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カノン  作者: しき
第3話
25/206

殺人鬼7

 しらむ空を見上げながら、足を速める。


 以前マリアがいつも仕事の日の朝は早いと言っていたので、この時間なら起きている可能性は十分にある。

 ・・・彼女に気になる事を少し確認するだけだ。

 ウェルズとの約束もある。出来るだけ早めに終わらせ、早く仕事に戻らなければ。


 フェクト中心都市ネロの中でも最も活気があると言われている、商店が立ち並ぶ通りに来た。

 当然この時間は静かでまだ閑散かんさんとしているものの、深夜の様に人の気配が全く無い訳ではなく、店によってはもう準備段階に入っている。


 ルフ・ァレンに着くと、もう店内は既に灯りが点いていた。


風音(緊張するな・・・)


 準備中の店を訪ねるという行為。

 それだけでも緊張するのに、相手が可愛らしい獣人なのだ。

 マリアが店内に花を並べている姿が外から確認できるが、もうすでに可愛い。その光景をずっと見ていたい。

 何か手土産てみやげの一つでも持ってくるべきだったか、と思ってしまう。


 その上これからその子に、尋問のような事をしなければならない。

 やっぱりもう帰りたい・・・。とも言ってられないか。


 入口は木製の扉をした所々ガラス張りの自動ドアになっている。まだ作動していないので前に立っても開かない。

 これはノックして気付いてもらうしかないかな・・・と考えていると、マリアの方が先にこちらに気付いた。

 尻尾をブンブン振りながら入口の方にパタパタと走り寄ってきて、自動ドアを普通に手で開けた。


風音「えっ? これそういう開け方していいもんなの? 壊れない?」


 田舎いなか暮らしが長かった風音には、自動ドアを手動で開けるという発想が無い。

 壊れた時なら「どうせ壊れているから」と力づくで開けるだろうが、正常に使える物を無理矢理手で開けると、それが原因で壊れそうなイメージがある。


マリア「自動ドアは、動かしていない時は手でも開けられるんですよ」


 風音の疑問に答えてから、突然バンザイをする。


マリア「おはようございます!」

 

風音「おはようございます」


 風音はペコリと頭を下げる。

 バンザイは多分、マリアの星での挨拶のやり方なのだろう。その姿のマリアが可愛すぎて、また衝動的に頭を撫でそうになる。

 しかし今はそんな事をしている時じゃない。歯を食いしばってなんとか我慢する。


マリア「こんな朝早くから、何の用かしら?」


風音「いやちょっと・・・確認っていうか・・・・」


 凄く言いにくい。

 知り合ったばかりの仕事仲間に連続殺人犯の疑いを向けるって・・・。

 もし違ったら先日の契約交渉の決裂けつれつも有り得る。いや決裂してでもいいから違っていて欲しい、という気持ちも大きい。


マリア「確認? 仕事の話かな?」


風音「あの・・・・リロと会った日と言うか・・・契約を結んだ日の事覚えてます?」


マリア「ええ」


風音「あの日・・・なんて言うか・・・・・マリアさん・・・隠し事とか・・・・・してなかったかな~~・・・なんて」


 もういっぱいいっぱいだ。早くこの場から逃げたい。

 しかし。


マリア「・・・・・・・・・」


 マリアが一瞬無表情になって黙る。

 その表情から風音が確信する。

 残念ながらこれは当たりだ。何か隠し事をしている。


 なぜだろう。

 あれだけ違っていてくれと思っていたのに、彼女が隠し事をしていると確信して大きな落胆らくたんと共に、少しだけ気持ちが楽になった。

 無実の可能性が高い人物を一方的に疑っている状況というのが、余程ストレスだったのだろうか。


風音「多分間違いないと思うんだけど・・・マリアさんの方から言ってくれると助かるかな~~・・・って」


 一瞬泣きそうな表情を見せた後、観念かんねんしたようにマリアが頭を下げる。


マリア「すみませんでした! 勝手に屋台をのぞきました!」


風音「・・・・・?」


 リロの監視をしていた事か?

 それはもうバレてたんじゃなかったっけ?


風音「いやリロの仕事ぶりを監視してたのは知ってるんですけど・・・。マリアさんなら別にそんなんいくらでもやってくれていいし」


マリア「いえそうじゃなくて、あの日帰り際に屋台の様子が気になって見に行ったんです。あまりにも盗まれる事が多いって言ってたから。そしたら・・・誰もいない屋台の中が気になって・・・。一体どうやってあれだけ新鮮な状態で花を売ってるんだろうって。何か屋台の設備に秘密があるのかなって思って、こっそり見ちゃったんです。 勝手な事してすみませんでした!」


 全力で頭を下げられた。

 いや何の話をしているんだこの子は。と、風音が下げられたマリアの後頭部を見ながら思う。


風音「あの屋台に特殊な設備なんてありましたっけ?」


マリア「無かったですけど・・・」


 うん、無いよな。

 用意した覚えが無いわ。


風音「単にフィリコの育て方が異常なだけだと思いますよ。びんに水入れて花を挿しておくだけで、めっちゃ長い間綺麗なままだし」


 というか。


風音「別にそれはいくらでもやってくれていいんですけど、って言うか心配で見に行ってくれたんなら感謝したいくらいなんですけど」


マリア「え?」


 驚いた声を上げて、マリアが顔を上げる。頭を下げながら少し泣きそうになっていたのか、ちょっと目の端に涙が溜まっているのが見える。

 可哀想になって、風音が思わず頭を撫でてしまう。

 マリアの表情が緩む。少しホッとしたようで、ゆっくりと少しだけ尻尾を振った。


マリア「じゃあ何のお話で来たのかしら・・・?」


風音「単刀直入に言うと、ちょっと僕が聞いた話とその時の状況との齟齬そごがあって、その噛み合わない感じが気になるから確かめに来たって言うか」


 言いにくさが頂点に達し、自分でもよく分からない言い回しをする。


マリア「?」


 持って回った言い方に、マリアも理解出来ていない表情。


 風音が一旦落ち着いて一息つく。

 そして仕切り直して。


風音「マリアさんがリロを監視してた時間帯にニュースがやってたんだけど、その内容をなぜかマリアさんが知ってたのが気になって。ほら例の、犯人は三人組だってやつ」


マリア「・・・知ってて当然じゃない? あの時も言ってたけど、お客様との話題でつまずかない様に常に最新の情報を仕入れてるから。プライベートの移動中とかも、翻訳機にニュースの音声を飛ばして聞いてるし。リロさんの監視をしてた時も暇すぎて、どっちかって言うとリロさんを見るよりニュースを聞く方に集中してた時間もあったくらい。もう仕事って言うより趣味のいきになっちゃってるの」


 確かに翻訳機は常に耳元にあるので、最近色んな機能が追加された物がある。

 テレビやネットの情報を聞けるようにするなんて、割と初期型からあった機能だ。

 しかし。


風音「ん? ニュースを見たって言ってなかったっけ?」


マリア「ニュースで聞いたと言ったと思うんだけど、もし見たと言ってたら、単に言い間違えじゃないかしら?」


 あれ? そう言われると勘違いかもしれない。

 マリアも頭をひねる。そんな数日前の事を詳しく覚えていない様だ。

 割と記憶力に自信のある風音も、そんな一瞬で交わされた会話の内容なんて覚えていない。


 しかし先程と同じく、マリアの表情からこれだけは確信する。

 今この子は嘘を言っていない。他に疑われる様な心当たりが無いという様子も、嘘ではなさそうだ。


風音(良かった・・・・・シロか・・・)


 大きな安堵あんどと共に、罪悪感も出てくる。


マリア「まさか気になってた事ってそれだけ? ・・・神経質なの?」


 疑問を持つのは当然だ。

 仮に気になってたとしても、こんな朝早くから確認しに来るような事ではないだろう。


風音「えっと・・・まずひとつだけ言わせて貰っていいですか?」


マリア「? どうぞ?」


風音「すみませんでした!!!!!!」


 もうこうなったら平謝りしかない。


マリア「え? 何が?」


 キョトンとしている。


風音「・・・怒らないで聞いて貰えます?」


 マリアが理解していない様なので黙っていてもいいのかもしれないが、ここで理由を説明しないのはフェアじゃない。と思う。


マリア「内容にもよるわね。ただ、私も勝手に屋台を覗いたりしちゃったのを許して貰ってるから、割と何でも許すわ」


風音「実は、今さっき連続殺人事件の新しい被害者が出まして」


マリア「えっ!? また?」


 この反応にも嘘っぽさを感じない。やはり関係無いように感じる。


風音「うん。シャロンはどうも街の中に一般人として潜んでいる、戦闘民族か獣人の仕業だと思ってるみたいです。被害者のやられ方が、どうも素手で正面からやられてるっぽくて」


マリア「ああ、それで。 確かあの日、風音さんはその仕事のお手伝いを頼まれてたっけ。それで、取り敢えず知り合いの戦闘民族と獣人のアリバイを確認して回ってるって事?」


風音「まぁ・・・そんなとこです。疑うような事してすみませんでした。僕の中ではマリアさんをもう一切疑ってません」


 もう一回頭を下げる。


マリア「それはまあ・・・仕事だからいいんじゃない? 私が怒る事なの?」


 マリア本人は特に怒る事だと思っていない様だ。

 犯罪者に疑われたのに、この対応。風音の目には、彼女の背後に光が見える。


風音「あぁ・・・・ここに天使がいる・・・」


マリア「何を大袈裟おおげさな・・・」


 そんな事を言いながらも、まんざらでもないのか尻尾を振っている。


 愛嬌あいきょうのある性格と見た目に、慈愛じあいの心。

 尊敬出来る程の仕事に対する真剣さ。

 そして犬型獣人特有のこの、桁外けたはずれの可愛さ(風音主観)。


 多分天使とは、この子の事を指すだろう。


風音「この件に関しては後日また謝罪も兼ねて何か菓子折りでも持ってくるとして、早速仕事に戻る事にします。どうも屋台の監視カメラに映ってるっぽいんですよ、今回の被害者が」


マリア「謝罪とか別にいいのに・・・。 いやそれより、被害者があの屋台の常連さんなの?」


 ゴシップ大好きの彼女は、興味津々しんしんの様子だ。


風音「いや、リロと喧嘩したらしいから常連さんではないのかな? 僕も映像を見てみないと分からないんですけど」


 いくらリロでも常連と喧嘩しないだろう。・・・多分。


マリア「あの子いっつも喧嘩してるの? 私が居た時もロボットと喧嘩してたけど」


風音「ーーーーーえ?」


 ロボットと喧嘩?


