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変わる戦況

 中距離・シューターの戦い方を、劫火から教わる遼は頭がショート寸前だった。


「あ~、わけ分かんねぇ。組み合わせとか、七色によって狙う場所とか全部理解できねぇ……」


 シューターの戦い方に慣れない自分に苛立つ遼に、劫火は優しく対応する。


「気を落ち着けろ。シューターが取り乱すのは一番やっちゃいけないことだ。一度頭の中を空っぽにしてみろ」


 遼は深呼吸を数回行い、気持ちを押さえ、心拍数を下げる。


「少しは落ち着いたか? ゆっくり教えてあげたいところだが、ゴーストは待っててくれない。次に進むぞ」


 遼は一瞬嫌そうな顔を浮かべるが、劫火の鋭い眼光が遼の瞳を貫く。一瞬凍り付いたかのように体が動かなくなった遼は、仕方なさそうな顔を浮かべる。


 劫火は遼に液晶端末を手渡し、ある映像を見せた。


「……これは、模擬戦?」


「そうだ。Aランク隊員の模擬戦だ。Aランク隊員以上になると、霊力弾を撃つ以外の戦い方をしてくる奴がいる」


「撃つ以外の戦い方?」


 液晶端末に映し出された模擬戦が再生される。


 隊員2人はお互いに距離を詰めないように、牽制しながら霊力弾を放ち始める。物陰に隠れながら、相手の急所ではなく、足や腕を狙い、確実に仕留める戦法をとる。


「流石Aランク……足が止まっていない」


「本題のところではないが、良いところに気がついたな。シューターはブレーダーと同じくらい動くのが基本だ。特に飛び交う銃弾の中動くのは一見危険に見えるが、相手の射線から離れるには重要なことなんだ。腕があるシューターの前で足を止めてしまうと、一瞬で蜂の巣にされてしまうぞ」


 自分の体が穴だらけになるのを想像した遼は、一瞬体に寒気が走り、背筋を無意識に伸ばす。


「お互いに動きながら撃っていては当たる弾も外れてしまう。そこで、相手の動きを止めることが出来る戦法がこの後流れる。よく見ていろ」


 劫火に言われるがままに、遼は映像を凝視する。


 ある隊員が跳ぶように移動し、相手の銃弾をかわし続ける。そして隙を見ては反撃し、相手の行動を制限する。行動を制限された隊員は反撃することが出来ず、物陰に隠れ続けた。


 反撃してこないと察した隊員はチャンスだと思い、隠れている相手に近づく。しかし、その物陰には隊員の姿はなく、足下には赤いサイコロのようなものが、数個散らばっていた。赤いサイコロを見た隊員は「ヤバい!」と口にするが時既に遅し。その場から離れようとした瞬間に、赤いサイコロが爆発し、隊員の下半身が吹き飛ぶ。


 上半身だけになった隊員に追い打ちをかけるかのように、上空に逃げていた隊員が銃弾の雨をお見舞いする。為す術なく被弾し続ける隊員は、強制的にその場から離脱させられた。


「こ……これは?」


「地面に落ちてた赤いサイコロみたいなものが見えたか?」


「はい」


 劫火は映像を巻き戻し、遼に赤い謎の物体を確認させた。


「これは一色だ」


「一色? 銃弾や武器に纏わせるあの一色ですか?」


「そうだ。七色の主な使い方は銃弾や武器に纏わせる。しかし、霊力の使い方をより深く掘り下げると、トラップとしても使うことが出来るんだ」


「罠……ですか」


「深くは考えなくて良い。頭の使うような七色の応用だが、お前なら出来る。俺の弟子なんだからな」



 ======



(無差別に襲ってくるゴースト相手なら、俺の罠でも通用したか……)


『遼くん良い判断だね。着地した瞬間に罠を仕掛けるなんて』


 遼の視覚情報を見た穂香は、思わず感心する。


「いえ、まだまだです。爆風に巻き込まれたくないと思ってしまい、四色を使った罠はミスでした。少数のゴーストだったから成功しただけで、数が多かったら一色を使った方が良かったです」


