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カノン  作者: しき
第5.5話
61/206

風音ワングランプリ? 二日目乃漆

レスタ「膝枕?」


 レスタが食いつく。


アリエイラ「・・・続けなさい」


息吹「ありがとうございます。 膝枕をする為には、寝ている艦長の頭を持ち上げなければいけません。そして人は頭を持ち上げられると普通起きます。ですがお酒に酔っていたり、寝不足からの完全な熟睡状態など、状況次第で起きない事も多々あります。ですのでこれを四人で四回試しましょう。これで起きなければ、この作品は少し危険だと判断します。起きれば非常時にも対応可能な作品だと判断する。というのはどうでしょう?」


アリエイラ「採用します」


 即決した。


アリエイラ「お二人に異論は?」


レスタ「無いですね」


ルミナ「・・・・まぁ・・・無いんだけど・・・」


 何かを悩んでいる様子のルミナ。


アリエイラ「では一人五分で交代で四回試しましょう。息吹、あなたは寝ている者を起こさない様に扱うすべけているので、検証に向きません。順番は最後でいいですね?」


息吹「最後? もし途中で起きてしまった場合、私の番は無しになるという事でしょうか?」


アリエイラ「そうですが何か?」


息吹「いえ・・・最後で結構です。 提案したのは私ですが最後で結構です」


アリエイラ「いい子ね。じゃあ私から。二番目がレスタ君で行きましょう」


ルミナ「え、なんで? 起きたら終わりなのに私が三番手?」


レスタ「そりゃそうだよ姉さん。どの程度で起きるのかの検証だよこれは。 こっちは姉さんの作品を真剣に評価したいんだから。起きて貰った方が良い姉さんが最初に行っちゃうと、わざと起こすような動きで頭を持つかもしれないでしょ。それじゃ検証にならないよ」


アリエイラ「さすがレスタ君はよく分かってらっしゃる」


ルミナ「うぅ・・・」


 言い返せないルミナ。


レスタ「アリエイラさんが一番手になった意味は理解出来ないですけどね。僕が一番でもいいでしょって思ってますよ今でも」


 意見を言うレスタを無視して、アリエイラが風音の頭をゆっくりと持ち上げる。


 どうやら起きないようだ。いつもの風音ならほぼ確実に起きている。

 ゆっくりと太ももに風音の頭を乗せる。


 そして髪の毛が当たらない様にかき上げながら、上から寝顔をのぞき込む。

 なんの警戒もしていない無垢むくな寝顔、そしてアリエイラに完全に身をゆだねている状態。


アリエイラ「これは・・・」


レスタ「どうしたんですか?」


アリエイラ「いい」


レスタ「・・・そうですか」


 アリエイラがゆっくりと風音の頭を撫でる。


アリエイラ「ん?」


ルミナ「今度は何?」


アリエイラ「いえ・・・今気付いたのですけど。これ膝枕じゃありませんね。もも枕ですね。何故膝枕と言うのでしょうか?」


 ルミナはアリエイラの言っている意味が理解出来なかったようで、首をひねっている。

 代わりに何となくさっしたレスタが答える。


レスタ「おそらくそれは単に息吹さんとアリエリラさんの翻訳機ほんやくきを、風音さんの国に合わせた翻訳にしているからです。翻訳機の設定を解除して初期状態に戻すか、もしくは自分の星に合わせればアリエイラさんの言語に見合った翻訳になるので、疑問に思わなくてもよくなる問題じゃないでしょうか?」


アリエイラ「分かってませんねぇレスタ君。何故この人の国ではこの行為をこう表現するのだろう? と思いをせるのが面白いのですよ?」


レスタ「そうなんですか? ・・・そんな事言うのサルトさんだけだと思ってました」


 言語学者のサルトは、常にそういう事を言っている。

 地球に来て間も無い頃も、風音の出身地である日本では大雨が降る事を「土砂降どしゃぶり」と土砂が降る事に例えたり、英語ではその土砂降りの事を「犬と猫が降る」と表現している事にサルトは爆笑していた。

