辺境の騎士団8
鉱石の採掘は10人が掘って10人が仕分け・運搬で行われている。全員が全員、強度が高い魔力を纏っていて相当な実力者揃いだ。
「マルス、バルスまだいけるか?」
「はぁはぁはぁ、まだまだいけます!」
二人ともフラフラになりながらも頑張っていた。魔力は枯渇寸前で、そろそろ限界かも知れない。
「二人とも休んでな。俺が二人の分もやるから」
シドの魔力とジグの大森林で過ごした日々が、俺の体力を飛躍的に向上させていた。はっきり言ってこの程度の労働は朝飯前だ。
「ミゲルさん、この二人限界みたいなんで休ませますよ!」
狂ったようにつるはしを振っている後ろ姿に声をかける。この深岩採掘隊の中でも圧倒的なエースかもしれない。
「ひゃっはーーー!!!休ませとけ!!!初日でそれだけやれれば十分だ!魔力が回復しないようならこれを飲ませとけ!」
白い粒の増強薬を3粒もらう。
「シド、これは大丈夫な薬なのか?」
シドは俺の掌にある白い粒をまじまじと見た。
「これは、大丈夫な薬だね。依存性も無さそうだし、毒消しの効果もありそうだ。相当な技術の錬金術師が作ったものかも。どこかの神の力も感じるから使徒かもね」
まともな薬なのかよ。ということは、ゾンビのようになっていたのは過労ってことか?
「どうせハマーはこの薬はいらないだろうからボクがもらうよ。ユグドラシルから同様なものが採れるようになるかもしれないし。あと、この迷宮はやっぱり毒を発しているね。無尽蔵に鉱石を採れる代償なのかも知れないけど‥‥‥」
「了解。それじゃあ気合を入れて始めるか」
仕事に取り掛かる。高速仕分け(当社比)、高速運搬(当社比)を駆使して広場に鉱石の山を築いていく。
「すげえなお前!新入りとは思えない働きっぷりだな!」
ベテランと思わしきおっさんに褒められる。調子に乗ってもっともっとスピードを上げていく。
「ハマー、あそこが何か気になるかも」
そんなこのクソ忙しい時に、鉱石の山のてっぺんでのん気に寝ころんでいたシドに声をかけてきた。シドが気になるという箇所は少し壁の色が濃く、よく見ると魔力が溢れている気がする。
「確かに、何かありそうだな。ミゲルさん、つるはしを使いますよ!そこの色違いの壁掘ってみます」
「そこは、ミゲルでも掘れない硬い硬い壁だぞ、新入りがやれんのか?」
一人のおっさんが野次を飛ばしてくる。やれるかどうかは分からない。ただ、なんとなくやれる気がする。
いつも以上に魔力を循環させる。最近、ある一定量を超える魔力を循環させると黄金色の魔力が現れることが分かった。今、皆からは俺の魔力は黄金色に見えていることだろう。
「おお‥‥‥」
作業しているおっさん達もただならぬ空気を感じて、手を止めて見ている。
「弧月斬!!!!」
某格闘ゲームで好きだった技名を叫びながらつるはしを振り下ろした。黄金色の魔力を帯びたつるはしは美しい弧を描き迷宮の壁に撃ち込まれた。
撃ち込まれた点を中心に放射状にひびが入り、壁が崩れ落ちた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
少しの静寂の後、驚愕の歓声が起きた。
「また、なんかやっちゃいました?」
お決まりのセリフを言ってみたが、誰も聞いちゃいなかった。
「中にあるのはオリハルコンだね。それもけっこうな量がありそう」
「どんな金属なんだ?」
「強度も魔力耐性もあって便利な金属だよ。神機との相性もいいから結構高額で取引されるんじゃないかな」
深岩商会の作業員が集まってきて、オリハルコンを見て固まっている。
「こいつはまいったな、まさかオリハルコンが出てくるとは‥‥‥しかも500kgはあるな。お前ら!ここで見たことは他言するな!他所にバレると大変なことになるぞ!」
やっぱり大事になったな。シドがトラブル体質過ぎて嫌になるよ。まあ、それを言ったら俺も同様なんだけど。
「今日はこれで終わりだ。金額で言うと1年間分のノルマも達成しているし‥‥‥採掘した鉱物を商会の倉庫に運んだら全員で飲みに行くぞ!」
「よっしゃーーーーーーーーーーーー!!!三か月ぶりの休みだ!!!」
怒号のような歓声が上がった。中には三か月ぶりの休みだという声も聞こえてきた。ブラック企業も真っ青だろ、これ。
鉱石を荷台に載せて迷宮を後にする。帰り道は全員が健康な人間になっていた。部活帰りのさわやかな男子生徒のようだった。