『ミスでも何でも良いから無傷でいれたことに喜びなさい』


 遼は少し微笑んで、穂香に「そうですね」と言葉を返す。


 遼が七色を応用した罠を使ったのを見ていた他の隊員たちは、負けていられないと奮闘し、残っているゴーストを徐々に殲滅していく。


「Cランクのルーキーに負けるな! 俺たちもゴーストを殲滅するぞ!」


「先輩の意地を見せるぞ!」


 本部から飛んできたAランク隊員4名も合流し、2,000体いたゴーストは、残り300体にまで減っていた。


「Aランク隊員も来て、大分減ったな」


「遼くん、油断しちゃダメだよ」


 詩織はスコープを覗き込み、遠くにいるゴーストに狙いを定める。しかし、詩織の背後に3体のゴーストが忍び寄り、襲いかかろうとする。


「後ろ!? この距離じゃ……」


 遠距離武器、ホークの銃口をゴーストに向けるが、対処が間に合うか、微妙な距離まで迫ってきていた。


「詩織!!」


 遼は翼を広げて、詩織のいるビルの屋上に向かって飛翔した。しかし、ゴーストの動きは止まることなく、間に合わないと2人は諦めかけていた。


「そこまでですよ」


 頭上から聞こえた声と共に、青白い銃弾数発がゴーストに的中し、消滅する。そして、声の主は詩織の前に舞い降りる。


「み、三上くん?」


「久しぶりです、お嬢さん。損傷している場所はありませんか?」


「三上隼人? 何でお前が?」


 遅れて屋上に辿り着いた遼は、隼人の姿を見て、目を細めた。


「仲間でもあり、女性でもある月影さんがピンチだというのに、君は一体どこで何をしていたんですか?」


 相変わらず鼻につく隼人の話し方に、遼は額に血管を浮き出させながらも我慢しながら会話する。


「詩織を助けてくれてありがとな……」


「んー、顔が素直じゃないですが、その言葉は受け取っても嫌な気はしませんね」


 遼は眉をヒクつかせ、殴りたい気持ちを懸命に抑える。


「三上くん、助けてくれてありがとう。遼くんも来てくれたし、もう大丈夫だから、他のAランクの人たちと連携組んできて」


「僕の立場を気遣ってくれるなんて……やっぱり君は優しい人だね。僕の目に狂いはなかったよ。安心して。僕に下された命令はCランク隊員の援護だ。君を命に代えても守るよ」


「結構だ。詩織は俺が守る。お前はどっか行け」


 引きつった笑顔のまま、遼は隼人を追っ払おうとする。隼人は呆れ顔を浮かべて、遼に言葉を返す。


「やれやれ、実力もないのによく言うよ」


「なんだと!?」


「なんだい? あの罠は? 自分の背後にしか仕掛けていなかったじゃないか。自分の思っているとおりにゴーストが動くと思っているなら、大間違いだよ。罠は他の隊員の邪魔にならないように、数多く仕掛けるのが常識だよ」


