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辺境の騎士団7

翌朝は早く‥‥‥起きられなかった。起きたら昼を過ぎていた。飲みすぎて鈍頭痛がする。水属性魔法で顔を洗い眠気を取り去る。


水属性魔法がどうして使えるかって?全属性魔法適性のあるジグル先生に教えてもらったからだよ。死ぬほど水圧の弱いシャワー程度の水しか出せないがな。


朝起きて今日もジグの大森林の門番と会話をしに行く。


「騎士さん。この魔物ってどっから沸いてくんの?無限に出てくる訳じゃないんでしょ?」


「それは俺にも分からん。ただ、ジグの大森林の中に迷宮があって、そこの中から出てくるって話だ。あぁそうだ。昨日誰かが迷宮の場所の地図を事務所に届けたらしく、団長が調査を領主に提案したが、鼻で笑われて却下されたらしい。昨日ジグの大森林に入ったハンターはお前とユイガだけだから、だいぶ絞られるんだけどな‥‥‥」


何か言いたげな様子で俺を見てくる門番だが、俺はそれを意に介さず——


「お仕事お疲れ様です!それじゃハンターギルドに行ってまいります!」


——逃げた。


ハンターギルドに行く。昼過ぎだからか、ガラガラだった。10級ハンター用の依頼掲示板を見る。


・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・発掘兼荷物運び(鉱晶迷宮)

・孤児院の手伝い


なるほど。鉱晶の迷宮に入ることができなければ依頼をこなせないようにできてるのね。

孤児院の手伝いは‥‥‥しないでおこう。


今日は仕事をしないでゆっくりと市場調査をすることにした。昨日シドといった市場の一角にある良さげなパブに目をつけていた。


早速入り、気が付けば目の前にエールが置いてあった。あるものは仕方がないから勢いよく飲む。昼に飲むエールは夜に飲むものと違った味わいがあった。


飲みながら市場を通る人を見ているとあることに気づいた。ハンターと思わしき人があからさまに顔色が悪いのだ。


「あれは、弱毒の中毒症状かもね」


いきなり後ろから少年の声がした。いつの間にかシドが影の亜空間から戻ってきたようだ。


「おそらく、鉱晶の迷宮のある地点で弱い毒が出てるのかもね。それを知ってか知らずか低ランクハンターに荷物運びをさせてるんじゃないかな」


この世界は元の世界に比べて格差が大きい。貴族は非貴族のことを人間とすら思っていないのかもしれない。そしておそらく、弱毒の存在も知っておきながら依頼を受けているハンターギルドも同罪だろう。


