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カノン  作者: しき
第5.5話
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風音ワングランプリ? 二日目乃拾弐


 息吹と二人で買い出しと映画、ついでに夕食を食べて帰ってきた風音。


風音(最近の映画は疲れるな・・・)


 今までにいろんな作品が出て、アイディアが出尽くしたのか。

 とにかく突飛とっぴな展開が多かった。

 アクション映画なんだから、目的は敵を倒す。道中は頑張る。目的を達成したら、やったねハッピーエンド。

 それでいいのに。どんな時代になっても、王道おうどうってのは変えなくていい。


 話を進めるうえで展開が二転三転するのは百歩譲っていいけど、映画開始十分後くらいに起こるわずか五分の最初のアクションシーンで、味方陣営と敵陣営にそれぞれ二回の裏切りがあったのはやりすぎだろう。

 こんがらがるわ。

 それとまだ敵陣営の素性すじょうもはっきりしてないのに、第三勢力って誰だお前ら失せろ。

 しかも開始当初主人公視点だった二人組の内の片方が序盤で第三勢力に移るわ、そのくせ物語後半まで第三勢力の視点では物語が語られないわで、もうどの陣営が本当の主人公かも分からなくなった。

 結論から言うと最初に敵陣営だと思われていた組織が、真の主人公サイドだった事が終盤で分かるんだけれども。ついでに最初主人公視点だった奴は、黒幕の側近だった。

 もうちょい早めにそれを明らかにしてくれないと、見てる側はどんな感情で物語を追っていいのやら・・・。


 というのが大体今日見た映画の感想だが、それでも良い息抜きになった。

 最終的にハッピーエンドだったのは良いね。帰り道が清々すがすがしいから。


 艦長室に戻って、早速仕事のメールのチェックをする。

 特に無いようだ。


風音(さてじゃあ・・・最近流行りの悪戯を調べるんだっけか)


 流行り、悪戯いたずら、ドッキリ、で検索してみる。


風音(うわぁ・・・色々あるみたいだけど)


 ヒット件数が多いし、実際に誰かにやってみた動画も多そう。

 色々調べても仕方ない。ここは約束通り最初のやつを見てみるか。


 「今が旬! 気になるあの人が他の女と映画に行っている中必死に書いた、怒りのドッキリ特集」という謎のページが目に入る。


風音(怒りのドッキリ特集ってこれ、この記事を書いた人が怒ってるって事? わざわざタイトルに書くって、精神的に不安定なんじゃないのかな)


 タイトルに何となく興味を持った。

 同じように興味を持って、このページをのぞいた人が多かったのだろうか。だから人気があるページとして一番最初に来ているのか。


 早速ページを開く。


風音(今の流行はレトロスタイル・・・?)


 この時代、愛の告白を手紙で書く人はいったい何人いるのでしょうか?

 紙こそ神。紙こそ至高。

 今こそ紙で想いを伝えましょう。

 よっぽど相手が嫌いでもない限り、ラブレターを貰って嬉しくない人なんて居ません。


風音(ん? 特集内容を間違えてないか・・・?)


 ・・・とここまで読んでそう思ったが、しばらく読み進めるとやはり悪戯特集だと納得出来る内容が。


 でもそのラブレターは真っ赤なウソ!

 真剣に考え答えを出してくれた相手に、はっきりと言ってやりましょう。これは嘘でしたと!


 もし相手があなたに興味が無く、断る予定で来ていたら?

 ふざけた手紙への怒りのニュアンスの中に、ちょっとホッとした表情。

 まさにドッキリ展開真骨頂!!


 もし相手があなたに興味があり、あなたとお付き合いするつもりで返事をしに来ていたら?

 虚仮こけにされたと知って、あなたが殺されてもおかしくないくらい怒るでしょう!

 まさに最大級の侮辱ぶじょく

 これぞドッキリ大成功の瞬間!!


風音(嘘だろ・・・。 何の為にこんな事をするんだよ)


 世間ではこんな嫌なドッキリが流行ってるのか。


 これは正直やりたくない。

 別のにしようかな。でもアリエイラさんの事だから、僕が本当に約束を守るのかチェックしてそうだしな・・・とか考えていると、その下の大きな文字が目に入る。


 こんな悪戯はやめようと思ったそこのあなた!

 甘い!

 甘すぎます!

 実はこれ、相手を侮辱せずに済む方法があるんです!

 しかも上手くいけば超ハッピー!!


