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辺境の騎士団11

ハマーがユイガに対してタメ語から敬語で話すように変更しました。あまりにも生意気そうになっちゃったんで。

着いたのは第三区画にある堅牢な建物だった。石造りで窓が無く、そして周りは高い柵と有刺鉄線で覆われ、簡単には外に出ることができないようになっていた。


「当分の間、おまえはここで過ごすことになる」


乱暴に中に放り込まれた。前面は鉄格子でしっかりと鍵がかけられた。


「シドは、ベビータイガーはどうなるんですか?」


「ああ、お前が気にすることではないと言いたいところだが、特別に教えてやろう。盗難届を出していたのは男爵様のご子息だ。よって規定通り男爵様に返却することになる」


「そうなんですか、わかりました。」


できるだけ悲しそうな顔をしながら頷く。

まだだ、まだ笑うな‥‥‥。


「あの子は鶏肉が好きなのでそれを男爵様に伝えてください‥‥‥」


当分の間、男爵に面倒を見てもらおう。後は男爵家が木っ端みじんにならないことを祈るばかりだ。


その瞬間、首元から俺にしか聞こえないほど小さな声がした。


「随分嬉しそうだね、ハマー。ボクはいつでも戻ってこれるんだから悪いことをしちゃダメだからね」


内心がばれていることに冷や汗をかきながら、冷静に頷いた。


「ベビータイガーは悪いようにはならないさ。お前の処遇は後で通達されるが、おそらく鉱山奴隷になるだろう。たくさん鉱石を採掘してもらう必要があるからな」


冤罪なのに一生オリハルコンを掘り続ける人生、いわば終身刑が待ち受けていそうな現実に眩暈がした。


「分からないことは同部屋の先輩に聞いておけ。先輩といっても一日も変わらないけどな」


そう言って白剣騎士は去っていった。


後ろを向くと、初老のハゲたおっさんと還暦近くのどこかで見たようなおっさんが座っていた。ハゲたおっさんは良く知った顔だった。


「ユイガさん!どうしてこんなところに?」


「ああ、誰かと思えばハマーさんじゃないですか。ハマーさんも何か悪いことしたんですかい?」


「悪いことか‥‥‥良いことをしたつもりだったんですけど、ここの町にとっては悪いことだったのかもしれないですね。ユイガさんは?」


「あっしはジグの大森林でとってきたキノコに幻覚作用があると言いがかりをつけられてお縄になりましたわ。この町の迷宮から発生する毒の解毒剤の材料だというのに、酷い話ですわ」


「そうなのか、ユイガさんも大変ですね。いつ頃出れそうか決まっているんですか?」


「看守から言われたのは三日間程で刑が決まると言われてやす。おそらくどっかの金持ちの期限付き奴隷になるんやないかと思いやす」


「奴隷になる刑もあるんですね。そういえば俺も鉱山奴隷って言われましたよ」


「お金で何とかなることも多いですが、人手が足りないこの町では奴隷になることが一般的ですな。よっぽどの悪さをしなければ死刑にはならないですし。まあ、あっしの場合何回か奴隷になったことがあるんですが、どの主人もすぐ亡くなってしまうんですわ。偶然といえど、恐ろしいもんですなぁ」


お巡りさん!この人です!

明らかに何かしているだろこのおっさん。


「そ、そう‥‥‥早く自由になれるといい‥‥‥ですね」


心配しなくても数日中に元気にキノコ狩りに出かけることだろう。


もう一人の囚人に目を向ける。どこかで見たと思ったら昨日会ったばかりの親方だった。


「親方じゃないですか?深岩商会の」


親方は目を細めてこちらを見た。


「どこかで見た顔だったか?」


やはり覚えていないらしい。


「昨日、人違いで深岩商会の採掘を手伝わされたんですよ。そしてオリハルコンを掘ったのは俺です。良かれと思ってやったんですが、迷惑をかけてすみませんでした」


「お主だったのか。気にすることはない。希少金属が出てきた場合慎重に行動するよう、ミゲルにしっかり言っておかなかった俺の責任だ。こちらこそ、お前さんが捕まるきっかけを作ってしまってすまなかった」


「起こってしまったことは仕方がないですよ。それより、これからどうするつもりなんですか?」


親方はしばし考えて口を開いた。


「そういえば、自己紹介をしていなかったな。俺の名はデルという。深岩商会の代表をしている。俺のことはデルでも親方でも好きなように呼んでくれ」


親方呼び一択!!


「俺はハマーです。そして、何を隠そう10級ハンターです」


事実だ。


「よろしくなハマー‥‥‥どこか、この世界の人じゃない雰囲気を出しているな。俺が会ったことがあるのは三人だけだが。どうだ?あながち間違っていないだろう?」


何かを確信してる目だった。この親方は相当な経験をしているのかもしれない。


「ご想像通り異世界人です。この世界に来て一年も経っていません」


「やはりそうか。異世界人はどことなく普通ではない空気を出しているんだ。例えば、お主は異常に魔力量が少ない。感じられないほどに。他の者にとっては、ただの弱者に映るだろうが、見るものが見ればおかしいと気づくもんだ」


少なすぎて逆に違和感か、目の付け所が鋭いぜ。


「それで今後の方針だったな。俺はおそらく死刑になるだろう。この町が男爵領になってから、ずっと歯向かってきたからな。今までは鉱晶の迷宮の解毒剤を作れる唯一の錬金術師として生かされてきたが、最近入った錬金術師が代用品の開発に成功したらしい。しかし、どうも後遺症が出るまがい物のようだがな」


親方の薬も相当なもんだよ。ミゲルさんなんて目が血走ってたからな。


「死刑‥‥‥親方はそれでいいんですか?」


「俺はもう疲れてしまった。過去にこの王国の宮廷錬金術師時代に後輩に裏切られ、この辺境の地では罠に嵌められ投獄された。俺はまともに生きてきた。王国に住む人々の幸せのために。辺境の地に住む人々の幸せのために。だが、それは権力の前では無力であったということであったな」


親方の過去は知らない。そして、いじけモードに入っていることも分かる。俺も社内政治に嵌められて没落した過去がある。かつての自分を見ているようでイライラしたが、なるべく興奮を押さえて語りかける。


「ミゲルさんは諦めていなかったですよ。商会が放火にあって、半焼しても、淡々と自らがやるべきことを考えていました。親方の考えに則って」


「待て!商会が火事になったのか?」


「そうですよ。商会の人たちが必死になって消火していました。あの人たちが休みも無しに毎日ボロボロになって働いているのは親方の考えに賛同しているからじゃないんですか?この辺境の町を守れるのは親方だと、黒鋼騎士団だと分かっているからだと思います」


「そうか‥‥‥そうだな。俺がいじけている訳にはいかないな。ありがとうハマー」


ようやく親方の目に火がともった。


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