【幕間】炎の巫女カグラ2
カグラが10歳になったころ、カグラの「炎の巫女」としての評判は揺るがないものになっていた。
迷宮は違う迷宮の使徒が中で儀式をすると活性化するという事実がある。カグラが儀式に参加し、マグナ一族に伝わる炎舞を踊ると未だかつてない効果があったと評判になり、あちこちから引っ張りだことなった。
そんな中、ルイジ伯爵家の「運命の神リュミエル」の迷宮で儀式を行って欲しいと要望があった。「運命の神リュミエル」の迷宮は英雄を輩出することで有名で、使徒とは違い迷宮由来の神の魔力ではなく、元からの能力に適した力を得ることができるということだった。
王都から馬車で二週間かけてルイジ伯爵領まで移動する。今回は王都の騎士団ではなくマグナ一族が護衛として一緒だった。護衛は王都の騎士団とマグナ一族が代わる代わる務めてくれていた。
ルイジ伯爵領はジグの大森林に近い領地だが、辺境では無いため魔物の数は少なかったため特に問題は起きなかった。
「運命の神リュミエル」の迷宮は、領都でもあるノコノ町から徒歩一時間ほどの利便性の高い迷宮だった。ノコノ町で領主であるルイジ伯爵とその長男、伯爵の騎士団と合流し迷宮を目指す。
ルイジ伯爵は60歳を過ぎていて優しいおじいさんといった様相で、長男はルイジ伯爵が30半ばの時にできた子供で一人息子のせいか、甘やかされて育ったボンボン貴族といった感じだった。ただ、カグラと挨拶したときの表情は野心を隠せぬ程ギラギラしていた。
「運命の神リュミエル」の迷宮は草原型の迷宮だった。迷宮内は常に上りつつある大きな太陽と瞬く星空が同居する幻想的な世界だった。儀式が行われる場所は太陽と星々が同居する場所にある祠で行われるということで、伯爵とともに向かった。
着いた場所には小さな祠があり、その前で儀式を始めた。太陽と星空、その前で炎を纏い踊る巫女。この世のものとは思えぬ美しい光景にその場にいたもの全てが見とれていた。
儀式が終わり、迷宮を出る準備をしている時に事件は起きた。何者かが一行を襲撃してきた。数はおよそ20。伯爵家の騎士団と迷宮の管理者であるマグナ一族を襲ってくるなど、無謀だと思われていた。
しかし、襲撃者は手練れが多く、身体能力を考えると獣人も半数近くいると想定される。襲撃者に上手く誘導され伯爵とカグラを守るマグナ一族が分離されてしまった。マグナ一族の護衛は族長リリを含む使徒3人、加護持ち6人、通常兵10人。しかし襲撃者たちの実力は明らかに加護レベルを上回っていた。
使徒を中心に襲撃者をはじき返すが、数的有利を作れずキリがない。じわじわと消耗させられ、通常兵が次々と倒れていく。「熾焔の神ヴァルグナ=イグニス」の神性魔法は強力だが消費も激しく連発はしたくない‥‥‥そんな思惑もあり決定打にかけた。
族長リリと加護持ち2名でカグラを守りながら逃げ、残りの使徒2人と加護持ち、通常兵で襲撃者の対応しながら時間を稼ぐという対策を講じた。
それが上手くいきカグラ達は逃げ切れた。逃げた先に伯爵家長男と護衛がいて、伯爵家にのみ伝わる、安全に逃げられる隠し通路があると案内される。
その先には迷宮の奥にあった小さな祠の色を黒くしただけのような祠があった。その中に入った瞬間——壁中に宝石が散りばめられたような美しい洞窟の中にいた。マグナ一族の加護持ち2名と伯爵家長男の護衛とともに。
マグナ一族族長リリと伯爵家長男は黒い祠の前に立ち、怪しく笑っていた。




