表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Hope〜希望を信じて〜  作者: 伊澄 ユウイチ
吉塚小隊と玲奈
76/80

近距離指導訓練

 玲奈と仁に近接戦闘の戦い方を教わっている遼と詩織は、ホープ本部の外周を走らされていた。


「ぜぇ……ぜぇ……あのドSコンビめ……」


 息を切らしながらも、遼は玲奈と仁に対して悪態をつき始めた。


「頑張って、遼くん」


 並ぶように走っている詩織の表情は余裕すら感じられた。


「お前は何で……涼しい顔しているんだ?」


「持久走は得意だからね」


『コラー!! 喋る余裕があるなら周回増やすぞ~!』


 上空で2人の様子を見ていた玲奈が無線越しで怒鳴る。


「1周1㎞近くあるホープの外周走を、いきなり5周走れってのは無理だろ!!」


 怒鳴るように玲奈に無線を返す遼を、詩織は苦笑いを浮かべてなだめる。


『走る前に言ったよね? 近接戦闘は技術よりも機動力。文句があるなら私と模擬戦でもする? ハンデなしの』


「テメェ……あとで覚えてろよッ!! 玲奈!!」


「周回増やされるのはイヤだから、先に行くね。遼くん」


 詩織はスピードを上げ、遼を置き去りにする。


「あ! おい! 詩織!! 待てよ!!」


 必死に詩織に追いつこうとするが、遼の脚は限界が近く、スタミナも底をつきかけ、現状速度を維持するのでやっとだった。


 その様子を空から見ていた玲奈と仁は、今後のトレーニングメニューを考える。


「見立て通り、詩織は持久力があるね。瞬発生には欠けるけど」


「西原はしばらくの間、周回トレーニングが必要だな。最初ら辺に見せた軽い足取りを持続することが出来れば、そこそこの近距離戦闘が出来るんだが……」


 お互いに顔を見合わせて、軽く微笑む。


「予定通り、私が詩織に教えて、仁が遼に教える。問題ない?」


「構わない」


 玲奈はクスクスと笑って、緩く流れている風に乗り、上昇する。


「2週間後が楽しみだね」



 ======



「八色……光の壁」


 目を丸くする真里に対して言葉を返すこと無く、優一はコーヒーを飲む。


「八色って七色と違って、生きている人間じゃないと使えないはずなのに……ってことは」


「そうだ。ゴーストを操るフードの戦士は、生きた人間ってことだ」


「生きた人間が……どうして?」


 優一は残念そうな表情を浮かべながら、手に持っているコーヒーカップをテーブルの上に置く。


「理由が分かれば苦労はしないよ。意思がないゴースト相手ならまだしも、意思があって、同じ人間が敵だと知ったとき、隊員たちは戦意を喪失することなく、戦えるか不安だがな」