風音「そのロボットってどんな奴?」


マリア「人間の女性型で、いきなりリロさんの顔を両足で蹴った人。お返しにその両足が爆発してたみたいだけど、普通に立ってたわ。その後そのロボットはすぐ逃げたけどね」


 風音が聞きながら何度か頷く。


風音「あ~~~・・・間違いなくその人。 今回の被害者」


 その人と喧嘩したのがマリアが居た日だとは聞いていたが、マリアもアリエイラと同様にロボットだと思っていたのか。


マリア「あのロボットが壊されちゃったって事?」


風音「その前に一つ聞いていいかな? なんでロボットだと思ったんですか? 多分見た目は・・・例えばシャロンに勤めてる人権を取得してるロボットより、人間に近かったはずなんですけど」


 聞いた話では、身体の素材や造りすら人間と同じなのだから。

 風音からの質問に、マリアが困ったような表情を作る。


マリア「なんでって言われても、動いてる時はそう見えるからとしか言いようが無いわ。むしろシャロンのロボットの方が分かりにくいでしょ。 でも確かにあの女の人も人によく似てたから、ジッとされると気付かないかもしれないわね」


風音「いや動いてても人間でしょ、アレはどう見ても」


 首から下しか見てないが、あれは多分頭があってもほぼほぼ人間だ。


マリア「店のドア前に立ってる客引きのロボットが、この商店通りにもいくつかあるでしょ? 風音さんにはアレが人間に見えてるの?」


 外観がプラスチックの、明らかに誰が見てもロボットなやつ。


風音「いや、あれはロボットに見えます。 ああ、そういう感覚なんだ」


 これがアリエイラの言っていた、波動ってやつか?

 ある種のロボットと人間を見分ける事が出来る才能。

 五感が鋭敏えいびんな獣人なら納得だが、アリエイラのは環境からはぐくまれた才能だろう。


マリア「あれでも殺人事件になるの?」


風音「さあ? 人権を取得してないただのロボットと断定されたら、器物損壊きぶつそんかいになるのかな?」 


 そういう時に適用される細かい犯罪名は詳しく知らない。九重に聞けば分かるだろうが。


風音「じゃあ犯人は獣人の可能性が低いのかな?」


マリア「どうして?」


風音「だって獣人はあの人を見ただけでロボットって分かるんでしょ? 連続殺人犯が獣人だとすると、ロボットと分かった上で殺した事になるんだけど。・・・そんな意味の無い事しないでしょ」


 この犯人グループは確か、元犯罪者や現役の犯罪者を次々殺して回ってるはずだ。

 誰かに操られているロボットを、一連の事件と同じ形で殺して残す・・・・か?

 今回の犯人の性格からすると、ロボットなんかに構わず操ってる側を特定して殺りそうな気がする。


マリア「・・・そうとも限らないでしょ。獣人って言っても二種類に分かれるし。臆病おくびょうな種族ほど敵意とかに敏感だし、生まれ持った観察眼があるわ。逆に好戦的な獣人族はその辺の感覚が薄くなる代わりに、戦闘に特化してるの」


風音「そうなんだ。じゃあ今回の犯人が仮に獣人だとしたら、多分戦闘特化系だろうし・・・あれだけ人間に近いと気付かないのも有り得るか」


 じゃあ容疑者から獣人を外すのは良くないか。


マリア「それにあのロボットは二人組の男性に雇われてたのよ。今回の犯人って、街で犯罪行為をしている人達を殺してるんでしょ? じゃあ犯人グループの本当の目的はその二人組の方で、まず見せしめに強い方を破壊して恐怖を与えているのかもしれないし、壊しておけば単純に再犯防止になるでしょ」


 いつも趣味でゴシップを取り入れているだけの事はある。次々色んな意見が出てくる。

 雇った奴らが居て、そいつらに対する見せしめか。それはあるかもしれない。

 見せしめという怖い考え方でなくとも、単に順番に殺していくという事なのかもしれない。邪魔な奴から先に殺した、と。


風音「雇った人が居たのか・・・。じゃあその人達が次のターゲットになるのかな? 映像に映ってるかな・・・」


 それは帰ってから確認しよう。


風音「ちなみにマリアさんはこの辺でずっと商売してて、怪しいなと思う獣人とか三人組とか見た事無いです?」


マリア「居なくも無いけど・・・すぐにこの件と結びつけるのも・・・」


風音「何でもいいから情報が欲しい状態なんです。 お願いします、一応聞かせてもらっていいですか?」


 少し躊躇ためらっていたが、マリアが決心して口を開く。


マリア「獣人の女の子と男の人二人。三人で来た事は無くて、二人組で来るんだけど、男の人は日によって違う人が来るの。合わせると三人組ね。普通に花束を買っていくだけで、特に何をされた訳でもないんだけど」


風音「その三人が怪しいと思う理由とかあるんですか?」


 とり出した手帳にメモをしながら尋ねる。


マリア「その内の一人。背の高い男の人が、なんだか嫌な感じがするの。・・・根拠はそれだけなんだけど」


 それだけ、とマリアは言うが獣人の敵察知能力は信頼できる。

 だからこそ不可解だ。

 仮にその三人が連続殺人犯だとすると、なぜ一人だけ?

 実行犯が獣人なら、その女の子が一番の危険人物という事じゃないのか?

 あるいは危険な感じがしないその二人は一連の殺人に対し、純粋に正義を執行しっこうしているつもりなのか。

 本人達の感情に一切悪の部分が無いので、マリアにとっては嫌な感じがしない?


 じゃあマリアが危険だと感じる残り一人は?

 一連の殺人を楽しんでいる?


 しかしこれらの考えは仮にその三人が今回の一連の事件の犯人だったら、という前提での話だ。

 普通に関係無い人達かもしれない。


 単純にその背の高い人だけが普段から性格の悪い人間で、マリアがそれを感じ取っただけかもしれない。

 他にもマリアが敵意を感じない二人が実は付き合ってて、嫌な感じがする背の高い男は女の子を奪おうとしている・・・みたいな、ドロドロした三角関係とか。


 とにかく一回見てみない事には判断できないか。


風音「その人達が最後に来たのはいつとか、その時の監視カメラの映像とかってのは・・・」


マリア「最後に来たのは数日前だけど、ウチの監視カメラはシャロンの許可証が無いと見せる事が出来ないわよ?」


風音「うんそれは大丈夫。あとでウェルズに頼んでおくから。また今日の夕方にでも、許可を貰って監視カメラを見せてもらう事にします」


 またいくつかメモをして、手帳をスーツのポケットにしまう。


風音「じゃあ、貴重な情報をありがとうございました。 じゃあまた後で」


マリア「うん、頑張ってね」


 バイバイ、と言う感じで手を振って送り出してくれた。

 店から少し離れた所で、早速風音がゼロアに電話を掛ける。


ゼロア「なんだ?」


 こんな時間なのにすぐに出た。


風音「ちょっとカノンの警備から離れていいから、別の場所を警備してほしい。行ける?」


ゼロア「ああ。珍しいな、そんな命令は」


風音「命令ってほどでもないけど、行けるならお願い。 商店通りのルフ・ァレンっていう花屋さん。そこの店員さんを守ってほしい。出来るなら店員さんにバレない様に」


ゼロア「まずそいつは誰だ? 知り合いか?」


 何度かゼロアをルフ・ァレンに連れて行った事があるはずだが、どうやら店の名前は覚えていない様だ。


風音「多分何回か見た事があるはず。 この間リロがカノンに連れて来た・・・」


ゼロア「花屋のマリア・リーフか」


風音「その子」


ゼロア「誰かに狙われているのか?」


風音「今の所は別に。まだ可能性は低いんだけど、殺人犯が店に出入りしてるかもしれないみたい。 それを今聞いちゃったからね」


 口封じにマリアを殺しに来るとか、そんな海外映画みたいな展開は無いと思うが・・・


ゼロア「安易あんいに一般人を巻き込むな」


風音「巻き込むつもりは無かったんだけど、話の流れでね」


 ここで一旦、これまでの流れを簡単に説明した。

 話が終わってから、警護を了承したゼロアが尋ねる。


ゼロア「どれくらい警戒が必要だ? その店員に敵意を向けた奴は全員病院送りか?」


風音「うん、それでいいや。・・・・って個人的には言いたいところだけど、駄目だろな。世の中には店員さんが可愛い子ってだけで、ねたみの視線とか卑猥ひわいな視線を向ける奴もいるし。ゼロアにとってはそれも敵意?」


