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モブ系探索者、異常の深部へ辿り着く 〜空想の友人と歩む英雄譚〜  作者: POG


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第三話

「ひどいなぁ。僕の、親友の顔を忘れたのかい?」


 その空想の産物に過ぎないものが5年ぶりに現れた。


「…お、おい。お前は本当にアルトなのか?あの俺のイマジナリーフレンドの?」


「ああそうだよ。君の大親友アルトだとも。しかしもう、イマジナリーなフレンドではないかな」


 本当にコイツはアルトなのか。

 しかも俺の銃を使ってゴブリンもどきに攻撃まで仕掛けた。


 いや、でも今の状況はあまりにも俺に都合が良すぎる。


 死にそうになって、助けが来て、しかもこの状況を打開出来そうな銃の腕前。


 …そうか、これは夢か。

 おそらく俺はあまりの恐怖で気絶したんだろう。

 まさかこんな時に、最後の夢にアルトが出てくるとは。

 なんだかんだ俺はアルトと会いたかったのかもな。


「そんな事より、逃げなくていいのかい?まだあのゴブリンもどきは死んでないよ?」


 アルトの言う通り動きが少しぎこちないが死ぬような傷ではないようだ。

 証拠に、ゴブリンもどきの傷は既に治り始めている。


 その言葉を聞きながらも俺はまだ動揺し、この状況への理解が足りていなかった。

 ゴブリンもどきから目を離しアルトを見るほどに


 ——————


 ゴブリンもどきと呼ばれた魔物はその通り、ただのゴブリンでは無かった。

 このゴブリンはホブゴブリンよりもさらに上。

 中級探索者の登竜門と言われる魔物。

 その名はゴブリンキング


 そのゴブリンキングは初めての痛みに困惑していた。

 何処からともなく放たれた弾丸により正確に急所を撃ち抜かれた。

 だが、幸いな事に致命傷には至らなかった。

 痛みがあり動きがぎこちないが、目の前の人間を殺すには十分だった。


 ゴブリンキングは何処から現れるか分からない銃弾を警戒しつつ自身の的を目に捉えていた。


 ——————



「…もう俺は死ぬんだろ?だからお前が現れたんだ。最後の夢に、じゃなきゃ幻覚として」


 心は折れかけていた。今はアルトが現れわれたことでかろうじて正気を保っている。

 幻覚が見えている時点でもう正気ではないのかもしれないが。

 でも夢だと思わなければ本当に壊れてしまいそうだから


「…夢か。どうやら君は、まだこの状況を理解できていないらしい」


 アルトは困ったなぁというように少し笑った。


「君が獲得した固有異能をよく思い出してみるといいよ」


 そう言いアルトは俺に背を向けた。


「その間、あのゴブリンもどきは僕が抑えよう」


「…抑える?それに俺の異能を思い出せって…」


 こうしてのんびり会話している間もゴブリンもどきは低い唸り声をあげこちらを睨んでいた。

 いつ襲ってきてもおかしくない。


 俺の異能、固有異能【我等が夢想の友情】

 アルトはこのことを言ってるんだろう。

 でも正直この極限の状況になっても俺自身分かっていない。


 異能に集中すると

 脳裏に、固有異能の詳細が出てくる。


 ——————

 固有異能【我等が夢想の友情】

 幼い子の守り手。最優の友人。

 彼等はいつも側にいて、共に喜び、笑い、支え合う。

 彼等は君を危険から守り、共に戦い、共に傷つき、いつでも君の助けとなるだろう。

 ——————


「…もしかして、この友人ってのが———」


 そう口に出した瞬間、唸り声を上げていたゴブリンもどきが姿勢を変える。

 地面を踏み締め———


 ———走り出す。


「ヤバ——」

 俺はとうとう死を覚悟し目を瞑りかけると同時


 バァン!


