風音ワングランプリ? 四日目乃玖
風音「・・・ま、いいか。とにかくシャロンに行こう」
鞍馬「そうですね。 では向かいながら私からも、一つだけお尋ねしたい事があります」
二人でシャロンに向かって歩き始める。
風音「何?」
鞍馬「私と会う前、何か考え事をされてましたよね? 何かお悩みでも?」
風音「え? あぁ・・・どっちを最下位にしようかなって考えてただけだよ」
鞍馬「最下位。 風音ワングランプリでしょうか?」
風音「うん」
鞍馬「では一位はもう決まっているのですね」
風音「いや・・・ちょっとそれも悩んでて」
鞍馬「・・・? 争っているのは三人で、そのうち二人が最下位争い。その上で何故一位で悩むのでしょう? ・・・回答不能。この質問は取り下げます。 解なしと判断します」
風音「う~~ん・・・。テーマ性よりやっぱり実用性を考えると・・・嘘は付けないし・・・」
また悩み始めた。
考察の邪魔をしてはいけないと思い、そのまま黙って歩く鞍馬。
目的地であるシャロンはそれほど遠くないので、その内に到着する。
風音「あ、もう着いた」
治安組織シャロンは大きく分けて二つの建物に分かれる。
本部であり一般人がまず入れない、大きな建物。
そして一般人でも入れる市民からの相談などを受け付けている小さな建物。
風音達は大きな建物の方に入る。
鞍馬は入る直前で麦わら帽子を脱いで胸に当てた。
こちらも受付までは一般人でも入れる。
ただし一般用の建物とは違い、よほどの正当な用事が無いと不法侵入とみなされてしまうが。
基本的に一般人は立ち寄らない方が無難な所だ。
受付で用件を伝えてウェルズを呼び出してもらい、ソファに座って待つ。
鞍馬「未だにこのような扱いなのですね」
これだけシャロンで働かされているのに、一般人と同じ手続きという意味だ。
普通なら顔パスで良いくらいのものだ。
風音「部外者である事は事実だしね。それにこっちだって、ここの関係者と思われるのは面倒な時もあるから。お互い損してなくて良いんじゃない?」
鞍馬「艦長がそう仰るのなら、そうなのでしょうね」
雑談をしていると、後方からウェルズの声が。
ウェルズ「おーーーっす。早いね風音君」
座ったまま二人で振り返る。
茶髪で欧米人のような顔立ちの大柄な男性職員がこっちに歩いて来ている。
風音「おはようウェルズ。お客さんに挨拶する時は、相手の前に回ってからにしようよ」
ウェルズ「まぁまぁ。そんな固い事言うなって。そんな事ばっか言ってると、ジルさんみたいな堅物になるぜ?」
そう言って風音達の正面のソファに座ろうとするが。
風音がウェルズの後ろを指で差す。
風音「そこにジルが居るのに、そんな事言ってて良いの?」
ジルはここシャロンの長官の側近。ウェルズにとっては超上司だ。
一瞬で座るのをやめて振り返り、頭を下げるウェルズ。
ウェルズ「失礼しました! 違うんです。規律を守る良い上司だと言いたかったんです」
ウェルズが顔を上げると、そこには関係無い女性職員が。
職員「え? どういう意味ですかウェルズさん?」
ウェルズ「あ・・・いや。 勘違いだった。行っていいよ」
職員「はい。失礼します」
職員が行ってから、風音の方を振り返ってソファに座りながら睨む。
ウェルズ「・・・マジで。やめてくれそういう冗談は。寿命が縮むから」
風音「いや・・・冗談って言うか・・・ごめんごめん」
風音が後ろだと言ったのはそんな近くの事じゃなく、もっと後ろの事。
向こうの方で本当にジルがこっちを見ていたのだ。
ウェルズが頭を下げたと同時くらいに、不敵な笑みを浮かべて去っただけだ。
風音(あ~あ、また減給かな。 それよりウェルズの後ろ襟に何か付いてたな。多分もう面接始まってるのかな?)
小さな小さな機械が見えた。
視力と動体視力がずば抜けている風音だからこそ気付けたと言っても良い。
まずは鞍馬がこの仕事を受けていいのかの面接があるだろうから、それ関係の物だろう。
多分あの機械でこの場の会話を拾って、それをどこかで何人かが聞いているのだろう。
・・・まぁ気にしないでおこう。
ただし機械の存在に気付いていない事を装っておこうか。
わざと面接以外の事から話題を振ってみる。
風音「じゃあ早速そのPR動画撮影の話し合いを・・・」
ウェルズ「それは後で担当の人としてもらうよ。それより風音君。こっちは風音君の事は知ってるけど、相方に誰を連れてくるか聞いてなかったからな。 知ってるだろ? 風音君が連れて来た客は、もしシャロンが把握していない人物だった場合、事前に誰かがどんな人なのか調べておかないといけないんだよ。 で、もしかしてその女性が?」
風音「あぁそうだった。初対面か。そりゃまずは紹介がいるね。 こちらクルーの鞍馬さん」
あと今のウェルズの会話で、どうでもいい事が一つ判明した。
さっきジルが居てこっちを見ていた理由だ。
カノンのどの女性を連れてくるか言ってなかったから、もしかしたらルミナが来るかもしれないと思って見に来たのか。
ジルにとって神のような存在のルミナが来た場合、ウェルズなんかに応対を任せている場合じゃないと思ったのだろう。
おそらく風音の横に今ルミナが居たら、急遽ジルが交代していたはずだ。
鞍馬がソファから立ち上がって頭を下げる。
鞍馬「初めまして。カノンの乗組員、鞍馬・フォクスです。今日は宜しくお願い致します」
女性にしては背の高い鞍馬がソファから立ち上がると、胸から腰から姿勢から。顔も小顔な事もあり、そのモデル体型が目立つ目立つ。
ウェルズが一瞬見惚れてから。
我に返って立ち上がる。
ウェルズ「これはご丁寧に。ゲイズヴィー・ウェルズです。よろしく」
挨拶が終わってお互い座る。
ウェルズ「あ、そうだ。忘れない内に」
ウェルズが持っていた大きなカバンから服を大量に取り出す。
シャロンの制服だ。
ウェルズ「まずはシャロンの制服に着替えて貰わないとな」
風音(あれ? 面接とか無いのかな? 予想を外したかな・・・じゃあさっきの機械は何だったんだろ)
まぁどっちでも良いけど。
取り敢えず指示通り、二人に合うサイズを探し、早速二人で更衣室に向かう。




