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カノン  作者: しき
第5.5話
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風音ワングランプリ? 四日目乃拾伍


 そして次のシーンはパトロールだ。

 自動運転してくれるタイプのシャロン専用車に乗り、運転席と助手席に乗り込む風音と鞍馬くらま


 ここはずっと無言で。


 という指示が出た。


風音(ずっと無言ってどういう事だろう?)


 書かれてある通り二人とも無言で、勝手に街を走り回る車の中でジッとしている。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・長いな。


 二十分くらいして。


 はいそこまで!


 と目の前に表示された。

 車を路肩ろかたに止めるよう機械に指示を出し、車から降りる。


 後ろから同じ車種の車で追ってきていたバスカが、同じく車を降りてこちらに近付く。

 表情を見る限り、機嫌が良さそうだ。


バスカ「いいね!」


風音「今ので良かったんですか? え? どういう?」


バスカ「パトロール中に喋ってたら真剣さに欠けるだろう? ここは無言のシーンだと決めていた。ただ窓から映る背景を考えた時に、しっくりくる場面を探すのに時間が掛かっただけだ。実際に使うのは三十秒くらいだから、安心したまえ」


風音「三十秒無言っ!?」


 どこが安心なんだ。

 なっがいぞ映像作品の三十秒は。

 大体の人がこのシーンで心が折れるだろう。


鞍馬「PR動画としてはおそらく今までに無い手法ですね。出来上がりが楽しみです」


バスカ「そうだろうそうだろう」


 得意気になって、豪快に笑う。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


鞍馬「お疲れ様です艦長。どうぞ水分補給を」


 鞍馬が水入りのペットボトルを風音に渡す。

 バスカが他のスタッフと話し合いに行っている間に、水を飲みながら休憩する二人。

 早速これまでの展開について疑問をていする風音。


風音「鞍馬・・・。 ほんとにこれで良いと思う? 最後の台詞が「素敵しゅてき・・・」で、そこから三十秒無言だよ?」


鞍馬「いえ、正確には最後の台詞は「この新人殺し・・・」です。あと素敵しゅてきに関しては、感極かんきわまった際の零武れいんの言い方を真似てみたのですが」


風音「あ、そうだったんだ。 え、良いの? 勝手にアドリブを入れて」


鞍馬「私は現在日本語で喋っています。ですから艦長には私が喋った通りに聞こえましたが、彼等には翻訳機によって、自分の星や国の言葉で翻訳されています。おそらく普通に素敵すてきと言ったと思っているでしょう」


 皆が付けている翻訳機は、意味をそのまま伝えるタイプだからそうなるか。


風音「・・・だとしたら、わざわざ素敵しゅてきにする意味無くない?」


 日本人がこの映像を見た時のみ、妙なキャラ設定が浮き彫りになるだけじゃないのか。


 急にここだけの話をするように、コソコソと耳打ちをする鞍馬。


鞍馬「零武からの耳寄り情報ですが、実は艦長にはその喋り方が心にぶっ刺さるそうです」


風音「え? それはどの艦長の話?」


 自分じゃないよな?


風音「それより零武で思い出したけど、配役の担当は誰でやるつもりなのかな?」


 犯人役と子供役。


鞍馬「犯人役は強気な晴嵐せいらんが向いていると思います。子供役は見た目通り、零武で行こうと思っています」


風音「なるほどね」


 雑談をしながら休憩していると、目の前に文字が浮かぶ。

 次の撮影が始まるようだ。

 諦めて次のシーンの指示を見る。


 ここから一人二役か。

 犯人と人質が居るんだっけ。


バスカ「じゃあ風音君。君が犯人役ね。鞍馬さんが人質ひとじちで」


風音「ちょっと待って下さい。僕が犯人役? 鞍馬じゃなくて?」


 いきなり想定と違う事を言われた。


バスカ「何か? まさか出来ないとか言わんだろうな?」


 せっかく機嫌が良さそうだったのに、ちょっと表情が曇り始める。


風音「そのまさかです。 いや勘違いしないで下さい。僕は別に良いんです。ただ、シャロン的に駄目な可能性が・・・」


バスカ「あぁ? どういう事だ?」


 やはり不機嫌になった。

 でも一応確認はしておかないと。


風音「ちょっと確認の為に、ジルに電話掛けてみますね」


バスカ「いやちょっと待て。他に誰か電話が出来る候補が居ないか?」


風音「ジルじゃ駄目なんですか?」


バスカ「駄目だ。 既にこっちは文句を言いたくてたまらないんだよ。ジル君は上司だから、文句どころかこっちが頭を下げ続けないといけない」


風音(こっちはその方が良いけどな・・・)


