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Hope〜希望を信じて〜  作者: 伊澄 ユウイチ
ようこそホープへ
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ホープの仕組み

 仁は玲奈とともに食事処を目指しながら、ホープ本部の説明をする。


「ホープ本部は50階建てのビル8つで成り立っている」


「8つ!?」


 今までホープ本部そのものを見たことがなかった玲奈は目を見開いて驚く。


「真ん中にあるビルが本部長がいる本部棟。その本部棟を囲むように7つのビルがある。お前が今まで入院していたビルは医療棟。上空から見て北の方角にある。医療スタッフが勤務している棟で、診察や治療は全てそこで行っている。そして俺たちの体に入っているナノマシンの研究や調整もそこで行っている。知っている人を挙げるなら、穂香さんがそこにいる」


 建物の構造を表している液晶端末を見ている玲奈は「なるほど」と呟く。仁は横から液晶端末を操作して、医療棟の左隣のビルを説明する。


「そして、今画面に映し出されているビルがさっきまでいた生活棟だ。その左隣も移住するための生活棟だが、個人専用の建物だ。遠征してくる隊員の宿代わりにもなっているから人の出入りは結構激しい。隣に住んでいる人間がちょくちょく変わるのも珍しくはない」


「人が住む場所だけど、ビル2つもいる?」


 玲奈は構造を見て、率直な思いを述べる。仁は自分の見解を玲奈に返す。


「俺も最初は思ったが、支部・本部合同訓練があると、満室近くなる。もう1つビルを建てるって話しもしていたぞ」


 苦笑いを浮かべる玲奈は画面に視線を戻す。


「生活棟の偶数階層には生活必需品を揃えることが出来る店もある。基本的にはそこで事足りることが多い。生鮮食品が欲しい場合はさらに左隣のビルだ。そのビルは販売棟で、一般の人も入ることが出来るデパートになっている」


「デパートまで……ホープって何でもしているんだね」


「俺たちが一般の人とふれあうことが出来る数少ない場所だ。くれぐれも販売棟でのもめ事は控えてくれ。もちろん秘密漏洩も」


「はいはい。言わなくても分かってるよ」


 本当に理解しているのか分からない態度をとる玲奈に、仁は無言の圧力を感じさせる。


「……本当に分かってるって」


 無言の圧力に屈した玲奈は、ふてくされた顔で仁を見る。そんな顔を見た仁は少し微笑んで建物の紹介を続ける。


「分かったのなら良い。販売棟の左隣は訓練棟だ」


「ここなら分かる。異次元電脳チャンネルに行ける場所でしょ?」


 知っている場所が表示された玲奈は自信満々で答える。静かにフッと笑う仁は言葉を返す。


「そうだ。数時間前までいたビルだ。だが、電脳チャンネルに行けるだけじゃない。座学用の教室、体づくりをするためのジム、疲れを癒やす大浴場などがある」


「え? お風呂あるの!?」


「ああ。俺はあまり使わないが、効能もあるらしく、結構人気があるらしいぞ」


「一回行ってみたいな~」


 玲奈は浮かれた表情を仁に見せて想像し始める。


「まあ、機会があればいってみればいい。そして、その左隣のビルも訓練用のビルだ。だが、そのビルはAAランク以上の隊員が使う訓練棟だ」


「訓練棟も2つある……これも遠征の人が絡んでくるの?」


 生活棟と同じ理由なのかを玲奈は確かめた。しかし、返ってきた答えは意外なものだった。


「いや、ただ単に実力差があるのに格上に挑戦しようとする、大馬鹿者対策だな」


 その一言は玲奈の心にダメージを負わせた。昨日、格上相手と戦った自分を思い出し、落ち込んでしまった。


「はいはい、どうせ私みたいな人対策でしょ……」


「すまん、ちょっと言葉の選び方が悪かった。だが、この理由は本当だ。AAランクやAAAランクの隊員は自分よりも強い相手と戦いたいという気持ちが強い。意味分かるな?」