風音(・・・いや無いだろ)


 どうやっても無理だと思うが。取り敢えずスクロールして続きを読んでみる。


 やり方は簡単。

 ラブレターに対して好意的な返事をくれた子には、嘘でしたとは言わずに実際付き合う事にすればいいのです!

 この瞬間、本物のラブレターに変わるわけです!

 これなら相手は不愉快になりようが無く、あなたには人生の大事なパートナーが出来る。


 そう・・・平和な世界が訪れるのです!!


風音「えぇ~~・・・。 趣旨しゅし変わってないか? だったら上に書いてあったドッキリ大成功って何だったんだよ」


 思わず声を出してしまう。

 そして一応まだ続きがあるようだ。


 え?

 もしラブレターの返事が否定的なものだったケースでは、相手を不愉快にさせない方法は存在するのかって?

 無いです!!

 その時はいさぎよく怒られましょう!

 人には感情があります。こっちにとっては冗談であっても、本気で怒る事はあります。

 悪戯を仕掛けるという事は、怒られる事も覚悟するという事。

 どうせ笑って許してくれるだろうとか甘い見通しで行動したり、怒った側を批判する人はドッキリや悪戯に向いていません。


 やると決めたからには、覚悟を決めてやり通しましょう!


風音(最後はちょっとだけ良い事言ってるな・・・)


 怒る方のうつわが小さいと思うのは間違いだという事だ。

 まぁ当たり前の事だが。


風音(うーーん・・・ま、なるようになるか)


 一応その方向で考えて、眠りにつく事にするか。


 ・・・・・・・・・


 =========================


風音(・・・・・・ん?)


 ふと覚醒かくせいする。

 なんだろう、いい匂い。


 と思ったら、アリエイラの髪の香りだ。寝癖で散らかっている割には、良い洗髪剤を使っているみたいだ。

 目の前でアリエイラが、機械を風音の頭に繋げている。

 昨日のポンコツ製造機だ。


風音(あぁ・・・昨日のこのシーンか)


 夢の中で昨日を追体験ついたいけんしている状態だ。


 後ろから息吹が組み付いてこちらの動きを拘束している。

 そういえばそうだった。抵抗しないように取り抑えられてるんだった。

 スイッチを押される前に、精神にじょうをかける。


風音「ん?」


 一瞬、空間にゆがみが走った気がした。

 夢の中の自分が精神支配を無効にする事で、現実の自分もやっちゃったのかもしれない。

 だとしたら失敗だ。ルミナの機械の効果は消え、この夢は間もなく終わる。


アリエイラ「はい終わりました」


 機械を取り外しに掛かる。

 背後にいた息吹も拘束を解いた。


風音「あ、もう終わったんだ」


風音(・・・いや、続いてるな。大丈夫だったか)


 昨日の流れと同じなら、もうすぐウェルズから依頼が来るはずだ。


 と思っていると、スパコンから「ピロリン♪」と音が鳴る。


風音「あ、仕事の依頼だ」


 ウェルズからの依頼。

 昨日実際に起こったタイミングより少し早い気もするが、夢だしこんなものだろう。

 一分一秒まで正確に再現される訳がない。


 早速メールを開いて中身を確認・・・といきたいところだが。


風音「あれ? メールってどうやって開くんだっけ?」


 昨日と全く同じ感じで、ポンコツになった振りをしておく。


アリエイラ「あら?」


 じっとこちらを見てくるアリエイラ。


風音「どうかした?」


アリエイラ「いえ・・・。何か違和感がありましたが・・・機械の影響でしょうか?」


 やはり鋭い。

 この人相手に演技は長く続けられない。


 とっとと解散にしよう。


 一応昨日と同じ流れに沿って、レスタにメールを開いてもらう。

 ウェルズからの音声メールが流れ出したと同時くらいで、メールを閉じる。


風音「よしじゃあ行ってくる!」


 席を立ち、そのまま部屋を出て行こうとする。


息吹「え? 艦長? まだメールの内容も聞いてませんよ?」


風音「シャロンに行って直接聞いてくるよ。いっちょ頑張ってきます!」


 そう言って部屋を出る。


ルミナ「凄いわね。ポンコツってあんな感じになっちゃうんだ」


レスタ「うん。まさか内容も確認せずに突っ込んでいくなんて」


 風音のポンコツっぷりに感心する二人と。


アリエイラ「ふむ。・・・失敗か、あるいは・・・」


 アリエイラは一人、浮かない表情をしている。


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