ゼロア「嫉妬しっとは場合によって殺しにも繋がる立派な敵意だ。卑猥云々うんぬんは度が過ぎれば敵意と見なす」


風音「だろうね。じゃあ全員は駄目。例えばマリアさんに攻撃をしようとした奴が居て、ゼロアは店の外からそれを止める事は可能?」


ゼロア「何をしてもいいなら」


風音「じゃあそれでお願い」


ゼロア「で? いつまでだ?」


 大きな違和感。

 今のゼロアの声が電話からだけではなく、すぐ近くから聞こえた。


 ふと横を見ると、いつの間にかとなりから話しかけられていた。


風音「早っや。瞬間移動とか覚えた?」


 電話を切って、驚きながら長身のゼロアを見上げる。

 電話しながら移動していたのだろうが、いくらゼロアでもカノンからここまで来るのに今の電話の時間だけでは無理だ。


ゼロア「ブラウニーの技でナタリービルという所まで飛ばしてもらった」


 普段はこの時間事務員は全員寝ているが、深夜勤務のシャロンの依頼がある時のみ、事務員の誰か一人が常に交代で起きている。

 そしてゼロアが仕事用で持っている方の携帯に電話を掛けると、内容が事務員にも伝わる。

 現在担当であるブラウニーが、さっきの電話を聞いて気を利かせてくれたのだろう。


風音「だとしても早いな・・・・。警護の期間は・・・・取り敢えずその出入りしている人達の詳細が分かるまでで。あと今日の仕事内容でブラウニーに会ったんなら「メリッサの家」っていうおもちゃの家を預かってる?」


 普段鞄とか持ち歩かないゼロアが小っちゃいスポーツバッグを背負っている。多分ブラウニーに渡されたものだと予想する。


ゼロア「ああ、来る前に無言で渡された。なんだこれは? お前が頼んだのか?」


風音「頼んだわけじゃないけど、ブラウニーが担当の時は仕事内容に応じて色々便利な道具をくれたりするから」


 ゼロアが風音にバッグごと渡す。

 バッグの中には両手で持つくらいの、結構大きめのミニチュアの家が入っていた。

 女の子がお人形遊びをする時に使うような、開いて家の中が見えるタイプのおもちゃの家だ。


 それを風音が受け取って、早速家の中が見えるように展開する。

 すると風音の姿がおもちゃごとその場から消えた。


 しばらくすると風音が再び現れた。 展開していた家は、元通り閉じている。


風音「これブラウニーの技が掛かってる道具なんだよ。この家を開いたら真ん中に鏡が置いてあるんだけど、これに姿が映ってる間は周囲から見えなくなる効果があるんだって。その代わり家を閉じて鏡を見えなくしてしまうまでその場から動けないけどね。必要なら警護に役立てて」


 ブラウニーの特殊能力。一般的に認知されている意味のある物質に、別の意味を与えて利用出来るようにする。

 ただし誰かに大きな危害を与える様な意味を持たせる事は出来ないらしい。彼女の使う道具は「逃げる」「隠れる」「対象を拘束する」など、逃げる為に使う事に特化している物が多い。


 この家のおもちゃはブラウニーの星で有名な漫画を題材にしたもので、メリッサという名の女の子の人形を遊ばせるための家だ。


 メリッサは自宅にある鏡の中の世界に閉じ込められている。

 彼女がいつも幸せそうに遊んでいる家は、実は鏡の中の誰も居ない世界。そして彼女はその事に気付いていない。

 彼女は鏡を割れば外に出られる事に気付いていない。おそらくそれを望んでもいない。

 誰も居ない家、そして家の外には何も無く、ただ一つの家があるだけ。それが正しい世界の姿だと思っている。

 その空間で彼女は空想する。有り得ない世界を。

 たくさんの人が居る世界、大きな国、時には大きな争い、平穏。

 彼女の頭の中には一つの世界が出来上がっている。

 目を閉じればその世界に降り立つ。それが彼女のもう一つの遊び場。

 毎日いろんな場所に行く。いろんな人と出会う。いろんな出来事に遭遇そうぐうする。

 自分が作った空想の世界なので、どんな力でも自在に振るえる。何でも出来る。

 そんな楽しい遊び場。

 彼女は気付いていない。その空想が鏡の外の世界に大きく干渉かんしょうしている事に。

 自分の空想が外の歴史を作っている事に。

 彼女は知るよしもない。実は自分が、神と呼ばれる存在に最も近い事に。


 ・・・という設定の漫画。

 その漫画がブラウニーの星では結構人気があるので、おもちゃになって販売されている。


 このおもちゃにブラウニーが技をかけた。その結果、このおもちゃに別の使い道が生まれた。

 この家のリビングにある鏡に映った者はこの世界から消え、鏡の世界に入る。

 その場から動く事は出来ないが、外の世界を見る事は出来る。そしておもちゃを片付けると鏡の世界から出て来られる。消えている者は外からの干渉を一切受けないが、鏡本体は見えないだけで外の世界の同じ場所に存在し、鏡がある場所を攻撃されると鏡が割れて強制的に外に出される。らしい。

 ・・・と、細かく風音が説明した。

 そして説明を聞き終わったゼロアが。


ゼロア「・・・必要無いな」


風音「あ、そですか」


 悲しい回答だけが返ってきた。説明した量に対して、この返答の短さ。

 じゃあ持って帰ろうかしら。


ゼロア「いや便利だとは思う。ただ、人の命が掛かっている時に使い慣れない物を使いたくない。それよりお前らここ最近監視の仕事をしてなかったか? なぜこれを使わない?」


 確かマンションを借りて監視していたと聞いたが。


風音「使えなかったんだよ。 ブラウニーの道具を使う技って便利な反面、その物が本来持っている意味も重要らしくてね?」


ゼロア「・・・・・・」


風音「うん・・・よく分からないと思うけど安心して、僕もよく分かってないから。 これって元はおもちゃだから、遊べるのはブラウニーが遊ぶ事が出来る時間だけ。とかなんとか。 要は、ブラウニーが起きてる時しか効果が無いんだって。あの子絶対夜になったら寝るから、この家は夜間使えないんだよ」


 ブラウニーは夜になったら絶対寝るから使えない?

 その言葉にゼロアが疑問を抱く。


ゼロア「いや? 確か「夜寝てしまうと起きれないから」とか言って、今日は夜通し起きてたはずだ」


風音「え、そうなん?」


 あの子は確か今日は朝四時から仕事じゃなかったか。

 夜勤をしている風音達に合わせて事務員が交代で起きてくれているが、確かブラウニーは四時からのシフトだったような。


 てっきり朝四時からの仕事に備えて、早めに寝ていると思っていた。

 でも言われてみれば確か数年前初めて出会った時も、そんな事を言ってた気がする。

 あの子は朝自力で起きられないから、早朝から用事がある時は夜通し起きるとか。


風音「え? じゃあこの家・・・」


 手に持っているおもちゃの家を見る。

 おそらくこの後深夜仕事で起きてくれていたワグナが六時に仕事を終え、寝たと同時にブラウニーが居眠りを初めて、そのまま起きないというのがいつもの流れだろう。


 じゃあこの道具はもうすぐ使えなくなるという事だ。


風音「ガラクタやん、ただの」


 ブラウニーがすきあらば居眠りをしてそのまま起きなくなるのは、警備のゼロアや風音にとっては常識の範囲内だ。


 そうか、そういう事なら。


風音「じゃあこのゴミは持って帰ります」


ゼロア「捨てるならちゃんと分別して捨てろよ」


風音「鏡って燃えないゴミだっけ?」


ゼロア「知らん」


 捨てはしないが、カノンに帰ってもしブラウニーが寝ていたら、開いて頭にかぶせてやろう。

 起きたと同時に鏡の世界に入るというドッキリに使えるだろう。


 ゼロアはその返答を最後にルフ・ァレンの方を向いて早足で歩き出し、姿を隠すと同時に気配が消えた。

 まだルフ・ァレンが見える場所なのでそっちを見ると、店の前を誰かが横切ろうとしている。

 通り過ぎようとしているのでただの通行人だろうが、ゼロアは多分それを見て早速警護に向かったのだろう。


風音(店に入る奴だけじゃなくて近くを通る奴も全員警戒するのか・・・。頼もしいけど疲れないのかな・・・)


 ま、これで安心は出来る。

 彼が警護するならルフ・ァレンは今、フェクトで一番安全な場所と言ってもいい。

 せっかくだから、いっそゼロアが警備してる時に犯人グループが来いよ。とすら思う。手を出してくれればこの件はスピード解決だ。


風音(ま、そんな上手くはいかないか。・・・帰ろ)


 いつまでもこんな所で油を売っている場合じゃない。

 とっとと千丸を呼びに行って、カノンに帰って監視カメラのチェックをしないと。





 カノンに帰ってきて、ひと仕事(ブラウニーに家をかぶせるのを)終えたところで。

 スパコンを起動させ、仕事の準備を始める。

 ユニルが艦長室で寝ていたが、これから仕事で使うので隣の風音の部屋に移しておいた。


 艦長室でまだ眠そうな顔をしてソファに座っている千丸。

 そしてその隣には、なぜかまだ活動していたアリエイラが座っている。

 アリエイラは深夜急に呼び出したので、仕事終了と同時に寝直していると思っていた。

 どうやら新しいタイプのロボットの映像が気になるようだ。先程とは違い、偽物ではなく本人が来ている。本物はやはり髪の毛があっちこっちに跳ねている。最初は寝癖だと思っていたが、最近こういう形の髪型なんじゃないかと思えて来た。


