風音ワングランプリ? 二日目乃拾壱
ルミナ「じゃあ誰に出すと思うのよ?」
アリエイラ「あなたが先ほど言った通りですよ。風音さんは夢の中でも相手を不快にさせたくないと考える方です。 となると、相手が誰であれこんな悪戯を仕掛ける事は出来ない。つまり誰にも出さない、が正解です」
ルミナ「・・・じゃあ企画倒れじゃない」
アリエイラが首を横に振る。
アリエイラ「ですから相手が不快にならない様な道を作っておいてあげるのです。風音さんとしてもそんな道があるのなら、この悪戯をやってみても良いかと考え直すでしょう」
ルミナ「はぁ? ラブレターを出して「嘘でしたー」ってやるのよね? どうやったって不快になるでしょ」
アリエイラ「そうかしら? おそらく風音さんは癒々さんにはラブレターを出さないでしょうが、仮にラブレターを出した相手が癒々さんだとしましょう。返事はおそらく「お断りします」です。彼女はすでに仲の良い男性が居ますから。この場合、実はドッキリでしたと言ってもそこまで怒らないんじゃないでしょうか。 怒るのは例えばルミナがラブレターを受け取り、受け入れる返事をしたタイミングで「嘘でした」。こんなの刺殺されても文句を言えないほど愚かな行為です」
ルミナ「そうね。その場合その場で風音さんを殺して私も死ぬわ」
目を細めて答えるルミナ。
アリエイラ「でもどうでしょう? 受け入れる返事をした相手とは、本当に付き合う事にするとしたら?」
ルミナ「何ですって!?」
思わず興奮して席を立つ。
ルミナ(という事は? 私が選ばれた場合即答で受け入れるに決まってるから、夢の中で風音さんと付き合う事になるという事!? そんな事になったら夢から醒めた後風音さんは私に対して、嫌でも意識してしまうに決まってるわ。あの目障りなブラウニーやリロなんかと、大きく差を付けられるって事じゃない!? これは・・・いえ、ちょっと待って。 焦るな私。 少し考えを精査する必要が・・・)
長考を始めたルミナ。こうなると彼女はなかなか思考の海から戻ってこない。
アリエイラがその辺に置いてあった書類を丸めて、慣れた手つきでポコリとルミナの頭を叩く。
アリエイラ「はいはい早く帰ってきてください。 つまり話をまとめるとですね、最初はあくまで悪戯です。だから相手の返事が「いいえ」の時は悪戯続行。しかし返事が「はい」の時は本当に付き合う事にする。どうせ夢ですからね。 これで相手は不愉快になりません」
興奮しかけた自分を落ち着かせるために、座り直して一口紅茶を飲むルミナ。
ルミナ「・・・つまり風音さんは、この人なら受け入れてくれた場合そのまま付き合っても良い。そんな女性に手紙を出すと?」
アリエイラ「おそらくそうなります。今一番付き合う事になっても良いかなと思う人に手紙を出すでしょう。 ルミナは誰に出すのか気になりませんか?」
ルミナ「なる」
アリエイラ「そうでしょうそうでしょう。実を言うと私も気になります。友好度を数値だけで見るとブラウニーさんですが、付き合うとはその人と行動を共にする時間が増えるという事。 頭の良さ、性格、話しやすさ、経済力、愛嬌。全てを総合した時にどうしても、ブラウニーさんを選択するとは思えない。 どう考えても・・・私しかいないですね候補は。ふふっ、困りましたね、どう御返事したものか・・・。あぁすみませんルミナ、あなたの前でこの様な配慮の無い事を言ってしまって」
クスクスと笑うアリエイラ。
ルミナ「いやいやそれでいくと私でしょ。だって最近可愛いって言われたし、どこかの誰かと違って風音さんの借金を帳消しに出来る資産もあるし、あと誰かさんと違って超若いし肌綺麗だし歌も上手いし頭良いし、ちゃんと見た目に気を遣うし」
さっきの雑魚呼ばわりのお返しに皮肉を言ってやったが、自信家のアリエイラが自分に対して言われていると思うはずもなく。
アリエイラ「こらこらルミナ。急にワグナさんの悪口を言うものではないですよ」
ワグナが聞いていたら鉄パイプでぶん殴ってきそうな反応。
ルミナ「・・・だけどそもそもどうやってその悪戯をさせるの?」
アリエイラ「今現在息吹を使って、一時間風音さんを拘束している状態です。それが終わると風音さんはスパコンで調べ始めるでしょう。最近流行りの悪戯をね。それをルミナ、あなたがスパコンを乗っ取って、こちらが意図したページに誘導します」
