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運命の神の宝石たち5

料理魔法で取り出した料理は、まさに絶品だった。肉汁が口の中で弾け、野菜の甘みが舌の上で踊る。思わず頬が緩んでしまう美味さに、俺は心の底から満足した。


「うまい……これは本当にうまいな」


3級ハンターとして数多の街で美食を味わってきたであろうエリオスも、普段の冷静さを忘れて目を見開き、夢中になって料理に舌鼓を打っている。シドに至っては、もはや言葉を失って無心に箸を動かしていた。


だが、この料理魔法はあまり頻繁に使うべきではない。裏方で働く者たちへの負担を考えれば、節度を保つのが賢明だろう。


食事を終えて小休止を挟み、俺たちは再び迷宮の奥へと歩を進めた。相変わらず壁面には無数の宝石が散りばめられており、何かに呼応するかのように瞬いている。まるで星座のように美しく輝くそれらは、見る者の心を奪わずにはいられない。


「なぁシド、この宝石は何なんだろうな。めちゃくちゃきれいだけど、触れちゃいけない感じがするよな」


「これは、たぶん生物の生きてきた軌跡が宝石化したものなんじゃないかな」


シドが静かに答えた。


「だから色も違うし大きさも違う。でも全部きれいだよね」


これすべてが誰かの軌跡だと‥‥‥シドに言われると、そんな気もしてきた。深紅のルビーは情熱的な生涯を、青いサファイアは静謐な日々を、緑のエメラルドは穏やかな時間を物語っているかのようだ。本当に目が離せないくらい美しい。


「多分これは生物の軌跡を裁く神なんじゃないかな」


シドが続ける。


そうなのか。少し興味が沸いた。


「ちょっとうんこしに行ってくる。ここで待ってて」


ふざけた言い訳を口にして、俺はその場を離れた。残された二人は呆れた顔で俺のことを見ていた‥‥‥気がする。まあ、仕方がない。


少し離れた場所で、俺は影収納を発動した。取り出したのは亜空間を管理しているジグルだ。先ほどの料理魔法の裏方を務めてくれた重要な仲間の一人である。


「どうしたのいきなり」


妖精人のジグルが現れた。相変わらず端正な顔立ちだ。


「料理はもう勘弁だからね。マスターなんてへとへとになってたよ」


「すまんすまん」


俺は素直に頭を下げる。


「シドが味を占めたらしくてな。あんまり使わないようにするよ」


さすがの俺も、これは心から謝らざるを得ない。仲間の負担を軽く見るべきではなかった。


「それで、この迷宮なんだが、何の迷宮か鑑定してほしいんだ」


「ああ‥‥‥そんなことね」


ジグルがくるりと辺りを見回す。その小さな瞳に、迷宮の全体像が映り込んでいるかのようだった。


「この迷宮は『運命の双子神ノクティル』の迷宮だね。ランクは1230位。魔力の色は濃紺。メインの魔力属性は闇。過去や因果を裁定する神で、多くの人の軌跡を、人生を取り込んでるみたい」


ジグルの声が迷宮にかすかに響く。


「絶望の神とも言われてたんだって。双子神ってことは、もう一カ所同じような迷宮があって、そっちの属性は光なんじゃないかな。光と闇、希望と絶望——対となる存在として君臨している神なのかもしれない」


なるほど、それで壁の宝石が生物の軌跡、人生だというのか。この神は、生きとし生けるものの人生を見定め、その価値を判断しているのだろう。


それにしても迷宮鑑定。なんて便利な能力だ。


「サンキュー、助かった」


俺は心から感謝をした。


「なんか必要なものはあるか?」


「とりあえず用意してくれた木材とかで家は完成したから……まぁ二人だけってのは暇だから、移住者がいたら連れてきてよ。くれぐれも無理強いしないようにね」


「お安い御用だぜ。またな」


ジグルを影収納に戻し、俺は仲間たちの元へと歩き始めた。


運命の双子神か——。


運命なんて言葉が俺は好きじゃない。俺は珍しく苛立っていることを自覚した。運命とは、人が自らの意志で切り開くものであって、神に決められるものではないはずだ。


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