風音「結局アリエイラさんの偽物は無事に帰れた?」


アリエイラ「あのリロさんって方。彼女は人の言う事を全然聞かないですね」


 明言めいげんは避けたが、無事ではなかったようだ。

 喋る気力もない千丸を放置し、アリエイラと雑談をしながらソファ前のテーブルにパソコンのモニターを移動させて、千丸とアリエイラにも映像を見やすくする。


風音「もうほぼ日時は特定出来てるから、早速流すね」


 再生すると、リロが店番をしている姿が映る。

 売り物の花で花占いをしているようだ。


アリエイラ「なぜこの子は売り物をむしっているのでしょうか?」


 いきなり理解出来ない行動をしている。

 さっき帰宅中ずっと太ももをつねられてきたのもあって、アリエイラの中でリロは少しおかしな人と認定されつつある。


風音「あ、これ僕のせいかも。前にフィリコに花占いっていうのがあるのを教えた事があるんだけど、それをリロが聞いてたから」


アリエイラ「花で何を占うのでしょう? 私の髪の毛占いの方が当たるのに」


風音「主に恋愛運を占うんだよ」


アリエイラ「恋愛ですか。私の髪の毛占いで出来るのに」


 そんな雑談をしながらも、映像のこの辺りからが重要なので風音が映像に集中する。

 アリエイラもそれにならって映像を見る。


アリエイラ「あの、ちょっといいですか?」


風音「何か気付いた事でもあった?」


 映像のリロが花占いの途中でなぜか泣きそうな表情になっている辺りで、風音が映像を止める。


アリエイラ「普通あそこまで言われたら、髪の毛占いが気にならないですか?」


風音「え・・・気にならなくはないけど今一応仕事中だし、映像に映ってる事に関する事以外は触れなくてもいいかなって思って。 興味はあるから、また今度聞くよ」


アリエイラ「今度とは? スケジュールに書いておきます。いつが空いてますか?」


 アリエイラが携帯を取り出す。


アリエイラ「私の方は明日から三日間は仕事があるので、休憩時間しか空いてないですね。それで、もし良ければですが・・・」


風音「やっぱり今聞きます。今聞きたい。すぐ聞きたい」


アリエイラ「なぜ急に心変わりを?」


風音「さっきの僕がどうかしてた。気になる事はすぐ知っておくべきだと思ったから」


アリエイラ「そうですか。とても合理的な考え方で好感が持てます。では今後の私の進むべき道を占ってみましょう」


 アリエイラが携帯をしまって自分の髪の毛を少し手に取り、跳ね具合を見る。


アリエイラ「・・・? おかしいですね」


風音「何か?」


アリエイラ「今すぐ髪の毛占いの話をやめた方が、風音さんからの評価が上がると出ています。これは理屈に合わない。風音さんが気になると言ったから始めたのに」


 真剣に考え込む。


風音「占いだし外れる事もあるんじゃない?」


アリエイラ「そうなんでしょうか? しかし、風が吹けば桶屋おけやが儲かると聞いた事があります。この結果にも何かしらの意味があるのかもしれません。占いに従って、この話はここまでにしておきましょう」


 もうこの話に興味を失くしたのか、アリエイラが髪の毛を手離し映像に集中する。


風音(めちゃめちゃ精度の高い占いだな・・・)


 逆に興味が出て来た。そう思いながら映像を再開する。

 しばらく映像を見ていると、例の三人組がやって来た。

 男二人に女一人。

 その三人の顔がはっきりと映っている場面で一旦映像を止める。


風音「この女の人が被害者か・・・」


 見た感じ多分この人は結構強い。この人が正面から喧嘩して負けたのか。

 頭部を粉々に破壊するだけなら技術でどうにかなるか?

 要は衝撃が対象を貫通しないように撃つ。過去に星の子に対して撃ったように、衝撃を一切外に漏らさず相手の内で留める。

 出来ない事は無いが、この相手に?

 それとも技術ではなく、単純に攻撃の威力が高過ぎたのだろうか。

 だとしてもこの相手に正面から一撃入れるだけでも難しいのでは・・・。やはり油断か? まさか一撃でやられるはずがないと。


風音「千丸? この女の人になれる?」


 眠そうな顔でずっと映像を見ていた千丸に尋ねる。


千丸「・・・無理ぃ。今やってみたけど、多分この女の人は生物じゃないねぇ。・・・人間にしか見えないのにね~」


アリエイラ「確かに凄いですね。映像では私の目にも、極限まで人間に近く見えます。実物からは全く人間味を感じませんでしたが」


風音「映像では波動とかいうのは感じられないのかな?」


アリエイラ「感じなくはないです。だから少し違和感はありますが、これは・・・確かに普通の人では見分けが付かないですね」


 アリエイラが映像を食い入るように見ている。


風音「じゃあこっちの二人にはなれる?」


 再び尋ねたと同時に、千丸が現在映像に映っている右側の男性の姿になる。


 千丸は見た者に姿を変える事が出来る。直接見なくても、映像からでも変身が出来る。

 仮に映像では覆面ふくめんをしていても、千丸がそいつに変身すれば素顔が見られる。

 重要なのは同じ人間には一度しか変身できない事。

 そしてもう一つ。


千丸「エイトアン・リッド。サートインセクト24-7-4。・・・・ごめん、消えた」


風音「いや十分だよ、ありがとう」


 今千丸が言った事をメモしながら、お礼を言う。

 千丸の変身はあくまで外見とその人物が持つ身体能力などだけで、記憶や人格は千丸のままだ。

 しかし変身した直後のみ、その人物の記憶がほんのわずかな間だけ残る。

 眠りから覚めた直後の夢の記憶と同様、すぐに消えて思い出せなくなってしまうが。


 だからこういう場合、変身した本人の名前と住んでいる場所、そして出来るなら職業や何か重大な隠し事などがあればすぐに言ってもらうようにしている。

 ただし隠し事は本人が周囲に喋りたくないと思っている事は、千丸が変身した後でも一瞬躊躇するらしい。そのせいでタイムアップになる事が多いので、後回しにしている。

 ただでさえ短い時間。答えてもらえない可能性が高い事柄に時間を使うのは馬鹿らしいから。

 住所まで言い切る前に記憶が消えてしまう事も多いが、名前が分かるだけでも大きな進展だ。

 

風音「今さっきので住所まで大体分かったから、じゃあもう一人の方は・・・この女の人の名前と・・・どうやってこの女の人を雇ったかを言って貰えるかな?」


千丸「やってみます」


 千丸がもう一人の男の方へと姿を変える。


千丸「・・・リッドさんにしか分からない。あ・・・消えた」


 さっき変身した方が上司なのか。役に立たない方を後に残してしまったようだ。


千丸「せめてこいつの名前だけでも言おうかと思ったけど・・・ちょっと最初の質問に手間取っちゃったな。ごめんね」


風音「いや僕の指示通り良くやってくれたよ。 今の感じからして、こいつの方が下っ端で重要度が低い人物だと思う。それが分かっただけでも上出来。ありがと、もう戻っていいよ」


千丸「この姿のまま聞き込みとかはしなくていいのぉ?」


 おっさんの姿のまま聞いてくる。


風音「いいよ危険な事はしなくて。今回はこの情報をシャロンに送るだけで、報酬は手に入った様なもんだし。僕はこの後も契約通り手伝うけど、他のメンバーはもうこの件に関わらなくてもいいかな」


 千丸が元の女性姿に戻る。


千丸「そんな事言わずにぃ。私達も手伝いますって~、こんなの一蓮托生いちれんたくしょうでっしょ」


風音「ありがとね。 じゃあ必要になったら呼ぶよ。今日はとにかく寝ておいた方が良いよ」


千丸「それもそだね~。じゃ、おやすみ~。二人も無理しないでね~」


 おやすみの挨拶がてら、ポンポンッと風音とアリエイラの肩を叩いて、あくびをしながら艦長室から出て行く。


アリエイラ「ふむ・・・・・。ルミナ達以外の誰かと一緒に仕事をする事自体久しぶりなのですが、あれは初めて見ました。彼が男性姿と女性姿を使い分けているのは知っていましたが、他の人にも姿を変えられるのですね」


 しばらくアリエイラが大人しいと思っていたら、千丸を観察していたのか。


風音「僕も最初見た時びっくりした。なんせ僕の姿になってたからね」


アリエイラ「風音さんの?」


風音「うん。カノンに乗ってる人達って、アリエイラさんも含めて僕がスカウトした人達なんだけど、千丸だけはちょっと違ってね。ワグナさんの星で飢えてた所を助けてあげたら、なつかれて。そこで別れるつもりだったんだけど、僕の姿に変身して当時の乗組員をみんな騙してカノンに乗り込んで隠れてたんだよ。その後何日かしてバレて僕に泣き付いて来てね、面白いからそのままスカウトした」


アリエイラ「ワグナさん? 事務の? 同郷どうきょうだという事は、彼女も変身出来るのですか?」


風音「いやワグナさんもびっくりしてた。他の星から来たんじゃないかって。多分千丸が自分の星で変身能力を使って、どこかの宇宙船に紛れ込んだとかじゃない? それがたまたまワグナさんの星に行っただけじゃないかな。 なんで千丸が自分の星から出て行ったのか、詳しい経緯とか全然知らないけど」


