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【幕間】炎の巫女カグラ4

この迷宮内で殺されてからどのくらいの時が経つのだろう。幾人も贄として送り込まれ迷宮に取り込まれる。その繰り返し。私は霊体として転移してきた人に話しかけるも一人も私に気づいた人は——いない。


ミノタウロスや巨大熊やジェドさえも私に気づかない。


迷宮の中を隅々まで探索してみたけど特に何もなかった。そして迷宮の外に出ることができないことを理解した。


何もできない日が続いていく。長い長い間‥‥‥


ある日一人の人族が転移してきた。また、いつもと同じで私を見れない人だと思った。今日の人はミノタウロスの近くに転移したようだ。まだ、戦闘していないようだが、時間の問題だ。


ミノタウロスを攻略できた人間は一人もいない。ある種の絶望を感じながら、現場に向かう。


そこにいたのは赤い宝珠のネックレスを身に着けている青年だった。歳は20代半ばだろうか。どこか兄の面影がある。間違いない、彼は「熾焔の神ヴァルグナ=イグニス」様の使徒であり、兄の子孫だ。おそらく私の大甥。


今分かった。私は何としてもこの子を助けなければならないのだと。


ちょうどその時迷宮に誰かが入ってくる気配がした。とても微弱な魔力だった。でも‥‥‥藁にもすがる思いで入り口に向かう。


そこにいたのは、気配通りの微弱な魔力しか持たない人族の青年だった。連れている魔物はよくわからない生物だった。


しかし、彼らが今まで転移してきた人と違ったのは私のことを認識できたことだ。


すがる思いで人族の青年を止める。それを理解したベビータイガーが私を青年に見えるようにしてくれた。そして意思をつたえるようにも。


青年のハマー、ベビータイガーはシドと名乗った。


ハマーもシドも凄く弱そうだけど、私の大甥を助けるために力を貸してくれると言ってくれた。だけど私は分かっていた。この子たちじゃミノタウロスはおろか、この迷宮にいる全ての魔獣に勝てないことを。死地に向かわせてしまうことに罪悪感を感じながら私は大甥を助けに向かう。


1時間ほどの距離をハマーはもの凄い速さで走った。中級ハンターでも可能かどうかわからないほどの速さだった。相変わらず魔力は感じられないが、普通の人ではないような予感がした。


私の大甥はちょうどミノタウロスと戦っていた。毒を受けているのか動きが鈍かった。


ミノタウロスが魔法を使い長剣が飛ばされる。やられる——と思った瞬間、ハマーがミノタウロスの斧を振り下ろそうとする手を掴んでいた。どのように移動したのか全く見えなかった。


ハマーは難なくミノタウロスを討伐した。それを見届けた後、私は霊体になることができなくなっていた。「熾焔の神ヴァルグナ=イグニス」様の宝珠に私の魂の一部と一緒に結界に閉じ込められていた。


次に意識が戻ったのは、ハマーが私が閉じ込められている結界を壊した時だ。どのような存在も壊すことができなかった結界をいとも簡単に壊してしまった。


私の大甥が私の死体を燃やしてくれた。大甥の名前はエリオスというみたい。まじまじと顔を見ると兄に似てかっこいい。女の子にモテそうな顔立ちだ。


そんなことを考えていると奴が現れた。この迷宮を守る神獣のジェド。あいつを倒さなければこの迷宮を破壊することはできない。


エリオスは強かった。あの時の私よりも圧倒的に。エリオスは私の宝珠の力も使いジェドを追い詰めた。しかし絶対領域を破壊することができず魔力切れを起こしてしまった。


そしてジェドの精神攻撃をまともに受けたエリオスはまともに動けなくなっていた。


私は負けを確信した。人の身ではジェドに勝つことはできないのかと絶望する。


そんな中ハマーとシドを見ると二人でじゃれ合っていた。あまりに状況にそぐわない光景に言葉を失ってしまった。


少しじゃれ合った後にシドはベビータイガーから金髪の少年に変身した。膨大な量の黄金色の神性魔力に圧倒されてしまう。シドが上位神であることを否応にも気づかされる。「熾焔の神ヴァルグナ=イグニス」様よりもっともっと上の。


シドは誰も勝つことができなかったジェドをいとも簡単に、それも一撃で倒してしまった。ついでと言わんばかりに迷宮も破壊した。


迷宮内に囚われて解放されない魂は解放された。それは私の魂も同様に。



————————————————————



しかし、私はまだここにいる。赤い宝珠の中に。私の魂は宝珠に宿る神性魔力と混じり独立した魂となったようだ。先ほどまではカグラと意識を共有していたけど、今はない。


ということは‥‥‥当分の間はエリオスについていられるってことね。





当面の目標は‥‥‥夜中にハマーの枕元に立って驚かすこと、にしたわ。


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