 言い争っている最中に、遼の背後を狙いに来たゴーストが、突如発生した爆発により消滅する。


「何!?」


 遼は驚きの表情を浮かべ、隼人は自慢げな顔になる。


「こんな感じにね」


「……クソッ!」


「三上、Cランクの援護も良いが、そろそろゴーストに追い込みかけるぞ」


 他のAランク隊員が隼人に声をかける。隼人は「やれやれ」と呟き、翼を広げて飛び立つ。


「月影さん。いざとなったら大声で僕の名前を呼んでね」


「あ……あはは……」


 詩織は苦笑いを浮かべ、遼は相変わらず額に血管を浮き出させていた。


「あまりあいつと喋るな。どこに連れて行かれるか分からないぞ」


「はいはい。分かりました……遼くんも来てくれてありがとう」


 遼は少し照れながら、詩織から目を逸らす。


「当然だ。仲間だからな。玲奈が来る前に死ぬんじゃないぞ」


 詩織はニッコリと笑い、遼は翼を広げて、再び空に舞い上がる。



 ======



 ホープの司令室では安堵の声を上げる者がいた。


「Aランク隊員の参入もあって、思ったより早く殲滅できそうですね」


「ああ。だが、油断はするなよ。隊員たちにも伝えろ」


「はい!」


 その時、司令室の自動ドアが開き、ある6人が部屋に入ってくる。


「レジェンドのみなさん!! お疲れ様です!」


 司令室にいる全員が、レジェンドランク6人に敬礼する。


「まあまあ、堅苦しいことするな。戦闘中なんだろ? 戦っている隊員たちに指示を出してやれよ」


 赤一色の服を身に纏う男、宏大が笑いながら隊員たちに敬礼をやめさせる。


「お前は少し見習え」


 宏大に向かって冷ややかな視線を送る霊斗は、軽くため息をついた。ムカついた宏大は霊斗に言葉を返すが、霊斗は相手にしなかった。


「本部長が不在のため、この戦闘の指揮は俺たちが執る……と言いたいところだが、もう終わりそうだな」


「はい。ほんの数十分前に本部長と連絡がつき、Aランク隊員5名に出撃命令を出しました」


 レジェンド全員がモニターに目を向け、Aランク隊員全員の姿を確認する。その時、伊澄小隊に所属している静佳が、あることに気づく。


「あれ? 5人に出撃命令を出したんだよね? 4人しかいないけど?」


 司令室にいた隊員たちがAランク隊員の頭数を数えると、静佳の言うとおり、4人しか出撃していなかった。


「あれ? 誰だ? 出撃していないのは?」


「……静佳、多分あいつだよ」


 腕を組んで静佳に声をかけたのは遼の姉、抄だった。


「あいつ? ……ああ! 水澤ちゃんか!」


「途中入隊して、Aランクをもらった水澤か……どういうことか知らないが、出撃できないなら返事をしてもらいたいものだな。まあ、来なくても終わりそうだがな」


 出撃命令を出した隊員が、椅子にふんぞり返り、呆れた表情を浮かべる。


『ゴースト残り100体です』


 現場にいる隊員から無線が送られ、司令室にいる隊員が応答する。


「よし、もう少しだ。気を抜くなよ!」


 その時、司令室に警告音が鳴り響き、一気に慌ただしくなる。


「警告!? どういうことだ?」


「大変です! 戦闘区域上空に、ディスペアゲートの反応を検知しました!」


「なんだと!?」


『報告! 上空にディスペアゲート出現! ゴーストの数が増えました!』


 現場からの報告もあり、警告が虚偽ではないことが確認される。


「ゴーストの数……出ます! これは……」


「どうした?」


「人型ゴースト、再び2,000体! 大型・獣ゴースト20体確認!」


 司令室にいる隊員たちは顔を青ざめ、どういう指示を出して良いか分からなくなる。


「ど……どうすれば……」


 その時、霊斗と静佳が動き、冷静に現場の隊員たちを動かす。


「司令室より、現場にいる各隊員へ。A・Bランク隊員は固まって行動しろ。Cランク隊員は無理な戦闘は控えろ。いざって時は撤退しろ」


「待機しているAランク隊員に出撃準備を促して。準備が出来た人から出撃させて!」


 2人の指示により、現場、司令室の混乱を防いだ。


『全力で、ディスペアゲートを破壊!』


 2人の声が重なり、隊員たちの思いが1つになる。


『悪いが、Aランク隊員の追加は不要だ』


 司令室に響く無線の声。その声の主は、レジェンド6人がよく知っている声だった。


「上空にナノマシン反応が2つ! モニター、出ます!」


 モニターが映し出したのは、翼を広げずに、降下している優一と玲奈の姿だった。


『ゆ、優一!? 水澤ちゃん!?』


そして優一は司令室に再び無線を入れる。


『これより、俺が戦場の指揮を執る』

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