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辺境の騎士団14

「遅くなったな、ハマー」


地に落ちたリオンの首を意に介さず話しかけてくるエリオス。この世界では殺人はある種、日常茶飯事なのだろう。


「ジャストタイミングだよ。それにしても俺がここにいることがよく分かったな」


「俺もいろいろ伝手があるんだよ。お前がオリハルコンを掘りあてたことも知ってるぞ」


やめてよ、もう有名人じゃん。晒しものだよこんなの。


「逃げたやつはどうするんだ?」


「もちろん捕まえるさ。でも、ハマーのことだからもう動いているんだろう?」


くっ。どんどん察しが良くなってやがる。


「そうだよ。シドが研究材料として欲しいらしく、すでに捕縛しているよ。必要なら引き渡すけど、どうせいらないだろ?」


「好きにして構わない。今回は英雄といえども、弱い方の奴らだったからな」


英雄を軽くひねった後でも慢心は無いようだ。


「お、お前らはとんでもないことをしたんだぞ!」


ルーイちゃんが顔面真っ青になりながら叫ぶ。放心状態から、言葉を出せるほど回復したようだ。


「とんでもないことって何?ああ、バレちゃまずいから、ここにいる人を皆殺しにしようかな。どっかの公爵家の筆頭錬金術師なんか特にうざったいし」


「そ、そんなこと許されるわけが‥‥‥」


「なら黙っていろ。俺の機嫌を損ねると本当に殺すぞ」


エリオスがドスの利いた声を出すと、ルーイちゃんは静かになった。

看守は力の差を感じ取ってか、ずっと静かだ。


「ハマーの知り合いか。助かった。ありがとう。君が来てくれなければ死刑になっていたかもしれない」


嘘だ。事前打ち合わせではジグルが何とかする予定だった。エリオスが来なければという話だったが。


「ハマーのことだから問題ないと思いましたが、英雄がいるなら必ず俺が助けようと思っていました」


「君のその瞳と胸にかかっている宝珠に覚えがある。この町の現状を見て、何かしらの対応をすると考えてもいいのか?」


「そう思ってもらってかまわない。数日中に片が付く予定だ」


エリオスはエリオスでしっかり動いていたんだな。


「それで、これからどうするつもりなんだ?」


「いろいろありすぎて少し長くなりそうだ‥‥‥ここでは言いづらいから後で話す。とりあえず移動するぞ」


俺らが動き出そうとした時、いきなりけたたましい警報が鳴り響いた。建物の中だけではなく、町全体に。


「この警報はスタンピードが発生したということだ。そして、この音は、危険度が最高レベルだったはずだ!」


親方が叫んだ。


「ひっ!スタンピードだと!?早く私を逃がせ!私はこんなところで死んでいい人間じゃない!」


うるさいから影収納に放り込んだ。


「ジグル。今、小うるさい奴を送ったぞ。なるべく殺すなよ」


念のために殺さないように注意しておく。最近は、面倒なことがあると、全てジグルとマスターに丸投げしている気がする。このままじゃ、ますます怠惰になってしまう可能性がある。


「‥‥‥今までも便利な収納魔法だと思っていたが、まさか人も住んでいるなんてな。本当に規格外な男だよ」


エリオスは驚き半分、呆れ半分の表情でため息をついた。


あれ?話してなかったっけ?


「そうだよ、規格外のアホなんだよ。だから一緒にいて飽きないんだ」


いつの間にか、かわいいかわいいベビータイガーがベッドで寝ころんでいた。


「ようシド、久しぶりだな。男爵家での暮らしはもう飽きたのか?」


「一日もボクと離れて寂しかったでしょ。そろそろハマーが事件を起こす予感がして来たんだよ」


こいつの中では俺がトラブルメーカーになっているのか。実際は逆だからな。


「言葉を話すベビータイガー‥‥‥まさか神獣なのか?」


親方は驚きの連続で眩暈がしているようだ。もういい年なんだから倒れないでくれよ、頼むから。


「まあいい、今はスタンピードについて考えよう。親方、最高レベルというのはどういう意味なんですか?」


スタンピードという言葉を聞いた瞬間、すっと目が座った。正気に戻ったようだ。


「そうだったな。スタンピードにはレベルがあって、高レベルまでなら黒鋼騎士団で対応できる。基本的に魔物しか現れないからだ。最高レベルとなると魔獣も出てくる。そうなるとハンターギルドに加えて伯爵領からの援軍も必要になるだろう」


「何匹くらいの規模なんですか?」


「高レベルは約五百匹、最高レベルは‥‥‥経験したことが無いからはっきりとした説明はできないが、おそらく千匹以上になるだろう」


魔獣が混ざっての千匹は確かに厳しいかもしれないな。


「ここで話していても仕方がない。外に出て状況を把握して対応しよう」


「俺は一度商会に戻ることにする。ハマー、エリオス、二人ともありがとう。俺に手伝えることは何でも言ってくれ」


「歳なんだから無理しないでくださいね、親方。ああ、そのくだらない手錠を外しときますか」


魔力を循環させ、強化した身体能力で親方の手錠を引きちぎった。


「‥‥‥ある程度の力じゃ壊せない作りなんだがな」


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