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カノン  作者: しき
第5.5話
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風音ワングランプリ? 三日目乃壱


 昼食を食べ終わり、早速仕事を開始する。

 昨日届いたウェルズからのメールに返信するところからだ。

 多分あの仕事内容から察するに、事前打ち合わせが必要そうな案件だ。今日はそのまま打ち合わせに呼び出されるのだろう。


 メールを送って返事を待つのも面倒なので、直接電話を掛ける。

 コール音の間、しばらく今日一日の段取りを考える。


風音(今日はレスタの作品やつを試すんだっけ。その内容によっては仕事が出来ないな)


 あるいはレスタの方を明日に回すか。


 しばらくしてようやくウェルズが出る。


ウェルズ「悪い、運転中だったから出るの遅れた。何の用だ?」


風音「運転中? 仕事に向かってるとこ?」


 ウェルズは太平洋のど真ん中にある「フェクト」という人工島の治安組織「シャロン」の職員。

 今日も仕事で忙しいはずだ。ってのは分かってるけど、昨日の件について本人からいつでも連絡くれって言ってたから、遠慮無く電話をした。


 ウェルズが風音の問いかけに答える。


ウェルズ「いやただのパトロール。電話くらいなら出来るよ。もちろん仕事中の電話は記録されてるから、仕事に関するものじゃないと無理だけど。まさか雑談する為に掛けたわけじゃないだろ?」


風音「もちろん。昨日のメールの件だよ」


ウェルズ「あぁ動画制作の」


 そう。昨日受けた依頼だ。

 シャロンの活動をPRする為の動画を作るらしいが、その出演者にならないかという依頼を受けた。


風音「まず聞きたいんだけど、それなんで僕らなのかな?」


ウェルズ「シャロンとの関係性とか費用面とか諸々もろもろ込みで、頼み易いからってのが一つ。それと宇宙全域で使われる可能性があるし、有名人を使うと後日不祥事を起こした時に面倒だからってのが一つ。あと風音君過去にブラックリスト入りしてただろ? ってか今もまだ消えてなかったっけ?」


 宇宙全域の危険人物を一つのファイルに記録しているブラックリスト。

 これに風音は現在も載っている。


風音「消えてないよ。めちゃめちゃ最初の方に載ってるよ。あれいつ消えんの?」


ウェルズ「さぁ? 一応裁判で容疑は晴れたんだよな確か。なんでいつまでも残ってるんだ?」


風音「あんたの組織がやってる事を、こっちに聞かれてもさぁ・・・。とにかくそのブラックリストに載ってる事が問題でしょうよ。ブラックリストに載ってる奴なんてシャロンの敵なんだから。シャロンPR動画に起用してどうするんだよ」


ウェルズ「ウケるよな」


 ウェルズがゲラゲラ笑う。


風音「こいつ真剣に考えてないな・・・」


 ウェルズが笑うのを止めて、元の真面目な口調に戻る。


ウェルズ「じゃあ真剣に答えようか。 まず一般人はブラックリストの災害リストの方は知ってても、人物リストの方は存在すら知らないだろ。 だから風音君が出ても分からない。 あとあれじゃない? ブラックリストの最初の方に載ってる奴なんてさ、特に注意が必要な奴等だろ?」


 ブラックリストは危険度が高い順に載っている。

 その中で風音は、かなり頭の方に掲載されている。


ウェルズ「って事は、人物リストを知ってるような「こっち側の人達」に対しては、そんな危険人物を治安組織がちゃんと首輪を付けてますよ、ってアピールにもなるんじゃない?」


風音「首輪ねぇ・・・それを聞いてこっちが出たくなると思う?」


ウェルズ「いやあくまで上層部って、そんなしょうもない事を考えてそうって話。 俺の考えは違うぜ? 何故かいつまでもリストから除外されない状態の風音君だからこそ、うちの健全な仕事に関わればリストから消える日も近くなりそうだろ? だから出た方が良いんじゃないかと思ってね」


風音「え・・・これ録音されてるんじゃないの? 上層部批判とかしてていいの?」


 しばらくウェルズが静かになる。


ウェルズ「・・・冗談で言ったに決まってるだろ?」


風音「そんな言い分が通じる組織だったら良かったね」


ウェルズ「あぁ・・・また減給なのか・・・」


 悲痛な声が聞こえる。

 それに対して適当ななぐさめを言っておく。


風音「真面目に仕事してりゃ評価も戻るって。 とにかくその仕事って、何人必要なのか分かる?」


ウェルズ「俺大体いつも真面目に仕事してんだけどな・・・。 えー・・・とね。夫婦役だか恋人役だとかで募集してたから、男女二人でいいはず。風音君はどうせ出るんだろ?」


風音「出なくて良いなら出たくないけど。見栄みばえ重視なら、アリエイラさんと九重ここのえさんでいいんじゃないかなって思うけど」


ウェルズ「しぶ格好良い男と絶世ぜっせいの美女だしな。でもなんかあまさきさんが、九重さんを起用したら殺すって言っとけって言ってたよ」


風音「なんでよ?」


ウェルズ「知らね」


 ちょっと考えてから。


風音「天狐てんこさんにやめろって言われたら、逆にやりたくなるんだけど。 反対してる理由なんて、どうせ尊敬する九重さんにそんな仕事をさせるな、とかそんなんでしょ。 放っときゃいいよ」


 シャロンの女性職員である天ヶ崎天狐。ウェルズにとっては上司に当たる。

 ちょっと前に天狐がどうしても強くなりたいって言うから、風音が鍛えてあげた。


 なのに師弟関係が無くなった今となっては、その時の感謝は無いわ滅茶苦茶反抗してくるわ。

 あの元弟子に、こっちのやり方を口出しされたくない。


 ウェルズにとっては誰が出演しようがどうでもいいので、投げやり気味に返答する。


ウェルズ「じゃあ良いんじゃない? 九重さんで。 ・・・あ、仕事の電話掛かってきたわ。ちょっと待っててくれ」


 しばらく保留音が流れ、待つ。


 そういえばそろそろ風音ワングランプリの面子めんつがやってくる頃だ。

 今回のテーマは脳に影響を与える・・・とか言ってたから、内容如何いかんでは行動の仕方を変えないとな・・・。


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