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モブ系探索者、異常の深部へ辿り着く 〜空想の友人と歩む英雄譚〜  作者: POG


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第五話

 ここは…何処だ?

 辺りを見回すとベッド横の机へにはお見舞いの品か果物が置いてあり消毒液の独特な匂いが漂う。

 どうやら病院らしい。

 しかも一人部屋だ


 掛かっている時計を見ると深夜二時を指していた。


「病院か?…そういえば俺、倒した後そのまま寝たからな」


 おそらく誰かが俺を運んだんだろう。

 アルトも迎えが来たとかなんとか…

 そうだ、アルトは?


 もう一度周りを見ても誰も居なかった。


「俺の異能だから消えたのか?…それともやっぱりアイツはゆm——」


「——夢じゃないよ。現実さ」


「うわぁ!」

 声の方を見るとアルトはベットのすぐそばに立っていた。


「ハハ。驚きすぎだよコタロー。それにここは病院だよ?そんなに声を上げちゃ他の患者さんに迷惑だよ」


 この野郎…

「お前、さっきまで居なかったろ」


「居たさ。君の視界の死角にね」


 いや、そんな事は無いと思うんだが…


「探索者なら視野は広く持たないとね」


「…所で、お前はずっとここに居たのか?」


「ん?あぁ、そうだとも。君が境界で倒れて、ここに運ばれて、目覚めるまでずっとね」


「ずっとか。…ずっと?お前は消える事は無いのか?異能でお前が現れたって事は召喚系、だよな」


 アルトが現れてから少なくとも丸一日は経ってるはずだ。

 寝ていたから、もしかしたらもっと時間が経っている可能性もある。


 その間、ずっと居たというのなら何かしら消耗してそうだが、

 そう言った類のものは一切感じない。


「ん〜、僕は召喚とはちょっと違う気がするなぁ」


 アルト自身もよく分かっていないのか、曖昧な返事を返した。


「僕は他の人からは見えないけど倒されれば死んでしまうし…あ、言ってなかったけれど僕が死んでしまったら、多分君の固有異能は使えなくなるよ?」


 俺の固有異能が使えなくなる…⁉︎


「はぁ⁉︎そんな大事なことはもっと早く言え!」


「あ、コタロー。そのセリフも二度目だね」


「うるせえ」


 アルトは何か可笑しいのか笑っていた。

 それも病院内だからか静かに。


 アルトの事は本当によく分からない。

 何処まで見えないのか、持ったものは見えるのか、なんかもだ。


「あ、そうそう。コタローにプレゼントがあるんだよ」


 そう言ってアルトがジャケットから取り出したのは一つの古びた指輪だった。


「なんだこれ?指輪?」


「ああ。それはあのゴブリンもどきが持っていた指輪さ」


 アイツ指輪なんてしてたのか。全然気づかなかった。


「で、これを渡してなんなんだ?」


「あのゴブリンもどきが持っていたって事は、単なる指輪ではないだろうからね。

 多分それは遺物だよ」


「こいつが遺物…?」


 遺物

 それは世界に異常が現れたと同時に異常内部から発見された道具であり武具。

 アーティファクト、レガシー、レリックとも呼ばれるそれは、異能と並び世界に台頭した力の象徴の一つだ。

 その能力は異能と同じく多種多様であり、世界を切り裂く剣から全てを見通す義眼なんてものまであると言う。

 どれも噂レベルだが。

 発見される遺物のほとんどはそんなトンデモ性能はしてないからな。


 その中でも特に有名なのが特級探索者〈蒐集家〉が所持する『夢見人の管理道具』と言う名のペン型の遺物だ。


 なんでもそのペンで書いた事を現実にできるらしい。

 まぁ制限もあるみたいだが


 遺物は良くも悪くも平等だ。誰が使おうと同じ力を発揮する。


 そして、入手の機会は誰にでも訪れる。


 そんなんだからいつまで経っても探索者への志願者が減らないんだ。


「で、こいつは本当に遺物なのか?」


 確かに遺物ってのは様々な種類がある。特に指輪はメジャーだ。

 なら古びた指輪があったって不思議はないが…


 何せ初めて見るからな。判断がつかない


「全く、疑り深い奴だね君は。よく指輪を見て感じるといい」


 見て感じる?