 そういうのを知る事が面白いと感じているのが、基本的な言語学者の生態らしい。

 レスタには理解出来ない生態だ。


息吹「主。五分経ちました。速やかに交代してください」


 時計を見ながら時間を計っていた息吹が終了を伝える。


アリエイラ「息吹? その時計間違ってませんか? 私の感覚ではまだ二分という所ですよ?」


息吹「速やかに交代を。 時間を守らないと正確な検証になりませんので」


アリエイラ「ふむ・・・」


 そう言われると引き下がるしかない。

 もう一度ゆっくりと頭を撫でる。

 そしてしぶしぶ風音の頭を持ち上げ、ゆっくりとソファに降ろしレスタと交代する。

 アリエイラがルミナに近付いて話しかける。


アリエイラ「ルミナ」


ルミナ「えっ、何?」


 真剣な表情で呼ばれて、少しあせるルミナ。

 今ので風音が起きなかったから、何か指摘でもあるのかと身構える。


アリエイラ「ルミナの作品名を「夢でやり直し装置」ではなく、「風音さんに膝枕をするという機会を作る装置」と名前を変えて私に販売してくれるなら、減点無しでもいいでしょう」


息吹「主。真顔で何を仰っているのですか?」


ルミナ「って言うかそんな装置があるなら私が使うわよ。多分風音さんはこれ今回しか使ってくれないでしょ」


 少なくとも自分の人生のやり直しにはあまり興味が無さそうだったから。

 他人の人生を遊ぶのが面白いと感じたら、またやってくれるかもしれないが。


アリエイラ「ふむ。 では残念ながら減点になる可能性が上がりました。とだけ言っておきましょう」


ルミナ「・・・分かってるわよ」


 事実風音が起きなかったのだから仕方ない。


アリエイラ「ときにルミナ」


ルミナ「まだ何かあるの?」


アリエイラ「最近のレスタ君は、道を踏み外しかけてませんか?」


ルミナ「どういう事?」


 言っている意味が分からない様子のルミナ。


アリエイラ「あれを御覧ごらんなさい」


 今現在膝枕をしているレスタの方を向く。


 顔を真っ赤にして、風音の腕を撫でたり揉んだりしているレスタ。「これは起きるかどうか試してるだけだから」とか、誰に対して言っているのか分からない独り言をつぶやいている。


アリエイラ「あれちょっと危うくないですか?」


ルミナ「どの辺が?」


アリエイラ「レスタ君男性でしょう? 年頃なのにあの子が女性に関心を示しているのを見た事がありません。 かたや風音さんに対してはあの有様ありさま。今後が心配です」


ルミナ「うちの星の男子って大体あんな感じじゃないのかな」


 とルミナは思っている。実際はそんな事無いが。


アリエイラ「あ、種族的にああなんですか」


ルミナ「うちの星は極端に男子の出生率が低いからね。ただでさえ数が少ない男子で、あの優しそうな見た目でしょ? だからあの子幼少の頃からモテまくってたわよ。それこそトラウマになってるくらいね。 一方でレスタの方は兄っていう存在に強いあこがれを持ってたから」


アリエイラ「なるほど。理想の存在に対し、強く依存いぞんしている状態な訳ですね」


 とか雑談しながら様子を見ている間に。


息吹「五分です。レスタさん、速やかに交代して下さい」


 終了宣言にレスタが反論する。


レスタ「アリエイラさんは終了後も膝枕状態のまま喋っていたので、正確には五分五十四秒でした。正確な検証の為に五十四秒の追加を希望します」


息吹「認めましょう。あと四十二秒です」


 そんなやり取りをしている二人。

 息を荒くしながらちょっと前屈みになり、体の密着面積を多くしているレスタを見て。


アリエイラ「やっぱりちょっと・・・ねぇ」


ルミナ「そうかな?」


 こちらの二人の反応も、両者特に変わらず。

 ルミナが席を立って準備をする。


ルミナ(さぁここからね問題は。 私の開発した機械だから分かるわ。確かに機械の影響で起きにくくなっている。でも別に機械の効果に睡眠導入効果や、意図的に徐波じょは睡眠を顕著けんちょにしたり長くする効果なんか無い。大きく頭を揺すれば簡単に起きる。 でも・・・起こすと私が膝枕出来ないじゃない! こんな事って・・・。 落ち着きましょう・・・ここは論理的に考えないと。 わざと起こせばカザワンの優勝が大きく近付くのよ・・・。いやでも膝枕・・・こんなチャンス滅多に無いし・・・)


