風音ワングランプリ? 四日目乃拾
シャロン職員の恰好になった二人。
いろんな所にポケットととか装備が付いている、治安組織といえばコレって感じの、よく見かけるあの制服だ。
風音の方は風音を見慣れたウェルズ視点では、割と様になっている。普通の人が見たら十代中盤くらいの女子が、ノリで治安組織の制服を着ているように見えるのだろう。
鞍馬は巨乳のせいで、胸の辺りが上着を押しのけてシャツが張り出す形で変形しているので、コスプレ感が出ている。
二人とも自分の服は、渡された紙袋に入れて手に持って帰ってきた。
二人が元居たソファに座る。
ウェルズ「うわ~・・・鞍馬さんと仕事してぇ・・・」
もう風音の方は見てすらいないウェルズ。
ウェルズ「・・・風音君さぁ。こんな子が居るんなら、なんで俺に教えないの?」
風音「今教えたよ」
ウェルズ「最近加入したのか?」
風音「いや? 結構前」
ウェルズ「だからそれを言ってるんだよ。ほんと駄目だよそういうの。ただでさえアリエイラさんとか神楽さんとか、美人がいるのにさ。他の女の子も隠して独り占めしようっていう、その腐った精神?」
何を言い出すかと思えば。
大体三日前に初対面で息吹とフィリコヨーテに会った時には、何も言ってなかったくせに。
風音「お前と一緒にすんな。って言うか、鞍馬は隠してたとかじゃなくて・・・」
代わりに鞍馬が先を喋る。
鞍馬「私は従者です。 主・・・失礼、アリエイラさんと艦長の御命令でも無い限り、カノンの外に出る事がありませんので。基本的に誰とも会わないのは当然です」
ウェルズ「外にも出られない従者って何? 奴隷みたいな感じ?」
鞍馬が答える前に風音からのクレームが入る。
風音「失礼な。いつでも出て良いよ。鞍馬は自分の意志で出ないだけだから」
事実、息吹や晴嵐はよく外出する。零武も極稀に買い物に出かけている。
鞍馬「そうですね。どんな時でも対応出来るように、常に控えているのが本来の従者であると思っております」
ウェルズ「ほんとに~? 言っとくけど従者でも、もし性的な要求をされたら断って良いんだよ? いっつも無理な要求とかされてない? 風音君に「いいか? 何をされても騒がずに俺のベッドでただ横になってな」とか言われた事無い?」
風音「だから一緒にすんなて」
そんな質問にも、真面目に答える鞍馬。
鞍馬「今の所そういった事は無いですね。仮に要求されれば応じるまでですが」
風音が手をブンブンと振る。
風音「それは断っていいよ」
ウェルズ「そんな事言ってたら、今夜襲われるよ?」
真面目に答えたら、二人から咎められた。
今の回答で、風音が重要な事を言い忘れていた事に気付く。
風音「あぁそうだ。アリエイラさんの従者って事で気付いてたと思うけど、鞍馬も息吹達と同じでロボットなんだよ」
ウェルズ「だろうなとは思ってたけど」
風音「でも息吹達と違って、標準AIでね」
ウェルズ「あ。 あー・・・それで。えらく特徴的な喋り方だとは思ってたけど」
感情が無いという事を察する。
そりゃどんな要求でも呑もうとするはずだ。ただの従順な機械なのだから。
ウェルズ「そっか。同じ型のやつ俺にも貰えたりしないのかな?」
感情が無いという事で、遠慮無くこういう事を言い出すウェルズ。
風音「全く同じは無理じゃないかな。鞍馬は息吹達三人の妹の現在の人格を、そのままインストールして憑依出来るから。その間はちゃんとその子に応じた感情があったりするしね」
ウェルズ「へぇ・・・見てみたいな。じゃあさ、試しにその三人と・・・いや、息吹さんはいいや。見た事あるから」
ウェルズが見た息吹は、風音信者で気難しい子だった記憶しかない。
ウェルズ「他の二人と入れ替わる事ってすぐ出来る?」
鞍馬「出来ますよ。 では晴嵐から代わってみましょうか」
目を瞑り、晴嵐の人格と入れ代わる鞍馬。
