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カノン  作者: しき
第3話
23/206

殺人鬼5


 深夜のフェクト中心都市ネロ。

 深夜でもたくさんの人種が街を出歩いているが、路地裏は深夜になると極端に人が少なくなる。

 ただでさえ異星人による犯罪率が高いこのフェクトで、深夜路地裏を徘徊はいかいするなど自殺行為だ。


 そんな危険な場所で、二人の女の声がする。


 「あなたの悪行、見逃せないわ」


 「悪行? 私の行為に善も悪も無い。ただ依頼人が金を出し、私はそれを受け取り頼まれた仕事をこなす」


 「その行為が善良な市民を苦しめているとしたらどう?」


 「さぁ? 私には関係無いね」


 「売人の護衛、花屋の立ち退き、喧嘩の報復・・・この三日間だけを見ても、あなたの行為は市民に対し悪影響しか与えていない」


 その言葉を聞いて、思い出した。この女、ここ最近見た覚えがある。

 どこだったか・・・・。別に思い出す必要も無いか。

 相手の一方的な意見に反論する。


 「私はただの道具。私の行為が悪だったなら、それは依頼人の責任だ。包丁を料理に使うも殺人に使うも使い手次第。包丁に善も悪も無い」


 「もちろん、だから依頼人は始末する予定。まずは脅してあなたを呼び出させた。私はあなたにも責任があると考えてるの」


 そう言って指を鳴らす。


 同時に、眼前で話していた相手が頭を押さえる。


 「これは頭痛? 人為的じんいてきな介入による異常か。 今どこかから電気信号を飛ばしたな」


 「大正解だーいせーいかーい。一度かかってしまえば最後。頭痛が発生したこの場所から離れるほどに、頭痛は酷くなるの。 しかもそれ私にしか治療が出来ないのよね。 試しに逃げてみる? 今なら追いかけないから、逃げても良いよ?」


 (やけに丁寧ていねいに説明してくるな・・・。何か目的があるに違いないが・・・)


 周囲を見る。頭痛の原因となる電気信号を飛ばしてきた位置は、そう遠くない筈だ。

 位置を特定した。二つ向こうのブロックの、角を曲がったところ。


 (異常の原因はあの辺りか。誰かもう一人潜んでいるな。痛みは無いが、違和感をぬぐう為にも一時的に感覚を遮断するか)


 頭から手を離す。


 「あら~~、あなたそっちのタイプなのね。説明して損しちゃった。 たまにいるのよね、リブルの機械が通じない人」


 「あそこで隠れて電波を飛ばしているのがリブルというやつか? このまま私に関わらないなら見逃してやるが、まだ関わるならリブルというやつが最初に犠牲になる。一流の仕事人は仕事でしか手を汚さないそうだが、私は二流でね。必要とあらば殺すと決めている」


 「リブルが殺されると困るわね、私の楽しみが減っちゃう。頭痛に耐え切れなくなって、自分から殺されに戻って来る馬鹿を見るのって、たまらなく快感なの」


 頬に手を当て、恍惚こうこつとした表情を浮かべる。


 「・・・お前、獣人か?」


 「あら? どうして分かったのかしら?」


 「耳が動いたり尻尾が動いたり・・・感情がたかぶると体が分かり易く正直に反応するのがお前らの特徴だろう? 今のお前の場合、眼球の瞳孔どうこうの動きに大きな変化があった。獲物を見定め、狩る時の目だ」


 「・・・私が聞いてるのは、どうしてこの暗闇で・・・。 まぁどうでもいっか☆」


 グルグルと腕を回す。戦う姿勢に入ったようだ。


 それを見て、宣言通りリブルを先に始末する為に女が走りだす。

 邪魔をされるのも厄介なので、追って来れない様に不意を打って走り出したが。


 「駄~~目。まず私でしょ☆」


 後から追ってきたはずの相手に回り込まれた。


 (私を上回るのか、獣人の身体能力は)


 素直に驚いて、仕方なく一旦止まる。


 「私は目立つわけにいかないから、依頼を除けば先に手を出すのは御法度ごはっとでね。 お前に用はない、どけ」


 「あはっ☆ じゃあ黙って一発喰らえばいいじゃんよ、っと」


 女の顔面めがけて拳を繰り出す。


 どうという事も無いように、その拳を受け止めようとしたが。

 防ごうとした手が拳の勢いに弾かれる。


 (!!? こいつの拳・・・!)


 信じ難い威力。


 危険だと判断し、のけ反ってかわそうとしたが。

 獣人特有の、極端に柔軟な体をしているのだろう。相手の拳の射程がグンと伸び、顔面に被弾する。

 そして触れた瞬間、女の首から上がぜるように弾け飛んだ。

 のけ反った姿勢から、そのまま後ろに倒れ込む。


 「はい終わり~~」


 拳に付いた血を拭きとっていると、後ろからリブルが話しかけてきた。


 「おいおいもうちょっと早くやってくれよ。もう目の前だぞ。俺が殺されるところじゃないか」


 「リブル弱っちいからね。いいじゃない、スリルがあって」


 リブルが倒れた女の、失われた顔面付近をのぞき込む。


 「あぁ、針の回収ならしなくていいよ。前回見つからなくて回収し損ねた針を、シャロンに回収されちゃった。場所が場所だし、時間を掛けて人が来ても厄介だからね」


 リブルが針を探すのを止めて携帯を取り、別の仲間に連絡を取る。


 「終わったよ。どうする? もう今日は解散か? ・・・分かった」


 電話を切る。


 「じゃあ解散だな」


  女の死体をその場に残し、二人が暗闇に消えていった。





   ----------



 九重が両手に持った銃から弾丸を五発ずつ、ジルではなく周囲の木に向かって撃つ。


ジル(彼は確か跳弾による攻撃が得意でしたか。真上から脳天への攻撃もあり得る)


 木に向かって撃ったという事は、彼がいつも使う跳弾用のゴム弾だろう。死にはしないが死ぬほど痛い弾だ。

 ジルが自身の身体周りのあらゆる方向に糸を展開する。

 銃を持つ相手には普通、銃を封じる為に接近するのが定石じょうせきだ。

 定石通りジルの方から九重に近付いて格闘をしかけても負けるつもりはないが、九重には合気道あいきどうだか何だかいう妙な近接攻撃がある。

 勝ったとしてもダメージを負う可能性は非常に高い。この後の天狐戦を考えると、ここでダメージを負いたくない。

 このまま中距離で弾丸を全て受け止め、九重の中遠距離からの攻撃手段を失くす。あとは糸で至近距離まで近付けない様にしながら、戦意喪失せんいそうしつするまで九重を切り刻めばいい。


 風音が上空で空気の壁を作る。ユニルと契約している事により使う事が可能な、大気の操作だ。

 その壁を蹴り、天狐に向かって跳ぶ。


天狐(来い)


 天狐が風音の全身に集中する。どこからどんな攻撃が繰り出されようが、全部受け流す。絶対にミスは無い。


 急に天狐の足元がふらつく。


天狐(・・・・え?)


 突然の頭部の衝撃と共に、天狐の視界が揺らぐ。


 脳が揺れている。

 頭部に攻撃を喰らった?