風音「じゃあウェルズでいいか」


 すまんウェルズ。代わりに怒られてくれ。


 しばらくコールすると、電話に出てくれた。


テトラ「はい? 何か?」


風音「なんでテトラさんが出る?」


テトラ「今あなたから掛かってきたって事は、どうせ撮影の件でしょう? 今私達は仕事中だから、あなた達と無駄な会話をしている余裕は無いの。用件だけ言って、すぐ切りなさい」


風音「バスカさんが聞きたい事があるんだって。多分怒りの電話です」


テトラ「ウェルズ。あなたに電話みたい」


 テトラが逃げた。

 そしてウェルズが出る。


ウェルズ「いやごめんごめん。携帯奪われてさ。で?」


風音「バスカさんから怒りの電話です」


ウェルズ「そんなん俺につなぐなよ・・・もっと上の奴に繋いでくれよ・・・。 なんで怒ってんの?」


風音「台本にあったんだけど、犯人を捕まえるシーンがあるんだよ。その犯人役を僕か鞍馬のどっちかがやる事になるんだけど、バスカさんは僕にやれって言うんだよ・・・まぁこっちは別になんでも良いんだけど、シャロン的に良いの?」


ウェルズ「それは・・・駄目だね」


風音「やっぱり?」


 その風音の返答で会話の流れを察したバスカが、風音の携帯を奪い取る。


バスカ「何で駄目なんだ!! 理由を言え理由を!!」


ウェルズ「資料に目を通されたでしょう? 風音君は、現在ブラックリストに入っている人物です。 あぁでも、ブラックリスト入りした原因である事件はもう解決して、風音君は無関係だと証明されました。ですので、治安組織内における風音君の悪いイメージを払拭ふっしょくする為に、今回オファーを受けて頂いた形になっています。 ただ、ブラックリスト入り・・・」


バスカ「おいおい初めて聞くことだらけじゃないか!! ブラックリスト入り!? 超危険人物じゃないか!! おい風音君!! 君は危険人物なのか!!?」


 電話したままこっちに聞いてくる。


鞍馬「いえ、超良い人です」


 鞍馬が代わりに答えた。


バスカ「実際のところどうなんだ!! 本当に危険人物じゃないのか!!?」


 風音本人にも聞く。


風音「困った事に、超良い人です」


バスカ「超良い人らしいじゃないか!! じゃあなぜ悪役じゃ駄目なんだ!!」


ウェルズ「はい。ブラックリスト入りしている人物が、悪役として出るのはちょっとシャロン的にまずいです。 例えば実在の凶悪犯罪者を凶悪犯罪者役で撮影に起用するのが駄目な事は、さすがに分かるでしょう?」


バスカ「彼が冤罪えんざいだったなら問題無いだろうが!!」


ウェルズ「いえまぁ・・・そうなんですけど。だから今の例えは極端な例ですが・・・実情はどうあれ、ブラックリストから外されていない事は事実。無理なものは無理です。強行すれば、長官やジルさんにバスカさんが怒られてしまいますよ?」


バスカ「くそ・・・!! 忌々いまいましい奴等だ!! いちいちこっちの創作活動の邪魔をしやがって!!」


 怒りに任せて電話を切る。

 そして地面に携帯を叩きつけようとしたが、風音がバスカの振り上げた手から携帯を抜き取る。


 そして風音なりにフォローしておく。


風音「まぁまぁ落ち着いてください。構想とは違うかもしれませんけど、鞍馬でも犯人役を立派にこなしてくれますって」


 バスカが腕を振り上げる。


バスカ「馬鹿野郎っ!!」


 バチィ!!


 またバスカのサングラスが吹っ飛ぶ。


バスカ「ひょ・・・ひょっろ・・・待ひたまへ」


 怒ったバスカ風音に平手打ち→風音それを防ぐ→鞍馬がバスカに平手打ち。

 という先程と同じ流れを再び繰り返し、鞍馬にシバかれたバスカ。


 そしてサングラスを拾って。


バスカ「君はどういう教育を受けて来たんだ!」


 鞍馬を叱る。


鞍馬「それはこちらの台詞です」


 これ以上喧嘩になる前に、風音が割って入る。


風音「何が馬鹿野郎なんでしょう? 何か鞍馬だと問題でも?」


バスカ「分かってないな、どいつもこいつも。 いいか? 登場人物の女が、ヒステリックだったり悪役だったりしたら、クレームを付けてくる女性団体が居るんだ」


 また出たよクレーム。


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