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知らない間にチャラ男に奪われていた彼女を取り戻して二人で叩き潰した話  作者: かくろう


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第2話 自己保身の女

 ……


 絶望が、目の前を支配した。


 なんだこれは……。

 強姦って話じゃなかったのかよ?


 なんで自分を犯した相手とこんな楽しそうにやり取りできるんだ?


「最初は、確かに無理やりでした……。動画をネタに脅されて、そのたびにセックスを強要されて……その……段々……」


 嫌な予感が走る。絶対に認めたくない想いと、イライラから来る皮肉を込めて、俺はその事実を確認するために口を開いた。


「まさか……。まさかセックスが気持ちよくて相手の事が好きになったとか言わないよね……」


 図星を突いたらしく、彼女は再びフローリングに頭を擦りつけた。


 ゴツゴツと打ち付ける音が鳴り響き、何度も何度も懺悔を繰り返す。


「はい、その通りです……。ごめんなさい……言い訳はしません。私は、レイプされた相手に心を許してしまうような、最低のクズ女なんです。だから、貴方の側にいる資格はありません……。私はあなたを裏切り続けてました。そんな私がプロポーズを受ける資格はないんです」


 頭がどうにかなりそうだった。


 脳みそがグラグラと煮立って目眩がする。


 自分を犯した男を好きになったって? 巫山戯てんのか!?


「それで、俺と別れて、そいつと付き合いたいの?」


 だが、彼女の言い方に少し引っかかりを覚えた俺は、ギリギリのところで理性的な思考を捨てずに希美に尋ねた。


「いいえ、向こうとは連絡を絶ちます。今後一切会うつもりはありません」


「向こうとも別れるって……。なんで? 向こうが好きになったのなら、俺と別れて一緒になれば良いじゃないか」


「違うんです……。私が好きなのは、アッ君だけです。結婚して、一生を側で支えたいと思っているのはアッ君だけ……。でも私は、自分を犯した男に、情を移してしまったんです……。こんな頭のおかしくて汚い女なんです」


 さっきから言っている事は矛盾している。

 だが、どうにも彼女が嘘を言っているようには見えない。



「調子の良いことを言っているのは理解してます。確かに、相手のペースに乗せられて私も調子に乗っていました。でも何かと逆らうと凄く怖くて、暴力が怖かった。だから、逆らえませんでした。でも、さっきアッ君のプロポーズを受けて、目が覚めたんです……自分がとんでもない過ちを犯したことに気が付きました……。人間として最低な行為です。私には、誰とも付き合う資格はありません」


 希美は地面に頭を擦りつけたまま、自身の想いを吐露し続けた。


 気が付けばテーブルに思い切り拳を叩き付け、希美を糾弾した。


「どうして相談してくれなかったんだッ!! ……どうして、俺に希美を守らせてくれなかったんだ……」


 目から涙がボロボロと溢れ出していた。


 悔しくて、怒りの感情が後から後から湧き出てくる。


 自分をレイプした相手に情を移すなんて到底理解のできる感情じゃない。


「ごめんなさい……っ、ごめんなさいっ! 怖くて、言い出せなかった。私の動画をばらまくって脅されて……。アッ君の会社にも送りつけて人生終わらせてやるって……。だから、誰にも相談できなかった」


 めちゃくちゃだ……。

 どうしてそんなヤツとあんな甘ったるいメールのやり取りができるようになれるんだ。


 神経を疑う……。


 希美をレイプしたというその男は絶対に許さない。


 だが、同時に希美の事も許しがたい。


 だってそうじゃないか。

 俺は希美を守りたかった。

 彼女が悲しい目に遭うくらいなら、会社なんていつでも辞めてやる。


 関わらなくて良いような遠い土地に引っ越すことだってどうと言うことはなかった。


 二人で乗り越えて、一緒に問題解決に乗り出したかったのに。


 あろう事か、自分を犯したヤツと親密になって、俺との付き合いを「上書き」なんて言葉で馬鹿にする相手と同調する……。


 どういう神経してるんだ。



 だが同時に、俺は希美がそういうヤツだと分かっていたことに気が付いた。


 他人と同調することで、自分が傷付くのを避ける。そのクセとても不器用で、最後は自分が傷付いて飲み込むことで、最後まで我慢する。


 誰にでもある事だが、彼女はその側面が特に強い。


「アッ君……ううっ、うぁあっ」


「相談して欲しかった……希美が悲しんでるなら、一緒になって苦しみたかった。愛してる人だから、俺はどんな地獄の苦しみだって肩代わりしてあげたかった……。どうして……どうしてだよ……。そんなことで嫌いになったりしないのに……なんで隠そうとするんだよ……」



 甘いと言われるだろう。発狂しそうなほどの怒りが全身を支配してもなお、俺は希美を今すぐ罵倒する気にはなれなかった。


「バレたくなかった……嫌われたくなかったの……ごめんなさい……自分の事しか考えてなかった。挙げ句の果てに自分を犯した人に心を許してしまった……本当に最低なんです。メールのやり取りだって、アッ君を貶めるような事を言われても、何も言い返せなかった」


 確かに自己保全という言い方もできるかもしれない。


 だけど、果たしてそんな言葉で片付けて良い問題なのだろうか……。


 精神状態が昂ぶって、まともな思考判断ができないと踏んだ俺は、自身の不安定な気持ちのことも相まってしばらく時間を置いて落ち着くのを待った。



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