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カノン  作者: しき
第5.5話
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風音ワングランプリ? 二日目乃拾参


 廊下に出て一息つく。


風音「・・・あのアリエイラさんの目。多分僕がポンコツになってない事に薄々勘付いてるな」


 我ながらちょっと白々しかった気もするし。

 別にバレても良いけど、もうあんまりボロは出さない様にしよう。


 取り敢えずウェルズの方は先に終わらせておこう。

 放っておいても良いけど、後々邪魔されたりとかしたら面倒だ。

 ウェルズの携帯に電話をする。


ウェルズ「お、風音君か。メールを見てくれたのか?」


風音「見たよ。ガレージから犬小屋に犬を移動させただろ? その子のおなか辺りをよく調べておいて。あとは頑張れ」


ウェルズ「ん? 何で知ってる? この近くまで来てるのか?」


風音「いや、とにかく頑張れ。ついでにアキュラさんが犯人。 次はもっと美味しいりょうりを用意しておいて」


ウェルズ「え!? いや待てって、詳しく・・・」


 電話を切る。

 夢の中でまで事件を解決していられない。


風音「さて・・・」


 ここからだ。

 ラブレターを書こうと思ってたが・・・なんかさっきからジャケットの胸ポケットに違和感。

 何らかの紙片しへんの一部がはみ出ている。

 取り出してみると、四つに折り畳まれたラブレターだったようだ。


風音(あぁ・・・やっぱりか。既にラブレターが用意してあるんだ)


 さすが夢だ。

 開いて内容を読んでみる。


風音「実は以前からあなたの事が好きでした。一目見た時から好きだった・・・という訳ではないのですが、誰よりも周囲に気を配って行動している優しいあなたを見て・・・うわぁ何だこれ」


 見てられない。

 これを渡して本当に喜ばれるのだろうか?


 最初の三行でおなか一杯になったので、再び折り畳む。


風音「これを適当に封筒にでも入れて・・・せっかくだし買いに行くか」


 手紙を入れる封筒なんて持ってない。

 事務所にはあるかもしれないが、誰かに行動がバレると悪戯いたずらの意味が無くなるので借りられない。


 大型ショッピングモールへと向かう道で、今後の行動を考える。


風音(今更だけど・・・意味あんのかなこの悪戯)


 元々悪戯する事に意味なんか無いけども。

 そういう事じゃなく、他人の感情次第で結果が変わる悪戯を、自分の夢でやっても何の意味も無いのでは?

 ルミナは大丈夫って言ってたけど、自分の意識から作られた世界なんだからどうしても主観は入るだろう。

 それとも断られるか、受け入れられるかは完全ランダムなのだろうか。


 ・・・それに誰に出せばいいんだ?

 出しちゃいけない人が多すぎる。

 消去法で行くと・・・晴嵐せいらんとか零武れいんとか・・・あの辺りか。


 考えながらショッピングモールへと向かう最中に、商店街を通っていると。


風音(あ、そうか。マリアさんって手もあるのか)


 出入り業者という事でカノンの関係者である、犬型獣人のマリアさんという人のお花屋さんがこの付近にある。


風音(・・・でもあの種族の子達って純粋な子が多いからなぁ。 夢でもあんまり悪戯とか仕掛けたくないし・・・)


 そう思いながら、一応花屋さんを覗いてみる。

 マリアさんは居ないようだ。

 外にいた顔馴染みの親父さんにマリアさんの事を聞いてみると、今は時計塔に季節の花を届けに行っていて不在らしい。


風音(まぁ丁度良かったか。マリアさんには悪戯する気がしなくなってたところだったし。挨拶くらいはしておきたかったけど)


 改めてモールの方に向かう。


 モールに到着し中に入ると、見た事のある姿が。


風音「あれ? おーい、晴嵐せいらん


 呼ばれた人物が振り返る。


晴嵐「ん? あれ、艦長じゃんか。なんでこんなとこに居んの?」


 アリエイラの従者じゅうしゃの一人だ。この子も息吹と同じロボット。

 そして外見は息吹と同じく、言われないと分からないくらい人間に近い。

 見た目は息吹と同じ女子高生風だが、息吹が清楚せいそ系だとしたらこっちはギャル系。

 ギャル系と言っても雰囲気が、という話。アクセサリーの類や化粧なんかは一切していない。というかロボットなので化粧とか必要無い。素が可愛らしいから。

 ちょっと日焼け気味の肌色をしていて、茶髪でかなりゆるめにウェーブが掛かっているロングヘア。

 そしてこのクソ寒い時期に生足全開の短いスカート。スカートのすそからは真っ黒なペチコートのレース部分がはみ出している。

 そしてやはり寒いという状況は認識出来ているのか、上は結構分厚いコートを羽織っている。・・・のかと後ろから見た時は思ったが、振り返った際に前から見たらそれも全開にしているので、寒いという概念がいねんは無いようだ。


風音(晴嵐の事を考えてたら、ちょうど出会うなんて。やっぱり夢だからかな?)


