風音ワングランプリ? 四日目乃拾陸
女性がヒステリックな性格だと駄目だとか、悪役が女性だったら駄目とか。
そんな事言いだしたら、逆もそうなってくるだろ。
風音「暴力的な男が出たり悪役が男だと、男性団体からクレームは来ないんですか?」
バスカ「来る訳無いだろう。馬鹿じゃないんだから」
その発言が叩かれそうだが。
バスカ「そいつら・・・「全宇宙の女性の尊厳を護り、女性の社会進出と対等な社会を築く為の正義の組織」と名乗る団体が居てな。 そいつらは写真や映像作品全般に、女性が子育てや料理をしているシーンが出て来ただけで発狂する」
風音「いやいや、冗談でしょ?」
そんなおかしな人達が居る訳無いでしょ。
なんで女が料理してるんだ、って事?
・・・じゃあ映像作品では常に男にやらせろって事? それこそ平等から遠ざかる発言じゃないのかな?
そうじゃない!! 男女どちらも平等にやれという事だ!! って反論するのかな?
だったら別に男女どちらが作ってる映像でもいいじゃないか。
風音は鼻で笑っていたが、バスカは怒る。
バスカ「お前ら何にも知らないんだな!! 宇宙は広いんだよ!! そんな奴等普通に存在するわ!!!」
風音「ほんとですか?」
バスカ「見た事ないのかお前!! 映像作品に出てくる女性の胸がでかいってだけで性的な作品だとか、太っているだけで性的だとか、毎日のようにクレーム付けてるだろうが!! 一度地球以外のニュースに目を通してみろ、連日あの脳が腐ったブスの集まり―――」
鞍馬「あの、少しいいでしょうか?」
バスカ「何だ!!!」
鞍馬「それは宇宙に存在する団体の話をしていらっしゃるのですよね? この星の、特定の団体や個人に暗にメッセージを送っていたりなどはしないですよね?」
バスカ「だからさっきから、どういう趣旨の質問だそれは!!? 言ってるだろう、宇宙に実在する団体の話だと!! 地球の事なんぞ知らん!! 今この話とは無関係だ!!!」
鞍馬「失礼致しました。その言質を取りたかったのです。ありがとうございました。続きをどうぞ」
バスカ「よし!! 決めた!! 風音君、浮気をしろ!!!」
風音「何じゃい急に!!!」
浮気をしろ! ってワードが聞ける日が来るとは。
バスカ「簡単な流れだ。 鞍馬さんが悪役になると、それを見た団体がキレるだろ。しかしその怒りを収める簡単な方法論があるんだ。それが浮気だ」
風音「言ってる意味が全然分からん・・・」
バスカ「いいか? その女性団体はな? 登場人物の男が浮気をしているという設定があるだけで、白飯三杯はいける」
風音「えぇ・・・?」
どういう考え方の工程を経たらそうなるんだ?
鞍馬「あの、本当に宇宙の団体の話・・・」
バスカ「しつこい!! 宇宙に居る団体の話だ!!! 地球に実在する団体および人物とは一切関係無い!! ついでに言うなら一部女性達の話だ!! 女性全体で見るとこれに該当しない人なんていくらでもいる!!!」
やけに説明口調。
鞍馬「それを聞いて安心しました」
鞍馬が引っ込む。
そしてバスカは風音にさっきの話の続きを喋る。
バスカ「いかにヒステリックで悪役でみじめな女が出てこようが、主役の男が浮気をしていたら、それだけで全部許される。何故なら、男の方が絶対悪だからだ。たとえその主人公が正義の為に戦っていようが、浮気をしたという事だけで、その団体からはその作品における最大の悪は男という事になる。じゃあもう出てくる女が悪役だろうが、ヒステリックで物語の足を引っ張る存在だろうがどうでもいいんだ。男が浮気をしている。その物語において男側が悪である。それだけで彼女達の心は安定するんだ」
風音「そんな馬鹿な」
バスカ「認めろ、これが現実だ。 見た事無いか? ゲームや映画なんかで、何の脈絡も無く主人公の男が浮気をしていた事が発覚した作品とか。 それはクレーム対策だ。 そういう作品は大体ヒロインとかメインキャラに、ヒステリックくそうざ女がセットで出ている。 本来なら団体がブチ切れてもおかしくない設定の女性キャラだ。しかし主人公の男の浮気が発覚して、その女性キャラがその事に関してマウントを取り始めた瞬間、その団体にとってその作品は神作品になるんだ。 そういうの一度くらい見た事あるだろ?」
風音「いやぁ・・・ちょっと裏側の作品ってあんまり見た事無いから、分からないかな・・・」
そんな作品本当にあるのか。
ちなみに風音の言う裏側とは、この地球がある宇宙とは別の空間にある宇宙の話。そっちの宇宙には、沢山の有人星が存在する。当然バスカは裏側出身だ。
バスカ「そうか。まぁとにかく浮気相手を探そう。さすがにこればっかりは、同一人物という訳にはいかないからな。クレーム対策の意味が無くなる」
直ちに風音が止めに入る。
風音「考え直しましょう。それは駄目でしょ」
鞍馬「私もそう思います。 それだとせっかく監督が考えた、二人だけで撮影するという新たな手法が崩れてしまいます」
バスカ「そこだ。それは俺も悔しい。だがクレーム対策は必須だ」
風音(え? そっち? 治安組織のPR動画で浮気してる奴出しちゃ駄目だろ・・・)
さっきから薄々思っていたが、まさかこっちの感覚がおかしいのかな。
全然感性が違う気がする。
対策を考えていた鞍馬が提案する。
鞍馬「女性団体の怒りを鎮める方法ならもう一つありませんか?」
バスカ「無いと断言出来るが・・・何か考えがあるなら言ってみたまえ」
鞍馬「話を聞く限りではハッキリ言ってその裏側の団体は、男女平等を謳いながら女性上位でなくては気が済まない人達なのでしょう。 ではその悪役を倒す側も女性なら問題無いでしょう。先輩風音さんにはまず悪役の私に一撃の下に敗れてもらいます。そしてその悪役は、正義役の私にあっさり捕まり改心する。そして捕まっていた人質である風音さんは「ありがとう強くて格好良いお姉さん。あの男の人より超頼りになる」とか言っておけばいいのでは?」
しばらく考えるバスカ。
バスカ「いいね!!!」
風音「いいんだ・・・」
それのどの辺が、平等や対等に配慮した作品なんだろう。
ていうか。
風音(先輩・・・)
最初の登場時に散々格好つけてからパトロールに出かけて、三十秒の無言ドライブ後に一撃で沈むのか。
まぁ。
新しいかどうかで言えば、新しいけども。
幸い男性団体からクレームは来ないって言ってたから、別にいいか。
良かったよ。男性側にそういう団体が無くて。
もし同じような団体の男性版が存在したら、それこそクレームの嵐でお蔵入りだ。
・・・ただ冷静になって考えてみると。
風音(正直お蔵入りになっても何も困らないな・・・ちゃんと依頼料は出るし)
いけない事を考える風音。
話の方向性が決まったので、さっきの車に再び乗車して次の撮影地まで走り始める。




