辺境の騎士団20
飛ばされたセリス団長はシドがうまくキャッチしたようだ。頭を打っていたみたいだが、命に別状はないようで安心した。
「シド君さあ、今回はまるで役立たずだったな」
「うっ‥‥‥そんなこと言わないでよ。今回ボクが戦っていたら、将来的にもっとハマーに負担がかかる気がしたから‥‥‥」
珍しく自覚があるらしい。将来的にか、シドが言うからには間違いないのだろう。
「とりあえずユイガさんを治そうか」
ユイガさんの前に行って、念ずる。
治れ治れ治れ治れ治れ治れくっつけくっつけくっつけくっつけくっつけくっつけ。
千切れかけていたユイガさんの腕は、みるみるうちに元通りになった。
次はセリス団長の前に行って、念ずる。
治れ。
よし、治った。
すぐに二人とも意識を取り戻すだろう。
その前に黒豹‥‥‥いやピンク豹の死体と、隣に落ちている窯の回収をしちゃおう。
「なあシド、この窯はなんだ?」
シドは窯をじっと見て、少し考えてから答えた。
「多分魔物や魔獣を生み出す窯だよ。こんな小さいのによくあんな大きい魔物を生み出すことができるよね。結構高性能な神機かもね」
なるほどな、分け前をどうするか決めないとな。
戻ると二人とも目を覚ましていた。少しけだるい感じだが、問題はないようだ。
「それじゃあ、お楽しみの神機を取りに行こう。ムゲンワンナップだったらいいね」
シドがのんきに声をかける。
その声に即座に反応したユイガさんが飛び起きる。ちなみにイケオジからハゲオヤジに戻っていた。
そんなユイガさんを見て、セリス団長は頬を緩ませながら潤んだ瞳で見つめていた。
恋する乙女じゃん。果たして、この恋は実るのでしょうか!!
それにしても、町の住人が心配するくらい男っ気がないセリス団長がユイガさんをねえ‥‥‥確かに戦っているときはかっこよかったし分からなくもない。
ユイガさんをちらっと見る。完全に小太りなハゲオヤジだった。どうにかして、闘神ユイガスタイルを維持できないのだろうか。
神獣の豹を倒した場所からさらに奥に行くと、小さい部屋があった。
神殿風の装飾は変わりないが、神性魔力で満ちていた。ここに神が封印されていると感じる。
中央に台座があり、金色に光輝くキノコとピンク色の一輪の花が置いてあった。
今にも飛びかかり、貪り食ってしまいそうなユイガさんを押さえてシドに見てもらう。
「二つも神機があるなんてめずらしい。よっぽどキミたちに感謝してるのかもね。まず一つ目は‥‥‥おめでとう!ムゲンワンナップだ」
発狂したかのような叫び声をあげるユイガさん。そんなユイガさんを愛おしそうに見つめるセリス団長。全く、恋は盲目だぜ。
「二つ目は‥‥‥女神花だね。この花の蜜を吸うと全身の美的代謝が爆発的に向上するみたい。肌・髪・爪等々にツヤと輝きが出るし、女性のための神機だね」
「これはセリス団長がもらってください」
さらに美に磨きをかけてユイガさんを落としてください!
「いいのか?私はほとんど役に立たなかったが‥‥‥」
「そんなことないですよ。セリス団長がいなかったらあの黒豹に負けていたと思います。本当に助かりました」
俺がそう言うと、セリス団長は小さく頷いて神機を手に取った。
ユイガさんはというとムゲンワンナップに頬ずりしていた。誰が見ても完全にヤバいやつだ。道端にいたら110番されるやつ。
「ハマー殿には何もないけどいいのか?」
セリス団長が心配してくれた。優しい人だ。
「相談しようと思っていたんですが、さっきの神獣の近くにあった神機を俺がもらっていいですか?」
二人は特に異議がないようで賛同してくれた。
「神機の配分も決まったことですし、二人とも早速使ってみましょう!」
二人に使うことを促す。
ユイガさんは少しも躊躇せずにゴクリと喉を鳴らし一口で食べた。セリス団長も恐る恐るといったように花の蜜を吸った。
ピンクの神性魔力がユイガさんとセリス団長の体を包み込んだ。
ユイガさんからは迸るほど男性ホルモンが放出されているのを感じる。THE男の中の男。かの六十億分の一の男、エメリヤーエンコ・ヒョードルのようなオーラを漂わせていた。
そして、肌も若返り、頭もふっさふっさになり、体重も減って、身長も伸びていた。
闘神ユイガになっただけやないかい!
セリス団長は、もともとが整った顔立ちだったが、凛々しさの裏に男所帯育ちの無骨さが滲んでいた。それが今、艶と柔らかさをまとい、言葉を失うほどの美しさを放っていた。
「あ、言うの忘れてた。女神花の効果には、好きな人のことをもっともっと好きになっちゃう効果があるんだった。ちなみに、女神花を吸った後の告白の成功率はなんと100%らしいよ。ハハッ」
このガキ!なんて素晴らしいアシストをするんだ。お前は恋愛リアリティ番組のプロデューサーかよ。
潤んだ目でユイガさんを見るセリス。まんざらでもない様子のユイガさん。そんな二人を見てお腹いっぱいになった俺はシドを連れて愛憎の女神ゼラ=アモルが封印されている部屋を出た。
部屋を出た時に、誰かからありがとうとお礼を言われた気がした。
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三人で迷宮を出て、辺境の町へ戻ったときにはすでに夕方に差し掛かっていた。
門の前で二人と別れ、シドと一緒に町の中に入っていく。町の中はスタンピードを防衛できたことで安堵の空気が流れ、いつも以上に活気づいていた。
そんな中、第三区画の広場に赤を基調とした鎧を身に着けている騎士団がいた。エリオスが呼んだ王国騎士団だろう。
そして、その中心には俯いていてよく見えないが、囚われている人物がいた。傍には一瞬エリオスと見間違うほどよく似ているが、雰囲気が全く違う人物が立っていた。
エリオスは男気のある熱血漢という感じだが、この男は隠すことのできないほどの残忍さが顔に現れていた。
男が叫ぶ。
「これより、男爵暗殺未遂の大罪人、3級ハンターエリオスの処刑を行う!」
銀色の凶刃が振り下ろされた。
辺境の騎士団はこれで終わりです。
新しい話は幕間とジグル視点で数話を挟んだ後になります。
ストックが尽き自転車操業のため、毎日投稿が止まるかもしれませんが、引き続き書いていきますので、今後も読んでいただければ幸甚です。
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社内不適合者




