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辺境の騎士団12

翌朝、早くに看守と二人の白剣騎士が来た。窓が無く日が入らないため、時間が分かりにくい。


「罪人ユイガはいるか!」


看守の声が地下牢に響いた。


「へい、あっしです」


「お前が奴隷になる場所が決まった。越後屋商会の番頭の警護及び雑務だ。詳しいことは越後屋商会に確認しろ」


「へい、分かりやした」


ユイガさんは特に感情の起伏が感じられず、いつも通りひょうひょうとしていた。


「それじゃ、親方、ハマーさん、あっしは先に出やすんで。また会って酒でものみましょ」


散歩に出るかのように軽やかな足取りだった。


「ハマー、あの男は何者なんだ?お主とはまた違った存在感があるな。とぼけているが間違いなく強いだろうしな」


「俺も会って一週間だからまだよくわからないんですよ。昔は自由都市でハンターやってたって言ってましたけど」


「自由都市か。あそこはこの世界でも異質な場所だ。迷宮が100個以上発見されているんだからな。この世の欲望を集めたような場所だ」


ちょくちょく名前を聞くんだけど楽しそうだよな自由都市って。いつか行ってみよう。


「自由都市のハンターはピンキリだからそれだけでは何とも言えんな。ん?待てよ、ユイガ?そういえば闘神と呼ばれた1級ハンターがそんな名前だったような‥‥‥いやしかし、長い銀髪で長身の男だという話だったが‥‥‥」


闘神ユイガってかっこよすぎだろ。絶対強いじゃんそんなの。ユイガさんのイメージと違い過ぎて想像できないな。この流れはおそらく同一人物なんだろうけど。



————————————————————



ユイガさんが連れていかれて三時間ほど経っただろうか。


「罪人デル!お前はこれより死刑執行となる!だが、その前にマロ公爵家筆頭錬金術師であるルーイ様がお前に聞きたいことがあるとおっしゃられている。心して話すように!」


ルーイという錬金術師はおっさんだった。親方と同い年くらいか。

何の通達もなくいきなりかよ。よほど親方が邪魔なんだろうな。


「久しいなデル。約十五年ぶりか」


「誰かと思えばお前かルーイ。才能もないのにまだ錬金術師をしているとは。それに公爵家の筆頭錬金術師だと?そういや政治は得意だったなお前は」


めちゃくちゃ煽るじゃん親方。ルーイちゃんの眉間にしわが寄ってるよ。


「才能のあったお前も今や罪人か。落ちぶれたもんだな。それにその才能とやらも覆すほどの権力でお前の得意とする薬学すら超えてしまったからな。迷宮で使われている解毒剤は俺の作ったものだ。お前の作ったものよりも簡単で、しかも低コストで作ることができるからな」


「あのまがい物はお前が作ったのか。通りで質が悪いと思ったよ。三流の仕事だよあんなもん」


ルーイは怒りと嘲笑が入り混じったような表情を浮かべる。


「お前の自慢のレシピも全て灰になり、お前自身もこの世からいなくなれば何も残らんな。お前の人生自体が無駄だったんだよ。ああ、そうだ。お前が運営している第四区画にある孤児院に騎士団を向かわせている。院長の最後を見届けさせてやることにしたよ。そのあと寂しくないように一緒に送ってやるから安心しろよ」


この男、鬼畜過ぎる。


まあ、孤児院やら深岩商会やらはジグルとマスターに言って昨日のうちに影の世界に避難させているけど。


避難させる前にマスターの闇属性魔法の催眠でスパイを洗い出してみたら、深岩商会は四十人中十人が、孤児院は副院長がスパイという酷い有様でしたとさ。陰謀が蠢く辺境の町ブロリ、恐ろしい子。


この結果にはさすがの親方もショックを受けていた。特に信用していた孤児院の副院長がスパイだったことには顔が真っ赤になっていたほどだ。


「お前だけは許さん。必ず報いを受けさせる!」


「もう遅いわ。こいつを連れていけ。それに囚人の腕輪の効果で二十分の一しか魔力を使うことができまい」


5%に魔力量が制限されるのか。そりゃ大変だ。


ん?今気づいたが、ルーイの護衛として二人ついてきているんだが、白剣騎士ではなく獅子人族だった。初日ハンターギルドに行ったときに話しかけてきた二人だ。相変わらず練度の高い魔力で、それだけで高ランクハンターだということが分かる。


看守が牢屋の鍵を開け、ハンター二人が親方を連行しようとしたその時———


「レオン!何かいるぞ!気を付けろ!」


二人は同時に後方へと弾かれるように跳んだ。その瞬間、その場を断ち切るような一閃がコンクリート張りの床を割いた。


「誰だ。この牢獄は男爵の管轄と知っての行動か」


レオンは剣閃を受けた方向に叫ぶ。


そこには陽炎のように揺らめいた人影があった。


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