表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
59/68

辺境の騎士団17

「僕の考えた最強の魔法」によりスタンピードの第三波を撃退し、黒鋼騎士団とハンターに防衛できるぞという空気が流れた。


「まだ、終わってないぞ!近いうちに第四波が来る!決して気を抜くな!そして全員で生きて帰るぞ!」


第四波は誰も経験したことがない。どんな規模でどんな魔獣がくるのか。


「先ほどの大規模殲滅魔法を放った者は名乗り出て欲しい!褒賞を与える!」


もちろん名乗り出ない。あれだけ広範囲に魔法を放てるということは、いつでも町を破壊できるってことだからな。危険人物として監視対象になりたくないよ。


「呼ばれてまっせ」


そんな中ユイガさんが、ちゃちゃを入れてくる。さすがに周りに聞こえないように小声だったが。


「行かないですって。後から面倒なことになりそうなんで」


「それだけ強いなら、いっそのこと公表するのも手やないんですか?面倒なことは一切無くなるかと思いまっせ。ただ、そうすると、今のハマーさんのような生活はできなくなってしまいやすが」


「そうですね。でも、もう少しこの世界を楽しみたいから秘密にしときます」


「じゃあ次は、あっしが担当しやす」


軽い感じで話すユイガさんには、何の気負いも感じられなかった。


「第四波が来たぞ!数はおよそ百!」


百という話を聞いて緊迫した空気が緩んだ。だが、次の言葉を聞いて状況は一変した。


「全て魔獣だ!半数以上が中位魔獣!6級以下のハンターは全てフォローに回れ!」


6級以下のハンターが一斉に後方に移動する。その中に大声でハンターを誘導していたマオマークさんを見つけた。


向こうも俺を見つけたようで、こちらに近づいてきた。


「防衛にきてくれたのか。だが、もう逃げた方がいい。魔獣が百体も襲ってくるなんて未だかつて聞いたことがない。後は俺らみたいなこの町で骨を埋めるつもりのおいぼれどもに任せておけ」


「魔獣ってそんなに強いんですか?」


「魔獣は強い。魔物とは比べ物にならないほどに。低位魔獣は5級ハンターが複数で討伐にあたるし、中位魔獣にいたっては3級以上のハンターでなければ瞬殺される。しかしやるしかない。俺らしかこの町を守れない」


いつも見る時は飲んだくれのくたびれたおっさんだけど、この状況に絶望もしていないし、諦めてもいなかった。辺境のハンターはかっこよかった。


「来るぞ!配置につけ!」


その号令でマオマークさんは前線へ駆けていった。


最初に現れたのは岩のように大きい犀の魔獣だった。三体が固まって猛然と突き進んでくる。


「玄岩犀だ!魔法防御に優れている中位魔獣だ!半端な魔法は通用しないぞ!」


騎士団の魔法隊が魔力を十分循環させ、放った。地属性と火属性の混合魔法だ。


炎を纏った多数の石槍が玄岩犀を襲う。当たった瞬間小規模な爆発が起こり、威力も十分だと思われた。だが、玄岩犀は傷一つ負わずこちらに走り続けている。


「仕留めようとするな。まずは分離させろ」


団長の指示で魔法隊は地属性魔法を使い、地面を隆起させ玄岩犀を二手に別れさせた。


「二体は私が受け持つ。残りの対処を頼むぞ」


そういって団長は玄岩犀に向かって駆けだした。長い茶髪をなびかせて走る姿は優美で、これから馬鹿でかい犀と戦いにいくとは思えなかった。


玄岩犀と衝突する直前、彼女は跳躍をして黒鋼の棍棒を脳天に打ち下ろした。


鈍い音とともに玄岩犀は止まり、片足をついた。間違いなく効いてはいるが、致命傷ではない。


もう一体は止まらず団長に向かって猛烈に突進をしていた。団長は着地と同時に跳躍をし、先ほどと同じように棍棒を脳天に打ち下ろした。


しかし、先ほどと全く別の、側が硬く中身が柔らかいものを潰した音がした。よく見ると、棍棒が二倍ほど太くなっていた。


「あれは神機だね。ある条件を満たすと、強くなっていくっぽいね。たぶん、ある一定の強さで直撃させたけど殺せなかった、とかかな」


何その武器?のろくて耐久力のあるやつ絶対殺すマンじゃん。いや、絶対殺すウーマンか。


「でも、万能じゃないよ。強くなるたびに使用する魔力量が多くなっていくみたい。あの子なら、もうすぐ限界が来ちゃうかも」


——ゴシャ——


再度同じ音が響いた。団長が相手をしていた玄岩犀は二匹とも動かなくなった。

もう一方の騎士団が相手をしていた玄岩犀は落とし穴にはまり、寄ってたかって攻撃を受けていた。こちらも時間の問題だろう。


「あ、これはまずいね」


シドがひとり言のようにつぶやいた。

よく見ると一体の赤い毛並みの熊が猛スピードで団長に襲い掛かろうとしていた。巨躯なのにここまで気づくことができなかったのは、何かしらの魔法なのだろうか。


「あの赤い毛並みに認識阻害の効果があるね。いい防具が作れそうなんだけどな」


ようやく団長も気づき反撃しようと構えるが、神機で大量に魔力を使った反動か、反応が鈍い。


これはまずいと冷や汗が出る。影転移を使い団長の近くに移動したとしても、間に合うかどうかギリギリだ。


「流星穿膝」


さっきまで隣にいたはずのユイガさんが、いつの間にか熊の顔面に膝蹴りをしていた。熊は頭から背中にかけて吹き飛ばされて、絶命した。


それが合図となったのか、残りの魔獣が一斉に襲い掛かってきた。荒れ地をものともせずに突き進んでくる様子は、尋常でない圧力があった。


ハンターだけでなく、黒鋼騎士団も、団長でさえも足がすくんで動けなくなっていた。


しかしユイガさんは自然体だ。


迎え撃とうと魔獣に向かって走り出す。接敵まで百メートルほどになったところで止まり、片足を前に出し強く地面を踏み込んだ。


「奥義——地津波」


踏み込んだ場所から扇状に次々と地面がめくれ上がり、まるで津波のように全ての魔獣を飲み込んだ。


ユイガさんはそれを確認する前に天高く飛び上がっていた。上空で魔獣が飲み込まれたのを確認し、自身が落ちる反動を使い地面を殴った。


「奥義——天昇轟破」


衝撃波が魔獣を飲み込んだ地中を襲い、その衝撃で地面が天高く浮き上がり空を覆い隠した。そして、それらがガガガガガと大きな音を立て、再び地面に落ちた。


すごいものを見てしまったわ!すごいものを見てしまったわ!!


強すぎるってユイガさん!


この光景を見て、スタンピードは終わったと、俺だけではなくここにいる全員が理解しただろう。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!あんなに強かったのかキノコ採りのおっさん!!!!!!」


「おっさん!おっさん!おっさん!キノコハゲ!!!おっさん!おっさん!おっさん!おっさん!おっさん!」


歓声の中に悪口が混じっているぞ。おそらくマオマークさんだろうが。


砂煙が落ち着いてきて視界が開けてきた。そこに立っていたのはユイガさんとは似ても似つかない、銀髪ロングの鍛え上げられた肉体のイケオジだった。


闘神ユイガという二つ名がぴったりで、強者のオーラが漂っていた。


「ハマーさん!先に行ってまっせ!!」


口調は小太りハゲのユイガさんのまんまなのかよ。


「ユイガは迷宮の場所を知ってるのかな?」


「知らないだろうな‥‥‥」


全速力でユイガさんを追った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