どこの世界でも弱者は搾取されてしまう現実に少し嫌気がさし、気分転換に第三区画内にある商工区画を見て回ることにした。


商業区画は整然としていたが、いたるところに商人が行き交っていて活気があった。そんななか、とある店の前に人ごみを見つける。


何をしているのか見ていると責任者らしき男がこちらに気づいた。


「遅いぞお前!なにをしている。さっさと並べ!」


胸に付けた石のハンター証を見て勘違いしたようだ。


「ちがっ!」


勘違いだと伝える前に強引に列に入れられた。遠目で見ても病的なほど顔色が悪かったハンター達だったが、近くで見たらほぼゾンビだった。


20人程の集団で練り歩く様は、さながらウォーキングデッドだった。


「こんにちはー。元気ですか?」


隣を歩いていた青年に話しかける。中肉中背で目にかかるほどの長く暗い茶髪が大きく顔にかかり表情が見えない。


「‥‥‥げんき‥‥‥」


覇気がまるで感じられない。


「あ‥‥‥元気じゃなさそうですね。体調悪いなら今日は休んだ方がいいですよ」


「‥‥‥迷宮に着いたら薬がもらえるので‥‥‥そこまで行かないと‥‥‥」


風になびいた前髪から血走りながらも焦点が定まらないうつろな目で答える。毒に加えてヤク漬けかい!あまりにも闇が深すぎる。


「そう‥‥‥それじゃこのまま行こう」


歩きながら誰も会話をしようとしない。明らかに奇妙な集団だが、町の人は全く気にしていない。よくある光景のようだ。むしろ応援されている節さえあった。


「シド、こいつらどうにかできないのか?」


「とりあえず迷宮内に行ってどんな毒か特定して、あとは彼が飲んでいるっていう薬を手に入れることができれば、亜空間にいる世界樹君が何とかしてくれるよ」


「そうだな。ユグドラシルがいれば大抵なんとかなるな。それじゃこのままついていこう」


町中を30分ほど歩き、ジグの大森林と反対側の門を出る。平原に小高い丘があり、その中に迷宮の入口があった。


「よし!深岩商会、全員揃っているな!いつも通り作業を始めろ!今日も通常ノルマだ。あと、今日から新人が三人入る。ミゲル、こいつらの面倒を見てやれ」


「‥‥‥わかりました‥‥‥」


ボスと思わしき男が指名したのはさっきの青年だった。ミゲルという名前のようだ。そしてこのゾンビ集団は深岩商会というきちんとした名前があった。


ミゲルはボスから袋を受け取り、こちらに歩いてきた。


「‥‥‥いきなり採掘は厳しいだろうから‥‥‥今日は‥‥‥荷物運びと採掘した鉱石の仕分けをしてもらう‥‥‥中に入る前に自己紹介をしろ‥‥‥」


周りを見たら俺の背後に二人の少年がいた。二人とも顔がよく似ている。おそらく兄弟だ。


「俺はハマーだ。つい最近この町に来たばかりだ。よろしくな」


「僕はマルス」

「僕はバルス」


「二人は兄弟なのか?」


「うん。僕が兄で14歳。弟は13歳。この町の第四区画の孤児院で育った」


「二人ともこの町の出身なのか。美味い飯屋とかいろいろと教えてくれな」


二人とも静かに頷いた。人見知りなのかもしれない。


迷宮は洞窟型の迷宮だったが、思った以上に中は広かった。しかし、道はアリの巣状になっていて分岐が多かった。道中には採掘場と思われる広場がいくつもあり、そこで作業員がつるはしを持って壁を掘っていた。


作業員の動きは緩慢で、やはりこの迷宮は毒が回っているようだ。


もう一つ気になったのが、俺らの集団が近くを通るとあからさまに嫌な態度を取るということだ。理由ははっきりとしないが、ゾンビ集団が嫌われていることは間違いないようだ。


広場を20個以上過ぎてようやく現場に着いた。迷宮は奥に行くに連れて作業している人は減り、ここまで来ると俺ら以外誰もいなかった。


「‥‥‥ここが、俺らの採掘現場だ‥‥‥」


先に進んでいたミゲルはそういって広場に入っていった。広場の中心には直径4m程の紫色のスライムの魔物が待ち構えていた。


ミゲルはその魔物を一瞥するとナタのような大振りの刃物を構え振り下ろした。

振り下ろしたナタからカマイタチのような刃が放たれ、魔物は真っ二つに切り裂かれデロデロの水たまりができた。


「‥‥‥それでは、採掘を始める‥‥‥各自に増強薬を配るから並べ‥‥‥」


ミゲルは、先ほどボスのような男からもらった袋から白い粒を一人ずつに配り、最後に自ら一粒飲み込んだ。


「ひゃっはーーーっ!!!お前ら!!!今日もやるぞ!!!」


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


先ほどのゾンビ集団が覚醒した。


「えっほ!えっほ!えっほ!えっほ!えっほ!えっほ!えっほ!えっほ!えっほ!えっほ!えっほ!えっほ!」


高速でつるはしを振るい、みるみるうちに鉱石が積まれていく。


「新入りぃ!!色ごとに鉱石を分けろ!量は少ないけど薄緑のミスリルと薄紫のルナライトは見逃すんじゃねーぞ!高く売れるからよおおお!!!」


「マルス、バルス、動け!とにかく動くぞ」


唖然としている二人に声をかけ、考えるより動くことを優先させる。今日は長くなりそうだ。


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