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Hope〜希望を信じて〜  作者: 伊澄 ユウイチ
ようこそホープへ
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霊力変換 七色 その2

 昼食をがっつり食べた玲奈と仁は、玲奈の小隊部屋に戻り、七色の説明を再開していた。


「飯も食べたことだし、七色の続きを説明するぞ」


 資料を並べる仁の向かいに座る玲奈は、うっとりとした目で、今にも船をこぎそうな状態だった。


「おい! 眠くなってるんじゃない!」


「んはっ! ごめん、お腹いっぱいになったら眠くなっちゃった」


 笑いながら許しを乞おうとする玲奈に、仁は少し呆れる。


「ちゃんとしろ。それじゃあ、五色目の説明をするぞ」


 玲奈に液晶端末を渡し、録画の続きを見せた。


 隊員たちは地上に降り立ち、駆け回りながら、中距離武器で攻撃し合っていた。そして、ある隊員の脚に銃弾が着弾し、被弾箇所が瞬時に凍り付き、隊員は動けなくなった。


「凍った……」


「五色は属性で説明するなら氷。中距離の銃弾に纏わせるのが主流の使い方だ。映像の通り、被弾するとその場所が瞬時に凍り付いて動かなくする性能を持っている。地面に着弾すれば、足場を悪くさせて、動きを鈍くさせることも可能だ」


「でも、ダメージ入ってないよね?」


 被弾した隊員の様子をじっくりと見た玲奈が、五色の弱点を見つけた。


「正解だ。二色と同じで攻撃性能はゼロに近い。だがサポートとして使うには申し分ない性能だ。それと、凍り付いた部分が損傷すると、当然その部分は氷とともに壊れる。腕や脚を失うと行動をさらに制限されてしまう。もしも凍り付いてしまったら、一色で自分の体に炎を纏わせて解凍しろ」


「対抗できるのは一色だけ、か……」


 映像はさらに進み、次の七色が出てくる。


 脚が凍り付いた隊員は、地面に手をついて、ある七色を発動させる。距離を詰めてきた隊員が斬りかかろうとした瞬間、動けなかった隊員が消えた。


「え?」


 そして次に姿を現した場所は、斬りかかった隊員の遙か後方にいた。相手を見失っている隊員の隙を突いて、脚を一色で解凍し、再び消える。


「どうなってるの!? 一瞬で消えたり、出てきたり!?」


「あれが六色だ。ありとあらゆる速さを、光の速度にまで上げることが出来る七色だ」


「光? ってことはあの人は消えたんじゃなくて、光の速さで移動したってこと?」


 消えているように見える隊員を見て、玲奈は仁に視線を送った。


「そうだ。消えているんじゃなくて移動しただけだ。銃弾や剣はもちろん、自分自身にも纏うことが出来る。銃弾や斬撃の威力が落ちる代わりに、光の速さ攻撃することが出来る。だが、これにも欠点がある」


 玲奈は真剣な眼差しで仁を見つめる。そして仁は映像に視線を向ける。


「欠点は威力が、なさ過ぎるところだ。二色や五色に比べてダメージは与えることは出来るが、スピードに偏っているため、威力は一色や四色ほどない。それに、自分自身に纏わせるとき、空中では使えない」


「なんで空中で使えないの?」


 正直な思いを仁に伝える。仁は静かにその答えを述べる。


「地上なら、自分の足を止めれば効力を失って止まることが出来るけど、空中だと何かにぶつかるまで、光の速さで移動し続けてしまう。たとえ、翼でブレーキを掛けても、減速しきれないことがある」


「なるほどね……空中では速度も重要だけど、コントロールの方がもっと重要だからね」


「流石に空の知識はしっかりしているな。ただ、狙撃でのブレが生じないから、狙撃手にはよく使われている。威力がないとはいえ、ダメージはしっかり受ける。使う相手がいたら警戒は怠るなよ」