 視線の先に居る風音はまだ何もしていない・・・はずだ。

 いや、今まで眼前がんぜんに居たはずの風音の姿が無い。どこに行った? 視界が揺らいだ瞬間に消えた。


 風でも操っているのか? 遠距離から脳を揺らす程の技?

 風音は風の妖精ユニルと契約しているのだ。当然風属性の技を使うのは知っている。

 しかし妖精本人とは違い、妖精と契約しているだけの者は精度の高い技は使えない。と教わったのに。


天狐(全身を強化された私の脳を、瞬時に揺らすほどの衝撃を生む風なんて・・・)


 不可能な・・・はず。


 再び顎に激痛が。続けて三回。


天狐「・・・ぎっ!! ・・・・うぅ・・」


 あまりの痛みにひざから崩れ落ちて顔をおおう。

 三度目の衝撃の際、その攻撃の正体を手でつかむ事に成功した。やはり風などではなく物質だ。

 何を喰らっていたのか・・・震える手を開いて確認する。


天狐(これは・・・ゴム弾・・・・? 九重さんの・・・なんで・・・?)


 攻撃の正体が判明した時には、追撃するようにこめかみに三発の弾が当たっていた。

 脳が更に揺さぶられ、声も発せずにそのまま気絶する。


 風音は天狐に最初の弾に当たる直前、再び自分の前方に風の壁を作り、それを思い切り蹴ってジルの方に跳んだ。


 九重に集中していたジルの反応が一瞬遅れる。

 気付いた頃には、風音がすぐ頭上まで来ていた。


ジル(・・・上か・・・!)


 いつもの癖で、咄嗟とっさに糸で防御壁を展開するが。それが悪手である事にすぐ気付く。

 彼の毒に糸は効かない。


 毒をまとった風音が、糸を崩壊させながらジルの頭に向かって回転蹴りを放つ。

 ジルが両腕で防御し、被弾を回避したが。


風音「空中からの攻撃は防御より避ける方が良いよ。不利になる可能性が高いから」


 空中からジルの両腕を掴んで強引にねじ開け、開いた顔面に膝蹴りを入れる。


 そのままジルの背後に跳びながら、ジルの後頭部に後ろ回し蹴りをぶち込む。


風音(あれ・・・この感触)


 軽すぎる気がする。・・・感触に少し違和感があったが、風音が前のめりに倒れたジルを見て起きてこない事を確認する。


風音「・・・・・。 よし終わりっ、と」


九重「おい、音羽。 想定外の事が起きた。すぐに天狐を回復してやってくれ」


風音「あ、はい」


 結果的に天狐が耐え切れずに気絶した、こめかみへの三発。

 あれは狙ったものではなかった。

 頭とあごを狙った四発以外の残りの六発は、立っている両足に三発づつ打ち込んで立てないようにする予定だった。

 しかし実際は予定よりも天狐が早めにかがんだため、想定していた体勢とはずいぶん違う形となった。

 結果左足を狙った弾は背中をかすめてどこかに飛んで行った。

 そして問題は、右足の関節を狙った弾。それらが全部頭に当たった。いかに非殺傷弾といえど、頭のしかも同じ場所に三発はまずい。

 常人なら即死もあり得る。


 すぐに返事をした風音が倒れている天狐に駆け寄り、容態を確認する。

 見た感じ大丈夫そうだ。骨も折れてない。ただ、脳に影響が出てなければいいが。


風音「全身強化してたみたいだから、大丈夫かな。なんにせよ即死じゃなくて良かった」


 風音が普通に手をかざして治療しようとすると。


九重「おい、念の為強力な方の治療でいけ」


 九重から指示が入る。

 可能性は低いと思うが、もし脳が少しでも損傷していると、後遺症が怖い。


風音「必要無いと思うけど・・・一応人工呼吸やっときましょうか」


 風音の治療は古傷には効かないうえ、他人に対しては一日一回しか使えない。

 この程度の回復で十分だろうと思って中途半端に回復すると、後で後悔する事になる。

 今なら風音が口から直接回復の息を吹き込んで(この行為を風音は人工呼吸と呼んでいる)、天狐の体を全快させれば脳の損傷すら治る。


 風音が気絶している天狐の唇に口を付けようとすると。


九重「待て」


 急に止める。


風音「何か?」


九重「いや・・・・・」


 思い出した事がある。

 確か酒の席で言っていた。天狐は現在大大大大好きな人が居て、その人の為にファーストキスは大事に取ってあるとか言っていた。鍛錬たんれんまみれの灰色だった青春時代を、今から取り戻すとかなんとか。

 こんな体格をしていても、中身はまだまだ可愛い女子なのだとしみじみ思ったものだ。

 この状況なら風音の言う通り人工呼吸のようなものなのでノーカウントだろうが、こういう事に関してお節介を焼く九重としては、本人の意思を尊重したいという気持ちもある。


九重「そいつもまだ若い女だ。他の方法は無いのか?」


 風音にいつも結婚を迫る九重だ。もしこれがカノンの誰かなら止めはしない。いくらでもやってくれ。そんでそれをきっかけにお互い意識して結婚しちまえ、って感じだが。


風音「いやどうしろっての。昔も散々それ悩んだし、僕も出来ればやりたくないんだよこれ。じゃああれでいく? 前に九重さんにやったみたいに、一回のどに穴開けるやつ」


 なかばやけくそになって言ったが。


九重「ああ、いいなそれ。あれでいこう」


風音「まじですか・・・。女性の体に傷付けるのはいいんだ・・・」


九重「傷ったって直後に綺麗に治るだろ」


 九重本人が経験済みだ。


風音「そうだけどさ・・・」


 九重の女子に対する倫理観りんりかんの基準が分からない。

 渋々しぶしぶ指先に力を入れ、少し天狐の体を起こしてから喉に突き刺し喉を開く。天狐の喉に少し大きな穴が開いた。

 そこから大量の血が流れ出すが、風音がすぐその穴に気道を通じて体内に息を吹き込むと、天狐の全身が青白く光る。


 これで仮に脳が損傷していたとしても治療出来ただろう。

 そしてゴム弾によるダメージが治り、最後に開いた喉の傷も綺麗に塞がっていく。

 周囲と首の周りに血の跡が残ったが、ま、大した事は無い。


 処置が済んだ後、天狐が「ガハッ!」っという感じで血煙ちけむりを吐く。


風音「あれ・・・体を起こしといたんだけど、やっぱりちょっと気道に血が入っちゃってたか。まぁ当然か。あんな大きい穴開けたら」


 天狐の方は無事治療が終わったので、九重がジルに近付いて様子を見る。

 こちらは普通に意識はあり、ダメージも大した事は無いようだ。感触が軽いと感じた通り、やはり最後の蹴りは避けられていてほとんど効いていなかったらしい。


ジル「・・・・卑怯ひきょうかとも思いました・・・が」


 喋りながら起き上がり、その場に座り込む。


ジル「私達が勝手に思い込んでいただけですね」


 風音と九重の性格なら、タイマンだと宣言したならそれを破る事は無いと思っていた。

 風音が空から襲ってきた時、こちらをだまし卑怯にも二人掛かりで来たのかと思ったが。

 そういえば風音は天狐とやるとは一言も言っていなかった。九重も同じく。


風音「今のは奇襲みたいなもんだから無しって事にして、まだやる?」


 戦意は無さそうだが尋ねておく。


ジル「いえ結構です。本当に長官の使いだという事は分かってました。それに天狐とやるつもりではありましたが、様子を見る限りあいつは犯人じゃない気もしました。あなた達に負けて有耶無耶うやむやになるなら、それも良しです」


