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初実戦

 報告してくれた隊員に暁美は冷静に問いかける。


「数が2,000……ディスペアゲートの反応は?」


『いえ、確認されていません。恐らく遠方から来たと予想されます!』


 暁美は顎に手を当て、何かを一瞬考えてから状況確認を続けた。


「出動命令は出したのか?」


『はい! マニュアル通りにBランク隊員とCランク上位隊員に出動命令を出しました』


「Cランク上位……遼、詩織」


 内容を聞いた玲奈は視線を落とし、出動したであろう2人の無事を祈り始めた。その様子を見た優一は、暁美にある提案をする。


「暁美、ちょっと良いか?」


「なんだ?」


 暁美は横目で優一を見つめ、言葉の続きを促す。


「出動している隊員たちじゃ、2,000体のゴーストを撃退するには時間が掛かる。Aランク隊員の出動を俺は勧める」


「Aランクの出動? 何を考えている?」


「全員じゃなくて良い。ほんの数人で良いんだ」


 優一はニヤリと笑い、暁美は玲奈に目を向ける。暁美は優一の思いを察し、無線相手に指示を出す。


「追加命令だ。Aランク下位から5名を出動させろ。被害が広がる前にゴーストを殲滅しろ」


『了解しました! 直ちに出撃命令を出します!』


 無線相手は命令を受け取ると通信を切断し、Aランク下位5名に出撃命令を出す。その命令は玲奈のナノマシンにも届く。


「出撃命令?」


「そうだ玲奈。お前も今から出撃するんだ」


 横にいた優一が玲奈に声をかける。暁美は表情を崩すことなく玲奈を見つめ、芳香はコクリコクリと頷く。


「でも、ここから飛んでいっても間に合うかどうか……」


「誰が飛んで行けと言った?」


 暁美はスッと立ち上がり、自身の収納システムからフルフェイスのヘルメットを取り出す。そして玲奈にヘルメットを手渡した。


「これは?」


「私が開発したナノマシンと同期することが出来るヘルメットだ。それを着けてバトルサポートを起動すると、透明化し、視界もクリアになる。バトルサポートの弱点は頭だ。頭を守るためのヘルメットだ。ゴーストの霊力弾程度なら2発は耐えられる。さっさとそれを着けろ」


 玲奈はヘルメットを着け、バトルサポートを起動する。すると着けていたヘルメットは徐々に色を失い、玲奈の視界から消える。


「すごい、ホントに消えた」


「ちゃんと守ってくれるから安心しろ。それじゃ、健闘を祈る」


「え? 健闘を祈るって言ったって……」


 その時、玲奈の足下に黒い穴が現れ、吸い込まれるように玲奈の姿が消える。


「きゃあああぁぁぁ!!」


「暁美……移動手段の説明くらいしてから落としてやれよ」


 呆れた表情を浮かべる優一にも、暁美はヘルメットを手渡す。


「へ?」


「指揮権はお前に譲ってやる。お前も行ってこい」


 すると優一の足下にも黒い穴が現れる。


「ちょ! 暁美ッ!! 覚えてろよぉぉッ!!」


 優一の姿は消え、玲奈と優一を飲み込んだ穴はジワジワと消える。


「久しぶりに見たね。暁美の覚醒の能力」


 芳香が頬杖をついて暁美の顔を見つめ、見つめられている暁美は静かに座る。


「あの~、私はここに居ても良いんですか?」


 オドオドした表情を浮かべながら真里が暁美に声をかける。チラッと真里を見た暁美は、芳香にある提案をする。


「芳香さん。本当にホープに戻ってくる気はないんですか?」


 芳香は目を細くし、ため息をついて暁美に言葉を返す。


「何度頭を下げても一緒だよ。私は退いた身だよ。戻る気はないね」


 思い変わらない芳香を見て、暁美はスッと目を閉じる。


「……伊澄、喜べ。お前の望んでいた展開になるぞ」


 真里は首を傾げ、話の続きを促した。


「芳香さん。ここにいる伊澄真里は誰もが認める世界最強の戦士です。私が見る限り、芳香さんよりも強いと思っています」


 暁美の一言で芳香は眉をつり上げ、真里はさらにオドオドする。


「彼女が……最強? ……私より強い? ……プッ、アハハハハ!!」


 芳香は腹部を押さえて、涙を流しながら笑った。そして気が済むまで笑った芳香は、暁美を睨みつける。


「で? 私の目の前に最強を連れてきて何をさせたいの?」


「実力行使です。芳香さんが伊澄真里に勝てば素直に帰ります。ですが、伊澄真里が勝った場合、私たちと一緒にホープに行きましょう」


 芳香はオドオドしている真里に目を向け、ドスの利いた声で話しかける。


「暁美、あんたしばらく見ない内に人が変わったか? 実力行使とは穏やかじゃないね。あんたはどうなんだ? 私とやる気あんの?」


 暁美は目を丸くする真里を見て、そっと声をかける。


「伊澄。もう優一はここには居ない。思いっきり自分を出せ」


 すると真里の目つきが変わり、優しい目つきから鋭く睨むような目つきに変わる。


「……話は本部長から聞いています。私の前に最強者の称号を得た人間がいると……その人間が目の前にいるのに戦わない理由がない。望んでいたところですよ。最強者……水澤芳香」


