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カノン  作者: しき
第5.5話
70/206

風音ワングランプリ? 二日目乃拾陸

 ・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・


 ・・・・


 あれからかなりの時間が経った。


 疲れ切った表情の風音かざねと、楽しそうな顔の晴嵐せいらん


 あれから四時間。

 この大きなショッピングモールを色々見て回ったかって?

 いやまだアパレルショップ一軒しか寄ってない。


 そして今晴嵐が手に持っているのは、今購入した服一着。

 ・・・のみ!!


風音「ちょっと・・・待った。え? 本当に今時の女子ってこんなの?」


晴嵐「え? 何が何が?」


 すっごい楽しそうな表情で振り返って見てくる。


風音「自覚無いんか・・・」


 一体何着試着したのか。

 何度感想を言ったか。

 それで結果沢山買うなら分かるけども。この時間で一着か。


晴嵐「よっし、じゃあ次は艦長の分! さっき予約した時間まであと二時間、間に合うかな?」


 予約とは食事の事だ。モール内にあるイタリアンレストランに電話で予約してある。

 ここフェクトには異星人も多いので地球食以外のジャンルも多いが、二人ともピザとパスタが好きなので、風音が以前仕事の時にウェルズから聞いたイタリアンに行ってみようかってなった。


風音「僕の分はいいって。服に困ってないし」


晴嵐「は~~~・・・これだから艦長は。そんなだとモテないよ。デートで一緒に買ったっていうのが大事なんじゃん。ほら、いいから行くよ」


風音「・・・うっす」


 ・・・・・・・・・


 そして二時間ギリギリまで試着を繰り返して。


風音「だんだんどれでも良くなってきたよ」


 服の違いが分からなくなってきた。

 大体他人からの評価に服ってそんな大事だろうか? とかそういう心理に至っている。

 マイナス評価、つまり自分に似合っていない服はやめといた方が良い。ってのは分かる。

 が、プラマイゼロくらいの評価が貰えるなら、その服で十分じゃないだろうか。


晴嵐「甘いっ!!」


風音「え?」


晴嵐「どれでも良くはないって言ってんの。人は最初の印象が大事なんだから。 うちの主を見れば分かるでしょ? あの何回注意しても直さない寝癖ねぐせ。 あんなのたまたま美人に生まれたから許されてるだけで、あれで普通くらいの顔立ちなら女子じょし界隈かいわいでは、初見以降死ぬまでボロ雑巾ぞうきん扱いよ?」


 事実なら怖すぎる界隈だろ。


風音「それは単に女子界隈が陰湿いんしつなだけって事ではなく?」


晴嵐「ではなく。最低限見た目に気を遣うのは常識。 だから主と一緒に仕事に行くと面白いよ? クライアントが女の人だったら、表情から心の声が聞こえるもん。 「あらまぁ、せっかく顔が良いのに見た目に気を遣わないなんて、この女肥溜こえだめ以下ね。こんなのに外を歩いて欲しくないわ~。一生研究所に引きもってなさいよ」 って。めちゃくちゃ優越感ゆうえつかんに浸った笑顔を向けてくるからね」


風音「それはねたみでしょただの。美人で頭が良い奴の存在を認めたくないだけじゃないの? 見た目関係ある?」


 晴嵐が頷く。


晴嵐「ある。だからまさに私が主に言いたいのはそこ。聞いた事あるかもしれないけど女子にとってはね、自分よりブスは使い道があるんだよ。隣を歩かせれば自分が引き立つからね。 でも身近にいる美人は何の役にも立たない。存在自体が害悪。 だから美人が調子に乗って話しかけてきたら、どこをどう叩けるかを探すんだよ。だから美人サイドは自分から完璧を目指して、叩ける場所を封じる。これしか無いんだよね。それを主はおこたるから、あっちこっちでボコボコに叩かれてるんだよ」


風音「いやぁ・・・その意見は極端な気もするけどね」


 もしそうなら美人が女子界隈で生きるの大変だな。あの人は気にしてないだろうけど。


風音「じゃあもしアリエイラさんがちゃんと寝癖を直して見た目完璧だったら、クライアントの反応はどうなるんだろ? 「うわぁ・・・、私は一生この人に勝てない・・・」って変わるのかな?」


 頭も良いから、むしろ尊敬の対象になったりとか。


晴嵐「いや? 「図に乗んなクソブス。一生研究所に引きもってろ、DⅤ男と結婚して不幸になれ」ってなるんだよ」


風音「余計悪くなってない?」


晴嵐「その上もし主が服装にまで気を遣って、美人が更に引き立っていたらどうなると思う? シンプルに「死ね」ってなるんだよ」


風音「悪化の一途いっと


 晴嵐の周囲だけの話であってほしい。もし世界中がそうなら、女子界隈終わってるだろ。


晴嵐「でも男性は違うでしょ? いい恰好をしても、同性からねたまれたり叩かれたりしない。しかも女子からは評価が上がる。だからこそ、艦長も服装は大事って事。これが言いたかったんだよね」