アリエイラ「身元すらちゃんと聞いていないのですか?」


風音「よっぽど嫌な過去でもあったのかもね。 出会った時はシロって名乗ってたけど、カノンに来てからは自分の名前すら捨てちゃって、誰にも教えようとしないし。 ま、色々あるよ裏側あっちでは」


 カノンに来たばっかりの頃は、風音はそれまでの流れでシロと呼んでいた。

 千丸も恩人である風音だけはシロと呼んでもいいと言っていたが、名前を変えてまで前向きに生きようとしている千丸を見て、今は敢えて和名の方で呼んでいる。


風音「千丸の事はともかく、早めに今の映像をウェルズに送っとこう」


 今回は早さが命だ。

 早速携帯端末を操作し始める。


アリエイラ「これから風音さんはどうされるおつもりですか?」


風音「夜勤に備えて事前に寝てたからまだ動けるし、ちょっとさっき言ってた住所に行ってみるよ」


 携帯を操作しながら答える。

 サートインセクト24-7-4、だっけ。思いっきり街の中心部だ。

 次の被害者になるかもしれない事を伝えるのと、リロに手を出した事へのお仕置きをしておかないと。


風音「アリエイラさんの言う事が正しいみたいだし、あれはロボットだったんだろうね。って事は、犯人の顔を見てるって事だ。壊される直前のデータが生きていれば、犯人を特定出来るかも。そっちから当たってみるよ」


 自立型のロボットに仕事をさせているなら、そのロボットを派遣している奴はリアルタイムでデータを入手している筈だ。


アリエイラ「私も行きましょうか?」


風音「さっきの偽アリエイラさんで来るの? あのロボットって自爆以外は何か出来る?」


アリエイラ「私の出来る事が全て出来ます」


 つまり体力仕事は人並み以下だ。


風音「じゃあ止めとこうか。一応このリッドって人、アウトローみたいだし」


 簡単に壊されそう。単純に勿体もったい無いわ。

 アリエイラが呆れた様に、やれやれと首を振る。


アリエイラ「ロボットを作るという事は、人体の仕組みを把握はあくしているという事。おそらく私も格闘技くらい出来ると思います。 格闘技なんて所詮しょせん、いかに自分の身体を効果的に使うか、そしていかに相手の身体を効率的に破壊するかの探求でしょう? ならば私や医学に精通している者の方が、格闘家よりも遥かに上。専門分野です」


 そうか? と風音が首をひねるも、全否定はしない。

 医学を極めた者が人体破壊の術を覚えれば、確かに内臓にダメージを与えるのが上手そうだ。

 アリエイラは普段真面目にトレーニングもしているし、もしかすると格闘に向いているのかも。


風音「ちょっと僕の肩を思いっきり殴ってみて?」


アリエイラ「大丈夫ですか? 死なないですか?」


 アリエイラが驚き交じりの、本気で心配する表情。

 どうやら本気で言っている。


風音「それは絶対大丈夫だと思う。治療も出来るし」


 格闘技未経験なのにどこまで自信があるんだ、と感心する。


アリエイラ「いえ、肩だからと油断は禁物です。人体は骨が衝撃を全身に伝えます。衝撃が大きすぎた場合、全く関係無い場所を叩かれても脳がやられる事だってあります」


風音「じゃあ場合によっては受け流して衝撃を減らすから」


 アリエイラが少し悩んでから、納得した様子で。


アリエイラ「そうですか、では」


 ソファから立ち上がり、正拳突きの構えをとる。


風音(おおぅ・・・想像以上に・・・どうってるな・・・)


 まさか、と思うくらい綺麗な型だ。人体の構造に詳しいというのは伊達だてではない。見た事のある型を自分の身体でも完璧に再現出来る様だ。

 本当にこれが初めてだとしたら驚愕だ。この型を意識せず滑らかに作るだけでも常人なら何年掛かるか・・・・。


アリエイラ「せいっ!」


 真っ直ぐに正拳突きを放つ。

 ポンッ、と風音の肩に単行本が一冊ぶつかったくらいの衝撃。


アリエイラ「っっったぁぁぁぁ!」


 アリエイラが苦悶くもんの表情で右手首を押さえてソファに倒れ込み、ジタバタする。


アリエイラ「ぃあぁぁぁ~~!! ぃぃにゃぁぁ!! ふにゅぁあ! ・・・・んぁあぁぁぁ!!!!」


 足をバタバタさせながら痛がっている。


風音(どんだけ痛がるんだ・・・・)


 こっちの衝撃が小さいという事は、アリエイラの手首に掛かった衝撃も小さかったはずだが。

 風音がアリエイラに近付いて、手首を撫でる。


風音「はいはい、ジッとしてて下さいね」


 アリエイラの手首が青白く光り、怪我が治る。

 治療が必要とも思えなかったが、こうすれば落ち着くだろう。


 暴れていたアリエイラがピタリと止まり、ソファに寝ころんだまま小さくつぶやく。


アリエイラ「・・・今のはどちらが悪いのですか?」


風音「止めなかった僕と、多分止めたところで止まらなかったアリエイラさん。どっちも悪かったんだと思います」


 両方悪いという事にしておく。

 こんなもんどう考えても、10-0でアリエイラのせいでしかないのだが。

 アリエイラだけが間違っていたと言ったら、それは論理的ではないと言われてしまうのは分かっている。


アリエイラ「全てが嫌になりました。もう動きたくありません、寝ます」


風音「うん、おやすみ」


 そのままソファで寝てしまったアリエイラに、隣の自室から持って来た毛布をかぶせて艦長室から出る。


風音(さて・・・ここから一人か)


 動き易くはなった。まずはこの住所に行ってみよう。

 シャロンから仕事を受けている風音は、犯罪の証拠があれば犯罪者の家に押し入っても良いという権限をもらっている。もちろん押し入る前にシャロンからの許可が要るが。

 普段はその権限を使って、花屋の屋台で盗みを働いた者の家を特定して捕らえ、シャロンに引き渡している。

 今回の場合も、このリッドという男が人を雇って襲わせたという証言と映像がある。

 もしこの住所の家に行って誰も出なければ、一度シャロンに最終確認を入れてから押し入る事にしよう。




 目的地に移動している最中に、携帯端末にウェルズからお礼のメールが届いた。

 お礼と共に書いてあったのは、もしこの女の事が何か分かったら連絡するが、期待しないでくれ。みたいな内容だった。

 やはりアリエイラの言う通り、実在しない人間なのだろう。あの女の事を調べるのは骨が折れそうだ。


 雇われていると言っていたが、おそらくネットワークの深層しんそうサイトなどで仕事を受けているとか、裏社会御用達ごようたしの殺し屋とかではないだろう。

 それならシャロンはすぐに突き止める。


 多分大きな組織に雇われていて、その組織の為だけに働く奴だ。そういった奴は情報が表に出てこない。

 ただし、そんな奴の情報を知る簡単な方法がある。

 その組織の関係者を締め上げて吐かせる。これが一番簡単だ。


風音(この家・・・だな)


 立派な一軒家だ。小さな門があり、そこから数メートル道があってその横には大きな庭。

 そして道の先には大きな家。

 表札は付いているが、名前が違う。

 単純に偽装している可能性が高いが、本当にこの表札の人物が住んでいる可能性もある。

 もう外も明るくなっているので、訪ねるのも非常識な時間ではないだろう。

 チャイムを押して様子を見る。

 ・・・・・出ない。

 何度か押してみるが、反応が無い。そりゃまぁ後ろ暗い組織に関わっている者なら、居留守くらいするだろう。

 しかしそういう奴等は短気なのも多い。こういう場合は、門の外からチャイムを鳴らすのではなく、ドアに近付いて直接ドアをドンドンと叩く。

 そしたら五割くらいの割合で怒って出てくる。


 門を勝手に開けて家のドアに近付くと、何か違和感が。


風音(ん・・・? この臭い・・・・)


 何度か嗅いだ事のある臭いだ。


 ドアを叩いている場合じゃないかもしれない。すぐにウェルズに電話を掛ける。


ウェルズ「何? 進展でもあった?」


 風音からの連絡を期待していたのか、ワンコールするかしないかくらいで出てくれた。


風音「さっきの映像の男の家だと思われる場所に居るんだけど、ちょっと気になる事があって」


ウェルズ「えっ? まず何でその男の家に居んの? 映像関係の事はシャロンに任すって言ってなかったっけ?」


風音「何でて、そりゃいつもの事でしょ。ウチに対して犯罪行為をした奴は、ウチで捕まえてシャロンに引き渡してるし」


 ウェルズがしばらく黙る。


ウェルズ「・・・・ん? さっき屋台で喧嘩したって言ってたのは、お互い様じゃなく一方的に喧嘩を売られてたって事なのか?」


風音「先に暴力を振るわれたんだけど・・・そう言わなかったっけ?」


ウェルズ「いや今知った。じゃあ静止画だけじゃなくて、その時の映像を俺にも送ってくれよ。 なら犯罪だな。音声付きの証拠の映像があるなら好きにしてくれ。で? 気になる事とは?」


風音「ここに来た理由はそれだけじゃなくってさ。 本当ならウェルズの言う通り、シャロンに任そうと思ってたんだよ。 でも映像の女の人が殺された理由が分からない現状、もしかしたら一緒にいた男も殺される可能性があるんじゃないかって話になって。うちも無関係じゃないから捕縛ほばくと無事の確認を兼ねて、早めに会いに来たんだよ。 で、許可を取ってから踏み込もうと思ってたんだけど、今ドア前でかすかに血の匂いがした」