 九重がジルと視線を合わせるように、ひざを曲げてかがむ。


九重「今の戦闘な。風音が何をしたいのかは、口に出さなくてもすぐ伝わった。・・・なあ、お前らはフェクトの治安部隊で、その上位二人なんだろ? お前ら二人にはこういう意思疎通いしそつうが出来るのか?」


ジル「・・・・・・・・」


九重「この程度の事、お前らが出来なきゃ市民を守れないだろうが、馬鹿共が」


 九重が持っていた銃の底で、ジルの頭をゴチッと叩く。


天狐「すみません」


 いつの間にか起き上がっていた天狐が、九重に向かって謝罪する。体のサイズも元に戻っているようだ。


九重「・・・何に対する謝罪だ?」


 今の九重の説教だけでなく、今回の一連の軽率けいそつな行動の中で謝るべき事などいくらでもある。


天狐「全部・・・です。 総じて己の未熟さに、です」


九重「お前らは全員の手本になるべき立ち位置にある。その自覚はあるか? 敵を目の前にして、同僚が信頼出来ないから連携しないってのは、敗北の言い訳になるか?」


天狐「・・・言い訳にはならないです。私達の敗北が、市民の命を犠牲にすると叩き込まれました」


九重「風音、俺の代わりに一発叩いといてくれ」


 天狐の目の前に居る風音に頼む。

 よっしゃまかせろ、とばかりに風音が嬉しそうにグッと親指を立てる。


風音「これは九重さんの分!」


 そう叫んで天狐の頬に張り手をかます。

 しかし頬に到達するまでに腕で防がれた。


風音「えっ? この流れで防ぐかね・・・」


 なんだこいつ信じられない。


天狐「九重さんから直接なら受け入れるけど、師匠に叩かれるのは嫌」


風音「意味が分からんわ。その九重さんの意志だよ今の一発は」


九重「まあいい。直接なら歓迎、ってんなら」


 九重が天狐に近付いて、ジルの時よりちょっと強めにゴツンと銃で叩く。


天狐「痛っ・・・」


九重「お前は精神面を一から鍛え直しだ。脳筋のうきんの風音と凌舞しのぶではその辺は無理だ。だから・・・」


 誰が適任だ?

 思考を始める時の癖で、煙草に火を点けた。

 ゼロアは脳筋。神楽かぐらも脳筋。煉也れんやも脳筋。


九重「カノンの連中は向いてないな。一人くらいシャロンに居るだろ、菩薩ぼさつみたいな精神の奴。そいつを見て勉強しろ」


 煙を吐きながら結論を出す。


風音「誰が脳筋だ誰が。 僕らは言われた通り鍛えてあげただけだよ。そんなに言うなら九重さんが鍛えてあげてよ」


九重「勝手に決めるな」


天狐「分かりました師匠。九重さんの下で一からやり直します」


九重「勝手に決めるな」


ジル「天狐をお願いします。こいつは今のままでは危ないですから」


九重「お前が言うな」


ジル「・・・と言われましても。 私ですら直接の衝突はもう少し時期を見てから、と思ってましたよ。 一緒にしないで欲し・・・っと、失礼」


 ジルの携帯に電話が掛かってきたようで、ジルが電話に出る。


ジル「はい。 ・・・はぁ・・・そうですか。 今ですか? 自宅で寝てましたが。 ・・・・十分後に外に? 分かりました」


 電話を切る。


風音「今普通に嘘ついてなかった?」


 聞き捨てならないワードがあった様な。


ジル「え? 何の事ですか? ちなみに長官からでした」


 立て続けに天狐の携帯が鳴る。


天狐「お疲れ様です。 ・・・そうですか。今度こそ前進したいですね。 今ですか? 自宅ですが。 ・・・・ええ。 約十分後に外に。了解です」


 電話を切る。


風音「流れるように嘘をつく人たちだな・・・」


 天狐が電話の内容を説明しようとすると、風音の携帯がわずかに揺れる。


風音「ん? あ、こっちもレイさんからだ」


九重「俺にも聞こえるように出来るか?」


 風音が携帯の音を周囲に聞こえるように変えた。

 そして電話に出る。


風音「こんな夜中にお疲れ様です。レイさんいつ寝てるんですか?」


レイ「今まで寝てたよ。今さっきシャロンから連絡が来てね。例の連続殺人の件だ。街のど真ん中で被害者が見つかったらしい。まだ犯行直後らしい事と、犯行現場の様子から一連の事件の犯人によるものと思われるそうだ。 そこで風音君に頼んでいた依頼の件だが、今監視を続けてくれているね?」


 風音がジルと天狐を見て、小さくため息を吐く。


 結局次の事件が起こってしまったか。それを防げなかったのも悔しいが、どうせなら。


風音(あと一時間早く電話があれば、何事も無く終わったのに・・・)


 人生そう上手くはいかないという事か。

 ・・・ここは先程の二人の電話での返答に合わせておく。


風音「今天狐さんの部屋を見てます。九重さんとセイニーはジルの家を見てるはずです」


レイ「今からしばらくしたら、二人に玄関から外に出るように命令を出した。その理由は外に出てから伝えると言ったので、不審そうな様子を見せるかもしれないが・・・ともかく外に出たのを確認次第連絡をくれ」


風音「分かりました。九重さんにも僕の方からすぐ伝えておきます」


レイ「ああ、頼む。ただジルはともかく天ヶ崎君は女性だからね。十分後と伝えたが、外に出るまでちょっと時間が掛かるかもしれない。少し気長に待ってくれ」


風音「大丈夫ですよ。あの化粧年増としまは平気でパジャマのまま外に出る奴ですから」


 天狐が風音をギロリと睨む。


レイ「それと、疑っている二人の誤解を解きたいから、出てくるところの録画もお願いしたい」


風音「え? あ、あれ? ごめんなさい。電波の調子が悪くて後半聞き取れな・・・」


 電話を切る。依頼完了の電話をこちらから掛けるまでは、携帯の調子が悪かった事にして電話が掛かってきても出ない事にしようか。


九重「今の時代に電波の調子ってお前・・・」


風音「だって録画とか言い出したし。 そもそも二人が嘘つくから、一応合わせといた方が良いのかなと思って・・・」


ジル「どうも。 誤解が判明した今、ここでの事を報告したって減給されるだけで何の得も無いですし」


 二人とも大人しく家で寝てた事にすれば、みんなハッピー。


風音「減給されとけ、お前らは」


天狐「よく考えたら、私達はまだ喧嘩どころか触れてすらいないわ。減給される覚えがないわね」


ジル「それもそうですね。現状、郊外こうがいで会ってるだけです」


風音「じゃあ正直に、天狐さんはジルを可愛いメールで郊外に呼び出しましたって報告しようか。ジルは同僚を口説き落とすチャンスだと思って、ほいほい出て行きましたって報告して?」


