風音ワングランプリ? 二日目乃拾伍
風音「出しちゃいけない人が多過ぎて」
晴嵐「え? なんで?」
風音「だってさぁ。まず子供にこういう悪質な悪戯をしちゃ駄目だと思うんだよ。だから精神年齢の低いセイニーとフィリコが駄目だろ。あと本当に子供の咲桜も駄目だし」
晴嵐「それはそうだよね。子供にこんな悪戯する奴は馬鹿だよ」
そこはしっかりと釘を刺しておく。
風音「それに息吹とアリエイラさんは、これ以上関わるとポンコツになってないのがバレそうだから、あんまり近付きたくないし。検証に支障が出る」
晴嵐「息吹は鈍いからともかく、主はそうだね。ってか最悪もうバレてんじゃない?」
風音「かもね。 あとルミナはサルトさんと仲が良いから、たとえ夢でも邪魔したくないし。同じ理由でリロとワグナさんはゼロアと。癒々さんとシノは煉兄ぃと仲が良いからさ。 この人達は僕からラブレターを貰っても困るだけだろうし」
晴嵐「まぁ・・・人の恋路の邪魔は良くないよ、うん」
風音には見えない角度でひきつった顔で答える。
晴嵐(え? 艦長どこの世界線の話をしてるの? その組み合わせで正しいのって、癒々さんと煉也さんペアだけじゃないの?)
特にルミナとリロと凌舞なんか、誰が見ても風音の事が好きだろ。って思う。
晴嵐「ち、ちなみにルミナさんとかリロさんとか凌舞さんとかってさ、カノン内に好きな人居たんだ。うちそういうの疎くて」
カマかけてみる。
風音「いや好きかどうかは知らないけど、今言った人達と凄く仲は良いはず」
晴嵐「どうして? 本人に聞いたの?」
風音「だっていっつも喧嘩してるから。喧嘩するほど仲が良いって言うし」
晴嵐が一瞬息を吞んでから。
晴嵐「だよね~~。分かる~」
晴嵐(あ、馬鹿だこの人)
ようやく気付いた。
晴嵐「じゃああと残るは? ブラウニーさんと、ユニルさんと・・・」
風音「ユニィは契約者っていうのは付き合うよりも結婚するよりも深い絆で結ばれている、とか何とか前に言ってたから、わざわざラブレターを渡さなくてもいいんじゃないかな」
晴嵐「そうなんだ。じゃあブラウニーさんと零武と神楽さんくらいか」
風音「神楽さんもねぇ・・・なんかやたら他の娘とさっさと付き合えみたいなオーラを出してくるからさ。別に僕にそんな興味無いんじゃないかな? ドッキリにならなそうな感じがする」
晴嵐「あ、そういえばそうだったねあの人」
決して興味が無いわけではない。風音が誰かと結婚したら、寝取る気満々なのが神楽だ。あれはそういう文化を持つ星の出身だから仕方ない。
風音「で、ブラウニーはなんか・・・あの人に手紙を渡すのがこっ恥ずかしいんだよ。それならまだ口頭で告白した方が遥かにマシ。あれに気合を入れた手紙を渡すってもう・・・人として負けたみたいじゃない?」
晴嵐「どういう事だよ」
その感覚はマジで分からん。
風音「で、むしろこっちから聞きたいんだけど。 零武ってさ。冗談通じる?」
カノンでも一番絡んだ事が無いのが零武だ。
どんな性格なのかもよく知らない。
一番最近の記憶では、早朝食堂から自分の部屋に戻ろうとしたタイミングで突然背後に立っていて。
少し驚いて、振り返って尋ねた。
風音「どうしたの零武?」
零武「ついにかくれんぼ十日目にして見つかってしまいましたか。それではまた遊んでくださいね」
とか言って去って行った。
どういう意味か全然分からなかった。まさか十日間背後にくっついていた訳でも無いだろうし。
まさか毎日違う所に隠れてたのか?