「了解」


 映像を見たまま返事をする玲奈に、仁は最後の七色を説明する。


 六色を使用する隊員が、一気に相手との距離を詰めて、剣を横一線に振る。気配に気づいた隊員が剣で防御しようとするが、ある力に弾かれて、体が後ろに吹き飛ぶ。吹き飛ばされる隊員に追い打ちを掛けて、再度剣を振る。防御しようとするが、間に合わず、体を真っ二つに斬られて電脳チャンネルから除外された。


 そして、戦闘が終了した。


「何? ただ斬っただけじゃないの?」


 七色の最後が何なのか期待していた玲奈は、呆気にとられた表情で、真っ暗な画面を見続けた。


「確かに最後の一撃は七色を使っていなかった……だが、ちゃんと使っていたぞ」


「え?? いつ?」


 動画を巻き戻して、玲奈は最後の場面をもう一度見直す。しかし、玲奈の目には七色が使われたようには見えなかった。


「分からないか?」


「分からない」


 仁は動画を巻き戻して、七色が使われた場面で一時停止した。


「ここで使ったんだ」


「ここって……」


 動画を止めた場面は、剣で防御しようとする隊員が吹っ飛ばされそうになるところだった。


「ここで七色を使ってる」


「ここで? どう見たって、防御側が押し負けたようにしか見えないんだけど」


「七色目は衝撃を与える七色。剣が振れた瞬間に、衝撃を放って弾き飛ばしたんだ」


「衝撃?」


「この七色は銃弾に纏わせることは出来ず、霊力で生成する無形武器も纏うことは出来ない。体か剣そのものに纏わせることが出来る。そして一瞬だけだが、ありとあらゆる物に衝撃を与えることが出来る。衝撃の強さは残りの霊力量によって異なるが、最低でも、映像のように人を吹き飛ばす程度の衝撃は、誰にだって使うことが出来る。俺の知っている人物では、地震を起こす人もいる」


 仁の説明を聞いた玲奈は、目を丸くして画面を確認する。


「最後の七色は映像では確認しづらいが、間違いなく七色の力だ」


「衝撃……これで地震も……」


 説明だけで呆気にとられる玲奈は体を動かすことが出来ず、固まってしまう。


「さっき言ったとおり、自分の体か剣にしか纏うことは出来ない。遠距離から衝撃が飛んでくることはない。それに霊力消費は一番大きく、霊力量100の保持者が5回使っただけで霊力切れを起こす。自分の霊力残量を理解して使う必要がある」


 未だに呆けている玲奈を見て、仁は少し微笑んだ。


「おいおい、最後の七色を見てまだ呆けているのか? それとも理解が追いつけずパンクしたか?」


「……いや、七色目だけじゃない。七色全部に魅力を感じているの」


 玲奈の重い口から出てきた言葉に仁は「ほう……」と言葉をこぼす。


「私も試してみたい! 仁! さっそく実践してみよう!」


 目を輝かせながら、玲奈は仁に実践を迫る。しかし、仁は微笑みを保ったまま、玲奈の提案を断る。


「まあ、落ち着け。今のお前のナノマシンじゃ、七色を使うことが出来ない」


「どうして?」


「七色を使うには、七色プログラムをナノマシンに追加しなくちゃならない。お前はAランク隊員だが、ちゃんとした講習を受けた隊員のみが、プログラムの追加を許可される」


「え~!!」


 少し不満そうな表情を浮かべる玲奈だが、仁が話を続ける。


「しかし、今俺がお前に七色の説明を軽くさせてもらった。これで七色プログラムを追加することが出来る」


 意外な言葉の続きに、玲奈は固まった。


「そして、そのプログラムを追加してくれる人が、あと数分でここに来る」


「その人って……」


 玲奈が人物の名前を述べようとした瞬間、部屋の中全体に響くインターホンが鳴る。



 ======



「昔の玲奈に戻ってしまったな」


 玲奈の大食い場面を見てしまった遼は、ショコラケーキを口に運ぶ。


「疲れちゃったり、頭を使いすぎるといっぱい食べちゃう癖は、入院程度じゃ治らなかったみたいだね」


 遼の言葉に共感する詩織もパフェを食べ進める。しかし、パフェを食べ進める詩織の姿を見て遼は思う。


(お前も大概なんだけどな……)


