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辺境の騎士団10

「燃えてるね」


立ちすくむ俺の耳にシドの声が響いた。その声を聞いてハッとした俺は消火活動中のミゲルさんに声をかける。


「手伝います。建物を完全に水浸しにしていいですか?」


燃えている深岩商会の建物の前では多くの作業員が消火活動にあたっていた。しかし思うように火が消えていなかった。


「水属性の魔法を使えるやつが多くなくて困ってたんだ。頼めるか」


俺も5大属性魔法はほとんど使えないが、使えるやつが近くにいる。裏路地に入り、影の世界にいるジグルに呼びかける。


「合図を出したらありったけの水属性魔法を影収納から出せ!火を消すためだけに使うから水圧を押さえろよ」


「わかった。準備しとく」


俺の必死さが伝わったのか、ジグルは状況をいち早く把握した。こういうところは素直でいいんだよな。


影収納を商会の上に出現させジグルの発生させた水を出すように角度を調整する。しかし、距離があるからか、安定しない。


「しょうがないな。手伝うよ」


肩に乗ったシドが魔力を発生させ、俺の魔力に沿うように送った。見る見るうちに影収納が安定した。


「ジグル、いつでも出して良いぞ」


その瞬間、大量の水が溢れ落ち、瞬く間に火が消えた。

シドは障壁を展開し、水が少しずつ溢れ出るように調整していた。こういう細かい気遣いをするところが、こいつの憎めない所である。


「助かったよ、ハマー。とんでもない魔法を使うんだな。あの空中に出した影の魔法はまるで転移門だな。いや‥‥‥深くは聞かない。とにかく、ありがとう」


やはり今回の件は違和感たっぷりだったようだ。


「なんで火事になったんですか?」


「おそらく放火‥‥‥だ。昨日オリハルコンを採掘しただろ?その情報を得た男爵家の者が親方に交渉しに来たんだ。およそ相場の半値以下で。脅しも込みで色々言っていたが、親方は首を縦に振らなかった」


そりゃあ、そんなに需要が高い素材をあえて男爵に売る必要なんてないよな。


「男爵の使いは苛立って帰っていってすぐに白剣騎士団が来た。違法薬物の流通の容疑で。そしてその違法薬物はオリハルコンから作られている恐れがあるとしてオリハルコンも一緒に持っていかれたんだ」


絵にかいた悪代官だな。いずれ水戸黄門が懲らしめることだろう。


「俺らも武闘派で鳴らしているし、黒鋼騎士団ならいざ知らず、白剣騎士団なんぞに遅れを取るとは思えねえ。しかし、親方は俺らを止めた。ここで深岩商会を潰す訳にはいかないって‥‥‥そんな中、オリハルコンの置いていた倉庫から急に火の手が上がりこの有様さ」


「大変だったんですね。すいません、俺がオリハルコンなんか掘りあててしまったせいで」


きっかけになってしまったことは間違いない。そして少し、いや、かなり調子に乗っていたことも間違いない。出る杭は打たれるとはこのことだ。


「気にするな。お前は何も悪いことをしちゃいない。あと、申し訳ないが、お前の取り分は少し待ってほしい」


「いつでもいいですよ。旅ができる最低限のお金で生きていけますから」


金なんてジグルとマスターがいればいくらでも稼げるから本当に気にしないで欲しい。それより商会を立て直すことに注力して欲しいよ。


「ここら辺で火事が起きたようだが、もう鎮火しているな。よし!問題無し!」


にやにやしながら三人の騎士が来た。白い鎧に長剣を腰にさした白剣騎士団だ。


「おかげさまで全焼は免れました。何とか隣に大きな迷惑をかけることもありませんでした」


ミゲルさんが、漏れ出そうなほどの怒りを必死に隠しながら応える。


「それは、なにより。しかし、そこの男についてきてもらおう。ベビータイガーの窃盗とオリハルコンの不正入手の嫌疑がある」


ええ‥‥‥俺かよ。


「承知しました!それは冤罪ですが、証明できるまで騎士団様の言うとおりにします!」


暴れて逃げることも簡単だが、深岩商会に迷惑がかかりそうだから素直に着いていくことにした。騎士団も少し驚いていた。


「そ、そうか。それなら着いて来い」


ミゲルさんが何かを言おうとしたが、大丈夫だという視線を送って黙らせる。

騎士団に対し抵抗はしなかったが、まるで罪人のように大げさな手錠をはめられた。手錠には青い石がはめられていて魔力を封じる効果があるようだ。


「はあ‥‥‥」


大きなため息をついてとぼとぼと騎士団と一緒に歩き、シドはどうでもいいといったような態度で小さいカゴに入れられて運ばれていった。


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