表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大好きなゲームに転生したら、推しも世界も腐りかけてて困るんですが…私が元に戻します!  作者: 藤紫
第一章 日常?編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/22

2.モブ、特等席を確保する

入学式から数日後。

シルヴァ・ルキス学園の中庭は、昼下がりの光に満ちていた。白い石畳、手入れの行き届いた花壇、そして……


イベント発生率がやたら高いことで有名な場所。


そう、ここは“序盤の定番スポット”だ。

確か、この時間帯だと……ヒロインとガルド様の初接触イベントが起きるはず。


私は木陰にさりげなく陣取り、気配を消す。モブとしての立ち回りは完璧だ。邪魔はしない、でも絶対に見逃さないんだから。


やがて、現れた。

フロレンティア・ミラビリス。陽光を受けてきらめくピンクブロンド。少し不安げに周囲を見回す仕草……間違いない、イベント開始直前の立ち位置だ。


きたきたきた……!


その視線の先から、大股で歩いてくる影。

ガルド・グラディウス。


鍛え上げられた体躯。無骨な足取り。ああ、もう、画面越しで何度見たか分からない“登場モーション”。あ~、ガルド様〜。


……ここで、ぶつかる

ヒロインがよろけて、ガルド様が支える。

そこから「危なかったな」的な不器用優しさイベントに入る。


完璧。完璧すぎる流れ。もう、ドキがムネムネですわ。


私は心の中でカウントダウンを始めた。

三、二、一……


コツン。

軽い音。


ヒロインの肩が、誰かにぶつかった。


……え?


反射的に目を凝らす。


そこにいたのは……


「前、見て歩け」


予定より幾分か高く、乾いた声。

すっと差し出される手。


そして、メガネをクイッ。

ユリウス・セラフィヌスだ。


……は?


違う違う、そうじゃ、そうじゃない。


ヒロインは目を丸くしながら、その手を取る。


「あ、ありがとうございます……」


「気をつけるといい。この時間帯は人が多い」


相手を気遣う内容。けれど、ほんのわずかに棘を感じる。


違う。

違う違う違う。


ここはガルド様のイベントだ。ユリウスじゃない。順番が違う。フラグ管理どうなってるの。


混乱する私の視界の端で、


「……ちっ」


舌打ち。


ガルド様が、ほんの少しだけ足を止めていた。

その視線の先には、今しがた言葉を交わした二人がいる。

そして……何事もなかったかのように、踵を返す。


待って待って待って待って。

いやいやいやいや。


今の、完全に“割り込みイベント”でしょ?そんなの本編にあった?ないよね?絶対ないよね?


ヒロインはユリウスと数言言葉を交わし、軽く頭を下げてその場を離れる。

残されたユリウスは、しばらくその背を見送って……


ふ、と。


ほんの一瞬だけ、疲れた表情を見せた。


……ヒロインとの遭遇でそんな顔する?


その時。


「おい」


低い声が、すぐ近くで落ちた。

恐る恐る振り向くと、

ガルド様が、立っていた。


近い。近い近い近い。


「さっきから、何見てやがる」


鋭い視線。まっすぐに、こちらを射抜く。

え、ちょ、モブって認識されない存在じゃなかったの!?


慌てて言葉を探す。


「い、いえ、その……お花が綺麗だなと……」


苦しい。苦しすぎる言い訳。


ガルド様はしばらく私を見て……

ふいに、視線を外した。


「……あいつ」


ぼそり、と呟く。


「妙に気に食わねえ」


あいつ。


今、舌打ちしてた相手……ユリウスのこと?それとも⋯


ヒロインとの接触を邪魔されたから、腹を立ててるのか?


ガルド様はもう一度だけ、二人がいた方向を視線で追いかけてから、去っていった。


残された私は、しばらく、動けなかった。


おかしい。

これは、絶対におかしい。

イベントの順番が違う。

キャラの反応も違う。

それに、ガルド様がモブの私に声をかけてくるなんて……原作にそんなシーン、あったっけ?


頭の奥で、何かが引っかかった。

ページをめくる音。

ペン先が紙を引っかく感触。

見てはいけないものを、偶然覗いてしまった、そんな記憶が……。


何だっけ、この記憶。


思い出せそうで、思い出せない。喉の奥に小骨が刺さったみたいに、ずっとそこにある。

胸の奥が、ざわつく。


……何かを、忘れている気がする。大事な、何かを。


……


……いや。


今はそれより、ガルド様だ。

私は無理やり、思考の向きを変えた。

深呼吸をひとつ。忘れかけの記憶なんて、後で考えればいい。今はそれより、目の前で起きたことの方が重要だ。

……何かが、少しずつおかしくなっている気がする。

ガルド様、どうなっちゃうの〜?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