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大好きなゲームに転生したら、推しも世界も腐りかけてて困るんですが…私が元に戻します!  作者: 藤紫
第二章 推理編

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11/22

11.見つけた!?

図書室の隅、一番奥の棚の前に、見覚えのある人影がノートを胸に抱きしめながら立っていた。


ヒメラだ。


彼女は、静かに一冊の本を手に取り……そのページの間から、私の仕込んだメモが、はらりと落ちるのを見た。


私は、呼吸を止めた。

ヒメラは、落ちたメモを拾い上げる。


動作は丁寧で、急いでもいなければ、慌ててもいない。ただ、指先が、わずかに強張っているように見えた。


メモの文字を、彼女は黙って読んだ。


『同担虚無』


その四文字を、視線が一度だけ、行き来する。


次の瞬間——


彼女の表情が、すうっと、何もなかったように戻った。

眉も動かない。口元も緩まない。

ただ、瞳の奥で、何かが一度だけ、小さく揺れた気がした。


ヒメラは、メモを本のページにそっと挟み直すと、そのまま棚に戻した。

本を選ぶ仕草すら、いつもと変わらない。静かに、目立たず、誰の記憶にも残らないような動き。


……でも。


違う。


今の、確かに、反応した。


「解釈違い」を見た子は首を傾げた。

「供給過多」を見た子は笑った。


どちらも、言葉の表面だけを受け取っていた。


ヒメラは、違った。


言葉の意味を、理解していた。

理解したうえで、表情を消した。


あれは「知らない言葉を見たときの反応」じゃない。

「知っている言葉を、見られてしまったときの反応」だ。


心臓が、大きく跳ねた。

私は魔導辞典のページを、意味もなくもう一枚めくった。視線は動かさない。でも、意識の全部を、ヒメラの背中に向けていた。

彼女は、別の棚へ移るでもなく、かといってすぐに図書室を出るでもない。

しばらく、その場に立ったまま、何かを考えているように見えた。


そして……

小さく、息を吐いた。

その吐息が、わずかに震えていた気がした。


……この子だ。


確信は、まだしない。

でも、マークはした。


ヒメラは、ゆっくりと棚を離れた。私のほうには一切目を向けず、静かに図書室の出口へ向かう。


足音ひとつ立てず、空気に溶けるように消えていく背中を、私は見送った。

机の下で、拳を握りしめる。


「……見つけた」


声に出さないように、唇だけを動かした。

まだ、証拠はない。


ただの「反応」だけだ。

でも、あの反応は、普通じゃない。

前世の、あの狭いサークルの中でしか通用しなかった言葉に、あんなふうに「理解して、隠した」人間が、この学園にいるはずがない。

私は、ゆっくりと魔導辞典を閉じた。


ヒメラ…、ヒメ…ラ……


何か引っかかる。

抱きしめたノート。


ページをめくる音。

ペン先が紙を引っかく感触。

誰かが、こっそりと物語を書き換えていた、あの記憶。


ヒメラはダレ…?


イヤ、まだだ。

そこで一旦思考を止めた。


次は、追う番だ。


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