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辺境の騎士団2

町には一時間ほどで到着した。ブロリという名のゴゴ王国の辺境の町で、男爵領だという。


「随分と高い城壁だな。まるで要塞だな」


背伸びをして城壁の高さを味わう。


「ジグの大森林に面している町は魔物に襲われることもあるから、壁が高く砦みたいな作りになりやすいんだよ。そしてこのブロリは辺境にしては大きい町でハンターのレベルも高いって噂だ」


エリオスが解説してくれた。ここまで一緒に旅をして気が付いたが、エリオスは間違いなく育ちがいい。そこら辺の貴族の嫡男と言われても驚かないくらいには。


町の入口は見えるだけでも三か所あった。真ん中に大きな門、その門を中心に左右100m程離れた場所に小さな門が一個ずつの計三か所だ。


ユイガさんは真ん中の大きな門へ向かっていった。


「初めて見る顔だな。それもジグの大森林側からとは‥‥‥」


二人並んでいる内の一人の門番が声をかけてきた。門番の身なりは新品の装備ではなく、十分な実践をこなしよく馴染んでいた。二人とも黒色を基調とした装備だ。よく見ると二人とも生傷があり、おそらく、この町をジグの大森林の脅威から守るのは、生傷が絶えないほど困難なのだろう。


「へい、あっしがジグの大森林でキノコの毒を喰らって倒れているところを、お二人に助けていただいたんでっせ。お二人が危険人物では無いことはあっしが保証するので通していただけまへんでしょうか」


「まぁユイガさんがそういうなら‥‥‥ただしこの町のルールに反するような事はさせるなよ。初回の入領税で銀貨一枚だ」


門番は少し考え、そう言った。


俺とエリオスの二人は大して危険な事はしないと思うが、連れているベビータイガーはものすごく危険だ。こいつは今のうちに捕まえた方がいいんじゃないか?


「ここは俺が払うよ」


エリオスがさっと入領税を払ってくれた。さすがエリオス様!かっこいい!イケメン!!


「調子が良いことを言わなくていいから、早く入ってハンターギルドに登録しよう」


はい、しっかり発音していたようだ。


「ハンターライセンスを取得し、出入りするときにライセンスカードを提示すれば、自由に行き来していいのかな?」


エリオスが確認する。


「あぁ、ハンターランク10級~8級は第三区画までなら問題なく入れる」


なるほど。中は区画で分けられていて、権限によって入れる区画と入れない区画があるんだな。


「それと、一つ忠告なんだが、そのめずらしい毛並みのやたらかわいいトラはしっかり管理した方がいいぞ。この町の治安は悪くはなかったんだが、最近はそうでもなくなってしまったからな。我々騎士団がそのようなことをいうのは申し訳ないが‥‥‥」


どういうことだ?騎士団の立場で言えないということは同じ騎士団もしくは同等の立場の集団か?まぁ入ればわかるか。それに、シドは盗んでも盗まれない確信がある。むしろ、誰か盗んでくれ!


門をくぐり町の中に入ると、500m先に次の壁があった。門番が区画と言っていたように区画ごとに入る権限が必要で、その区画は壁で隔てられているようだ。


「この道は第三区画まで続く道でっせ。第四区画は‥‥‥ある種スラムのようなもので、身寄りの無い子供や落ちぶれたハンター、元犯罪者などが住んでいる区画になりやす。地元の人たちもめったに近寄らない区画でっせ」


スラムか‥‥‥近くの辺境の村からこの町に移住した人々がメインの住人なのだろうか。この世界では元居た世界より格差が大きそうだが。


「第四区画に住んでいる人はこの町の四割になると言われていやすが、本当のところは分かりやせん。犯罪なども多く実体を把握できていないというのが真実ですな。あとは上流階級の住める第二区画や領主などの権力者が住める第一区画がありますが、あっしに関係ないことなんでまったく分からないですわ。ただ、あの趣味の悪い大きな建物は領主の家見たいですが」