ジル「それ言うくらいなら減給でいいです」


天狐「あ、思い出した。ジル、あのメールすぐ消しなさい」


ジル「あんなもの読んですぐ消しましたよ」


 それからしばらくして風音と九重が、レイに二人とも自宅に居たと伝えて今回の仕事が終わる。

 残念ながら録画は出来ませんでした。そんな依頼は聞いてなかったから。


 電話での仕事完了の報告の後、レイから追加で依頼が。


レイ「ところで風音君達は今回の事件に関わる気は無いか? もし良かったら、協力してもらえると助かる」


風音「依頼料はさっきの件とは別で貰える?」


 更なる借金返済に期待する。


レイ「いや? 当然最初に提示した金額で。あの金額で事件に協力するのも依頼内容に含まれていたし。偶然本命の件が早めに片付いただけだろ?」


風音「いやいや御冗談ごじょうだん


 本命が片付いた時点で貰える金額なんだから、追加で頼むなら別で出して欲しい。

 レイさんは基本いい人だし話も分かる人だけど、報酬に関しては親組織のシエロに監査されているのもあって、かなりシビアな対応になる。板挟みだから可哀想な部分もあるが・・・。

 現在電話は周囲に聞こえないモードに戻してあるので、一応隣にいる九重にも内容を伝える。予想通り九重も断っておけというジェスチャーをした。

 やはりこちらに条件の悪い仕事を受ける事に抵抗があるようだ。それを一回認めると、シエロは際限なく調子に乗る。


レイ「無理か? 千丸君が監視カメラから犯人を割り出せるなら、人助けだと思って協力してほしい」


 情に訴えかけてくる言い方だが、騙されてはいけない。

 本来なら公務員が時間を割いて行う仕事を、タダでやらせようとしているだけだ。


風音「いや~~最近忙しくってさ、今回は依頼完了って事で。 ごめんね、また別件でお待ちしております。おやすみなさい、レイさん」


 電話を切ると、直後にメールが来る。レイからだ。


「今回の二人の件を解決してくれてありがとう。何事も無く、無事に終わって助かったよ。 ところで依頼の報告に嘘があった場合、報酬は支払われないというのは知っているね? どうもジルと天狐君の二人の携帯が、現在郊外の同じ場所にあるみたいなんだ。 どういう事だろうか?」


 風音が小さく舌打ちをする。

 あのおっさん、今回の流れを大体分かってるな。多分風音達が今二人と一緒に居る事も。

 今までずっと白々しい演技をしていたのか。

 九重にメールを見せると、九重が風音の頭を指でコンッと叩いた。

 二人とは違い、風音は正直に報告するだけで良かったのだ。仕方なく二人の嘘に乗ってあげた結果がこれだ。


 ただ、気になる点が一つ。

 「二人の携帯が」と書いてあったが、なぜレイにそれが分かる?

 最近の携帯電話の発信位置って、そう簡単に分かるものだったか? 時間を掛けたならまだしも、リアルタイムで?

 位置情報を傍受ぼうじゅされない様に、裏側の最新の防犯技術の携帯が出回ってるこの時代に?

 予め位置情報を特定の相手に開示する機能を入れておいた携帯なら、どんな状況でも位置が特定出来る。だから二人が持っているのが仕事用の携帯ならレイの発言も理解出来る。

 でも確か天狐が今持っているのは私用の携帯だ。仕事用のは息が詰まるからと言って、仕事以外では使っていないのを知っている。


「もしかしてレイさん、二人の私物の携帯に何か仕込んだ?」


 と返してみる。これに返信が無ければ、当事者である二人に確認するまでだ。


 しばらくしてレイからの返信が。


遠隔えんかくで仕込ませてもらった。今回の状況を考えるなら、必要な措置そちだ」


 ふーーん、そっか。

 しかし・・・私物の携帯に本人の了承無く勝手にそういう事をしていいのだろうか? そういう事はしないと思っているから、二人とも緊急連絡用に携帯を所持していたのではないだろうか?

 それにレイは言わなかったが、本当に位置情報だけか? 会話内容も拾えるようにしているのでは?

 その辺を突いたメールを送ってみる。


「そうですか。じゃあ報酬無しでもいいよ。ただし二人の私物の携帯に勝手にスパイみたいなソフトを入れた事は、一市民として看過かんか出来ないから二人に言っちゃうけどいいかな? 今回の件が終わったらそのソフトを黙って抜き取るつもりだったのかもしれないけど、今ならまだ二人の携帯に証拠が残ってるし。 レイさんが側近そっきん達との信頼関係が崩れて仕事が上手くいかなくなった方が、こっちへの依頼が増えそう。うちとしては長い目で見ればその方が良いかも?」


 ちょっと意地悪な書き方で反応を見る。

 即座に返信が来る。


「シャロンで働く者は仕事と私事を分ける判断くらい出来る。今回のは仕事で必要な措置だ。それくらいで信頼関係が崩れる事は無い」


 強気の回答。

 風音がレイに電話を掛ける。

 レイが出たようだ。携帯の設定を周囲の声を拾えるようにして、何も喋らずにジルと天狐に話しかける。


風音「ところで二人ってさ、今回レイさんに目を付けられてた訳だけど、なんで僕が見張りを頼まれたのかな?」


ジル「? 質問の意味が分かりません。他の職員では我々は手に余る、とかでは?」


天狐「・・・どういう事? 単に師匠達はシャロンおかかえの何でも屋だから、なんじゃないの?」


 二人から疑問の声。


風音「いやだってさ。 本気で調べたいなら二人の仕事中にでも二人の家に入って、監視カメラを設置するとか、盗聴器を仕掛けるとか、私物の携帯電話に会話内容とか位置情報が分かる様なソフトを仕込むとかさ、その方が人を雇うよりお金も掛からないと思わない?」


 そう尋ねる風音に、二人が吹き出して笑う。


ジル「ああ、そういう事ですか。そんな事ある訳ないじゃないですか」


天狐「そんなのただの犯罪行為じゃない。そんな事されたら、明日にでも二人でシャロンをぶっ壊しに行くわよ」


ジル「シャロンが組織的に犯罪行為をするなんて、断じて見過ごせませんからね」


風音「それもそっか」


 手元でレイに繋がっていた電話を切る。そしてメールを送る。


「だそうです。面白そうですね、明日超楽しみ」


 レイから返信が来る。


「降参だ。だがそちらが虚偽の報告をしたのも事実だ。痛み分けという事で、報酬を払う代わりに追加の依頼も受けてくれないか? 追加の依頼の報酬はいつもの基本報酬の半分で、加えて成果報酬とするというのでどうだ? それで無理なら、明日二人を迎え撃つ準備をして待つ事にするよ」


 少し考えてから、風音が返信を送る。


「それでいきましょう。人が良いと損するね、お互い」


 そもそも二人の携帯にそんなソフトを入れたのは、最大の懸念であった他の職員の介入が無いか監視する為だろう。先程の二人の反応からして、そんな事はつゆほども考えていなかったようだが。