 なんにせよ、まず一目見て思った事を口にする。


風音「ペチコートはみ出てるで」


晴嵐「あん? そういうファッションだって事にしておけばいいんじゃないのこんなの。薄い青白主体のスカートに黒いフリル、背徳的はいとくてきで逆に可愛くない?」


風音「・・・背徳はどうか知らないけど、可愛いとは思う。 それはそうと晴嵐は何でここに?」


 晴嵐が笑いながら答える。


晴嵐「それこっちが先に聞いたんだけど。 私は主から頼まれて買い出しに来てるんだよ。ルーティンワークってのかな? 大体火、木、土のこの時間はここに居るよ」


風音「あ、そうだったね」


 という風に反応したが。

 なるほどこういう事か。

 確かにアリエイラに聞いた事がある。決まった曜日に買い出しに行って貰っていると。

 それを今聞くまで忘れてたけど。

 人間の脳って凄いな。

 自分自身が覚えてない事まで記憶してて、まさか夢で自分に教えてくれるなんて。


晴嵐「んで? 艦長は?」


風音「僕も買い出し。封筒を買いに来たんだよ。って言うかちょっと聞きたい事があるんだけど」


晴嵐「なに?」


風音「例えば今この場で、僕からラブレターを渡されたらどう思う?」


晴嵐「え? 破って捨てるよ?」


 ケラケラと笑う晴嵐。


風音「あ、そう? じゃあはい、これどうぞ」


 胸ポケットからさっきの紙片を取り出し、晴嵐に渡す。

 受け取った晴嵐が折り畳まれた紙を開いて、無言でしばらく読む。


晴嵐「え・・・ちょ・・・これあれか。マジなやつじゃんか」


 頬をしゅに染めて、顔を上げてこちらを見る。


風音(あ・・・こういう顔もするんだ。・・・っていやいや。僕の夢の中だからか。現実では僕の前でこの顔は絶対しないもんな)


 とか思いながら返答する。


風音「そう、マジのやつなんだよ」


晴嵐「いやーー・・・、でもあの・・・そうだな。まぁ・・・一旦返すわ」


風音「破らないの?」


 返された紙を受け取ってポケットにしまう。


晴嵐「いや・・・さすがにマジなやつに冗談で返しちゃ悪いでしょうよ」


 晴嵐がキョロキョロと周囲を見ながらソワソワしている。


晴嵐「・・・でもその、気持ちは有り難いんだけどさ。うちロボットじゃん? 艦長にはもっと他に良い子がいるんじゃない?」


風音「本当に好きだったらロボットとか関係無いよ」


晴嵐「ひぅ・・・」


 言われた晴嵐が不意打ちを喰らったように、ヒュッと息を飲むと同時に変な声が出た。


晴嵐「・・・・・・・。 いやでもその・・・主の方がちゃんと人間だし、うちより美人だし、うちはがさつだし・・・止めといた方が良いって、うん」


 困ったような表情で言う。

 残念ながらお断りの返事のようだ。


 という事で。

 只今ただいまをもって悪戯を行う事に決定致しました。


 フォローを入れながらネタバレをする。


風音「晴嵐も十分美人だと思うよ。まぁこの手紙は嘘だけどさ、人間かロボットかは関係無いと思ってるよ。本当にこれは本心で」


晴嵐「あ・・そうなんだ。世間はロボットとか人工知能に対していろんな考え方があるけどさ、そうやって平等に扱ってくれるのってさ、うちらはやっぱ嬉しくて・・・。 ・・・・? あ? 手紙が嘘って何?」


 今の今まで乙女の顔をしていたのに、一瞬で無表情になる。


風音「いやこれね、告白ドッキリって言って、今流行はやってるらしいんだよ」


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