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大好きなゲームに転生したら、推しも世界も腐りかけてて困るんですが…私が元に戻します!  作者: 藤紫
第三章 世界の危機編

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15/20

15.止めなきゃ…

その夜、私は自室の窓から、遠くに見える"恵みの森"を眺めていた。

かつては、夜でもぼんやりと淡い光を放っていたはずの森。ゲームの設定資料集にも書かれていた、"精霊の加護による、常夜灯のような輝き"。

でも今、その光は、驚くほど弱々しかった。


「……こんなにも、暗かったっけ」


呟いた声が、誰もいない部屋に、虚しく響く。

翌朝、教室に着くと、いつもと違う空気が漂っていた。


「聞きました? 昨日の夜、討伐隊がまた……」


「今度は何人、怪我したんですか」


「三人です。しかも、一人は、意識がまだ戻らないって」


ひそひそと交わされる会話。誰の顔にも、隠しきれない不安の色が浮かんでいる。


「森の様子、本当におかしいですよね。父が言うには、獣道どころか、森の輪郭自体が、少しずつ変わってきているって」


「輪郭が、変わる……?」


「木々が枯れて、代わりに変な、見たこともない植物が生えてきてるらしいんです。まるで、何かに、蝕まれているみたいに」


私は、その会話を、黙って聞いていた。

昼休み、屋上への渡り廊下から、遠くの森を見下ろす。

以前は、青々とした緑の海のように広がっていたはずのそれは、ところどころ、色を失っていた。まるで、絵の具が滲んで消えていくように、緑が、灰色に近い色へと変わっていく箇所が、確かにあった。


「……気持ち悪い」


思わず、口からこぼれた。

放課後、討伐から戻ってきた騎士団の一団とすれ違った。

先頭を歩く男が、腕に包帯を巻いている。彼の横を歩く別の男も、片足を引きずるようにして歩いていた。誰も、言葉を発さない。ただ、疲弊しきった顔だけが、その場の空気を物語っていた。


「――フロレンティア様は、また、お一人で?」


すれ違いざま、そんな囁きが聞こえた。


「殿下も、ガルド様も、ユリウス様も、あてにできないんじゃ……」


「殿下も、最近は会議で言葉に詰まってばかりだとか……」


「ガルド様とユリウス様は、二人きりで別行動が多いらしいですし」


「しっ。誰かに聞かれたら」


声は、すぐに途切れた。

私は、足を止めて、その場に立ち尽くした。

……歪みは、もう、コメディで済む段階を超えている。


BLがどうとか、推しカプがどうとか、そんな話じゃない。

現実に、人が傷ついている。世界そのものが、軋み始めている。


その夜、寮の窓から、また森を見た。

昨日よりも、明らかに、光が弱い。

まるで、誰かが、少しずつ、灯りを消していっているみたいに。


私は、両手で自分の腕を抱いた。

寒さのせいじゃない、震えが、止まらなかった。


……このままじゃ、いけない。


ヒメラの、あの震える声が、頭の中で蘇る。


『私は、ただ、居場所が欲しかっただけなんです』


理解はする。でも。

理解することと、このまま見過ごすことは、違う。


私は、窓の外の、弱々しい光を見つめながら、静かに、決意を固めた。


……止めなきゃ。


この世界に広がっていく歪みも。

ヒメラが生み出してしまった、小さな改変の積み重ねも。


きっと、両方とも、まだ、間に合うはずだから。


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