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大好きなゲームに転生したら、推しも世界も腐りかけてて困るんですが…私が元に戻します!  作者: 藤紫
第二章 推理編

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8.ドウタン⋯キョム!?

どこをどう歩いて戻ったのかも、よく覚えていない。

気づけば、私は教室の自分の席に座っていて、机に突っ伏していた。


「……無理」


声に出さずにはいられなかった。頭の中では、まださっきの光景がリピート再生されている。ガルド様の手。ユリウスの指先。近づく距離。重なる、唇。


う、うわぁぁぁぁ!

無理無理無理。


『ガル×ユリ』もワンチャンありかなぁって思わないこともなかったけど、

き、キスシーン見ちゃったら、やっぱムリィィィ!

せめて『殿下×ガル』カプならもっとと腐ってても……?

って、ダメだ。私の脳ミソも腐ってやがる。


「もう、無理……」


処理落ちした脳が、ぶすぶすと煙を上げているような感覚だった。前世の記憶も、今世の常識も、何もかもが追いつかない。

突っ伏したまま、しばらく死んだように動けずにいると、ふと、近くの席から声が聞こえてきた。


「えぇ、だってあの方のあの筋肉、素敵だと思いません?」

「…、まあ、人それぞれ好みはございますから…」


教室での会話って前世とあんまり変わんないなぁ。


そんなことをボーッと考えていると、


「…ドウタンキョム…。」


……ん?


机に頬をつけたまま、私は耳だけをそちらに向ける。


「ドウタン…なんですって?初めて聞くお言葉ですけれども…」

「…なんでもありません。すみません。」


会話は、それだけだった。他愛のない世間話として、すぐに別の話題に移っていく。

でも――私の頭の中では、今の一言だけが、鐘の音のように反響していた。


ドウタンキョム。

同担、虚無。


その言葉を知っている。知っているどころじゃない。前世の、あのグループの中だけで使われていた言葉だ。「同担拒否」じゃない。「同担虚無」。推している対象に、他に同じ熱量で語り合える相手がいない、あの独特の孤独感を指す言葉。

一般的な言葉じゃない。少なくとも、この学園の生徒たちが、当たり前のように口にするような言葉じゃないはずだ。


がばりと、私は顔を上げた。


まさか。

まさか、とは思う。でも。


――待って。待って待って待って。

もし、あの言葉を使っていたのが、ただの偶然じゃないとしたら?

もし――前世の、あの仲間の誰かが。

私と同じように、この世界に転生しているのだとしたら?

心臓が、どくん、と大きく跳ねた。


そう考えると、いろんなことに説明がついてしまう。ガルド様とユリウスの、公式にはあり得なかったはずの関係。台詞の端々に感じる、微妙な違和感。まるで――誰かが、原作を"書き換えている"かのような。


「……二次創作」


ぽつりと、呟く。

でも、誰の目から見ても分かるような大きな改変じゃない。ほんの数文字、ほんの一言。まるで、きっかけだけを、そっと差し込むような。


「これ、絶対……」


誰かが、書いてる。

前世の、あの仲間の中の、誰かが。


私は震える指で、記憶の中の顔ぶれを一人ずつ思い浮かべようとした。

私も含めて四、五人…だったはず。名前は、えーと…。なんかはっきりしないな。


なんにしろ、もし、この学園のどこかに、彼女たちの誰かがいるのだとしたら。


私は、拳を握りしめた。

――犯人を、見つけなきゃ。




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