だったらせめてかくれんぼをすると言っておいてもらえないかな。勝手に開始されても。
・・・っていう事があった。それももう二週間前の事だ。
それ以来顔も見ていない。
晴嵐「あの子はやめといた方が良いんじゃない? 冗談は通じると思うけど、なんだろ・・・。よく分からないから。いつでも本気かふざけてるのか誰にも分かんないし、そもそもストーカー気質だしね。大体毎日艦長の事見てるじゃん。 あの子多分能力が全部戦闘に振られてるんだよ。ほら、動物でも知性が低い方がそれに比例して力が強いじゃん?」
風音「え? 途中でサラッと流して言ってたけど・・・なに? ストーカー気質? 尾行されたりして僕が気付かないはずないんだけど」
アリエイラの従者達は、誰よりも艦長を上位として扱うように設定されているらしい。
自分が尊敬する人くらい自分の意志で決めるべきでしょ。と、そういう設定にする事を過去一度断ったのだが、アリエイラはおろか本人達からすら受け入れてもらえず今に至る。
本人達がそう言うなら別にいいけど、その結果ストーカー化はあかんて。
晴嵐「気付かないのはしょうがないよ。だって実際追い掛け回してる訳じゃないし。 あの子はカノンと炎火の廊下に仕掛けてある監視カメラを乗っ取るんだから。艦内に居る時は艦長が艦長室とか自室から出て戻るまでは、いつでも嘗め回されるように見られてると思った方が良いよ」
風音「なんでそんな事になってんの!?」
晴嵐「行き過ぎた尊敬じゃない? 良い部下を持ったよね~」
風音「それで終わっていい話なのこれ? まさか零武の部屋って、入ってみると僕の写真だらけみたいな、そんな漫画みたいな事になってないだろうね?」
晴嵐「そんな訳無いじゃん」
ケラケラと笑う。
風音「あぁ、良かった。末期では無いんだ」
ホッと胸をなでおろす風音。
晴嵐「写真を貼る時代は終わったでしょ。パソコンと対応機器さえあれば、やろうと思えばいつだって部屋の壁に投影出来るんだから。 そんな無駄の物は無くって、あの子の部屋にあるのは艦長の等身大フィギュアだよ。・・・七体くらいかな?」
風音「嘘だろ・・・末期の向こう側に居るのか」
晴嵐「自室とか外に居る時は監視してないんだから、悪質なストーカーって訳じゃないんだし別に良くない?」
風音「良くはないかな・・・。だって女の子が尊敬している人に対してやってる事だから・・・って思ってるかもしれないけど、これ春日さんと晴嵐で想像してみ? 春日さんが勝手に晴嵐の等身大フィギュアを作って部屋で一緒に寝てたりしたら」
カノンでは変態ジジイで有名な春日。
女にだらしなく男に微塵の興味も無い、分かり易い人とも言う。でも風音とは割と仲が良く、普通の友人付き合いをしている。
晴嵐「きもっ! 直ちに殺しに・・・じゃなかった、お仕置きに行くよね」
風音「そう思うなら、零武の姉としてあの子の事少し咎めておいて?」
まぁそんな事を夢の中で言っても仕方ないが。
晴嵐「姉って・・・うちのナンバーが若いだけじゃん。生まれたのはほぼ同じ時期だし」
風音「・・・まぁいいや。それに関してはここで考えても仕方ないし。起きてから対策を考えよう。 で・・・えーーーと。うん、零武は止めとこう。 ほら、詰んじゃったよ」
手紙を渡せる人検索が、全員終わってしまった。
風音「だからいっそのこと、ランダムで最初に出会った人で行くかと思ってたら、唯一普通に渡せそうな子を偶然見かけたんだよ。そりゃ封筒無くても声掛けるでしょ」
晴嵐「それが私だったんだ。そっか、ふ~~ん。 私だけ手紙を渡せるなって思ってたんだ。へぇ~~」
明後日の方向を向いたまま、足をブラブラとさせる晴嵐。
晴嵐「あ~~・・・あのさ。 そんな無理してさ、誰かを陥れる必要無いじゃん? し、仕方ないからさ、もううちがオッケーした事にすりゃいいじゃん。どうせ夢なんだし? 私と付き合えば、そこで終われるんでしょ?」
仕方ないなって感じの言い草だが、顔はもう真っ赤になっている。
こんな状態で、間違っても風音の方など見れない。
風音「まぁそうなんだけど。晴嵐は嫌じゃない? なんかハズレくじ引かされた感無い?」
晴嵐が急に怒ったような表情で振り返り、風音の方を見る。
晴嵐「あのな・・・! 言っとくけどな・・・!」
風音「・・・・・・」
キョトンとしている風音。
目が合ったと同時に顔を逸らす。
晴嵐「いや・・・」
急に風船がしぼんだように覇気が無くなる。
晴嵐「別に・・・ハズレとまでは・・・思ってねーから」
風音「そう? ありがとね」
風音が晴嵐の頭を撫でる。
晴嵐「やめてよ恥ずかしい」
風音の手を払う。
と同時に風音が腰掛けから立ち上がる。
風音「よし! じゃあ悪戯終わり! 正直この悪戯は乗り気じゃなかったから助かったよ。 で、これからどうしよっか?」
晴嵐「どうしよっかって? うちは仕事途中だから、一旦帰るけど」
風音「いやいや、夢の中でまで仕事しなくても良いし。つまらない悪戯を終わらせてくれたお礼に、艦長権限で休暇をあげよう。なんかやりたい事とか無い?」
晴嵐「え? 付き合うって、ごっこ遊びじゃなくて、本当にデートみたいな事するの? うちと?」
立っている風音を見上げながら、驚いた様子で言う。
風音「嫌ならいいけど」
晴嵐「いいいいい嫌じゃねぇよボケカス。訳分かんねぇ事言ってんじゃねぇよバカ」
注意するように、目の前にあった風音の太ももをスパンと叩く。
風音「あ、それ。その方がいつもの晴嵐って感じで落ち着く」
晴嵐も立ち上がる。
晴嵐「よし、じゃあ今時の女子のフルパワーを見せてやる。まず服を買いに行くよ!」
風音「うっす」




