みを浮かべる真里を見た穂香はあることを思いだし、「しまった……」と声を漏らす。


「まあ、強いて言うなら」


 ニコニコ顔から真剣な表情に変わった真里は、低めの声で思いを述べる。


「私が戦ってみたいと思う隊員第1位ってことね」


「何それ?」


 穂香はくだらないと思って、フッと笑う。しかし、真里の言葉の本質を理解した穂香は真里の目を見つめる。


「……本気?」


「本気だよ」


 真里は近くにあった椅子に座り、ポケットからカフェオレを取り出す。


「玲奈ちゃんは最強の座を狙って私の前に立ってくるよ。近いうちにね」



 ======



 異次元電脳チャンネルで模擬戦を終えた玲奈と詩織は、チャンネル内で軽く反省会をしていた。


「腕を振った後に硬直しているよ。隙は出来るだけ無くそう。脚も止めちゃダメだからね」


「なるほど……」


 模擬戦の映像を見返しながら、メモを取る詩織。

 その時、玲奈の耳に何かが入り込み、周囲を見渡す。


「どうしたの? 玲奈ちゃん?」


「何か……聞こえる」


 詩織も耳を澄ませ、聴力に神経を集中させた。


「……た……けて」


「も……や……くれ」


 途切れ途切れの声がどこからか聞こえ、詩織も周囲を見渡す。


「ホントだ……何か聞こえる」


「なんて言っているか分からないけど、まあいいや」


 玲奈は構うことなく映像に目を向けようとするが、詩織は何かを感じ、体を震わせ始める。


「れ、玲奈ちゃん」


「何?」


「ここって電脳チャンネルの何チャンネル?」


「電脳チャンネル3」


「私たち……転送する前に存在人数確認したよね?」


「ん? 確か0人だったね。後から入ってきた人なんじゃないの?」


 詩織は玲奈の肩に手を置き、事実を突きつける。


「……途中乱入拒否の設定してたよね?」


 玲奈は記憶を掘り返し、転送前の設定を蘇らせた。すると玲奈の表情が一気に青ざめ、詩織に目を向ける。詩織は逃げるように電脳チャンネルから離脱し、玲奈も後を追うように離脱した。



 場所が変わり電脳チャンネル2にて、仁と遼が虫の息で地面に這いつくばっていた。


「師匠……たす……けて」


「姉貴……もうやめて……くれ」


「甘えたこと言ってんじゃないよ。まだまだだよ。オラ、立て。記憶飛ぶほど殴ってやるから覚悟しろ」


 殺気に満ちた瞳で、仁と遼を見下す抄は、拳をポキポキと鳴らす。


『誰か……助けて』


 抄の攻撃を食らった仁と遼の悲鳴が他の電脳チャンネルにも響き渡り、離脱した後の2人の顔からは生気が感じられず、死人のようだった。

いつもご覧になっていただき、ありがとうございます!


お待たせしました!

遅くなってしまってすみません!

プライベートなことがあって執筆に取りかかれませんでした笑。


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誤字脱字、文章的におかしな部分がありましたら報告お願いします。


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