辺境の騎士団4
「いやー飲んだ飲んだ。夜風が気持ちいぜ!」
たらふく飲んで宿屋に戻る。50mほどの距離だ。
「おい、止まれ。こんな夜中に何をやっている」
白い装備に身を包んだ三人組の騎士に声をかけられる。ニヤケ面が気に食わない。
「そこの酒場で飲んでこれから帰るところですよ。お勤めご苦労様です!」
明るく元気に「やましいことは無いですよ」と挨拶をする。
「最近ペットの盗難の話があってな。お前が連れているそのベビータイガーと全く同じ毛並みなんだ。まさかとは思うが‥‥‥詳しく話を聞かせてくれ。詰め所がすぐそこにあるから」
このゴミどもが。酔いもあって神々波をぶっ放してやろうかと思った矢先、ユイガさんが土下座した。ものすごい勢いで。
「滅相もございやせん。このベビータイガーはこの者を親と思っているため、一時でも離してしまうと自害をしてしまう恐れがありまっせ。それに、この者どもは本日この領に来たばかりでございまっせ。紛らわしく大変ご面倒をおかけしやした。こちらをお納めください!」
土下座をしながらまくしたてるユイガさん。そして幾分かの硬貨が入っているであろう袋を渡す。
その姿を見て泣きそうになる。俺は驕っていたと。シドの力をむやみにぶっ放して解決しようなんて人を逸脱した行動だと。人としての生活をするためには事を波立てないようにしなければならないと。
「お‥‥‥おぅ」
さすがの騎士団もドン引きしていた。しかし、手にした袋に違和感を感じたのか、袋を開けて確認した。
「キ‥‥‥キノコやないかい!金貨かと思いきやキノコやないかい!!!」
キノコかよ!この状況でキノコを渡せるユイガさん、メンタル強者過ぎるだろ。さすがにシドも笑っている。
「この無礼者!切り捨ててやろう!」
腰に差している白い剣を抜く——
「何をしている!」
黒で統一された装備——黒鋼騎士団だ。
先頭の女性が剣を抜こうとした騎士に詰め寄る。
「ちっ!行くぞ!壁内の問題は俺らに任せておけば良いものを。このことは越権行為として報告させてもらう!」
あからさまな捨て台詞を吐いて去るカツアゲ騎士達。
「大丈夫か?恥ずかしいことだが、今のこの町はあまり治安が良くない。できることなら夜中はあまり出歩かない方が良い」
黒がかった茶髪でロングヘアーの女騎士だった。白い肌と切れ長な目、正統派の美人だ。身長は高く170cmはありそうだ。これが、さっきおっさんが言っていた団長だろう。話を聞く限り、勝手にゴリラのイメージを持っていたが、こんなに可憐な女性だったとは。
「ありがとうございます。この度は助かりました」
エリオスがお礼を言う。この正義感が騎士の汚職を見て声を上げないのは違和感がある。何か理由があるのだろうか。
ユイガさんも土下座を止め礼をする。
「ありがとうございまっせ!お礼としてこれを受け取って下さい!」
キノコの袋を差し出す。さすがにダメだろとエリオスと俺で慌てて止める。改めて礼を言って宿屋に戻った。
部屋の中でシドと話す。
「なぁシド、この町はどうなっていくと思う」
ただシドの意見を聞きたかった。
俺自身、俺の力でこの町を良い方向に持っていくつもりはない。俺は領主ではないし、この町に思い入れもない。ただ、酒場のおっさんのように権力者の方針で自身の想いとは逆の方向に流されてしまうのを不憫に感じただけだ。
法が権限を抑制していた日本と比較すると、この世界はまだまだ未成熟だなと思う。
「この町に住む人にはかわいそうだけど、一度滅ぶかもね。腐敗が進むと、力のある人しか生き残れないんだよ。この国も建国してから長いんじゃないかな。だから一部の貴族が力を持ってそれをより強固なものにするために、いろいろするのかもね」
「そうかもな。権力は人を狂わせるよな」
「ハマーは好きにしたらいいよ。領主の家を神々波でぶっ飛ばしても面白いんじゃない?そうすれば一気に賞金首で有名になれるね。ハハッ!」
神ゆえの破滅的提案。こいつらは破壊してから長い年月かけて文化を創造すればいいんだからな。
まぁ‥‥‥なるようになるか。
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深夜、目を覚ました俺は影の世界へ転移する。
「待っていました、待ちくたびれましたよ」
そこにはひげを蓄えた中年の妖精人がいた。
「マスター、待たせたね。お願いしていた情報は手に入ったかな」
彼はコガン妖精人王国でバーを経営していた男だ。ゴーレムのクラティオスを助けた後、バーで飲もうとしたところ偶然、逃げる彼を見つけた。どうしても彼の店で飲みたかった俺は、彼を影収納に入れて戻った。バーに戻って影収納から取り出すと、彼はどこかの国の諜報員だということが分かった。
そのまま帰しても良かったが、どうせだったらということで同じ妖精人のジグルと一緒に影の世界の管理をしてもらっている。
本人も意外と気に入っているようだ。
「まだ半日しか経っていないんで半端な情報ですけど‥‥‥とりあえずこの町には白剣騎士団と黒鋼騎士団の二つがあり、白剣騎士団が内地、黒鋼騎士団が外地を担当しているようです。外地はジグの大森林と隣接しているため魔物と対峙することが多く、黒鋼騎士団の方が精強なようです。ちなみに黒鋼騎士団は地元もしくは辺境出身者で構成され、この町への愛着があります。一方現男爵が集めたと言われる白剣騎士団は汚職にまみれていて住んでいる人々から評判は非常に悪いですね」
だいだい酒場のおっさんが言った通りだな。
「後は男爵家に変わってから鉱晶の迷宮から採掘される金属の量は多くなっているんですけど、流通量はむしろ減っている感じですね。誰が何のために蓄えているのか分からないですけど、もしかしたら何か起きるかもしれませんね」
ハンターギルドがジグの大森林の依頼を受けず鉱晶の迷宮の採掘に力を入れる。だけどそれが十分に流通されていないということは‥‥‥普通に考えると寄り親の指示だよな。
「もう一点、これは定かではないのですが、ジグの大森林の魔物の数が増えているようです。もしかしたら、未発見の迷宮がスタンピードを起こす予兆かもしれません。」
盛りだくさんだな。お腹いっぱい。明日ジグの大森林に行ってみよう。というか深層から来たせいか、むしろ魔物が少なく感じてたっての。
「ありがとう。引き続き情報収集をしてくれ。くれぐれも安全第一で頼むな。あぁ‥‥‥あと‥‥‥お金貸して!!!」
自慢じゃないが一文無しだ。なぜならモンドからもらった金はマスターにぶんどられたから。
マスターは軽いため息をついて袋を差し出した。
「そうじゃないかと思って魔獣の魔石を売って準備しておきましたよ」
さすが!できる男は違うね。
その袋を懐に仕舞い、影を発動し元の世界に戻る。
ちなみに、マスターとジグルには影魔法を覚えさせている。
ユグドラシルに“黒霧の狩神”ヴァル=ライクの神性魔力を注いだら、なぜか“影魔法の実”ができて、それを食べたら使えるようになった。ご都合神過ぎて毎日感謝している。毎日祈っている。