「宏大くんたちや抄ちゃんたちは大丈夫だと思うけど……」


「AAAランク以下の隊員がどうなるかだ」


 2人の間に数秒の沈黙が訪れ、2人は同時にため息をつく。


「面白そうな話をしているじゃないか」


 不意に話しかけてきた声に優一と真里は思わず身構える。


「悪い悪い! 盗み聞きするつもりはなかったんだ」


 優一は背後にいる人物に目を向ける。


「ふ……藤田さん?」


 2人の視線の先には、コーヒーの香り、味をじっくり堪能している藤田幸春の姿があった。


「よッ! あいさつが遅れてすまないね」


「いつからいたんですか?」


 優一は目を細めて、幸春を見つめる。


「君たちが注文する前から俺はいたよ。本部長や司令に内緒の話は、余所でやった方が良いぞ?」


「全部、聞いていたんですね」


 真里は苦笑いを浮かべ、優一はやっちまったと言わんばかりの顔を浮かべる。


「誰もいないと思って話していたのに……俺もまだまだだな」


「気にすんな優一~。ただ単に俺が陰薄いだけだ。お前の感覚は間違っちゃいないよ」


 優一と真里を無視して幸春はケラケラと笑い始める。


「出来ればとは言いませんが、さっきの話は……」


「分かってるって! 他言無用だろ?」


「……感謝します」


 優一はそそくさと会計を済ませてカフェから出て行く。真里は幸春に軽く頭を下げて、優一の後を追う。


「……人間が相手だとはね~」


 幸春はスーツの胸ポケットから煙草を取り出し、流れるように火をつける。

 そして肺に入れた煙を天井に向かって吐き捨てる。


「あまり時間がなさそうだな……事は慎重に進めるべき、か……」



 ======



 ホープ本部の外周を5周走りきった遼は、空を見上げるように寝転がっていた。


「何寝てるの?」


 空から降り立つ玲奈を、遼は睨みつける。


「見て分からないか? 疲れたんだよ!」


「何言ってんの。近距離戦闘の指導は、今から始まるんだから」


 遼は目を丸くし、玲奈の背後にいる詩織は、少し嫌そうな顔を浮かべる。


「マジで言ってるのか?」


「マジマジ」


 遼の近くに降り立った仁が無理やり遼の体を起こし、訓練棟へ連れて行こうとした。力を振り絞って抵抗する遼だが、仁の力に敵うはずもなく、ズルズルと引きずられる。


「さてと……遼は仁に任せて、詩織は私と一緒に訓練しましょう」


「訓練って……次は何するの?」


「取り敢えず、異次元電脳チャンネルに行って、近距離戦闘のみでゴースト100体倒す」


「ひゃ、100!?」


 驚きの表情を浮かべる詩織に対して、玲奈は軽くため息をつく。


「100体程度で驚いちゃダメでしょ? 実戦だと100体以上ゴースト出てくるんだから、この程度で音を上げてもらっちゃあ、困るよ」


 驚きのあまり詩織は言葉を失い、玲奈の手によって強制的に転送室に移動させられた。



 ======



 異次元電脳チャンネルにて、黙々とゴーストを殲滅する遼と詩織の姿を見て、玲奈と仁はメモ用紙にペンを走らせる。


 そして、仁が遼のある動きを見て、ペンを止める。


「……もしかして、西原……」


 仁の呟く声を聞き取った玲奈は、仁とモニターに映し出されている遼を交互に見る。ペンを止めた仁は軽く微笑んで、ペンを机の上に置く。


「何か分かったみたいだね」


「……ああ。悪いが、明日から本番前日まで、西原とマンツーマンで訓練をする」


 玲奈はスッと目を閉じて「どうぞ。ご自由に」と言葉を返す。


「そして最終日に西原と月影に模擬戦をさせる」


「……なるほど。どっちが2人を強くさせられるか勝負って訳ね」


 仁はニヤリと笑って、玲奈に言葉を返す。


「玲奈と月影には悪いが、西原が勝つ」


 仁の自信満々の表情を見た玲奈は、対抗心を燃やした目で仁を見つめる。


「相当な自信ね。仁と遼の泣き顔見るのを楽しみにしているよ」


 玲奈の言葉に対して仁は鼻で笑い、お互いの目を見て微笑み合う。


 その時、モニターから声が聞こえ、2人は同時にモニターに目を向ける。


『おい!! 100体以上倒したのに、まだ続くのかよ!?』


『玲奈ちゃん……流石に限界……』


 訓練を始めたときの動きに比べて、明らかに鈍くなっている2人の姿を見た玲奈と仁は、仕方なさそうな表情を浮かべて、訓練中止信号を電脳チャンネルに送信する。