 最悪の場合、もうリッドはこの世にいない。


ウェルズ「・・・・・まだ踏み込んでない?」


風音「うん」


ウェルズ「じゃあ俺が行くまで待機しておいてくれ」


風音「いいの? 何かあった場合まだ犯人が近くに・・・もっと言えばまだ中に居るかもしれないのに。 逃げるよ?」


ウェルズ「風音君が一般的なシャロン職員なら今すぐ踏み込ませてる。 この状況で風音君が家に入って、仮に中で何か犯罪の跡があった場合、まず風音君が疑われる」


風音「リロがやられた報復に来たって事で? でももし映像の男達が殺された場合、僕じゃなく一連の殺人犯と結びつけるのが普通じゃない?」


ウェルズ「だから、一連の事件の容疑者に風音君達が加わる。それは避けたい」


風音「さっきの女の人が殺された件、僕が犯人じゃない事はレイさんと天狐さんとジルが証明してくれる。 それでも容疑者になる?」


ウェルズ「・・・・・・分からん。 でももう待たなくてよくなった」


 風音が振り返ると、息を切らせたウェルズが門の前に居た。

 そういえばさっきの事件の位置からそう離れていない。

 そして風音がシャロンからの依頼時に使っている携帯端末は、現在位置情報をシャロンに分かる様に設定してある。その情報を使って風音との電話開始とほぼ同時にこちらに向かってきたのだろう。

 そのまま小走りで風音の元に走ってくる。


風音「お疲れ」


ウェルズ「ほんと疲れた」


 全速力で走って来たようだ。まだ肩で息をしている。

 と言うか、だったら電話口でそういう素振りをすればいいのに、カッコつけて電話では普通に喋ってたから余計息が上がるのだろう。


ウェルズ「じゃあとっとと中を確認しよう」


 ウェルズがドアノブに手を掛ける。

 ノブをひねると、どうやら鍵は掛かっていなかった様ですんなり開いた。

 二人で中を見ると同時に、息を飲む。


風音「そりゃ臭うよ・・・」


ウェルズ「・・・・・・・・・・」


 もう目の前だ。

 玄関の靴置き場に足を放り出したまま、首から上が無い男の死体が転がっている。

 破壊ではなく、切断されて持ち去られている。

 飛び散った血が乾いていないどころか、まだ血が大きく広がり続けているような状態だ。

 今殺されたと言われても信じるくらい、殺されて間もない遺体だ。

 

 二人とも一旦遺体を跳び越え、家の内部を調べに掛かる。


風音「一緒の方が良い? 分かれた方が良い?」


 階段で二階を指で差しながらウェルズに尋ねる。

 まだ犯人がこの家に居るなら一緒に居た方が安全であるというメリットがある反面、二人で一階を捜索している間に二階から逃げられる可能性もある。

 しかし今回の犯人は武闘派だ。一人では殺される可能性もある。


ウェルズ「分かれよう。ただし、犯人を見たら戦うな。顔さえ見ればこっちの勝ちだ。殺されて口封じされる事の方が面倒だ。 死角からの攻撃にだけ気を付けろ。 相手がどんなに速かろうが、不意打ちさえ食わなければ風音君なら死なない」


風音「了解。 そんで今の言葉、そっくりそのままウェルズにも返すよ。家の中は死角が多いから不意打ちだけ気を付けて。で、もし誰か居たら全力で叫んで。毒を使ってそのまま一瞬で一階に降りてくるから」


 その時、一階の奥の方からガタッと窓が開くような音が聞こえた。

 二人とも、瞬時に音がした方に走って向かう。


風音「ウェルズ。ぞくが複数居る可能性があるけど、前だけ警戒。後ろと横は何が来ても僕がおさえる」


 後ろを走る風音が急遽きゅうきょ新たな指示を出す。


ウェルズ「了解」


 音がした部屋に着くと、窓が開いていた。先程の音は、これが開いた音だろう。

 警戒しながら部屋と窓周囲を調べ、風音一人だけ先に窓の外に飛び出る。

 周囲には誰も居ない。

 もう犯人の後ろ姿すら見えないが、今なら二人で手分けすれば追えるかもしれない。

 ウェルズの方を見ると、ウェルズはこちらに背を向けており、その前には誰かが立っている。


風音「ん? ・・・あなた、テトラさん・・・でしたっけ?」


 窓の外から覗き込む。この間シャロンで見た顔だ。

 なぜここに居る? 警戒しながら風音が窓から家の中に入る。


 テトラがその質問に答える事に対し、ちょっと待ってくれと言う様に、うつむいて手の平を風音に向ける。

 理由は分からないが、物凄く疲れている。先程のウェルズ同様、今の今まで全力疾走でもしていたかのように、肩で息をしている。


ウェルズ「テトラ? なんでここに?」


 警戒色の強い口調で尋ねる。


テトラ「・・・あなたがメールを送ったんでしょ。この時間は出勤途中だから近くにいると思って私を呼んだんじゃないの? ・・・で、あの死体は何?」


 これが素なのか知らないが、ムスッとした表情のテトラが携帯を二人に見せる。

 事件が起こった事と、至急この住所に来るようにというような内容が書かれてある。

 確かに差出人がウェルズとなっている。メールのアドレスもウェルズのものだ。

 ウェルズが二人に自分の携帯を見せる。

 しかし、ウェルズの携帯からはメールを送った形跡は無い。


ウェルズ「あ~~~、一時いっとき流行はやったやつか。偽装してメールが送れるやつだな」


 そしてどこにも記録が残らない、厄介な犯罪ツールだ。

 まずは近くにいる人の携帯から情報を抜き出す。そしてメールや電話を、まるでその携帯から掛かってきているように偽装して使う事が出来る。

 現在は対策がなされてあるが、一時期子供を持つ親に成りすましてメールで子供を呼び出し、誘拐するなどに利用された。


テトラ「うそっ? 対策はしてあるはずなのに・・・」


 慌ててもう一度ウェルズの携帯を見る。


風音「最近ウチのルミナとレスタが交代でやってた仕事があるんだけど、それと関係あるのかな? なんか防御そのものを全部解除させるツールが、裏側の一部地域で流行ってたんだって。もう防御の意味が全く無くなって、情報だだれ状態だったらしい。二人とも携帯確認してみて? 防御が全部解除されてない?」


 二人が携帯をいじって調べ始める。先にウェルズが反応した。


ウェルズ「あ、それだ。全部解除されてる。これじゃ情報盗み放題だな」


 続いてテトラの表情もゆがむ。

 おそらくウェルズの携帯と同じ状態なのだろう。直接至近距離にいた訳じゃなくとも、おかされた携帯と繋がった時点で感染する。ウイルスの様な犯罪ツールだ。


風音「おそらく、ウェルズがこの家に来た時点で防御が解除されて情報が取られて、逃げる為に利用されたかな。もう今からじゃ追えないし」


 この家の中に犯人グループが居るかもしれない状況で、連絡もしていないのに手練てだれの知り合いが突然現れたら、そいつが何か関わっているんじゃないかと疑うのは当然だ。

 現にウェルズも風音も、テトラの姿を見た時に警戒した。

 その確認をしているだけでも数分は掛かる。まんまと犯人に逃走時間をかせがれたという事だ。


風音「嫌味いやみな言い方になってゴメンだけど、ウェルズは利用しやすかっただろうね。 シャロンの制服を着てるから持ってるのは仕事用の携帯。その携帯の情報を抜き取って、普段一番メールや電話を掛けている相手に繋げるだけで、ほぼ間違いなくシャロン関係者に繋がるだろうから、簡単に呼べる」


 ウェルズが舌打ちをする。

 テトラがさっきの風音の言葉に疑問があったようで、尋ねてくる。


テトラ「その防御解除の犯罪ツールが流行ってた・・・とか、情報がだだ洩れ状態だった・・・とか。なんで過去形なの?」


風音「二日前くらいに、そのツールに対する対策が出来たってルミナが言ってたから」


テトラ「出来てないじゃない」


 実際に今被害にあった携帯を見せる。


風音「出来てるよ。それを適用した僕の携帯は無事だし」


テトラ「なんであんたのだけ守ってるの。この星の人達を優先しないと」


 ちょっと怒っているようだ。ただでさえ陰気いんきな雰囲気の人なのに、更におどろおどろしさが増す。


風音「それはシエロの人に聞いてもらわないと。裏側での依頼だったから、完成次第すぐ送ってくれとか言われてたみたい。 なんか検証? みたいなのが必要で、それが終わるまで広める事は出来ないって言ってたから、勝手にこっちで広めるわけにいかないでしょ。でも昨日には裏側で拡散されたらしいから、検証は終わってるはず。なんでこっちに送ってこないのかなんて僕には分からないから、そっちで聞いてよ。あんたらの親組織でしょ」


 ちょっと喧嘩腰の二人に、ウェルズがオロオロしている。


テトラ「私が許可します。すぐにこの星の全ての機器に適用させなさい。シエロに期待しても無駄だから」


ウェルズ「おいおい・・・。お前にその権限は無いだろ。せめてレイ長官の許可が無いと」


テトラ「そんなものは事後で良い」


風音「僕もテトラさんに賛成かな」


 携帯端末を取り出し、ルミナに繋げる。


風音「あ、ルミナ? ――――おはよう。朝から元気だね。なんかこの前シエロから受けた仕事あったと思うけど、――――――そう、それ。 それを各会社に――――――」


 伝えてから電話を切る。こういった依頼は今までにもあったので、ルミナに任せておけば大丈夫だろう。


風音「・・・ん? これってお金が発生する仕事?」


 重要な事に気付いた。

 たった今カノンは、治安組織からの依頼で犯罪対策ツールを作って、世界に広めたのだ。

 裏側での依頼のお金は貰ったが、こっちで自分達で別でやるとなると、別料金の立派な仕事じゃないか?