風音「それが事実なら、男で良かったなと思うよ・・・」


 さっき試着した服を軽く畳んで低評価カゴに入れる。

 今目の前には、店側に試着した服を返す為のカゴが二つある。

 せっかく二つあるので晴嵐の評価が高かった服を入れるカゴと、低かった服を入れるカゴに分けている。

 時間的にそろそろ高評価カゴの中から一つ選ばないと。


 晴嵐がさっきの話の続きを喋る。


晴嵐「悪く言えば男性は同性に気を遣わなすぎ。同性からの評価に興味が無さ過ぎるんだよ。それってめっちゃ良くない事だよ? 女子は美人を妬むとか叩くとか言ったけどさ、それって言いかえれば異性を意識しつつ同性にすら気を遣ってるって事じゃん? そういう気持ちを持ってるとさ、結果自分の向上心に繋がるんだよね。だから女子は見た目に気を遣う人が多いの。これって凄く良い事だと思ってるよ私は」


風音「へえ、いい部分もあるんだね。女子界隈はただの地獄じゃなかったんだ」


晴嵐「はぁ? 何言ってんの、むしろ地獄は男性側でしょ。男女問わず内面はきれいな人も居れば、汚い人も居る訳だけどさ。さっき言った通り、女子は見た目に凄く気を遣う人が多数派なのよ。内面はどうあれ、基本的に外見は美しくあるのが女性側でしょ。それに比べて男性ときたら・・・。真剣に見た目に気を遣ってる人がマジで少ないったら。だから女子に比べて圧倒的にクソダサ陰キャ率が高いのよ。自分から価値を下げ続けてる事を、少しは自覚しなさいよ男子共は」


 風音としては苦笑いしか出ない。


風音「僕もあんまり服とか興味無いから、耳の痛い話ではあるんだけど・・・。とりあえず全方位に喧嘩を売るのやめよっか?」


 時間がない事を晴嵐も感じていたのか、高評価カゴの中の服をもう一度あさって見直している。


晴嵐「ま、ねたそねみもその後の考え方次第で、自分を向上させるバネになり得るって事だわね。うちの男どもにも言い聞かせといて」


風音「だとしても美人をでたらめに妬む姿勢はいかがなものかと思うけどね・・・」


晴嵐「そうだけど、でも結局美人を心の中でぶっ殺してるだけで、実行に移してる訳じゃないんだから害は無いじゃん?」


風音「あ、想像上ではもうぶっ殺しちゃってますか」


晴嵐「ぶっ殺してるに決まってるでしょ。主なんか見知らぬ人に想像で何回殺されてるのか分かったもんじゃないよ。あの人歩いてるだけで他人の彼氏の目を奪うんだから。それが原因で喧嘩になってるところよく見るし」


 そう言いながら、買う服を二つまでしぼっている。

 両手に持って交互に見ながら悩む。


晴嵐「・・・どっちがいいかな? やっぱこっちの方が絶対似合ってるんだよね。結局艦長って見た目が中性的だから、大きめのユニセックスの服が似合いすぎるからなぁ。でも本人が男らしいのが好みっぽいから、こっちなのかな・・・これはこれで悪くないから悩むなぁ」


風音「もう両方買おうか」


 ここから更に時間を掛けられても困るので、そう提案する。


晴嵐「よしそうしよう。でも遅いよ。実は二つに絞った時からその言葉をずっと待ってたんだよ。いつ言うのかなと思ってたよ」


風音「じゃあそっちから両方買おうって言ってよ」


晴嵐「自分の事なんだから自分で提案しないと。こっちの対応を待たないでさ」


風音「晴嵐が選んでくれてる間はあんまり口を挟みたくなかったんだよ。 さっきも言ったけど僕は服のセンスとかはよく分かんないし。でも晴嵐の評価は信じてるから、何でも晴嵐の思うように言ってくれるのを待ってたんだよ」


晴嵐「あ・・・そう。うちを信じてる・・・ね」


 そして独り言のように小さく言う。


晴嵐「・・・そんなにうちの事信用してるんなら、普段からもっと喋りかけに来てよ」


風音「え? なんて?」


 高評価カゴの荒らされた服をたたみ直していた風音が反応する。


晴嵐「ちゃんと聞いとけボケカス!! いっちばん重要なとこだろうがよ!」


 急にえたので風音がビクッとする。


風音「だって急に小さい声でなんかボソボソ言ってるから。独り言かなって」


晴嵐「今時難聴野郎なんちょうやろうなんて流行はやらねぇんだよ! いいか? 目の前の女子が小さい声で何か言い出したら、ちゃんと聞く!! はい復唱!」


風音「復唱って晴嵐・・・正座の時も思ったけどアリエイラさんに似てきたなぁ」


晴嵐「はよ復唱しろや艦長よぉ!」


 ほんとに部下かと思うくらいがらが悪い。

 仕方ないので復唱する。


風音「はい。目の前で女の子が小さい声で喋ってたら、ちゃんと聞きます。あの、質問良いですか?」


晴嵐「言えっ!」


風音「はい。そっちが大きな声で喋ればいいと思いますけど。っていうか、じゃあさっきのもう一回言えばいいんじゃないですか?」


晴嵐「馬鹿野郎かてめぇは!」


 頭をペシンと叩かれる。


風音「あぁ・・・やっぱアリエイラさんとはちょっと違う。手は出すし質問に答えてすらくれないよこの子」


 なんにしてもそろそろ時間か。

 取り敢えず服を二着とも購入し、予約してあるイタリアンレストランへと向かう。


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