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大好きなゲームに転生したら、推しも世界も腐りかけてて困るんですが…私が元に戻します!  作者: 藤紫
第二章 推理編

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10/21

10.魚のいる所に餌を垂らせば……

犯人を見つけるにあたって、私は罠を張る作戦を思い付いた。


『魚のいる所に餌を垂らせば、食いつくだろう大作戦!』だ。


……。


自分でも頭の可哀想な子の考えたような作戦名だとは思ってるよ。

名前なんてどうでもいいだろ……って、私、誰に話しかけてんだろ?。


まあいいや。とにかく実行に移そう。


私は用意したメモ用紙を持って、図書室に向かった。


ターゲットは恋愛小説。純愛モノから略奪モノ、ざまぁに…、

うっ、BLモノまであるじゃない。

さすが乙女ゲームの中の図書室。充実したラインナップだわ。


それらの小説にメモ用紙を仕込んでいく。メモには


解釈違い

供給過多

神回

たち・ねこ


そして


同担虚無


などなど、前世で使わない日がなかった、懐かしいワードが散りばめてある。

コレを見て、反応したヤツ、それが犯人ってワケ。カンペキじゃん。



さて、図書室で周りを睨んでるのも怪しいから、何か読んでるフリをして待つことにしようか。


どの本でもいいわよね。

さっき見つけた薄めの本『青き果実の雄花と雄花』…。

た、たまたま取りやすい位置にあるから、こ、コレにしようかしら。


別に…なんでもいいんだけどね……。



しまったぁ!つい、読み込んで周り見てなかった。

だって、あんな過激な…って、フーッ。別の本にしましょう。


もう、魔導辞典でもなんでもいいや。


魔導辞典を開いて、ひたすら文字を目で追うふりをする。中身は正直、全く頭に入ってこない。

視界の端で、図書室に出入りする生徒たちの動きだけを、意識の全部で追っていた。


……誰か、来ないかな。


数分おき。誰かが本棚の前で立ち止まっては、また離れていく。反応らしい反応は、ない。


「……あ」


小さな声が、聞こえた。

さりげなく視線だけ動かす。窓際の棚の前で、一人の女子生徒が本を手に取っていた。ページの隙間から、私の仕込んだメモがはらりと落ちる。


……来た!


拾い上げたメモを見た瞬間、彼女の眉が、ぴくりと動いた。

心臓が跳ねる。


「解釈違い……?」


そういえば、5人の内の一人、あの子とは『解釈違い』について熱く語ったわ。あの子なら『ガル×ユリ』カプもあり得るかも……。

ドキドキしながら、観察を続ける。


呟いてから、彼女は不思議そうに首を傾げた。


「解釈……? 何かの暗号かしら」


反応、薄い。純粋に「知らない言葉」として処理している顔だった。


……違うか。


それにあの子なら、もっとプラトニックな改変を望むはずよね。


彼女はメモをそのまま栞代わりに挟み直すと、何事もなかったように読書を再開した。


私はそっと息を吐いて、次のターゲットを探す。

しばらくすると、また誰かが棚の前に立った。今度は、眼鏡をかけた真面目そうな女子生徒。手に取ったのは、私が『供給過多』のメモを仕込んでおいた恋愛小説だった。


メモを見つけて、彼女は小さく笑った。


「供給過多、ね。うまいこと言うわね」


反応は、ある。でも……なんというか、一般的な理解の範囲内の反応だった。

「供給が多い」という言葉の意味を素直に受け取っているだけで、あの独特の熱量、あの言葉に宿るはずの"重み"は感じられない。


……違う。この子でもない。


ていうか、『供給過多』っていえば仲間内で一番、ぽっちゃりした感じの子、あの子は公式絶対主義だったなぁ。『その考えでは供給過多です。やはり、公式通りが一番なのです。フンッ』とか言って。あの娘もないよね。


時間だけが、過ぎていく。

私は魔導辞典のページを、意味もなくめくり続けながら、密かに焦りを募らせていた。

このまま、誰も引っかからなかったら。

もし、犯人がそもそも図書室になんて来なかったら。

そう思い始めた、その時だった。

図書室の隅、一番奥の棚の前に、見覚えのある人影が立っていた。

ヒメラだ。

彼女は、静かに一冊の本を手に取り……そのページの間から、私の仕込んだメモが、はらりと落ちるのを見た。



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