テトラ「ほら」


 500クイン硬貨を投げてよこされた。


風音「これじゃジュース三本くらいしか買えませんが」


 テトラが今ここに居る三人を指で差しながら数える。


テトラ「ちょうど三人居る」


風音「その上君らが飲むんか」


テトラ「一応あなたの立場は半分関係者だけど、あの死体の最初の現場検証には立ち会えない。終わってからなら許可が出るけどね。その間暇でしょ? 何か飲み物でも買ってくれば? 私はイチゴオレ。ストローをもらうのを忘れない様に」


 風音がウェルズの方を見る。


風音「・・・なんでこの人こんな上からなの?」


ウェルズ「この間負けた事を根に持ってるみたいだよ。サンドバッグに風音君の写真とセイニーさんの写真を張り付けて殴ってたから。セイニーさんの方はともかく、風音君の写真もうベッコベコ」


風音「天狐さんといい・・・シャロンはそんなんばっかりか・・・」


テトラ「ウェルズ、以後私語禁止。早く仕事を終わらせましょう」


ウェルズ「はいはい。 風音君、俺はブラックコーヒーの大っきいやつ。現場十メートル以内あるいは現場の建造物内では飲み食い禁止だから、外で待っといて」


風音「こいつら・・。 まぁいいや、ちょっと気分転換に外に行ってこよ」


 玄関には近づかない方が良いだろう。窓から外に出て、コンビニを探す。


 ・・・丁度あの二人から離れたかった所だ。買い出しとは、都合良くいい口実が出来たものだ。

 二人の上司であるレイ長官に電話を掛ける。


レイ「どうした?」


 こちらも即座に出てくれた。


風音「テトラさんってどこに住んでるか分かる?」


レイ「急になんだ? 職員の個人情報は教えられない」


風音「じゃあ最近街の郊外を中心に監視カメラを設置したけど、その範囲内に彼女の家があるかどうかだけでもいいから」


レイ「まず理由を」


 風音が順を追って説明する。

 シャロンに送った映像の人物二人が次のターゲットになるかもしれないと思った事。

 そして実際そのうちの一人の家に行ってみた事。もう手遅れだった事。

 たった今殺されたような死体だった事。

 そこにテトラが来た事。


 重要なのがテトラの言い分。あれを信じるかどうか。

 全部自作自演の可能性もある。


風音「テトラさんが来たタイミングがね。犯人にとって都合が良すぎるように感じたんだよ。だってもう少し早ければ、一旦テトラさんに待機命令を出して逃げた犯人を追っただろうし、もう少し遅ければ僕達はテトラさんと会わずに犯人を追ってただろうし」


レイ「確かにな。それで君は、本当にテトラ君が出勤中だったのかを確認したいのか」


風音「彼女の家の近くに監視カメラがあって、そこに映ってたら疑いは晴れます。あの遺体の状況では、僕があの家に着いた時点で実行犯が離れた場所に居る事は不可能だから」


レイ「もう今確認した。彼女は間違いなく家から出勤している」


風音「仕事が早いね」


レイ「そりゃまあ。理由を聞いている間に、もう調べてたからな」


 確かに結構長い時間説明に時間をいていた。


風音「じゃあ本当に偶然、犯人にとって都合の良いタイミングで来ただけ・・・?」


レイ「ウェルズの携帯が乗っ取られて、感染するようにテトラ君の携帯もやられてたんだろう? テトラ君の位置を把握されていたと考えると、偶然とも言えないんじゃないかな。おそらく犯人は場合によって行動を変えるつもりだったのでは? まずその場に来るはずの無い者を呼んだ。あとはテトラ君の行動次第だ。もしテトラ君が早く来れば、わざと逃げるのを察知させてから鉢合はちあわせにさせ、互いに疑心暗鬼ぎしんあんきを持たせその間に逃げる。運が良ければその後の捜査の攪乱かくらんも出来る。 テトラ君が来るのが遅いようなら、利用せずに音を立てずさっさと逃げる。その両方が不可能なら、二人と戦う事もさない。といった感じでね」


風音「なるほどね・・・・・」


レイ「むしろその状況だと、客観的に見て風音君が一番怪しい。多分今頃テトラ君もウェルズ君からこれまでの流れを聞いてるんじゃないかな? 買い出しを頼んだのも、君を遠ざける為だろう。だったらもうすぐテトラ君から私に確認の電話が掛かって来る」


風音「あ、その会話って僕も聞ける?」


レイ「盗み聞きはあまり感心しないが」


風音「レイさんは僕を疑ってないんだし、どうせテトラさんとの電話が終わってから、会話内容を確認しなきゃいけないんだからさ。二度手間でしょ」


レイ「・・・まぁな」


 許可を得たところで、それを聞いている間に買い出しを終わらせる為にも、携帯端末の音声を翻訳機に飛ばし移動を開始する。


 その直後、予想通りテトラから電話が掛かってくる。


レイ「風音君。聞くならそちらの音を拾わないようにしておく事。今回の件とは別の事件やシャロン内部の事に関して話し始めたら風音君との通話は切る。 ・・・何だ? 私に直接電話とは、緊急事態か?」


 風音に忠告してから、レイがテトラの電話に出た。


テトラ「失礼致します。 緊急事態と言うほどではないのですが、音羽風音の事を把握はあくしているのはレイ長官だけですので。 ひとつ確認をさせて頂きたいです。今からさかのぼりおよそ三十分間の彼の行動を知りたいです」


レイ「彼も関係者だ。個人情報は教えられない。なぜそれを確認したい?」


 先程の風音同様、テトラがこれまでの経緯をレイに話す。


テトラ「この状況から、彼がウェルズを呼ぶ前に犯行を行った可能性が考えられます」


レイ「今の説明中に、過去の風音君の携帯の使用状況と位置情報を確認した。彼がカノンからウェルズの携帯に情報を送ってから、しばらくしてその家に向かっている。その後家に入った形跡は無い。もちろん携帯だけ外に置いて中に入る事も可能だが、家に着いてすぐにウェルズに電話を掛けている。中から人を呼び出して殺している時間は無い」


テトラ「誰かと協力していた可能性は?」


レイ「無くはないが、少なくとも風音君が一連の連続殺人に関わっていない事は、私とジルと天ヶ崎君が証明出来る」


テトラ「天狐姉様てんこねえさま・・・失礼、天ヶ崎さんが・・・? なら信じますが、少し気になる事があります。音羽風音と天ヶ崎さんはどういった関係なのでしょうか? どうしてそこで天ヶ崎さんの名前が?」


 執拗しつように聞いてくる。まるで事件よりそっちの方が重要だとでも言わんばかりだ。


レイ「それは今回の件と関係あるのか?」


テトラ「大いに関係あります。どこがどうとは言えませんが、大いに関係あります」


レイ「・・・風音君は天ヶ崎君の格闘技の師匠だよ」


テトラ「組手と言って抱きついたりとかですか?」


風音(そんな事するかぃ・・・・)


 聞いていて、思わず声を出して否定したくなる。

 ちょうどコンビニ内で、テトラから頼まれたイチゴオレを手に持っている時だったので、冷蔵庫に戻したろかと思ってしまう。


レイ「いやそれは知らんが、彼のおかげで天ヶ崎君は大幅に成長した」


テトラ「・・・・・・・・・・」


 無言なのに伝わってくる、この不機嫌なオーラ。


テトラ「これまでの経緯はもういいです。今後天ヶ崎さんに触れたら殺すと、遠回しに伝える事は可能でしょうか?」


レイ「どうやって遠回しに伝えるんだそんな事。と言うかそれは今回の事件に絶対関係無いだろ。確認したい事が終わったならもう切るよ、仕事頑張りなさい」


 そう言ってテトラとの通話を切る。

 早速風音が音声発信をオンに切り替えてレイに話しかける。


風音「まずはレイさん、誤解を解いてくれてありがとう。それとちょっと言わせてもらっていい?」


レイ「どうぞ」


風音「天狐さんの信者気持ち悪い」


レイ「同感だ」


風音「それと、もっと重要な事が一つ。さっき僕がウェルズに送った映像、もう見た?」


レイ「見たよ」


風音「その二人の男の、左側の方。そいつの名前と住所って特定出来てる?」


レイ「名前はフロン・アレニ。住所は不定っぽいな。さっきウェルズから事の経緯を伝える電話が本部に来たから、今総力を挙げて捜している。どう考えても次のターゲットだろう。あるいは、もう先にどこかで殺されているか」


風音「どうもリッドって奴より何にも知らないみたいだから、仮に生きてても重要な情報は得られないっぽいけどね。ただ、この二人がどういった組織に所属しているのかは知りたい」


レイ「なぜどこかの組織に所属していると思う? ただのごろつきだと思わない理由は?」


風音「聞いてると思うけど、トラブル処理にレアなロボットが使われてたんだよ。あんなのを雇える弱小組織なんて無いと思う。彼女ロボットを作った奴らがもし裏社会の誰にでも雇えるような、手広い商売をしてるならとっくにシャロンが見つけてるだろうから。おそらくどこか大きな組織が専属で雇ってるか・・・いやどっちかって言うと・・・」