 ぐるぐると思考を巡らせる。

 ルミナは元々長考癖がある。誰かと喋っている最中に長考し始め、その結果それまで喋っていた人と話が噛み合わなくなる事もしょっちゅうだ。

 すると。


息吹「五分経ちました。あと五十四秒です」


ルミナ「え?」


 五分経った?

 いやまだ膝枕やっても無いでしょ。

 まだ悩んでいる状態で・・・・はっ!!


 視線を下げると、既に膝枕状態になっている。

 いつの間に・・・。

 気付いてなかったが、自分の顔が限界までゆるんでいるのも分かる。


ルミナ(この筆舌ひつぜつに尽くしがたい多幸たこう感・・・身体は無意識状態で膝枕を楽しんでいたというの・・・!!?)


 無意識にカザワン優勝より膝枕を選んでしまっていたのか。

 どうもルミナの身体は喜んでいたらしいが、意識が全然追いついていない。

 考え事をしている内に終わってしまった感じだ。


 幸せではあるけれども、このままではもったいなすぎる。

 じゃあせっかくなのでアリエイラがやってたように、風音の頭を撫でてみる。


 なで・・・なで。


ルミナ(ふおおおおおおおぉぉぉぉ!! やっちゃったあああぁぁぁぁ! これよ! これやってみたかったのよ! 年下が年上の頭を撫でるのって失礼らしいじゃない? じゃあこんなチャンス今しかないでしょ! この感触は一生記憶しておいて・・・いや待って落ち着け私! カザワン優勝の為にも、ここからどうにか起こさないと。よし・・・交代のタイミングね。ここから息吹に交代する時、風音さんの頭を大きめに振って降ろす・・・これでどうにか・・・)


息吹「五分五十四秒です。速やかに交代を」


 という声と同時に、息吹がルミナの腕を掴む。


息吹「もうルミナさんは艦長の頭に触れなくて結構です。私がやりますから」


ルミナ「え? どうして? 風音さんの頭を持ち上げて、規定時間後にソファに降ろすまでが一人の検証でしょ?」


息吹「あなただけは目的が違います。もし自分の膝枕時間が終わると同時に艦長をわざと起こすような行動を取り、私の番を潰すような事をされたら・・・私はこのまま腕を折るかもしれません」


ルミナ「や、やぁねぇ。そんな事しないわよ。それにエンジニアの腕を折るなんてそんな酷い事言わないの」


息吹「勘違いしないで下さい。私の両腕が折れるまで殴り続けてしまうと言っているのです」


 ルミナがゾッとする。


息吹「ふふっ、冗談ですよ。さあ速やかに交代を」


 息吹が風音の頭を持ち上げてルミナと交代する。


 ルミナが元居たソファに戻りながらアリエイラに言っておく。


ルミナ「聞いてた今の? あれ絶対本気で言ってたわよ。 アリちゃん。自分の所の部下はちゃんと教育しておいてよ」


アリエイラ「善処ぜんしょします」


 愚痴ぐちるルミナをよそに、息吹は涙を流して喜んでいる。


息吹(あぁ・・・! ついに艦長が私の太ももの上で昼寝をなさっている! あぁ・・・この無垢むくな寝顔。これこそ看護人生の極致きょくち! もう一生このままでいい・・・)


 とかやっている内に約二分が過ぎ。


風音「・・・っじゃこのクソゲー!!」


 という叫びと共に、風音がガバッと起き上がる。


 そして今に至る。


レスタ「・・・という感じの検証を行ってました」


 実際に起こった出来事はそんな感じだったが、風音に説明した内容はだいぶ中身を省略した。

 例えば膝枕中の各個人の行動や、細かい会話なんかは説明していない。

 それでも説明中に息吹の膝枕時間が終わったので、既に風音は起き上がってソファで座って話を聞いている。

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