話しているとすぐに第三区画の門にたどり着いた。こちらもユイガさんが説明し問題なく入ることができた。


町は意外と整然としていたが、すべての家は分厚い石造りで窓には鉄格子がはめられていた。それはこの町に住む人がジグの森の辺境で生活することへの覚悟に思えた。


「自由都市のような華やかな街並みもよかったですが、この質実剛健な機能美も良いもんに感じられてきたんですわ。どこも住めば都、ですな」


ユイガさんはしみじみという。

この世界には自由都市というハチャメチャそうな都市もあるんだな。自由の国アメリカみたいなもん‥‥‥ではないだろうな。


「この先がハンターギルドなんで案内しまっせ」


重厚な扉を軽々と開け、中に入った。夕方だからか、依頼終わりのハンターで賑わっていた。


俺らが建物の中に入った時、一瞬静まり返ったような気がした。


それを不思議に思いつつ、まっすぐ正面のカウンターに進むユイガさんに着いていく。。


「すんまへん、こちらの方がハンター登録したいようで連れてきやした。登録をお願いしてよろしいでっか」


受付は若い女性だった。暗めの茶髪のボブのヘアスタイルが小柄で細身の彼女に似合っていた。ハンターの男どもに人気がありそうだ。


だが、この受付はユイガさんに対し営業スマイルは崩さないが、明らかに嫌な‥‥‥まるで拒絶のようなオーラを出している。


「二名様でしょうか。それではこちらに署名し、発行されたライセンスカードに魔力を流してください。それがあなた専用のライセンスカードとして登録されます」


「俺は登録をしない。あくまでハマーの付き添いだ」


エリオスは3級ハンターだ。だが、それを明かさないということはハンターギルドを警戒しているということだ。まぁ別のギルドといえど罠に嵌められて、殺されそうになったんだからそりゃそうか。

俺は出された書類にサインをする。丁寧に、心を込めて『ハマー』と。


「それではハマー様の一名分を発行しますね。ライセンスカードは証であり章でもあります。無くさないようにお願いします。」


少し待つと、受付がⅩと彫られた薄い石のライセンスカードを持ってきた。裏側にハマーと書いてある。魔力を流す。どういう理屈かライセンスに魔力が定着し、ハンターとしての身分を証明することができるらしい。


「あと、注意点があります。あくまでハンターは自己責任です。ハンターの行動にギルドが責任を取ることはありませんが、法律の範囲内で行動をお願いします。また、重大な犯罪を起こしたハンターには賞金がかけられ、全ハンターから命を狙われることになります」


自己責任、都合の良い言葉だよな。まぁいいや、自由にやっていいという保障でもあるんだから。


「また、ブロリ町のハンターギルドでは、ジグの大森林に立ち入ることを禁止しています。最近、魔物が多く低ランクハンターでは命を落とすだけだと判断しました。同意される場合は、この書類にサインをお願いします。もし、サインいただけない場合は、鉱晶の迷宮への立ち入りを禁止させていただきます。また、個人の判断でジグの大森林へ行くことは自由ですが、その行為をハンターギルドが認識をした場合、その方に同様の措置を取らせていただきます」


なんか、一気にきな臭くなったな。ユイガさんと会ったのはジグの大森林だ。受付が拒絶の空気を発していたのも納得した。そして俺は、ハンターギルドの意向に従わない問題児が連れてきた、問題児予備軍という扱いになるのかもしれない。


ハンターギルドにめをつけめを付けられるということは、この町のハンターが敵に回る可能性も高い。またまた問題が起きそうな流れに眩暈がする。


「鉱晶の迷宮がどんなものか知らないけど、同意はしなくていいかな‥‥‥いづれにしても登録ありがとう」


石のライセンスカードをひらひらと振りながら礼をする。受付は不快感を隠そうともせず、俺の礼を無視した。


そんな彼女を横目で見ながら、そのままギルドの外に出た。


「ようやく出てきたな」


白い毛並みの獅子のような人族のハンターが声をかけてきた。


「悪いことは言わないから、ギルドのいうことを聞いてジグの大森林に入らない方がいいぞ」


親切そうに見えて目は笑っていない印象だ。


「なんでですか?」


「この町の迷宮で鉱石を掘っているだけで稼げるからだ。俺は商工ギルドにも顔が利くからいい仕事を紹介してやろう」


「おお!お気遣いありがとうございます。でも、この町に今来たばかりなので、少しゆっくりしてからにします」


初対面に紹介される仕事なんて搾取以外考えられないだろ。


「いつまでも仕事があるとは限らない。早く決断することだな」


そう言い残し獅子人のハンターは去っていった。


エリオスはその背中をにらみつけていた。


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