 しかし二人がどう考えていようが、長官は常に最悪のケースを考えて動かなければならない。

 だから今回はそんなソフトを仕込んだにもかかわらず念には念を入れて、監視役をどちらの味方でもない風音達に頼んだのだろうし。

 長官としても、市民とシャロンを考えての苦渋くじゅうの決断だっただろう。本来なら誰に責められるいわれもない。悪いのは全部、今目の前に居る馬鹿二人だ。


 ともあれ、条件付きで仕事を受ける事にした件を九重に告げる。


九重「半分か・・・、まぁいいだろ。しかし成果報酬でってのは・・・もう少しネゴの技術を覚えた方が良いなお前は」


風音「実績報酬とか言われるよりはマシかなと思って。それだと犯人を直接捕まえないとほとんど報酬が出なくなるし」


 風音がんだ条件である成果報酬とは、この件に関して何らかの成果を挙げたと認められないと、報酬は一切支払いませんよ、という事。 シャロンとカノンのやり取りではそう定義している。

 逆に言えばどんな些細ささいな事でも解決に繋がる事をすれば、契約分は全額貰えるとも言える。

 活躍の大きさに応じて金額を計算する実績報酬とは少し違う。


九重「じゃあどうするんだ? 今からこのまま現場に行くのか? 待機組を呼んでから行くのか?」


風音「え、現場行くの? なんで?」


 今日はもう帰って寝るつもりだったのに。死体見たくないし。


九重「成果報酬で協力するんだろ? 現場を見て少しでも新しい発見をすれば、その時点で全額保証だ。むしろ行かない意味が分からん」


 ど正論で返された。

 待機組には解決したら帰っていいと伝えてあったので、もうカノンに帰ってるだろう。

 千丸ちまるは寝ていたが、友人には気を遣うユニルの事だ。無理矢理起こすのではなく、置手紙でもして自分だけ帰っただろうから多分まだあのマンションに居る。呼ぼうと思えば千丸は呼べる。

 千丸を呼ぶか?

 あの子に死体の現場なんて可哀想か。


風音「じゃあ二人で今から行きますか・・・」


 そう返事をしたものの、めちゃくちゃテンションが下がる。


九重「いや俺はもう帰る」


風音「ああ、そうですか。お疲れ様~・・・・じゃなくて! えっなんで? 帰る?」


九重「今回の俺の仕事は終わった。追加の仕事はそっちでまたメンバーをそろえ直せばいいだろ?」


風音「そうかもしれないけど、乗り掛かった船って言葉知らない?」


九重「終わったから言うが、実はこの仕事を受けて後悔してたからな。 仕事を受けると家に居る時間が極端に少なくなるから、普段俺は短期の仕事を希望してるのは知ってると思うが・・・。まさか謝礼の為に自分から進んで引き受けた仕事が、いつ終わるか分からない仕事だったとはな。おかげで娘が怒る怒る。その仕事が終わるまで口ききませんと言いだす始末だ」


風音「あ、じゃあ早く帰って終わったと伝えてあげてください」


 それを言われるともう、こう答えるしかない。

 若い娘さんを一人にしておくのは可哀想だし。


九重「助かる。もうメールでしか会話出来ない状態だったからな」


風音「会話出来てるやん。ちょっと心配してたのに」


九重「メールにした事で普段より会話が多いな。メールってのは終わらせるタイミングが分かり辛いから、延々会話が続くだろ?」


 少し嬉しそうな九重に、余裕あるやんけ、と突っ込みそうになる。


風音「九重さんとこの娘さんて反抗期あったっけ・・・?」


九重「いや無いな。俺としては無くていいんだが、無いとまずいって説もあるからな」


 九重が真剣に悩む。

 仕事では見せた事の無い表情だ。この人仕事は手を抜いてるんじゃないだろうか。


風音「大丈夫じゃない? 僕も無かったし」


九重「お前が反抗期無しの完成形か・・・」


 九重が嫌そうな顔をする。


風音「何か不満でもあんのか」


九重「いや・・・別に・・・そうか・・・」


風音「なんっっじゃコイツ、感じわっる。 はいはい早よ帰れ」


九重「ん、帰るわ。 ついでに現場行くのにもう何人か居た方が良いだろ? 俺が適当に呼んでやる」


風音「別に一人でもいいけどな・・・」


九重「まぁそう言うな」


 九重が携帯を開いて誰を呼ぶか考える。野郎を呼ぶ気は無い。

 この時間事務員は無理だとか、遺体を見せたくない年齢の子は除外するなど、消去法でいくとリロかアリエイラくらいか。


九重(この二人とは普段全然喋らないからな)


 九重にとっては(相手にとってもだろうが)空気みたいな奴等だ。

 早速二人に電話を掛けてみる。

 アリエイラは即行で出た。


アリエイラ「・・・誰?」


 眠そうな声。


九重「九重だ。これから仕事に行く気は無いか?」


アリエイラ「・・・無い」


九重「音羽が今から仕事でな。一緒に行ける奴を探してる。無理なら他を当たる」


アリエイラ「・・・・・行く」


 それだけ言ってアリエイラは電話を切った。


九重(場所とか聞かないのかあいつは)


 風音がまだカノン内に居ると思っているのかもしれない。あとでメールで指示を出しておこう。

 続けてリロにも電話を掛ける。


リロ「こんな時間になんですか? 緊急ですか?」


 さっきの眠気全開のアリエイラに比べると、かなりマシな応対。これが常に戦闘態勢を維持できる戦闘民族の強みか。


九重「ああ、今から音羽とシャロンの仕事だ。特にお前は参加しろ。お前に拒否権は無い」


リロ「え・・・・風音さんと? あなたも・・・?」


九重「俺は行かない。ただアリエイラは参加する」


リロ「・・・・・・・? アリエイラさん? ・・・ってどんな人だっけ」


 どんな人だっけ。と言っているが、アリエイラを知らないという意味ではない。仕事に関してどんな事が出来る人だっけという意味だろう。

 その辺を察して答える。


九重「シャロンの依頼に出て行くのはあんまり見ないな。それ以前に俺もアイツの事はよく知らん。音羽を除けば、アイツは同じ畑としか喋らんからな」


リロ「はたけ・・・? 畑と喋る・・・不思議ちゃん・・・?」


九重「・・・・機械関係に詳しい奴としか喋らんという意味だ」


 アリエイラは人当たりは良い奴なのでちょっとした雑談くらいなら誰とでもするが、話し込んでいる姿を見せるのは風音とクリス姉弟くらいか。最近はセイニーに興味を持っているようだ。


 リロがしばらく黙った後。


リロ「行っても良いけど・・・・内容は? 機械の事は分かりませんよ?」


 アリエイラが参加すると聞いたので、それ関係の仕事だと思っているようだ。


九重「今日やる仕事は連続殺人の現場検証に立ち会う事だ。まだ詳細は分からん。死体があるのか、もう運ばれてるのかすら行ってみないと分からん。場所は俺もまだ知らん。今音羽がレイに場所を聞いてる。その辺は追って伝える」


リロ「そうですか。 じゃあ連絡が来てから動きます」


 そう言ってリロが電話を切った。


九重(あいつ電話越しだと普通に喋るな・・・意外と喋れる奴なのか?)