「実力がない人とは戦いたくないってこと?」


「言い方を悪くすればそうだな。ただ、AA・AAAランクの隊員がC・B・Aランクの訓練棟に行くことは出来る」


 玲奈は首を傾げて疑問をぶつける。


「逆はいいの? でもそんな変わり者の人いないでしょ?」


 その言葉は仁の心にダメージを与えた。


「あの……その、変わり者で悪かったな」


 玲奈の悪気のない言葉は、思いのほかダメージは大きかった。


「あ! ごめん! そうだったね。私に合わせてるもんね……」


「大丈夫……俺とお前のような関係を持つ隊員が多い。結構AA・AAAランクが出入りすることが多いが、決して挑もうとするんじゃないぞ。強い奴と戦いたいなら、俺がいつでも相手してやるから実力をつけるまでは戦おうなんて考えるなよ」


「でも、あっちが戦おうって言ってきたらどうすればいいの?」


「基本的にランク差が2つある場合は、上位ランクの隊員から模擬戦を誘うことは出来ないようになっている。自分から出さなければ戦うことにはならない」


 ホープの約束事を聞いた玲奈は、半分納得、半分納得し難い表情を浮かべる。


「そんな顔をするな。今焦ったって心を折られて終わるだけだ。本当に頼みでも何でも良いから自分から挑戦するようなことだけはやめてくれ」


「はいはい」


 本当に理解しているのか分からない返事に、仁は少し胸騒ぎがした。


「……はぁ~、いいや。最後のビルは隊員たちのストレスを発散させるために造られたレジャー棟だ」


「レジャー棟?」


 玲奈は液晶端末を操作して、レジャー棟の情報詳細を映し出した。横から仁の説明も入る。


「ありとあらゆる娯楽が詰まっている場所だ。戦うことばかりに頭を使っていたら狂ってしまうと師匠が本部長に進言したらしい……」


「優一さん……」


 玲奈と仁はお互いに苦笑いを浮かべる。


「ここで優一さんが絡むの?」


「優一さん曰く、他の隊員たちの意見を代表して言ったらしい。本当か嘘かは分からないけど……ざっくりだが、これら全ての棟があってホープ本部だ」


「半分くらい必要なのかは疑問だけど……なんとなく分かったよ」


「ちなみに隊員専用の食事処は各棟の1階にある。安くて早くて美味いで有名だ。今日は俺が奢ってやるから好きなものを食べろ」


「ホント!?」


「ああ。遠慮しなくていい。食い終わったら、座学の続きだ」


「ご飯! ごっはん!」


 既に頭の中がご飯のことしか考えていない玲奈には仁の言葉は届かなかった。



 ======



 優一はとある空域の高度4,000メートルを飛行していた。周りには雲や塵しか存在しないにも関わらず、辺りを見渡していた。


「ここら辺か……暁美、聞こえるか?」


『こちら暁美。聞こえている……と言うか暁美はやめろ。仮にも目上なんだぞ』


 優一は暁美直通の無線コードを使って連絡を取り合った。


「昔からの呼び方を否定しないでくれ。それよりも、ホープSOUTHサウスの境界空域に到着した」


『分かった。そしたら目標物の詮索をしてくれ。くれぐれもSOUTHの警戒網に引っかかるなよ。後々面倒だからな』


「了解」


 優一は暁美との無線会話を終了すると、再び辺りを見渡した。時には雲の中にも入り、高度を下げてみたり、広範囲にわたって飛び回った。しかし、お目当てのものは見つからず、もう一度暁美と無線会話を始める。