ウェルズ「凄ぇな・・・こういうタイプは見た事無いな」
ワクワクしながら待つ。
ロボットでも人間らしい感情を持ってるなら、問題無く友人として一緒に居られる。
妖艶な性格だったら。ウェルズのドストライクだ。
この見た目で色っぽい言葉遣いや、艶っぽい仕草なんかされたらもう・・・友人という一線なんて余裕で越えて・・・。
鞍馬が目を開け、しばらく周囲をキョロキョロと確認した後、正面に居るウェルズと目が合う。
鞍馬「あぁ? 何ジロジロ見てんだ? やんのか手前ぇ?」
ウェルズ「チェンジで」
風音「はっや。一回ちゃんと会話してみたら? こんな攻撃的な口調だけど、これで結構可愛いとこあるよ晴嵐って」
風音も最近知った情報だけど。
鞍馬「は、はぁ? な、何言ってんだよ馬鹿か艦長。 可愛いとかこんな人前でお前・・・」
あたふたしながら、顔を少し赤くして向こうを向くが。
ウェルズ「いやこういうのは求めてないかな。一刻も早く交代してほしい。これ以上鞍馬さんを汚さないでほしい」
鞍馬「あぁん? なんださっきから? そもそも誰だよお前? 馴れ馴れしく鞍馬さんとか呼んでんじゃねぇぞ」
さっきまで無表情だった鞍馬が一変。顔が歪むほどウェルズを睨み倒している。
風音「ちょっとごめん鞍馬」
人格が入れ替わっていても、体が鞍馬だから鞍馬と呼ぶ。
風音「今って一応撮影の為の鞍馬の性能確認でもあるから、彼から交代を要求された時は、彼に他の人格との交代を見せてあげてほしいんだけど」
という事にしておく。このままだと喧嘩になりそうだ。
鞍馬「あ~・・・面倒臭い状況? じゃあ誰に代わる? 無難な息吹でいい?」
風音「ちょっとその前に、鞍馬に戻って?」
鞍馬が目を閉じる。
そして目を開いて。
鞍馬「どうされましたか?」
良くも悪くも晴嵐の時と違い、声に感情が無くなり表情が消える。
ウェルズ「あ~良かった~。戻った~。 棒読みも個性だよな。鞍馬さんはこれで良いような気がしてきた」
安堵しているウェルズは置いといて。
風音「ちょっと気になったんだけど、人格を変えた時って鞍馬の記憶を共有出来ないんだっけ?」
そんな面倒な仕様だったかな?
今の晴嵐にしても、ウェルズの事や撮影の件を知らない口調だった。
・・・これが仕様なら面倒臭い。
このままだと最悪これから三人の人格に、今日の仕事を一から説明しないといけなくなる。
鞍馬「出来ますが、敢えてやりませんでした。ウェルズさんはいわゆる、普段の自然な晴嵐と零武の個性を知りたかったのですよね? ここまでの私の記憶を引き継ぎ、こちらだけ一方的に予備知識がある状態での初対面は、かなり不自然な状態ではないですか? そこで交わされる会話は自然なものではない筈だと判断しました」
ウェルズが風音を見下すような目で見る。
ウェルズ「風音君、そんな事も分からなかったのか? くだらない質問をするんじゃないよ」
風音「やかまし。 ・・・仕様じゃなくて良かったよ。じゃあ続けて零武行ってみようか」
鞍馬「はい」
再び目を瞑る。
ウェルズ「頼む、まともなの来てくれ」
風音「・・・・・・」
目を開いた鞍馬が、ウェルズの方を一瞥すらせず隣の風音をジッと見る。
風音「えっと・・・鞍馬。今仕事中なんだけど、正面に居る人にちゃんと自己紹介と挨拶しないと」
鞍馬がウェルズの方をチラッと見る。
鞍馬「ども。零武・フォクスです」
それだけ言って、再び無言で風音を見る。
この時点ですでに思う所があるウェルズだが、念の為もうちょっと粘ってみる。
ウェルズ「れいんさん? ちょっとこっち見て貰っていいかな?」
ガン無視。
風音「鞍馬。仕事だから」
鞍馬がようやくまともに正面を見る。
そしてウェルズに対して。
鞍馬「用件は何ですか? 艦長を至近距離で観察するという大事な時間を、奪うに値する事ですか?」
ウェルズ「チェンジで」