 はたから見てるとリロは常に緊張しているイメージしかない。普段から九重が周囲を威圧しているせいもあるが、いつもなら九重相手にビビるビビる。


 参加者が決まったところで、風音に報告する。


九重「アリエイラとリロが来る事になった。三人で何とかしろ」


風音「リロはともかく、アリエイラさんか。凄い人選」


 案件が連続殺人なので、神楽とか戦闘向きの人を呼ぶのかと思っていたら、デスクワークの人来た。


風音「まぁいいや、どの地域かは分かったけど・・・街のど真ん中らしいね。こんな地図の拡大写真送られてもどこか分からないけど、ここって監視カメラ仕掛けたっけ?」


 街の中なのでいずれ仕掛ける予定だった場所ではある。ただし今回の犯行の特性上、人が多い地域は優先順位が低かったような。


 九重が風音が出した地図を確認して答える。


九重「いや、そこはまだだな。人通りの少ない郊外と、人が居ない未開発地域を優先しろって事だったからな。そこは設置最終日の明後日配置する予定だったから、あと二日犯行がズレてりゃ映った可能性が高かったのにな」


風音「ふーーん。こんな狭い範囲しか写ってない地図で、よく覚えてるね」


九重「そりゃそうだろ。監視カメラの無い地域には巡回の指示を出してる訳だからな。関係者は全員分かる」


 この状況把握はあくっぷり。この件は絶対この人が居る方がはかどる気がする。

 それより巡回の指示が出てる地域で犯行が起こったのか。しっかりしてほしいものだ。


風音「んじゃ、さっきから小声で相談してるそこの二人」


 風音が少し離れた場所で今後の方針を相談していた天狐とジルを呼ぶ。


ジル「何か?」


 二人とも振り向き、ジルが代表で返事する。


風音「二人は今から現場に行くの?」


ジル「いえ、夜間は夜間の担当に任せます。多分夜間のトップも動いているでしょうし、我々の出番は無いですよ」


 それだけ信頼しているという事か。しかしそれに対し天狐は。


天狐「あいつとはあんまり会いたくないしね~。同じ地球人わくで入ったから、本来なら私が仲良くしないとなんだけど」


 地球人枠とは、シャロン内の制度の一つ。開星したばかりの星で宇宙人対策用の治安組織を作る際、その組織にはある程度決まった数の現地人を入れる事が義務になっている。

 天狐もその枠で入っている。


風音「地球人枠って、どこの国の人?」


天狐「さあ? 見た目は欧米系の青年って感じ」


ジル「二人と同じく日本で住んでた事もあるらしいですよ。 出身はスイスという所らしいですが」


風音「流石さすが、ジルはちゃんと職員の情報を覚えてるね。天狐さんはおなじ地球人枠で入ったんなら、ちょっとくらい興味を持とうよ・・・」


 そんな人がいるのを初めて聞いた。ジルは褒めているが、天狐は苦手な様子。


風音「天狐さんにとっては嫌な奴って事?」


ジル「天狐は自分より強い奴が嫌いなだけですよ。彼はシャロン最強ですから」


風音「理由しょっぼ」


 ショボイと言われた天狐がムッとして言い返す。


天狐「それだけじゃないわよ。あいつ師匠と似てて、なんか腹立つのよ」


風音「あ、そう。 じゃあ仲良くなれそう。それよりシャロン最強ってジルじゃなかったんだ」


 さっきの戦いにしても風音が勝ったが、ジルも初めから風音と戦う気でのぞめばあんなにあっさり負けはしない。

 天賦てんぷの身体性能を持つ風音相手にだって、善戦ぜんせん出来る実力があるのは知っている。


ジル「あーー・・・私の方が上ですよ、・・・彼単体ならね。 彼は妖精持ちですから。しかもユニルさんと違ってかなり格が低い妖精ですので、能力の低下も少ないらしいですし。私でも入念に対策を練って準備してからでないと、勝つのは難しいですね」


 妖精は誰かと契約すると、いちじるしくその能力に制限が掛かる。同様に妖精と契約した者も自身の能力が下がるらしい。

 らしい、と表現するのはまだよく分かっていない部分も多いからだ。単純にデータが少ないのが主な理由だ。


 そしてこれは妖精の格が上がる程顕著けんちょになるらしいので、最高位クラスのユニルと契約している風音は凄まじいかせを背負っている事になる。

 ジルの目には風音がそこまで枷を背負っているようには見えないので、この情報自体が眉唾まゆつば物かもしれないと思っている。


 この際だからその辺を風音に問うてみる。


ジル「ユニルさんと契約してる事で、風音さんは何か大きく能力が下がっているとかあるのでしょうか?」


 風音が少し考える。


風音「・・・僕の場合、技の範囲が無制限から二~三メートルくらいまで短縮されたかな。あとはほぼ星の子の力を引き出せないとか、くらいかな」


 風音の技である毒は広範囲に広げると危険なので、範囲が狭くなったのは風音自身そこまでデメリットと考えていない。

 加えて体内にたくわえられている星の子の力など、使うつもりもない。

 風音にとってはジルが考えていた通り、大きな枷を背負ったという感覚は無い。


天狐「星の子の力? 何それ?」


 天狐が疑問を抱く。

 天狐もシャロンに勤めてから、星の子くらいは聞いた事がある。

 確かあらゆる存在の頂点と呼ばれている謎の生物だ。神として崇めている星も多い。


風音「その辺は説明面倒臭いから、聞きたかったら後でジルから聞いて」


ジル「風音さんって現在星の子の力を使えないのですか?」


 だとするとかなり脅威が少なくなる。例の話を聞いてから、風音に脅威を感じている部分も大きかった。


風音「うん、ほぼね。封じてある力の百万分の一くらいしか解放出来ないかな」


ジル「なるほど・・・」


 逆にジルは考えを改める。

 それは凄まじい枷だ。宇宙最大の脅威を百万分の一まで抑えているなんて。


 それを聞いていた天狐が。


天狐「え? 師匠も力の封印と解放が出来たの?」


 自分だけの大発見だと思っていた天狐が驚く。


風音「僕も天狐さんと一緒。煉兄ぃから教えて貰った」


天狐「あーー、それでか。せっかく披露ひろうしたのに全然リアクションが無いから、必死で強がってるのかと思ってたけど、知ってたんだ」


風音「いや実際強がってた、って言うかビックリしたけどね。でも戦闘中に弱みを見せるのもどうかと思うし、そもそも僕は天狐さんと戦う気無かったから、そりゃリアクション薄くもなるよ」