 しばらく見ていると指輪から何か漏れ出ている様な、感覚が芽生える。


「これは…魔力、か?」


 魔力は簡単に言えば力の源みたいな物だ。

 魔力がなければ異能は使えず、多ければ異能は強化される。

 正式な用語はもっと長かった気がするが


「そう。それが遺物か遺物でないかの判断材料の一つだね」


「そうだったのか…」


 テレビや動画なんかで、本当に遺物なのかと疑いたくなる形をしている奴もあったからな。

 魔力は映像に映らないからな。

 これまで異常と関わらない人生だったからな分からないはずだ。


 俺は改めて指輪をまじまじと見つめる。

 遺物と認識したからかこの古びた指輪がなんだかすごいものの様な気がしてきたぞ。


「…この指輪の能力は?」


 俺は期待を込めてアルトへと問う。


 が、


「僕が知るわけないだろう」


 一言で断ち切られる。


「知られねぇのかよ。お前が拾ったんだろ?」


「拾ったのは確かに僕だけど。でも、僕の今の異能は【幼な子の守り手(ドッペル)】だけだよ?鑑定の異能なんて持ってないんだから、分からなくて当然だろう?」


 チッ、肝心な時に役に立たない。


「どっかの鑑定屋にでも行ってお前の固有異能で鑑定を模倣してこいよ。そしたらわかるだろ」


「…それは、まるで泥棒じゃないか。それに僕の模倣の精度は一割程度。頑張っても今は三割が限界だよ。その程度じゃその指輪の詳細までは分からないよ」


 それでも十分な気もするけどな。


「ここは大人しく退院したら鑑定しに行こうじゃないか」


「退院か。そういやいつできるんだ?」


「多分明日か明後日じゃないかな。君が寝ている間に探索者協会の人が来て、目覚めたら連絡してくれって医者の先生に言っていたからね」


 探索者協会が来てたのか。

 確かに、あんな近場にゴブリンもどきが出たのは、国見さんの警報が鳴ったようにイレギュラーだ。


 おそらく話を聞きにくるんだろう。

 まぁ、話せる事なんて「死にかけましたがなんとか倒せました」ぐらいだけどな


「そう言えば、この果物は誰が置いていったんだ?もしかして探索者協会か?」


 ベッド横には果物籠が置かれている。


「いや、違うよ。ここに君のお見舞いに来たのは君の両親と他に国見さんに、神代くんと御川ちゃんだね」


 国見さんが来てたのか。それに主人公とヒロインまで。


「国見さんは落ち着いた態度で、君の顔を見に来たって感じだったね。

 あの二人は自分の責任でもましてや被害者でもないのに、なんだか、悲痛な面持ちだったよ。全く、責任感が強いよね。君が主人公というのもわかるよ」


「そうだろ。で、結局これ置いていったのは国見さん達なのか?」


「いいや。実は他にも見舞いに来た人がいてね。同い年ぐらいの可愛い女の子だったよ。なかなか隅に置かないじゃないかコタロー」


 …可愛い女の子?


「その子、病室に入ってしばらく黙って君を見ていてね。

 大体二十分後ぐらいかな…この果物を置いて帰って行ったよ。

 流石に顔までは覗かなかったけどね」


 顔は覗かなかったって、もう色々と十分覗いてるだろ。

 泥棒ではなくても、コイツは覗き魔だな。


「なんだか失礼な事を考えていないかい?」


「そんなことはない」


 …顔に出ていたか?今後は気をつけよう。


 それにしても女の子って誰だ?



 ふと、時計を見ると針は深夜というか早朝の四時を指していた。


「おっと、もうこんな時間だね。あと数時間もしたら看護師が巡回に来るから、少しでも寝るといいよ」


 寝るって言ったって、ほんの二時間ほど前に起きたばっかりなんだが。


 だが、不思議とあくびが出て、視界もぼやけ始めている。


「聞いてなかったが、俺が倒れてからどれくらい経ったんだ?」


「そうだねぇ…大体二日ってところかな」


 二日か。正確に言えば違うんだろうが、そんなに寝てたのか。

 まぁ、初めての経験だったしな。


「俺は寝る」


「ああ。おやすみコタロー」



 ———翌朝


 アルトの言う通り、看護師が巡回に来た。


 俺も同時に目覚め看護師から体調やら何やらを聞かれた後、協会の人間が訪れた。


 話の内容は予想通りの事情聴取だった。

 なんとなくアルトの事は隠したまま、ことの経緯を語った。


 それと態々、探索者協会の人が訪れたのはここ最近、今回の様な境界内での異常が多発してるらしいからだった。


 異常の内部で異常が起こるって、もはや正常なんじゃないかと思うが。


それと、俺たちが戦ったゴブリンもどきの正体が判明した。

 ゴブリンキングだそうだ。

 どうりで強いわけだ。勝てたのは奇跡だな。


 事情聴取は一時間ほどで終了した。


 もう用はないのでさっさと退院したいところだったが

 念の為明日、退院になった。


 病院にいてもやる事なんてないんだが。



 そして翌日、とうとう俺は退院した。

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