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大好きなゲームに転生したら、推しも世界も腐りかけてて困るんですが…私が元に戻します!  作者: 藤紫
第一章 日常?編

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6.自分でもよく分からなくなる

放課後の訓練場に、剣が空を切る音だけが響いていた。

フロレンティアは、もう何度目かも分からない素振りを繰り返していた。腕はとうに悲鳴を上げているが、止まる気にはなれない。


「……フロレンティア嬢」


声をかけられて、はっと顔を上げる。

レオニダス・アルヴェントゥス殿下が、そこに立っていた。


「殿下……? どうか、なさいましたか」


殿下は、少し気まずそうに視線を彷徨わせてから、口を開いた。


「その、な。見ていた。一人で、えっと、供給過多?違う、随分と……」


言葉が、そこで止まる。


「その、頑張って、いや、無理を……」


眉根が寄る。何かを言おうとして、うまく形にならない、そんな様子だった。


「討伐の……いや、森の件は、本来なら、公式最大手?の私が……いや、そうではなく」


「殿下?」


「……すまない。何が言いたいのか、自分でもよく分からなくなった」


殿下は、疲れたように小さく笑った。自嘲するような、諦めたような笑みだった。


「最近、こういうことが多い。言いたいことがあるはずなのに、途中で何かに邪魔されるみたいに、わけのわからない言葉が浮かんできて、上手く言葉にならない」


フロレンティアは、何と返せばいいか分からず、ただ黙って殿下を見つめた。


「情けない話だ。お前が一人で無理をしているのを見ていて、何か力になりたいと、そう思ったのに……こんな体たらくでは、何の役にも立てそうにない」


殿下は自嘲気味にそう言うと、軽く頭を下げて、その場を立ち去ろうとした。


「あの」


フロレンティアが、思わず声をかける。

殿下が振り返る。


「……何を仰りたかったのか、私には分かりません。でも」


言葉を選びながら、フロレンティアは続けた。


「見ていてくださった、というだけで。今は、それだけで、十分です」


殿下は、驚いたように目を見開いて、それから、ほんの少しだけ、口元を緩めた。


「……そうか」


短く、そう応えて、殿下は今度こそ、訓練場を後にした。

一人残されたフロレンティアは、殿下が去っていった方向をしばらく見つめてから、再び剣を構え直した。


――言葉には、ならなかったけれど。

何か、大事なことを言おうとしてくれていたのは、伝わった気がする。


その感触だけを、胸にそっとしまって。

フロレンティアは、また剣を振り始めた。


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