天狐「あ、そう。一応驚いてはくれてたんだ」


 あまりこの師匠が弟子を褒める事が無いから、少し満足そうな表情。


ジル「そんな事よりですね、その力って今解放出来ます?」


風音「え? 出来るけど封じるのに時間掛かるから、絶対やらない」


ジル「やっぱり。シャロン職員として、星の子の力がどのくらいの脅威か見ておきたかったのですが・・・」


 風音が少し考える。


風音「ジルは名無しって呼んでるけど、ウチのゼロアいるでしょ。あれと同じくらいだよ。本人がそう言ってたから」


 以前ゼロアに頼まれて見せた事がある。


ジル「・・・・・・え? 百万分の一で名無しと互角ですか?」


 内心かなり驚く。

 星の子ってそんなに規格外なのか? 裏側では、名無しの戦力には上限が無いとまで言われていたのに。


風音「どうだろ? ゼロアって意外と謙虚けんきょな所があるからね。実際戦えばゼロアの方がちょい上だと思ってるよ」


ジル「あ・・・でも同じくらいではあるんですね」


 その話が事実なら、風音には一生ユニルと契約していて欲しいものだ。


 ジルの質問タイムが終わったところで、風音が仕事モードに切り替える。


風音「とにかくここに居るメンバーは、誰も現場に行く気が無いって事か」


 レイから現場の情報も受け取ったし、三人には別れの挨拶を済ませてとっとと風音だけで向かう事にする。




   ----------


 走りながら現場に向かう。

 来ると聞いていた二人に電話を入れると、リロはすぐに向かうと言っていた。

 アリエイラは電話に出なかった。どうやら艦長室で撃沈していて、リロが出発前に発見したようだ。

 一緒に行く風音が自分の部屋に居ると思っていたらしい。風音の部屋のドアをノックしまくった挙句、出て来ないのでマスターキーを持って突撃したところだったそうだ。

 それでも居なかったので、論理が破綻はたんしたと崩れ落ちていたところだったらしい。

 呼んだ九重は何も伝えていなかったのか。


 現地集合になったので急ぎ足で向かう。現場は風音の居た場所より遥かに炎火ほのかからの方が近い。

 多分二人の方が先に着いているだろう。

 郊外から街の中心に向けて走っているので、徐々に周囲に家が増えてくる。


 走りながら考える。

 

風音(そいつらはどこから来てるんだろう?)


 三人一組で行動しているなら、現場付近に監視カメラが無くても何とかなるかもしれない。監視カメラがある地域まで三人で移動してくれれば判別し易い。

 今回設置したカメラの情報は、特別にカノンのパソコンにも送られているので、それらしいグループを捜す方が早いか。

 ・・・と考えると今回参加した二人のどちらかを、デスクワーク要因としてカノンに滞在させておいた方が良かったのかもしれない。

 普段は手柄などどうでもいいが、今回は成果報酬だ。シャロンより先に何らかの手柄を立てないとタダ働きになる。


風音(でも犯人も馬鹿じゃないだろうから、帰る時は解散するか。三人だと目立つし)


 もう現場に二人とも向かっている現状、カメラの事を考えても仕方ない。

 切り替えて現場で何らかの情報を掴む事を優先しよう。


 現場に向かっていると、なぜか見慣れた二人の姿が。

 コート姿の女性と、カノンの黒い仕事服を着た女性。


風音「あれ? 何やってんの?」


 二人に近付いて声を掛ける。

 リロとアリエイラの二人が、救いの神が来たような目で風音に向かって振り返る。


リロ「風音さん・・・・・助かり・・・ました」


アリエイラ「おはようございます」


風音「おはよう。 えっと・・・迷子?」


 現地からそう遠くないとはいえ、炎火から現地に向かったならこの場所には居ないはずだ。


リロ「そうなんです・・・・アリエイラさんが・・・地図を覚えたって・・・・・言うから」


 いつものようにリロが一歩、風音から離れながら言う。


アリエイラ「完璧に道順まで覚えました。覚えた以上、地図を見る必要はありません」


リロ「でも・・・迷ってる・・・・」


アリエイラ「この街から何らかの悪意を感じます。原因はそこにあるのではないでしょうか? 少し論理的に計算しましょうか」


 ポケットから紙を取り出して何か計算し始める。


アリエイラ「はい、結論が出ました。 これは間違いなく、どこかで道を間違えましたね」


リロ「だからそう言ってる・・・・・何なの・・・この人・・・」


 すがる様に風音を見てくる。

 普段アリエイラと絡まないリロは、アリエイラのポンコツっぷりを知らないのだろう。ロボット工学に関してのみ天才的なのだが、他は残念な人だ。


風音「まぁ結果会えたから良かったよ。っていうか聞いていい? 多分・・・だけど、今アリエイラさんは偽物?」


 アリエイラの姿を見て思う。多分これは本人ではなくロボットだと思う。

 青磁せいじ色の美しい長い髪の毛。常に微笑みを絶やさない、聖母のような優しさに満ちた整った顔立ち。

 夜は寒いのでコート姿のようだが、膝から下は生足が出ている。風音はたまに思うが、何故女性は寒いと言いながら足を出す人がいるのか。ズボン穿けばいいのに。

 腕がコートのせいで、彼女の特徴である腕に描かれた美しい流線模様は見えないが、基本的に見た目はいつものアリエイラだ。


アリエイラ「やっぱり風音さんは気付いてくれましたか」


 笑顔で風音の疑問を肯定する。


リロ「偽物・・・?」


 リロもアリエイラを改めて見る。

 しかし普段と何が違うのか分からない。


リロ「車椅子に・・・乗ってないから?」


 普段カノン内を車椅子で移動している姿をよく見る。


アリエイラ「違います。あれは楽をしているだけです」


風音「普段ちゃんと歩かないと、足腰弱るよ」


アリエイラ「一日の必要運動量は毎日こなしています。それ以上運動する必要が無いので、移動は電動車椅子で構わないのですよ」


 確かに風音がトレーニングルームを利用していると、アリエイラが決まった時間に訪れ、いつも大体同じ運動をしてからきっかり一時間半で帰る。内容自体はちょっと重めの健康体操みたいなもので、筋トレと言うには少し軽めではある。

 本当に休みなく毎日なので、本人の言う通り常人よりも健康的な運動量はこなしている。


アリエイラ「他に、何か気付きませんか? リロさん」


リロ「・・・分からない。そもそも・・・いつもあんまり・・・・見てないし」


 アリエイラが、やれやれと首を振る。


アリエイラ「波動はどうです。ロボットと人間には波動の違いがあるのです。高度なAIなら人に近い波動を出す事が出来ますが、作られた肉体から人間と同じ波動を出すには・・・・」