ルミナ「誘導かぁ・・・。レスタのソフトを使えばこの距離ならオフライン状態でも乗っ取れるかな・・・。乗っ取った後はいっそオフライン状態でオンラインを装う方が自由に動かせるのかな・・・」
アリエイラ「やり方はお任せします。ただし悪戯を紹介するページは既存の物ではなく、ルミナが自作してくださいね。風音さんの思想や行動はある程度さっき言った通りになるでしょう。ですがかなり意地の悪い悪戯ですから、風音さんが本当に実行に移すのかは運が絡みます。そのページ内で、風音さんの背中を押す言葉も必要でしょうし」
ルミナ「そんなの一時間で出来るわけないでしょ」
匙を投げるルミナ。
ルミナ「ちなみに今流行ってる悪戯ってどんなのかな?」
偶然こちらが意図している悪戯が流行っていないものか。
ルミナがパソコンで検索する。
ドッキリ対象の相手の部屋に、ホログラム映像のゴキブリと人間のバラバラ死体を床に置いておく。ドアを開けると同時に死体に群がっていたゴキブリが四散し、床は一面血だらけ。
対象がゴキブリと死体を見つけて驚いたくらいのタイミングで、後ろから背中を押して部屋に入らせ、ドアを閉めて閉じ込めるドッキリ。
らしい。
ルミナ「しょーもな・・・」
こういうのの何が面白いのかが理解出来ないルミナ。
パソコンから目を離し、アリエイラの方を向く。
ルミナ「なんにせよいくつかやり方はあるけど、最低三時間はかかるわね。そもそも艦長室のスパコンにハッキングする事自体難しいのよ。レスタのソフトを使ったって、それはちょっとした後押し程度の効果しか無いと思った方がいいわ。ほぼほぼ実力でどうにかしないといけないって事ね。 ・・・大体あのスパコン誰が作って誰がメンテしてると思ってるの? 私とレスタよ? 穴なんか塞ぎまくってるっての」
アリエイラ「メンテしてるなら、バックドアの一つや二つ設置していないのですか?」
ルミナ「そんな事する訳無いでしょ」
呆れるルミナ。
アリエイラ「と言うかメンテを頼まれてるなら、結構自由にあのスパコンを触れるのでは?」
ルミナ「まぁね。好きに使っていいって言われてるし、機密情報も多いのに中身なんて見放題だし。興味無いから見ないけどね」
仕事関係の機密情報なんか本当にどうでもいい。
でももし「カノンクルーの人事評価」とか「風音のポエム集」とかいうフォルダーがあったら、秒で開いて中を覗くだろうけども。
そして今のルミナの発言に、アリエイラが疑問を持つ。
アリエイラ「え? 好きに触っても良いと許可が出ているのですか? ・・・じゃあハッキングなどする必要も無いのでは? このあと艦長を留守にさせれば、勝手にいじくり放題出来るではないですか」
ルミナが理解不能の表情を見せる。
ルミナ「いやなに言ってるのよ? 許可も無く留守中の人の部屋に入っちゃ駄目でしょ」
アリエイラ「えぇ・・・?」
アリエイラ(この子の倫理観が分からない・・・。勝手に入っちゃ駄目って・・・あなたがやろうとしているハッキングとは、まさにそういう行為なのですが・・・)
余計な事を言ってやる気が無くなられても困るので、ルミナの反論に対する感想は心の中で思うに留める。
ルミナ「・・・あー・・・何とか実力で突破してみるしかないかぁ~・・・」
ルミナが袖をまくり上げてパソコンに向かう。
早速息吹に電話するアリエイラ。
出るまでにちょっと時間がかかっている。
多分電話に出る為に、一旦艦長室から廊下に出ているのだろう。
しばらくして息吹が出る。
アリエイラ「息吹、今から風音さんと買い物に行ってきなさい。次の仕事に使う部品と、保存食料一式の確保。ついでに後学の為に、一緒に長めの映画でも見てきなさい。あとこの一連の流れに対し風音さんが断った場合、風音さんに拒否権は無いと伝えなさい。以上」
そう言ってしばらく待つ。
アリエイラ「特に問題無く了承して貰えましたか。それは良かった。・・・どうして泣いているの息吹? ・・・礼など不要ですが先に言っておきます、予定を勝手に変更して映画を見ずに帰ってきたりしたら折檻です」
相手の返事を待たずに切る。
アリエイラ「はい、これで注文通りですね。 短編映画を禁止したので映画で約二時間、部品の買い出しで最低一時間。 食料の買い出しも含めて最低三時間の確保が出来ました」
得意気なアリエイラ。
ルミナ「どうして私が仕事をして、息吹が一緒に映画を見に行けるの・・・」
そして全然納得いかないルミナ。息吹がロボットじゃなかったら、嫉妬に狂って暴れている所だ。