 と一発、銃声がなり

 目の前に迫っていたゴブリンもどきの腕が弾かれ、ゴブリンもどきの巨大がわずかによろめく。


「やぁやぁ、酷いじゃないか。僕を無視してコタローを襲うなんて。

 …まぁ仕方のないことだけれどね」


 死を覚悟してアルトにより二度救われた。

 そして先程のアルトの発言により固有異能を確認し、俺の思考は夢や幻覚である事を否定し始めていた。


 ゴブリンもどきは何処から攻撃されたのか分からず困惑しつつこちらを警戒していた。


「無事かい?コタロー」


「ああ。助かった。

 お前は…本当にアルトなんだな?そしてお前は俺が異能で呼び出した…そうだろ?」


 俺はアルトに確認した。

 ここまで来ればもはや信じる他になかった。

 先ほどから感じる痛みや焦り、ゴブリンもどきから放たれる威圧や恐怖はもはや夢幻ではない。

 紛れもない現実だと。


 アルトは笑い


「あぁそうさ。これは紛れもない現実で、僕は正真正銘、本物のアルトさ」


 そのまま現実だと残酷な事を告げた。


「やっぱりそうか。信じたって言ってもはっきり言われると中々心に来るな」


「大丈夫さ。君は僕が守ろう。そしてコタロー。僕の事は君が助けてくれ」


 その言葉を聞き俺の意思は決まった。

 たとえこれが夢なのだとしても、最後までアルトと共に戦おう。


「さっ!理解したなら仕事の時間だよコタロー」


「…仕事?」


「君は探索者になったんだろう?なら、やるべき事は一つじゃないか」


 今だに座り続けている俺にアルトが挑発する様に言い放つ。


「はっ。そうだな」


 震える足に力を入れ、立ち上がり、未だ警戒を続けるゴブリンもどきを見る。


「魔物退治の始まりだ、アルト!」


「ああ!その言葉を待っていたのさ、コタロー!」


 俺は覚悟はしても未だ恐怖が抜けずぎこちなく笑い、アルトは心底嬉しそうに笑っていた。


 ゴブリンもどきも俺たちの空気が変わった事を察し、剣を持つ手に力を込め再び戦闘体制を取る。



 ——————


 小太郎が決意を新たにした頃

 国見達は無事に探索者協会へと辿り着いていた。

 皆一様に安堵の表情だ。

 中には緊張が解けたのか座り込むものまでいる。


「よし、確認だ。全員いるか?居なくなったり怪我をした奴はいないか?」


 国見に言われ皆あたりを見渡した。

 幸いな事に怪我人は見当たらなかったが、人一人が消えている事に気づくものは居なかった。


 当然だ。数人を除き自己紹介もしておらず、皆が自分の異能獲得のために参加し、そして自分の命の為に逃げたのだから。

 この短時間に人数や顔ぶれを把握するのは至難の業だ。


 しかし、この状況において居なくなった者がいる事に気付いた人物がいた。


 神代器かみしろうつき。固有異能を獲得しスロット数も十二枠あると言う規格外の天才だ。


 この青年だけは人数や顔ぶれを正確に把握していた。


「国見さん。一人居ません。固有異能を持っていると手を上げた男性です。名前までは分かりませんが…」


 神代は若干焦り気味に国見に報告した。


「なに⁉︎——確かに居ない、な。いったいいつだ?いつ居なくなった?」


 国見も上級探索者としてこの様な状況には慣れている。

 仲間を失う事も初めてではない。


 しかし、探索者になったばかりで、異能を獲得したばかりの者があの状況でいなくなったと言う事実に、動揺を隠し切る事ができなかった。

 もっともその事に気付いたのは神代だけだが。


 危険な状態に慣れても仲間を失うのが初めてでなくとも、一時でも会話した人物が亡くなるのは決して慣れる事はない。


 神代自身も、新人の下級探索者になったばかりにも関わらず責任を感じて居た。

 自分がもっと注意深く見ていれば、居なくなった瞬間に気づく事ができていればと。


「お前の責任じゃない。責任なら俺にある。何せお前らの引率役だからな」


「ですが—」

 神代が珍しく声を荒げる。


「今は次の行動を考えろ。お前なら出来るはずだ」


「…はい、分かりました…」


 国見は参加者を見渡し指示を出した。

「とりあえず、お前らは休め。そして神代、探索者協会に報告を頼む。御川も一緒に行ってくれ」


「はい。…国見さんは?」


「俺は残った奴を探しに行く」


 国見の顔は何処か悲壮な、覚悟を決めた様な表情をして居た。


 神代に対し、決して救いに行くとは明言しなかった。


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