 詩織の食べているパフェは普通サイズの3倍あるものだった。常人なら見ているだけで口の中が甘くなってしまうようなパフェを、詩織は嬉しい顔で頬張る。


「ん~! やっぱり体を動かしたら甘いものに限るね~」


(玲奈といい、詩織といい、なんで太らないんだ?)


 詩織に思いを悟られないように、遼は愛想笑いを浮かべる。


「お待たせしました。ホットケーキです」


「わぁ~ホットケーキもおいしそう~」


 知らぬ間に、追加注文していたホットケーキがテーブルに置かれる。


「まだ食べるのかよ!! てか、よく食えるな!!」


「甘いものは別腹だよ~」


 視線を遼に合わせることなく、詩織の目はホットケーキに釘付けだった。遼は詩織からホットケーキを没収する。


「あ! それ私の!!」


「ダメだ。甘いもの食べ過ぎだ。玲奈のこと言ってられないぞ」


 温厚な詩織が鋭い目つきで遼を睨む。睨まれている遼は、あさっての方向を向いて、視線を合わせなかった。


「それで最後だから返して!!」


「本当にダメだ。若い時から偏った食事をしていると体を壊すぞ」


「返さなかったら、玲奈ちゃんの裸見て興奮していたって告げ口するよ」


 脅しに出る詩織。遼は赤面して反論する。


「ちょ!! 詩織、お前!! それはズルいぞ!」


「私の楽しみを奪おうとしているんだから、それ相応の罰が必要だよね」


 昨晩の玲奈の殺意ある瞳を思い出した遼は身震いする。


「必要ないし!! 第一、俺はあいつの裸程度で興奮なんかしてないから……」


「隙あり!!」


 必死に弁明をしている遼の隙を突いた詩織は無事、ホットケーキを奪取することが出来た。


「あ! お前! だからこれ以上食べちゃダメだって!」


 詩織は躊躇うことなくホットケーキを頬張る。そして満面の笑みで「あま~い」と感想を述べる。


「お待たせしました。カフェオレ2つです」


 店員がテーブルにカフェオレを置く。カフェオレを見た遼は、詩織に怒りの言葉を放つ。


「まだ頼んでたのか!? 最後ってのは嘘か!?」


「違うよ!! 私頼んでないから!!」


「じゃあ、なんでカフェオレがここに来るんだ!?」


「あの……」


 人目を気にせず言い争う2人に、店員が勇気を振り絞って声を掛ける。店員の小さな声が2人に届き、2人は店員に視線を向ける。


「あちらのお客様からです……」


 店員がカフェオレを注文した人物に手を向ける。その先にいた人物は。


「数時間前ぶりだね。2人とも」


『い、伊澄さん!?』


 微笑みながら遼と詩織に手を振る真里と、不機嫌そうな表情を浮かべ、腕と脚を組んでいる女性がいた。そして遼の表情が一気に青ざめ、顔を反対方向に向ける。


「え? 遼くん?」


 不機嫌そうな表情を浮かべた女性が、遼の真横まで歩を進める。無言で歩き出す女性に、真里も呆けていた。小刻みに震える遼は決して、女性と目を合わせようとしなかった。


「明日会いに行こうと思っていたけど、丁度良かった」


 女性の声を聞いた遼は、恐る恐る振り返る。そして顔を再度確認した遼は、自分のよく知る人物だと確信する。


「久しぶりだね」


「あ……姉貴」


 女性と遼の会話を聞いた詩織と真里は、2人を交互に見て目を丸くした。

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