「暁美聞こえるか?」


『見つかった?』


「いや、残念ながら空にはなかった。ひょっとしたら地上の方かもしれない。地上で詮索してみようか?」


 地上に降りようとする優一を暁美は制止させた。


『待て! ……奴らだ。優一、詮索は後回しだ』


「こっちも肉眼で確認した」


 優一を囲むように現れたのは人型のゴーストだった。ゴーストたちは優一に霊力で生成された剣を向ける。


『いいか? SOUTHの警戒網から離れた場所で奴らを撃破。派手な戦闘は避けてくれ』


「そいつは中々厳しい条件だね。了解、一先ずゴーストの撃波に移る」


 空気を蹴るように優一は移動し、ゴーストたちは優一の後を追った。



 ======



「遼くんごめんね、手伝ってくれて」


 詩織の荷物を運ぶ手伝いをする遼は、少し照れくさそうな表情を浮かべる。


「別に……暇だったから手伝っただけだ。2人で運んだ方が効率良いし、今日は訓練もなかったからな」


「それでも、ね?」


 詩織は優しい笑顔を遼の視界に無理矢理入れる。その笑顔を見た遼は言葉を失い、黙って前に進む。


 無事、荷物を小隊部屋に移動させた2人は一息ついた。


「はぁ~重たかった」


「本当に衣類と調理器具だけで良かったのか?」


 運搬した荷物を見た遼は、詩織に尋ねる。


「うん。家電全部は借り物だったし、荷物になる趣味はないし」


「そうだよな。ここは何でも揃ってるから、案外不自由ないな」


「あ、ちゃんと着替え用のケース買ってきたから安心してね」


 着替え置きのケースを見た遼は顔を赤くして、昨晩の出来事を思い出した。


「あ、当たり前だろ!! 寧ろ、なぜそれがなかった!? それのお陰で俺は……」


「お陰で何? ひょっとして今日も期待していたの?」


 ニヤけ顔で見つめてくる詩織に、遼は目を逸らし、ソファーに座り込んだ。その様子を見た詩織は軽く微笑み、遼の隣に座った。


「ちょっと意地悪だったね。ごめんね」


「……もういいよ」


「今日は手伝ってくれたお礼に、甘いものでも食べない?」


「お礼なんて……いいぞ、付き合ってやる。ただし、支払いは俺に任せてもらおう」


 遼はニヤリと笑って詩織を見る。詩織は気を遣って自分が払うと言い張るが、遼は構うことなく、詩織の手を引いて小隊部屋から出る。


「ちょっと、遼くん!」


「俺の心を弄んだ罰だ。俺の言うことを聞いてもらうぞ」


 早足で甘味を取り扱っている店に2人は向かう。その道中、食事処に人だかりが出来ており、何やら騒がしかった。


 気になった遼と詩織は人と人の間を縫うようにして、食事処の暖簾をくぐった。そして目に飛び込んできたのは。


「玲奈!?」

「桜井くん!?」


 遼と詩織は驚いた表情を浮かべ、料理に夢中になっている玲奈と仁を凝視する。既に玲奈と仁のテーブルには、大量の食器が重ねられており、それぞれ20人前近く食べていた。


「お待たせしました! カレーライス大盛りとオムライス大盛り、醤油ラーメン大盛りと味噌ラーメン大盛りです」


 食事処の女性スタッフがふらつきながら、2人のテーブルに料理を運んだ。


「まだ食べるのかよ!!」


「あ~……やっと人並みの量に抑えられたのに……玲奈ちゃん」


 そして料理長らしき男性が、料理が運ばれたテーブルに歩み寄り、震えた声で話しかける。


「あ……あの~」


「ん? どうした?」


 仁が食べ物を飲み込んで、男性に言葉を返す。


「失礼ですが、今いくらになっているか分かっていますか?」


「知ってる。大丈夫、丁度腹八分目くらいになったところだ」


「そうだね~。久しぶりにいっぱい食べたよ」


 遼と詩織は掛ける言葉を失って、他人のフリをしながら食事処から逃げるように去って行った。安くて知られている食事処ではあるが、2人の食べた合計金額は4万を超えていた。



 ======



 SOUTHの境界空域から少し離れた場所で、優一は突如現れたゴーストを全て撃破し終えていた。


「やっと全部倒したか。お陰で予定が狂ったよ」


 ゴーストを倒し終えた優一に間髪入れず、無線通信が入る。


『ゴーストの反応が消滅したのを確認した。見事な手際だな』


「だが、タイムロスであることに変わりはない。暁美、やっぱり奴らは空からじゃなく、地上から出てきた」


『そうか。分かった。早く終わらせたい気持ちも分かるが、くれぐれも慎重に頼むぞ』


「了解」


 無線通信を終えた優一は、ゆっくりと降下を始め、地上にてあるものを再び探し始めた。

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