 人が変わったかのように真里の言葉は冷たく、重圧感があり、殺気が混じっていた。その言葉を受け取った芳香は一瞬無表情になり、数秒後に笑みを浮かべる。


「……久しぶりだよ。言葉に殺気を感じたのは……良いよ、受けて立とうじゃない」


 芳香は勢いよく立ち上がり、暁美と真里を家の外に連れ出す。



 ======



「出撃準備!! 急げ!!」


 ゴーストが出現して隊員たちが慌ただしく動き始め、出撃準備を始める。


 遼と詩織は自分たちの隊服を身に纏い、実戦用のフルフェイスヘルメットを装着し、出撃する隊員たちと共に屋上で整列する。


「みんな聞け!」


 注目を集めたのは遼の師匠である劫火だった。


「今、本部長は席を外している。自分が代わりに指揮を執る。緊急のため作戦はないが、無事に帰ってくることを祈っている。それでは……総員、出撃!!」


 劫火の声に反応するかのように、全員霊力で生成された翼を広げ、思いっきり羽ばたかせる。Bランク隊員の上位が前を飛び、その他の隊員たちは後ろで控えるように飛んでいた。


「初の実戦……緊張するな~」


 詩織は大きく深呼吸し、気持ちを落ち着かせる。その様子を見ていた遼が詩織に声をかける。


「いつもの狙撃援護、期待してるぞ」


 詩織はニッコリと笑って前を見る。その時、2人のナノマシンに無線が入る。


『初の実戦で緊張してる?』


 聞き覚えのある声に、遼と詩織は瞬時に反応する。


『穂香さん?』


「一体どうしたんですか?」


 遼は穂香に無線を入れてきた理由を尋ねる。


『いや~優一くんからの面倒な頼み事でね。あなたたちの小隊にはサポーターがいないでしょ?』


 聞き覚えのあるワードに、遼と詩織は顔を見合わせ、眉をハの字にして詩織が言葉を返す。


「はい、確かにサポーターはいませんが……」


『もし、水澤小隊がサポーター不在で実戦になることがあったら、臨時でサポーターをやってくれって頼まれたの』


「穂香さんが……私たちのサポーター?」


 詩織はキョトンとした表情を浮かべ、遼は少し嫌そうな顔を浮かべる。


『遼くん、嫌な顔しない』


(音声のみの無線なのにバレた?)


 遼は周囲を見渡し、監視されているんじゃないかと警戒する。


『1人不在のようだけど、全力でサポートさせてもらうよ』


『お願いします!』


 2人は自然と、腹部から出た声で穂香に言葉を返した。


『数十秒後にゴーストと接触するよ。作戦なんてないから、恐らく乱戦になるよ。ブレーダー不在のあなたたちじゃ分が悪い。だから遼くんは他の小隊の援護に回って』


「了解」


 遼は穂香の指示を素直に聞き、隣で飛んでいた小隊に援護することを伝える。


『そしてシオリンは高さがあるビルの屋上に降りて、二色を纏って狙撃準備。撃てるタイミングがあったら、じゃんじゃん撃って。だけど、居場所がバレないように、数発撃ったらその場から離れてね』


「分かりました!」


 指示を受け取った2人は再びお互いの顔を見て、コクリと頷き合う。そして武器を携え、大きく息を吐く。


『来たよ。戦闘開始!』


 穂香の言葉と同時に2人は指示通りの動きを始める。


 遼は他の小隊の後ろにつき、背中を守り始める。近づいてくるゴーストに銃口を向け、四色を纏わせた銃弾を放ち始める。


「うおおおぉぉぉ!!」


 遼の放った銃弾は1発も外れることなく、ゴーストを消滅させていく。そして前を進む小隊の隊長が、ゴーストと鍔迫り合いになったとき、一瞬にしてゴーストの頭部が吹き飛び、消滅する。


『シオリンやるね~』


「ただ狙ったところに引き金を引いただけですよ」


「2人とも感謝する! 引き続き頼む!」


 援護している小隊の隊長が遼と詩織に感謝の言葉を贈る。2人は軽く微笑んで、声を重ねて言葉を返す。


『任せてください!』


 穂香のサポートもあり、2人は危なげなく戦場を飛び回る。とてもCランク上位の動きとは思えない2人の動きに、他の隊員たちは意識し始める。


「あのCランク隊員……」


「どこの小隊の奴らだ?」


 各々、サポーターに情報を集めてもらって、2人をチラチラと見る。


『Cランク隊、水澤小隊のシューター、西原遼くんとスナイパーの月影詩織さんよ』


「水澤小隊?」


 詳細を耳にした隊員たちは戦闘に集中しつつも、2人の動きに注目していた。


(Cランクでこの動き……)


(しかも隊長不在の中でも冷静に動けている……)


(大した新人だな)


 先輩隊員たちはフッと笑って、2人と同じ、Cランク隊員からは心強いと思われ始めた。


 そして本部から、ゴーストの数が2,000体と通達され、Aランク隊員数名が加わることを耳にした隊員たちは一斉に「了解!」と言葉を返した。遼と詩織も、気を緩めることなく通達に言葉を返し、ゴーストを倒し続けた。


 しかし、窮地はいきなり訪れた。


『遼くん! 危ない!』


 遼は瞬時に周囲を見渡すと、ゴースト数体に囲まれていた。機動力を維持したかった遼だが、やむ得ず地上に降下した。ゴーストは遼の後ろにつき、地上まで追いかける。一足先に地上に降り立った遼は、地面に手を付き、ニヤリと笑って、自分の足下周辺に大きな赤い円を描く。攻撃に気づいたゴーストは引き返そうとするが、時既に遅し。


「一色・炎柱!」


 遼を中心に、炎の柱が発生し、それに巻き込まれたゴーストは低い声を上げて消滅していく。数秒後に炎の柱は消え、遼は空と地上を交互に見る。


(地上で戦っている人の方が少ない……このまま地上戦を続行か?)


 一瞬の隙を見せた遼の背後から、ゴースト数体が襲いかかろうとした。しかし、攻撃が遼に当たる前に、そのゴーストは消滅した。


「……罠張ってて正解だったな」


 遼は師匠である劫火との訓練を一瞬思い出す。

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