辺境の騎士団16
城壁に着いたときにはすでに多くのハンターが魔物と戦っていた。
三十人ほどの黒鋼騎士団とその三倍近くいるハンターが魔物を防いでいた。
特に団長の攻撃力は圧巻だった。黒鋼の大きな棍棒で次々に魔物の頭をつぶしていた。
「彼女はおそらく武神の使徒かも。ものすごく強いね」
シドも感心しきりだ。
「第二波が来るぞ!気合い入れろお前ら!」
団長が激を飛ばす。黒鋼騎士団やハンターに気合いがみなぎっていた。
遠くに見えた砂埃がだんだんと近づいてきて、ついに先頭の魔物が現れた。狼の魔物だ。ジグの大森林では狼の魔物が非常に多い。群れで襲ってくるため対応を間違えるとケガじゃ済まず、非常に危険な魔物だ。
ユイガさんも俺も戦闘態勢だったが、騎士団が放つ魔法が強力で防壁を突破してくる魔物はいなかった。
近くにいる黒鋼騎士団の人に話しかける。
「最高レベルのスタンピードってことでしたが、あと何回ほど襲撃がありそうですか?」
「高レベルなら三回で終わりなんだが、最高レベルだから四回目もありそうだな。あと二回は覚悟してくれ。いざとなったら俺らがお前らを守るから、ちゃんと逃げてくれよ」
明るく話しているが、命に代えてもこの町を守るという覚悟が見えた。
大丈夫だよ。いざとなったらシドの魔力をぶっ放すから。
「ありがとうございます。俺らもできることをやるので頑張りましょう」
騎士団のおっさんは親指を立てながら笑った。いい笑顔だ。
「第三波来るぞ!空飛ぶ魔物——いや魔獣も来ている。ワイバーンだ!数は十!騎士団の魔防部隊はワイバーンを狙え!その他の者は地上戦だ!騎士団は魔獣をハンターは魔物を優先的に狙え!」
ワイバーンなんて来たら町を守る壁なんて意味ないじゃん。空を飛べるっていいよな。ロマンだ。
「ハマーさんはどっちをやりまっか?あっしはどちらかというと地上戦が得意なんで空の方をお願いしたいのでやすが」
空か、経験はないけど基本的に魔力を飛ばすだけだから何とかなるか。
「空は俺に任せてください。なんとかなると思います」
「ハマー、おそらくボクの魔力をぶっ放す作戦だと思うんだけど、なんか嫌な予感がするから黒霧の狩神ヴァル=ライクと世界樹ノクトグランの魔法で何とかして」
「シドが嫌な予感するってことは相当だな。やってみるよ。デイサイドは使っていいだろ?久しぶりに使ってやらないと‥‥‥下手したらすでに泣いてるんじゃないか?」
「デイサイドは使ってもいいよ。でもいいの?こんなに人が多いところで使ったら相当目立つけど」
くっ。シドの魔力が使えないことにテンパって、デイサイドを使う提案をしてしまうとは。しかも冷静に突っ込まれるなんて悲しいよ俺は。
確かに、こんな大勢の前で見た目も中身も常軌を逸した大剣を振り回したら、変なあだ名をつけられていたに違いない。
おっと、変なことを考えていたせいで、ワイバーンが相当近くに来ていた。
仕方がない。ジグの大森林で迷っていた時に、夜な夜な考えていた「僕の考えた最強の魔法」をぶっ放すか。
まずは黒霧の狩神ヴァル=ライクの影を空に展開する。横幅一キロにおよぶほど広大に。そしてその影から世界樹ノクトグランの魔法をぶちまける。ただそれだけだ。
世界樹ノクトグランは葉の色によって魔法の属性を変えることができた。赤なら炎弾だし、水色なら氷槍だし、黄色なら雷撃だった。
「哭け、カタストロフィ」
またカッコいい名をつけてしまった。いつもは大人のふりしてスカしていても、時に中二病を発症してしまう。それが男という生き物の悲しい性だよ。
予定通り影が空に展開された。そしてその影から予想以上の強力な魔法が降り注いだ。
炎弾はメテオだし、氷槍はブリザガだし、雷撃はジゴスパークだった。
大きな衝撃音の後は一面抉られたジグの大森林だった荒れ地と、誰も言葉を発さない静寂だけが残った。
呆れ顔でユイガさんが近づいてきた。
「ハマーさんは非常識だってよく言われまっしゃろ?」
ユイガさんだけには言われたくないって。




