3.尊いのはどっちだ問題
放課後、人気の少なくなった訓練場の裏手。
私はまだ、あの中庭での一件が頭から離れずにいた。ガルド様の
『あいつ、妙に気に食わねえ』
……あれは一体、誰のことだったのか。
答え合わせがしたくて、というのは建前で、単純にガルド様の後ろ姿を追いかけていたら、気づけばこんな人気のない場所まで来てしまっていた。モブのくせに、行動力だけは無駄に高い自覚はある。
木の陰から、そっと様子を窺う。
ガルド様は、一人で剣を素振りしていた。
……いや、正確には、素振りをしている、はずだった。
振りかぶった剣が、途中で止まる。剣を握る手が、ほんの少し震えている。
「あの女…」
!…やっぱりフロレンティアのことが気になっていたのね。ウンウン。そうだよね〜。
「あいつだけは…許せねぇ」
へっ?
「ユリウスに馴れ馴れしく、話しかけやがって…。しかもユリウスの『メガネクイッ』を目の前で見やがって……。大体、あの『メガネクイッ』……なんだあれ、反則だろ……」
「……イヤ、違う…」
「オレはなにすっとぼけたこと考えてんだ?…嫉妬?あの女に嫉妬してんのか?いや、そんな…そんなバカなことが…」
えぇぇぇぇぇぇ!ギャァァァ!ウソ〜〜〜〜〜〜ン。
ガルド様ったら何を宣っていらっしゃるの?
『気に食わねえ』『あいつ』ってフロレンティアのこと。ユリウスじゃなくて?
『ガル×ユリ』カップル爆誕?
ない、ないないない。絶対にない。解釈違いも甚だしい。メインストーリーは殿下とフロレンティア。これが正解。
私的には殿下×ガルカップルが推せるけど…、ガル×ユリは断じてない。
嘘でしょ。嘘だと言って。
ガルド様は、私が木の陰に隠れていることにも気づかず、剣を鞘に収めると、そのまま切なそうな顔で校舎の方……多分、ユリウスがいるだろう方角を見つめていた。
らしくない。ガルド様は、こんな顔をするキャラじゃなかったはずだ。ゲームの中では、脳筋一直線、迷いなく前を向く戦士だった。
でも今、目の前にいるのは……誰かを想って、剣すら振れなくなっている、一人の男の子だった。
……ちょっと、なんていうか、認めたくないけど…これはこれで、尊いというかなんというか…ちょっとだけ見てみたい気もしなくはない…なんて…。
いやいやいや、そうじゃない。感動してる場合じゃない。
これは、絶対に、何かがおかしい。
私は木の陰で膝から崩れ落ちながら、心の中で盛大に叫んだ。
公式が、勝手に腐らせてるんですけど!?どういうことですか〜〜〜!!