レイ「そのロボットを作り出している組織そのものが、表向きはリアルなロボットを製造する会社を装った大きな犯罪組織か。だろ? こっちはその線で捜査している」


風音「いちいち試さないでよ」


 おおよそ分かっていて聞いたのか。

 最近レイに電話する度に試されてる気がする。


レイ「悪い、どこまで今回の件を把握しているのかと思ってね。一応伝えておくが、成果報酬の件はもう終わっている。風音君から得た情報で捜査が進んでいるから、もう満額払う予定だ」


風音「よっし! これで一回ゆっくり寝れる」


レイ「ただし依頼条件に従って、終わるまで協力はしてもらうよ?」


 いきなり寝るとか言い出した風音に釘を刺す。


風音「もちろん。契約を反故ほごにして報酬無しにされたら困る。ただ報酬が確定するまで寝んなって九重さんに言われてたから・・・そのくせ自分は真っ先に帰るし」


レイ「それ。気になってたんだよ。なんで九重君は帰ったんだ? 彼は仕事を途中で放り出すような男ではないと思って・・・」


風音「娘」


レイ「あぁ・・・」


 その一言でさっする。


 ともかく報酬が確定したなら寝るのを優先だ。多分あの死体からシャロンの捜査以上に得られる情報なんて無いだろうし。


風音「じゃあウェルズ達に飲み物差し入れてから、一旦帰ろうかな。起きてから結果だけ聞くよ。ウェルズに聞く方が早いだろうから、僕が起きた時に寝てたらシバくって言っといて」


 もう買い出しは終わっている。あとは届けるだけだ。


レイ「あぁ、忘れてた。ちょっとウェルズ君を働かせすぎだな。すぐに代わりを送って、一旦帰そう。 その言い回し・・・なんと言うか、君らしい気遣きづかいだな」


風音「あんだけ目の前で眠そうにされたら気も遣うって。ただ気遣いとは別に、寝てたら本当にどつく。自宅にシバきに行く」


レイ「それと今回の件で一番重要な事を言っておく。 さっきのロボットの製造をしている組織と、もし存在するならだがそこを専属で雇っている組織についてだ。裏側の組織に関してはこちらで捜査する。今回の連続殺人とは直接関係は無い可能性が高いから、君達は関わらない方が良い」


風音「言われなくても」


 進んで組織犯罪撲滅ぼくめつに関わる気はない。

 組織に対しては組織でないと対抗出来ない部分も多い。暴力で全て解決出来る訳でもなし。


風音「その言い方・・・こっちにいる組織の関係者を捜すのは良いって捉えていい?」


レイ「それは構わない、と言うより」


 シャロンも先程の風音と同じ考えだ。自分の意志ではなく命令されて動いているロボットは、仕事のデータを製造者に逐一ちくいち報告している可能性がかなり高い。


 ただし地球から直接裏側に報告・・・となると、確実にシャロンが傍受ぼうじゅ出来る。

 それに仕事でロボットに何らかのトラブルが出た時の対応なども考えると、おそらくあのロボットの関係者が地球に居る。もっと言えば、そいつはフェクトに居る。


 まだまだ未開の惑星である地球では、宇宙人が勝手にフェクトから他の国へと出て行く事は出来ないし、出て行くには厳重な審査が必要になる。そもそもそういう行動を取る宇宙人自体が少ない現在、目立つ事もあり犯罪組織がそのリスクを負う可能性は低い。

 ・・・と、こちらが思っているからこそフェクトから出ている可能性もあるが、後回しでいいような確率だ。


レイ「今の所、そいつらを捜すのが犯人の情報を得るのに一番近道だろう」


 よりによって犯罪組織と思われる奴らが、唯一殺人犯の顔を知っている可能性が高いとは。


風音「じゃあそれはそれで調べるとして。もうひとつこっちはこっちで調べたい事があって。全然今回の件と関係無いかもしれないけど、はっきりさせたい人達がいてね」


レイ「何の話だ?」


 風音が花屋さんに怪しい三人組が出入りしている事を説明する。


レイ「・・・単に愛憎劇あいぞうげきのようなものじゃないのか? 三角関係で、男二人の間で悪意が満ちているとか。そういう負の感情も獣人は察知する事があるしな・・・」


風音「あ、それは僕も思った」


レイ「しかしほんのわずかでも可能性があるなら、そっちも頼もうか。その内容ではこちらの人員はけないが、確かに気にはなる。一連の犯人だとすると、に落ちない点があるが」


風音「そのこころは?」


レイ「目立ち過ぎだ。今回の件、これだけ回数を重ねればこちらが戦闘民族や獣人を疑っている事くらい予想が付きそうなものだ。なのに獣人の子を引き連れて複数人で同じ場所に出入りを繰り返す。まるでわざと目立とうとしているようだ」


風音「確かにね」


 犯人ならあり得ない行動だ。


レイ「だが今回の件と関係無くとも、悪意を持った人間が街に居るのも事実。調べておいて損は無い。自由に動ける風音君向きだ」


 そこは風音と同じ考えだ。


風音「じゃあその店の監視カメラの映像を見たいから、許可証をお願い」


 レイの許可を得た事で、正式に仕事として調べる事が出来るようになった。

 この許可が無いと今回の件が解決するまでは、シャロンからの指示を聞きながら個人的に解決しなくてはならなくなる。

 マリアの店の防犯カメラを見る事も出来ないし、張り込みが前提になるだろう。そんなん今より寝る時間が無くなる。


レイ「許可証の件は夕方までに作成してカノンに届けておく。それと最後に確認したい事がある。キミ、天ヶ崎君とジルに何か言ったか?」


風音「何か、とは?」


 質問の意味が分からない。


レイ「今朝急に、今回の捜査はあの二人組でやると言い出したからな。今まで無かった事だ」


風音「ああ・・・・・。それ僕じゃなくて、九重さんだね。 僕らがやり合ったの知ってる?」


レイ「聞いては無いが、可能性の一つだと想定はしていた」


風音「その時ね、僕らが勝ったんだけど」


レイ「やはり君らが勝ってたのか。四人が会っているのは知っていたが、どういう流れになっていたのか知らなかったからな・・・」


 自分の所の職員が負けたという事で、ちょっとさびしそうな口調。


風音「そんな落ち込まなくても、騙し討ちで勝ったようなもんだよ。それに天狐さんはまだまだこれから伸びしろがあるし、ジルなんて天狐さんを疑う事に疑問を持ったみたいで、途中からやる気が無かったし」


レイ「いや表情や声で分かる。ジルの口調は、何かを本気で悔しがっていた。あれは本気で挑んだ事に対して負けた時の感じだ」


風音「ほんとに? ・・・・でもそんな事言いだしたら・・・前にも気絶させたし・・・・。 あっ、そうか! 尾行か!」


レイ「尾行? ジルの尾行に成功したのか? 気付かれて泳がされたんじゃなく?」


風音「うん、九重さんがね」


レイ「凄いな彼は。なるほどそれなら納得だ。ジルは捜査の基本に関しては本気で取り組んでいるからな。自分が尾行されたとなっては後輩達への示しがつかん、か。もしかしたら今日寝てないかもな、あの様子じゃ」


風音「帰ってから一人で大反省会とかしてるのかな? ジルらしいっちゃジルらしいかな。 ・・・まぁとにかく話を戻すと、その時に九重さんに怒られたんだよ。僕達が連携れんけいして二人をあざむいて勝ったのとは逆に、あっちはお互いを全然信用してなかったからね。「トップのお前らが連携も出来なくて、フェクトが守れるかボケ、死ねカス、殺すぞ」みたいな事言われてた」


レイ「そこまで言われたのか、そりゃ反省もするか」


風音「あと説教ついでに銃で殴られてたね。天狐さんは自分から九重さんに殴ってくれって言ってた」


レイ「ふぅん?」


 なぜ自主的に殴って貰おうとしたのか・・・ドMなのか? ちょっと気になるが、事情は分かった。それで反省して一緒に仕事をやってみる事にしたのか。

 対応が前向きと言うか、単純だなぁ・・・と思う。


風音「聞きたい事はそれだけ?」


レイ「以上かな。 じゃあ今日の夕方にでもそっちの確認に行ってもらえるか? ウェルズを寄越よこそうか?」


風音「そう・・・・ですね。いや、千丸が手伝ってくれるって言ってたからこっちで何とかします。千丸は他人が居ると仕事しにくいみたいなので」


 千丸は仕事している姿を人に見せない。正確に言うと他人に姿を変える瞬間を見られたくないようだ。

 例外である風音と風音の連れ(カノンの人達)以外には基本見せない。

 

レイ「そうか。じゃあお疲れ、またそっちが一段落したら連絡を頼む」


風音「了解です」


 ようやくレイとの電話を切る。


風音(結構長時間喋ってたな・・・)


 とっとと飲み物を届けてカノンに帰ろう。

 ふと、どうでもいい事が気になった。

 ウェルズはこの後も起きるつもりで大ボトルのブラックコーヒーを頼んだのかな?

 もうしばらくすると帰らされるのに、コーヒーは要らないような気もする。

 自分用に買った、不味まずいと噂のスパークリングクールミント杏仁あんにんと取り替えておこうか。


風音(せっかくネタ用に買ったけど仕方ない、ウェルズが眠れなくなったら困るしコーヒーは僕が起きてから飲むか)


 親切で取り替えておき、届けてからカノンに帰宅した。

 カノンに到着する頃に、ウェルズからものっ凄い苦情のメールが来てたけど無視した。



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