「流石にオーバーワークだったね。今日は終わり。詩織、離脱して」


 玲奈の無線を受け取った詩織は、速やかに電脳チャンネルから離脱した。


「西原も終わりだ。離脱後、ちょっと俺に付き合えるか?」


 モニターに映し出されている遼は、少し首を傾げながらも、電脳チャンネルから離脱する。


「それじゃあ、先に上がらせてもらう」


「お疲れ様」


 玲奈はそのまま観戦室の椅子に座り続け、仁は足早に遼を迎えに行った。



 ======



「んで? 訓練終わったのに、まだ何かあるのかよ?」


 転送室のベッドの上でスポーツドリンクをガブ飲みする遼に、仁は液晶端末の画面を見せた。


「ん? 何だこれ?」


「お前の近接戦闘用の武器だ。色んな武器を想像していたが、お前のある動きでこれに決めた」


「ある動き?」


 キョトンとした表情を浮かべる遼にコクリと頷いた仁は、メモ用紙と液晶端末を交互に見て、遼の近接戦闘スタイルを提案する。


「西原、武器を投げろ」


「はぁ?」


「言葉が足りなかったな。無形武器の剣を投げて攻撃するのが、お前に一番合っていると思う」


「待て待て待てッ!! 端折られた説明されてもピンとこない! もう少し具体的に説明してくれ!」


 仁は仕方なさそうな表情を浮かべて、録画していた映像を液晶端末で見せる。手渡された液晶端末を凝視する遼は、ダサすぎる自分の動きを見て思わず目を逸らす。


「我ながら近接になると動きがトロいな……」


「目を逸らすな。大事な部分はもう少しだ」


 嫌々ながら自分と向き合った遼は、仁が目をつけたシーンを見る。


「あれ?」


「自分でも気づいたか?」


 映像を巻き戻し、もう一度見返すと、疲労でヤケクソになった遼が霊力で生成された剣をゴーストに投げつけていた。遼の手から離れた剣は、目で追えないほどの速さで、数体のゴーストの体を貫いて消滅した。


「俺こんなことしてたっけ?」


「ああ。武器を投げるなと注意しようと思ったが、意外な収穫に思わず笑ってしまったよ」


 何度も同じシーンを見続ける遼に、仁は隠れていた遼の才能を口にする。


「お前には人間離れした肩力がある。剣を振る腕力も悪くはないが、こっちの方がお前には合っている。シューターで狙い撃つ訓練もしているからコントロールも良い。どうだ? 俺の意見を取り入れる気はあるか?」


「結構、型破りだな。だが、俺は霊力量はそんなに多くないぞ。何本も無形武器を生成して投げることは出来ないぞ?」


 遼の発言に対して仁は軽く微笑み、落ち着いた口調で言葉を返す。


「勿論。これは奥の手に近い戦法。基本戦術も身につけてもらう」


「あ、やっぱり?」


「ただ、ブレーダーはシューターと違って剣を生成してしまえば、霊力を大幅に消費することはない。実際、七色を纏わせた霊力弾を放つより、霊力の剣1本の方が消費する霊力は少ない。中距離をメインとするお前にとっては、一番都合が良い戦術だ」


 自分に見合った戦術を見つけた遼は嬉しそうな表情を浮かべて、液晶端末の方に目を向ける。


「あと、お前や月影が他の人たちと同じ戦術をしても勝てないからな」


 他人よりも弱いと指摘された遼は一瞬にして表情を強ばらせ、液晶端末を思わず握りつぶそうとする。


「型破りで良いんだ。ダサくても良いんだ。強いと言われるのに形は関係ないんだ。お前はお前で強くなれば良いんだ」


 そして仁は遼に手を伸ばし握手を求める。


「あと2週間……いや、Aランクになるまで俺が臨時の師匠になる。望むか望まないかはお前次第だ」


 仁の真剣な眼差しを見た遼は、一瞬だけ視線を逸らすが、覚悟を決め、仁の手を握る。


「よろしく頼むぞ。臨時の師匠」


 仁と遼は互いに微笑み合い、遼はゆっくりとベッドから腰を上げる。

いつもご覧になっていただき、ありがとうございます!

そして更新が遅れてしまって申し訳ございません……。

ぎっくり腰でした……すみません。


さて、いつも通りにいきます!

続きが気になるという方はブックマーク登録よろしくお願いします!

評価や感想を送っていただけると今後の励みになります!

誤字脱字、文章的におかしな部分がありましたら報告お願いします。


これからもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