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カノン  作者: しき
第5.5話
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風音ワングランプリ? 二日目乃陸


 夢から覚醒し、艦長室のソファで上半身だけ起き上がっている状態から。


息吹「失礼します」


 急に背後から息吹の声が聞こえ、後ろから肩を引っ張られてまた寝転んだ状態にさせられる。


風音「え? 何これ?」


 いつの間にか息吹に膝枕ひざまくらをされている状態になっていた。


息吹「あとおよそ三分私の時間が残っています。少しそのままでいて下さい」


ルミナ「いや起きたら終わりって約束でしょうよ」


 意味不明な会話をしている二人。


風音「え? どういう状況?」


 クリス姉弟の方を見て尋ねると、二人とも幸せそうな表情をしている。

 若干だがルミナの方は表情にかげりも見える。


 レスタが状況説明をする。


レスタ「風音さんが寝た後に追加検証があったんですよ」


 レスタが順を追って説明する。


 =========================



 上から風音を観察していたアリエイラが。


アリエイラ「この感じ・・・眠ったようですね」


 ジッと見たまま観察を続けるアリエイラ。


アリエイラ「今の所、急激な変化など変わった様子は無いですね」


ルミナ「だから言ったでしょ」


アリエイラ「まだ分かりません。 起きるまでは観察を続けます」


ルミナ「はいはい」


 再び呆れ顔で首を振るルミナ。


レスタ「あのさ、ちょっと思ったんだけどいいかな」


 姉に向かって尋ねる。


ルミナ「何?」


レスタ「これってさ、もしかしたら設定した夢を見るまで起きなかったりする?」


 ルミナがギクッとする。

 あえて今まで黙っていたが、痛い所を突かれた。


ルミナ「な、ななな何の事かしら? 意味が分からないわ。 もっと分かり易く言って貰わないと、議論の余地が無いわね。はい、じゃあもうこの話は終わり」


 その話を聞いていたアリエイラが、少しだけ目線をルミナに向ける。

 アリエイラは現在真下に居る風音を見ているので、髪の毛が顔を隠している状態で、その髪の隙間から少しだけ目が見えている。

 その髪の毛がとっ散らかっているので、さながら幽鬼ゆうきのような見た目。


アリエイラ「どういう事ですかルミナ。どうして話を終わらせるんですか? 続けましょうよ」


 そして地獄の底から響くような、負の感情を帯びた声。


ルミナ「いやその・・・まぁいいじゃない。 待ってる間暇なんだしさ。晩御飯の話でもしない?」


レスタ「姉さんごまかすの下手だな。起きないんでしょこれ」


アリエイラ「だとしたら大きな欠陥けっかんですね。個人差はあれど基本的に人は寝ている間、無意識に非常を警戒しています。 この機械を使っている間、非常時に絶対起きなくなる。というのであればそれは・・・とても危険な事ですよ」


 おどろおどろしい声で指摘すると、ルミナが目をらしながら答える。


ルミナ「ちょっと鈍くなるだけよ。大地震みたいな大きな非常時には起きるはず。 それにさぁ、あなた達ちょっとずるくない? さっきからなんで私の時はそんなにげ足を取ろうと必死になるのよ。昨日のアリちゃんの時はそういうの少なかったじゃない」


 二人の代わりに息吹が答える。


息吹「このままではルミナさんの圧勝だからです。おそらくここで足を引っ張らないと、明日のレスタさんの作品では勝てないとの見通しなのでしょう」


レスタ「いや・・・息吹さん?」


 息吹が止まる事なく続ける。


息吹「そして主の昨日のポンコツ製造機(鼻で笑)? あんなのはもう挽回ばんかいしたければ、ルミナさんの作品の欠点を百個は見つけないと勝機が見当たら」


アリエイラ「黙りなさい息吹」


息吹「かしこまりました」


 息吹が一礼して黙る。

 そしてレスタからの提案。


レスタ「別に勝てるとか勝てないじゃなくってさ、まぁとにかく検証しようよ」


ルミナ「け、検証? どうやってよ?」


 レスタが考える。


アリエイラ「っぺたでも叩いてみますか?」


ルミナ「それは可哀想でしょ。検証とか関係無く反対だわ」


レスタ「いや別に、叩くって思いっきり叩く訳じゃなくてさ、普通に呼ぶような感じで叩くって事でしょ?」


アリエイラ「いえ? 起きなければ最終的には思い切り引っぱたきます。それが検証でしょう?」


レスタ「いや・・・それは出来ないかな」


ルミナ「絶対ダメ」


 はぁ・・・と大きな溜め息を吐くアリエイラ。

 髪をかき上げ、あわれんだ様子で姉弟の方を見る。


アリエイラ「まぁあなた達ならそうでしょうね。 私と風音さんの間には、確かな信頼関係があります。この状況ですととことんやる方が良いですし、起きた後怒る事は無いでしょう。ふふっ・・・こんな事も出来ないなんて」


 勝ち誇ったような表情に変わる。


アリエイラ「互いの信頼関係あいが足りていない証拠。不憫ふびんですね」


レスタ「なっ・・・!」


ルミナ「・・・・・」


 さすがにカチンとくる二人。


息吹「まぁまぁ落ち着きましょう。「艦長自身が被験者ひけんしゃになる事を了承りょうしょうしたのであれば、徹底的にやらなければ逆に失礼である」と主は言いたいのでしょう。しかし介護職の私としては主の意見は変人のそれであり、少なくとも私は貴方あなた達寄りの意見です」


 同じソファに座っている息吹が二人をなだめる。


アリエイラ「息吹。あなた私の味方でしたよね?」


レスタ「まぁ・・・普通は寝てる人を思い切り叩けないですもんね」


ルミナ「そうそう。アリちゃんが変態なだけ」


 アリエイラは釈然しゃくぜんとしない様子だが、息吹のおかげで多少ピリついた空気が元のなごやかな状態に戻る。


アリエイラ「じゃあどうやって検証しましょう? 何か代案を出して下さい。同じ立場にありながら代案を出さずに批判だけをする人は、存在する価値がありませんよ?」


 多少攻撃的にもとれる物言いだが、仕事に集中しているアリエイラは大体いつもこんな感じだ。

 別に先程のピリついた空気を引きずっている訳ではない。


レスタ「そうですね・・・大声で呼んでみるとか?」


ルミナ「大地震並みにソファを揺すってみるとか?」


アリエイラ「ふむ・・・ルミナとしては起きて貰わないと困るから、思い切り揺らすという提案な訳ですね。じゃあそれは却下。 レスタ君の大声というのは・・・脳に他者からの介入があり影響が出ている場合、極端に声が届きにくくなる事が多いので検証として不十分になってしまうのですが・・・それしか手段が無いのであればそれでいきましょうか」


 決まりかけたが。


息吹「私も提案よろしいでしょうか」


 息吹が手を挙げる。


アリエイラ「また何か戯言ざれごとでも言う気なのかしら息吹? あなたにはしばらく静かにしておいてほしいのですけれど」


息吹「お耳汚みみよごしかもしれませんが、一つ意見を。 ・・・膝枕ひざまくらです」


 息吹の目がキラリと光る。


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