運命の神の宝石たち1
予定より早く出来上がりましたので、本日より確実更新していきます。
「僕らはみんな~ふ~ふふっふふ~」
「随分とご機嫌だね。ハマー」
森の中をスキップして進む。スキップし~ながら進むんだ~。
「ご機嫌にならないとやってられないからな。いつになったら町に出られるんだよ。基本的人権が尊重されていない。」
「コガン妖精人王国を拠点にして生活すれば良かったじゃん。一回大森林に戻ってから町に向かおうと決めたのもキミ。それに、影移動を使わない縛りだって言ったのもキミ。いばらの道を選んだのはキミ自身でしょ」
分かった、分かった。分かりましたよ!悪うござんした!!!隙を見せればがっつりオーバーキルをしてくるぜ。
「それにしても、世界樹を消滅させた件で注目を浴びすぎたからな。あの時は仕方なかったとはいえ、今は目立たない方がいい。まぁ迷宮でも探しながらゆっくり行こうぜ」
「迷宮見つけても入ったことないでしょ。せめて迷宮最奥まで行って神機でも手に入れればいいのに。ずっとただ歩いてるだけで暇だよ。歩いてるだけじゃ記憶が戻るきっかけも無いし。何か刺激的なこと起きないと、刺激的なことを起こしちゃうかも」
ついに猟奇的な行動をすると予告しちゃったよ。潜在的愉快犯は罪を犯している意識が無いから非常に厄介だよ。
今までは迷宮を見つけてもめんどいから入らなかったんだが、やはり少しくらい入った方が良かったな。
「よし、次の迷宮に入ってみよう。そして神機をゲットだぜ」
自分でもびっくりなほど軽いノリだ。
「話が分かるね。久しぶりに創造神っぽいことができそうかな」
ベビータイガーの機嫌も直ってきたようだ。俺は異世界に来て苦労してるし、シドも記憶を無くして苦労してるんだ。あれ?苦労してるよね、お互い‥‥‥?
まぁそんなくだらないことはどうでもいい。それにしてもシドはいつまでベビータイガーの姿でいるんだ。かわいいからいいけど。
「なぁシド。そういえば、いつまでベビータイガーの姿でいるんだ?」
「言ってなかったっけ。ボクはベビータイガーで定着しちゃったから戻れないんだよ。ずっとこのまま。ずっとかわいいまま」
二度と自分の姿に戻れないかもしれないのに全然落ち込んでない。鋼のメンタル。というか神メンタル。こいつをどうにかして不快にさせることが当面の目標だな。幸せにさせるのは美味い物食わせておけばいいから簡単だしな。
「そうか、良かったな。そんじゃ迷宮探索隊!行くぞ!」
今日も平和?に森を突き進む。少しすると都合よく迷宮が‥‥‥あるわけもなかった。
二日間の徒歩の末、ついに迷宮を発見した。薄緑色に光る湖面が木々の間に煌めいている。その湖畔に、古い石造りの迷宮の入口が静かに口を開けていた。
「すぐ見つかると希少性がないからな。長い間探し求めてようやく見つけたことで達成感が生まれるんだよ」
「希少性は世の中が豊かだからこそ生まれる考え方だよ。ハマーのいた世界は豊かな世界だったんだね」
希少性。それは豊かさの対義語だ。希少性を求めて今日もガチャを回していた日々が脳裏によみがえる。うっ、頭が‥‥‥
「‥‥‥早速入るか」
それは、洞窟型の迷宮だった。壁という壁に、エメラルドのような緑の鉱石が無数に埋め込まれている。それらは脈動するように淡く光り、まるで生き物の心臓のように明滅を繰り返していた。美しい光景ではあるが、静寂の中に潜む得体の知れない存在の気配を感じる。振り返っても誰もいないのに、背中に視線を感じる。
「なぁシド。誰かから見られてないか?」
静かすぎるからものすごく声が響く。
「そんな感じはしないけどなぁ。でもこの迷宮で結構な数の人が殺されてるみたい。輪廻の輪に加われない魂が滞留しているからそのせいかもしれないね」
「輪廻の輪に加われない魂って‥‥‥それは彷徨い続けている霊魂ということ‥‥‥?」
「実体は無いけど行き場の無い魂がそこら中にあるってことだよ。ほら、ハマーの肩にも止まってる」
「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーー!悪霊退散!悪霊退散!!!!」
「悪霊じゃないよ。可愛らしい容姿をしている女の子だよ。ん?何か伝えたいことがあるみたい」
自慢じゃないが、俺は心霊現象の類が苦手だ。いや、大嫌いと言っても過言ではない。しかし、しかし、神も魔力の存在するこの世界において、果たして幽霊を恐れる必要があるのだろうか。
自問自答した結果‥‥‥俺は逃げ出すことを選択した。出口に向かって全力疾走!
「もうすぐ出られる」
そう思った瞬間、出口の前に小さな影が立ちはだかった。最初は恐ろしい形相の幽霊かと身構えたが、よく見ると悲しげな表情を浮かべた少女だった。これがさっきシドが言っていた女の子なのか。
俺は足を止め、恐る恐る近づいた。シドの言葉通り、少女は何かを伝えようとしているようだが、口をパクパクと動かすばかりで、「あうあう」という曖昧な音しか聞こえてこない。一体何を言いたいのか、さっぱり分からなかった。
「世話の焼ける子だね。これでどうかな」
薄っすらとしか見えなかった少女の姿が、まるで霞が晴れるように次第に鮮明になっていった。
10歳ほどの幼い顔立ちが浮かび上がる。陶器のように白い肌は、この世のものとは思えないほど透明感があり、微かに青白い光を帯びていた。栗色の髪は豊かで艶やかに波打ち、生前はきっと美しく手入れされていたのだろう。
そして何より目を引くのが、その装いだった。深い紺色のベルベットのドレスに、繊細なレースがあしらわれた白い襟。胸元には小さな真珠のブローチが光り、足元には上品な革靴が見える。まるで上流階級の令嬢が正装に身を包んだかのような、気品あふれる佇まいだった。
しかし、その美しい姿とは裏腹に、少女の瞳には深い悲しみが宿っていた。まるで言葉にならない想いを必死に伝えようとするかのように、その小さな唇が震えている。
「私の声が聞こえる?私の名前はカグラ、私がこの迷宮で殺されてから長い長い時間が経ったの。その中でたくさんの人が転移してきて、魔獣に殺された。そして、さっきまた新しい人が飛ばされてきたところなの。お兄さん弱そうだけど、助けて欲しいの!」
少女にも見破られる俺の魔力量って‥‥‥おちょこが満たされるかどうかってところか。
一応俺もシドも名乗るか。
「助けられるかどうか分からないけど、手を貸すよ」
「ハマー、大丈夫?足が震えてるよ。怖いなら無理しない方が‥‥‥」
うるせえバカ虎。少女に頼られて逃げるわけにはいかんだろ。それに怖いのは魔獣じゃねえ!幽霊だ!!!
少女に連れられ、薄暗い迷宮内を急いで進む。魔力を循環させ身体能力を飛躍的に向上させた。魔物がいつ襲ってきてもいいよう、全身に魔力を漲らせる。最近はこの技術にも慣れ、瞬間的に発動できるようになっていた。
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