 喋ってる最中に風音が割り込む。


風音「それは知らないけど、それよりいっつも散らかってる髪の毛が、今日は綺麗だから」


 いっつもボサボサの髪の毛をしているのがアリエイラの特徴と言ってもいい。

 そんな彼女が今日は髪の毛を整えている。

 やはりこの人はちゃんとしていると、かなりの美人だと思う。


 解説していたアリエイラが一瞬、ピタリと止まる。


アリエイラ「なるほど。風音さんも、いつの間にか成長していたのですね。女性の髪の毛を綺麗だと褒めるなんて、出会った頃は考えられなかったのに」


 長い髪の毛をさらりと手で撫でながら、感慨かんがい深げな表情をするアリエイラ。


リロ「褒めて・・・ない・・・。普段を・・・けなされただけ・・・」


 リロが小声で訂正する。

 そんなリロの戯言ざれごとは聞かずに、アリエイラが二人に言う。


アリエイラ「うん、今日は気分が良いです。ちょっと二人ともそこに座って下さい」


風音「え? 急ぎなんだけど」


リロ「なんで・・・路上で座るの・・・」


アリエイラ「すぐ終わるのでいいから座って下さい。今から私がなぜロボットで来たのかの説明をします」


リロ「別に・・・興味無い・・・」


風音「いいから座ろう、リロ。アリエイラさんは言いたい事を言うまで動かないか、聞いて貰えないと心が折れて動かなくなるだけだから」


リロ「何なの・・・この人・・・」


 渋々二人ともその場で体育座りをする。


アリエイラ「急ぎだという事なので、端的たんてきに言います。 今日の私は戦えます」


 二人の前を教師の様にゆっっっくりと横切りながら説明を始める。


風音「ロボットですもんね。今日犯人グループと会う事は無いと思うけど、一応戦闘要員が欲しいと思ってたので有り難いです」


 早く話を終わらせたいので相手の主張に合わせる。

 アリエイラがピタリと足を止めた。


アリエイラ「ええ。ですが一つ問題があります。この機体は今、私本人が同調して操っているのですが、私の身体性能に合わせて作られています。私が出来る動きしか出来ません」


 ここで風音が生徒の様にハイッと手を挙げる。


アリエイラ「はい、風音さん」


風音「じゃあアリエイラさんは運動音痴なので、このロボットはクソ雑魚ざこじゃないんですか?」


 アリエイラが風音の頭を撫でる。


アリエイラ「その通りです」


リロ「何なの・・・この人・・・」


 リロがげんなりしている。


アリエイラ「しかし私本人との違いが一つあります。 この機体には、自分に対する愛が無い」


リロ「どういう事? あなたの・・・劣化版・・・?」


アリエイラ「違います。私本人以上に、周囲への愛にあふれているのです」


リロ「・・・・?」


風音「自分に対しての愛が無い・・・? 自傷じしょうが出来るって話?」


 自分の手が壊れるまで何かを殴れるとか。

 だとしてもなぜそれを愛だの何だのと、回りくどい表現をしているのかは理解出来ない。


 しかしおおむね正解だったようで。


アリエイラ「その通りです。仲間への愛深きゆえに、この機体は自爆が出来ます。さてここで質問です。 あれあれ? 横にいる友達が敵に対して自爆しようとしているよ? あなたはどうする? やはり友人として、止め・・・・」


 止め・・・の口のまま、アリエイラがリロをガン見しているので、仕方なくリロが答える。


リロ「・・・・止める」


 アリエイラが嬉しそうにリロの頭を撫でる。


アリエイラ「あなたの様な、チンチラ以下の頭の弱い子がいてくれて助かります。正解ばかりだと盛り上がりに欠けますからね。 はい、不正解です。ロボットなので止めなくても構いません。本人にダメージはありませんから」


リロ「友達って・・・言ったからでしょ・・・。あなたの自爆は・・・止めない・・・・」


 例えばこの間友達になったマリアが自爆しようとしたら、止めるだろうな・・・と考えて出した答えだ。

 アリエイラ型のロボットの自爆など、止めるどころか笑って見ていられる。

 しかしアリエイラは、そんなリロの言い訳は聞かない。


アリエイラ「では風音さん?」


風音「避難します」


 再び頭を撫でる。


アリエイラ「はい正解。避難しましょう。・・・と言いたいところですが、ここからが今回の目玉です。なんとこの機体は、自爆をする際に周囲にバリアを張ります。バリアに囲まれた敵はもう出られません。そしてバリア内で超大爆発を起こします。ですので超高火力の自爆であるにもかかわらず周囲に被害が出ず、避難する必要が無いのです! 主張を終わります」


 終わったらしいのでもう立ってもいいが、風音が座ったまま手を挙げて質問を続ける。


風音「その機体がバリアを作り出すって事ですよね? バリアは機体が爆発してからどのくらい維持いじしてるんですか?」


 機体の爆発直後にバリアが消えたら、普通の自爆と変わらないし。

 多分しばらく維持するのだろうが、バリアが切れたと同時に周囲に熱風とかが凄いんじゃないだろうか?


アリエイラ「・・・・ちょっと待ってくださいね」


 ポケットから紙とペンを取り出して計算を始める。


アリエイラ「・・・ぁ、即死・・・」


 計算途中、何か不穏な単語が聞こえた。


 しばらくして計算が終わったようで、ペンをしまう。


アリエイラ「・・・五秒以内に二百メートル以上避難してください」


リロ「・・・・・」


 ようやくリロもアリエイラのポンコツっぷりに気付き始めたようだ。


 自爆は永久に使わない様に指示してから、二人が立ち上がる。


風音「二人とも、走って行くけど大丈夫?」


 出来るだけ急いで行きたいので、走って行く事を提案する。

 リロは黙って頷いた。しかし。


アリエイラ「このロボットの良い所は、五感も含め私に完全に同調している所です。まるでここに私が居ると言っても過言ではありません」


風音「つまり?」


アリエイラ「走ると疲れます」


風音「・・・じゃあ歩きで行こうか」


 急ぐのを諦めた。


リロ「・・・・甘やかすの・・・良くないって・・・ワグナさんが言ってました」


 小声でリロから注意が入る。


風音「いやまぁ・・・そうなんだけどね」


 最近もワグナにブラウニーを甘やかし過ぎだと注意されたばかりだ。

 そしてアリエイラが呆れた表情。


アリエイラ「リロさんのおっしゃる通りです。何を甘えているのですか? 風音さん」


リロ「え?」


 リロが理解不能の表情でアリエイラの顔を見る。


風音「僕が? え、なんで? 甘えてるのはアリエイラさんじゃないの?」


 リロもコクコクと頷く。

 しかしアリエイラは首を横に振る。


アリエイラ「二人ともしっかりして下さい。 きちんと現状を把握はあくしてますか? お二人は走るのが早い。加えて早く現場に着きたい。私は普段デスクワーク専門ですので肉体労働は遅い、疲れる。 ここまでは合ってますね?」


風音「うん」


アリエイラ「ではこれらの提示された条件を元に論理的に考えて下さい。どう考えても歩くのは甘えでしょう? 風音さんが私をおんぶして走れば良いのです」


リロ「・・・・・帰れ」


 うつむいたまま小さな声で言う。リロは人見知りが激しいので、普段絡まない人に面と向かってきつく言えない。

 当然アリエイラには聞こえていなかった様だ。


アリエイラ「さあ、早く」


 そう言って手を広げて足を止めてしまった。

 そういえばこの人、ちょっとの移動すら電動車椅子を使う人だった。余計な事言わずに最初から歩いて行けばよかった。と、風音が後悔する。


風音「まぁいいや、じゃあ早く乗って」


 もう逆にこの状況を利用しよう、と開き直る。

 いっそ風音が背負って走った方がすぐに着く。


リロ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 凄く何か言いたそうなリロが、背負われるアリエイラを凝視している。


風音「んじゃ行こっか」


 アリエイラを背負って走り出す。


リロ「・・・・大体・・・。・・・犬とか・・・・。頭の弱い・・・・・」


 断片的に聞こえてくる呪いの様な何かをつぶやきながら、リロが風音の後を走って付いてくる。


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